自社の事業開発や研修プログラムに、アイデアソンを活用する企業が増えています。「普通のブレスト会議と何が違うのか」「これから社内でも実施していきたい」といったアイデアソン初心者の方にもお役立ていただける、基本的な実施方法と失敗しないためのポイントをご紹介します。
アイデア創出の注目メソッド「アイデアソン」
「アイデアソン」とは?
アイデアソンとは「アイデア」と「マラソン」が掛け合わさって出来た造語で、決められた時間の中でグループごとにアイデアを出し合い、ブラッシュアップさせてその結果を競うイベントです。多様な人とディスカッションすることで発想が広がり、特定のテーマに対する良質なアイデアを創出できることから、新規事業開発やオープンイノベーションの現場で広く活用されています。
アイデアソンを行う3つの目的
優れたアイデアを創出する場であるアイデアソンですが、アイデアを出すだけにとどまらないさまざまな目的のもとで活用することができます。
- 事業開発・問題解決のアイデア創出
視点の異なる多様なアイデアを持ち寄ることで、発想の転換を促し、特定のテーマに対する有効性の高い解決策を見つけます。新規事業開発はもちろん、既存事業の改善策検討や、社会課題の解決などにも役立てられます。 - 異業種間の交流・コミュニケーション
アイデアソンの大きな特徴は、職種や専門分野を超えた多様な参加者によってグループが構成されることです。普段はあまり接点のない人とアイデアを交わすことで、深い交流や共創体験を生み出しやすくなります。 - スキルアップトレーニング
決められた時間の中で多様な人と意見を交わし合い、一つの目的に向かって協業することで、ディスカッション力や論理的思考能力、主体性を養うことも可能です。そのことから、人材育成の一環としてアイデアソンのワークショップが行われることもあります。
アイデアソンを実施するには
アイデアソンの運営体制
アイデアソンを効率的に行うには、企画・運営を行う事務局スタッフの他にも、アイデア創出のノウハウやメソッドを持つ人が参加することが望ましいです。
下記にご紹介するのは、一般的なアイデアソン運営体制の一例です。社内だけでは体制が組めない場合は、外部講師や支援サービスを利用する方法もあります。
- 運営事務局
アイデアソン全体の企画や参加者の管理、会場準備、当日の記録などを行います。企業で行う場合は、新規事業開発セクションの担当者や、人材開発担当者が企画・運営を担うことが多いようです。 - 司会・ファシリテーター
アイデアソンを進行し、全体の時間管理や話しやすい雰囲気づくりを担います。総合司会とは別に、グループごとのリーダーも決めておくと、議論をスムーズに進められます。 - メンター・アクセラレーター
ファシリテーターと同様、アイデアを出しやすい流れをつくるとともに、発想方法や議論の進め方などを講師的な立場からアドバイスします。アイデア創出のノウハウやワークショップの講師経験を持つ人が適任です。 - 有識者・専門家
専門的なテーマを扱う場合、有識者や専門家がそのテーマや課題に関する正しい知識をインプットします。
当日までに必要な準備は
アイデアソンで重要なのはテーマ設定です。事前にテーマと開催する目的を明確化し、参加者にしっかりと伝えられるようにするのがよいです。当日の会場には、特別な機材や道具は必要ありません。規模に応じた広さや話しやすさを優先した会場選びがおすすめです。
- テーマ設定
アイデアを出すテーマを明確化し、アイデアソンのゴールを設定します。 - ゲスト選定・参加者の募集
必要に応じて、テーマに詳しい有識者や専門家などのゲストを選定して登壇を依頼します。テーマや概要が決まったら参加者を募集し、当日までにチーム分けをしておきます。 - 開催時間の設定
多くのアイデアソンが、2時間~3時間を目安に行われます。 - 会場準備・手配するもの
昨今はオンライン会議システムを使用して開催されるケースも多いですが、オフラインで開催する場合は、グループでディスカッションしやすいテーブルがある会場が望ましいです。グループごとにA4用紙や模造紙、ペンや付箋など、アイデアを書き留められる文具を用意します。発表用のプロジェクターがあると便利です。
いよいよ実施! アイデアソンの進め方
一般的なアイデアソンの手順
アイデアソンの一般的な流れは下記のとおりです。
- ①チーム分け
