新規事業開発や起業における不安や疑問に対してさまざまなノウハウを提供し、事業化へと導くインキュベーション。誰が、どのようなプログラムを提供しているのでしょうか? ソニーグループが展開しているスタートアップの創出と事業運営を支援する「Sony Startup Acceleration Program(SSAP)」のインキュベーションプログラムを例に、具体的な支援内容をご紹介します。
インキュベーションプログラムとは?
「インキュベーション」とは、新規事業の創出と成長を目的とした支援活動全般を指す言葉です。資金面のサポートを行う投資家の出資とは異なり、新規事業創出に関するさまざまなノウハウの提供や人材支援、ラボや工場といった技術面の設備支援など、幅広い支援が含まれます。
インキュベーション支援を受けるには、ベンチャーキャピタルや企業、国、自治体、大学などのインキュベーター(=インキュベーションの提供者)が用意するプログラムを活用するのが一般的です。こうしたものを総称して「インキュベーションプログラム」と呼びます。
インキュベーションプログラムの選び方
インキュベーションプログラムは、企業がビジネスサービスとして展開している場合や、行政や大学が助成金付きのプログラムを公募している場合など、さまざまな種類があります。インキュベーターの専門領域や得意分野によって支援内容も異なるので、目指す事業に合ったプログラムを選ぶことが大切です。
- 民間企業・団体のインキュベーションプログラム
それぞれの得意分野や専門領域に特化した支援を行っています。企業がインキュベーション事業部を持ち、ビジネスサービスとして展開しているケースもあります。
- 大学のインキュベーションプログラム
大学によるインキュベーションは、大学の研究をビジネスに結び付けることを前提としています。学内ベンチャーとして、助成金付きのプログラムを公募している場合が大多数を占めます。
- 行政や中小企業支援機構のインキュベーションプログラム
地域の特性に合った事業の支援を行います。地域産業の活性化につながる新規事業創出を支援するほか、地元企業との協業イベントなどを展開している場合もあります。
ソニーグループのインキュベーションプログラムとは?
ソニーグループが展開しているスタートアップの創出と事業運営を支援する「Sony Startup Acceleration Program(SSAP)」では、新規事業の立ち上げを目指す企業などを対象に、多彩なインキュベーションサービスを展開しています。新規事業創出の経験を持つSSAPのアクセラレーターが伴走し、必要なノウハウと環境をタイムリーに提供。事業化や事業運営に関する課題を可視化し、その解決に必要な支援プログラムを提供することで、新規事業の立ち上げから販売・拡大までをサポートします。
SSAPのインキュベーション支援プログラムは、大きく以下の3テーマに分かれます。
◆ 【支援①】事業化判断のための支援
ビジネスモデルの確からしさを検証し、事業化・投資判断ができる状態まで支援するプログラムです。
<プログラム例>
- PoC(※)実行
事業アイデアの実現性や収益性を検証するため、商品やサービスの紹介資料やプロトタイプを作成し、想定顧客やビジネスパートナーに対してヒアリングを実施。顧客ニーズを満たしているか、いくらなら買うかなど、事業として成立するかを確認します。>>詳しくはこちら
- 事業計画策定
あらゆるステークホルダーの共感を呼び起こすストーリー作りのノウハウをお伝えします。客観的なエビデンスを備えた収益計画や活動計画に、説得力のあるストーリーを織り交ぜ、ステークホルダーに響く事業計画の策定をサポートします。>>詳しくはこちら - PM育成
新規事業の経験が十分でないPM(プロジェクトマネージャー)を“付きっきり”でサポートします。ToDoの整理・見直しから、スケジュールの可視化、プロジェクト全体の工程管理、分析などの実行支援まで一貫しサポート。短期間で成果を可視化します。>>詳しくはこちら
◆ 【支援②】事業立ち上げのための支援
事業開始までに必要なリソースやプロセスを可視化し、最短で事業開始の準備を支援するプログラムです。
<プログラム例>
- 量産立ち上げ
ソニーの外注先をはじめとする、信頼できるODM(設計・製造の委託先)をご紹介します。商品ごとに行うべき量産試作計画(生産ばらつきの確認)や、生産工程や評価の内容、確認事項をアドバイスします。>>詳しくはこちら
◆ 【支援③】事業運営のための支援
事業開始後におけるさまざまな事業運営の課題解決や、事業拡大に向けたノウハウ、販促支援などを提供するプログラムです。
<プログラム例>
- 品質支援
新規事業の立ち上げから社会実装までの各工程において、適切なタイミングで必要な項目について品質確認イベントを実施。法令、コンプライアンス、セキュリティーなど配慮すべき品質項目を洗い出し、それぞれの品質基準を策定します。>>詳しくはこちら - 経営管理/オペレーション
管理業務全般において必要とされる機能を洗い出し、具体的に何を行うべきかをご提案します。大企業の中で多数の新規事業立ち上げ支援を行ってきたため、各関連部門からの要望対応や社内連携方法など、大企業ならではの事情を熟知したうえでサービス提供が可能です。>>詳しくはこちら - 販売マーケティング
事業化経験のあるマーケターとデザイナーが、お客様の企業ブランドやフィロソフィーを踏まえたうえで、効果的な戦略立案やプロモーションアイテム制作を支援します。>>詳しくはこちら
お悩み別おすすめのSSAPインキュベーションプログラム
どのプログラムを活用したらよいかわからない場合は、いま抱えているお悩みから考えてみることをおすすめします。よくあるお悩みと、それに対応するインキュベーションプログラムの例をご紹介します。
◆ 【お悩み①】「事業アイデアはあるが、事業性の判断ができない」
事業性を判断するための検証結果が欲しいけれど、検証を進めるリソースとノウハウが不足している。そんな場合は、「PoC実行」をご活用ください。市場性や競合分析および想定顧客とのPoCを実施し、客観的に投資判断ができる事業性検証レポートを提示します。
◆ 【お悩み②】「初めての新規事業開発、何から始めてよいかわからない」
経験不足でプロジェクトを進めるノウハウや自信がない場合は、「PM(プロジェクトマネージャー)育成」がおすすめです。SSAPのアクセラレーターが貴社のPMの補佐役となり、プロジェクトの進捗、課題の可視化、関係者へのレポーティングなどを支援。プロジェクトを加速させるとともに、プロジェクトマネジメント人材を育成します。
◆ 【お悩み③】「どのレベルの品質を目指すべきかわからない」
新しい商品やサービスで担保すべき品質項目がわからない場合は、「品質支援」をおすすめします。品質項目ごとの進行管理、レビュー、課題抽出など、新しい商品・サービスを展開するにあたって配慮すべきポイントをコンサルティングします。
◆ 【お悩み④】「新規ビジネスがスタートしたので、早く事業を安定化させたい」
事業が実際にビジネスとして動き出す際には、「経営管理/オペレーション」をご活用ください。必要となる管理業務のフロー及びフォーマットを策定・体系化し、各事業にあわせた管理業務のサポートおよびプロセスレビューを実行。管理業務全般を包括的に支援します。
SSAPの支援事例をご紹介
SSAPで3か月以上のインキュベーションプログラムを利用した方は、これまでに360名以上。120件以上の事業化検証実績があり、その中から実際の事業化に結び付いた事例も数多くあります(2022年7月末時点)。今回はその中から、2つの事例をご紹介します。
◆ 【京セラ株式会社(以下京セラ)】音が出る子どもの仕上げ磨き用歯ブラシ「Possi」のオープンイノベーションを支援
ある京セラ社員の「子どもの仕上げ磨きをラクにしたい!」という思いから生まれた「Possi」は、歯磨きをしながら骨伝導で音楽を楽しむことができる子ども用歯ブラシです。本体を京セラが、歯ブラシ部分をライオン株式会社(以下ライオン)が手掛け、SSAPは事業化検証や販売マーケティング戦略の立案を支援しました。
- ポイント1:京セラ社員がソニーのインキュベーションスペースに入居
プロジェクト開始とともに、京セラのメンバーがソニー本社内のインキュベーション専用スペースに入居。SSAPのアクセラレーターと、何か問題があればすぐに話し合って解決するなど密なコミュニケーションが可能に。その結果、9か月という短い期間での開発実現につながりました。
- ポイント2:ネットワークを活かしてPR戦略をサポート
顧客調査をベースに、商品の価格や販売コンセプトなどのマーケティングもSSAPが支援。京セラ、ライオンの既存ネットワークを活かした展示・販売イベントの実施をサポートしたほか、ソニー社内のネットワークから著名ブロガーへ執筆を依頼したり、SNS広告に出稿したりと、幅広いマーケティングを展開しました。より詳しいプロジェクト事例紹介は以下をご覧ください。
◆ 【株式会社LIXIL(以下LIXIL)】猫ちゃん目線にこだわったBtoCコミュニケーションを支援
「猫壁(にゃんぺき)」は、猫ちゃんの個性に合わせてユーザーが自由にレイアウトを変更できるキャットウォールです。SSAPでは、「猫壁」の一般販売に向けて、マーケティング施策の整理やコンセプトムービー・公式Webサイトなどのクリエイティブ制作を支援しました。
- ポイント1:飼い主のニーズを徹底調査
ペルソナ設定やカスタマージャーニーの整理をサポートし、飼い主の方にとっては「自分自身の便利さや手軽さ」よりも「猫ちゃんの心地よさ」の方が共感を生みやすいことを発見。「猫ちゃん目線」を軸にコミュニケーション設計を進めました。
- ポイント2:BtoC向けのコミュニケーションをサポート
普段BtoBサービスの発信がメインのLIXILにとって、BtoCのWebサイト構築は比較的新たな取り組み。コンセプトムービーやWebサイトの制作をSSAPでディレクションし、エンドユーザーである飼い主の方に届きやすいクリエイティブを目指しました。より詳しいプロジェクト事例紹介は以下をご覧ください。