1チームが5~6名の少人数になるように設定します。交流に重きを置く場合は所属組織や部署の異なるメンバーで構成し、スキルアップを目指す場合はベテランと若手をミックスするなど、目的によってふさわしいメンバー構成は変わります。事前に参加者が確定している場合は、それぞれのスキルや専門性などに配慮してあらかじめチーム分けを考えておくとよいでしょう。 - ②テーマ説明
アイデアソンのテーマと目的を全員に説明します。 - ③問題定義
ざっくりとしたテーマを伝えるだけでは、全員が議論の方向性をイメージできない場合があります。テーマについての課題はどこにあるのかなど、解決すべき問題点を共有することでゴールに向けたアイデアを出しやすくなります。 - ④インプット
テーマに関する必要な知識や情報を、有識者や専門家からインプットします。課題に対して過去にどんな対策が取られてきたか、市場や当事者からはどういった声が上がっているかなど、テーマに対する最新の正しい認識を持つためです。メンバーの情報レベルを揃えることでイメージや認識のズレもなくなり、議論がスムーズになります。 - ⑤アイスブレイク
いきなりディスカッションを始めるのではなく、まずは自己紹介や雑談的な会話から始めて緊張を解きほぐします。簡単なクイズやゲームをして、思考の準備体操をするのもおすすめです。 - ⑥アイデア出し(ブレインストーミング)
アイデアを出し合う際のポイントは、口頭で済ませるのではなく「可視化」することです。まずは5分ほど自由に話し合い、そのあと10分ほど各自で自分のアイデアを書き出し、それが終わったらすべてのアイデアを全員で共有します。 - ⑦アイデアの絞り込み
出されたアイデアからブラッシュアップするものを決めていきます。それぞれがいいと思ったものにマークを付け、マークが多かったアイデアの中から内容が重複しているものを整理してアイデアを絞り込む「ハイライト法」などがよく用いられます。 - ⑧ブラッシュアップ
アイデアを絞り込んだら、グループで改善しながら発表用に仕上げていきます。パソコンで見やすいスライドを用意することは重要ではありませんので、模造紙に手書きするだけでも十分です。最初に発表する人を決めておくと、ブラッシュアップをしながら心の準備ができます。 - ⑨プレゼンテーション
各チームのアイデアを発表します。プレゼンするアイデアは、必ずしも一つに絞る必要はありません。 - ⑩審査
審査員が各グループへの講評を行い、その中から優れたアイデアを選出します。審査があると参加者のモチベーションになりますが、選出されたアイデアだけが優れているとは限りません。終了後、すべてのアイデアを全員が共有できるようにしておくと、その後のプロジェクトにそれらのアイデアが役立つこともあります。
アイデアソンを成功させるポイントは?
ポイント① 開催目的を明確に
何のために開催するのか、解決すべきことは何か、アイデアソンの目的をきっちりと定めます。目的がわかることで、参加者の意識やモチベーションも変わります。
ポイント② テーマ設定を曖昧にしない
アイデア出しを行う際、たくさんのアイデアが出れば良いものが見つかるだろうと思いがちですが、良いアイデアを引き出すには的確な「問い」が必要です。テーマが不明瞭で、解決すべき課題の本質を共有できていないと、アイデアを絞り込むための指針が持てず迷走してしまう場合もあります。
ポイント③ できるだけ多様な人を集める
普段は異なる分野や部署で活動するメンバーが集まって、多様な視点からアイデアを出し合うのがアイデアソンの醍醐味。企業内で行う場合もできるだけ社外からの参加者を招いたり、部署を超えて参加者を募ったりすると、アイデアにも幅が生まれやすくなります。
ポイント④ アウトプットのイメージを揃えておく
グループによってアイデアの精度や発表方法にばらつきがあると、審査のしづらさにもつながります。最終的にブラッシュアップするアイデアの具体性レベルや、盛り込むべき条件、発表方法をあらかじめ設定しておくとよいです。
ポイント⑤ 出されたアイデアを否定しない
相手の意見に対し反対意見を唱えることで討論を展開するディベートとは違い、アイデアソンの基本は「ディスカッション(議論)」です。自分の意見が否定されると、アイデアを積極的に出しづらくなり、活発な議論に発展しない可能性が高くなります。
ポイント⑥ アイデアソンの“次”を考えておく
アイデアソンを行ったものの、一過性のイベントで終わってしまうケースがしばしばみられます。せっかく出したアイデアを事業や次のステップで活かしていけるようハッカソンにつなげたり、交流を目的に定期的に開催したり、実施後の展開も含めてアイデアソンを企画するのがおすすめです。
ポイント⑦ 参加規約・権利の取り扱いは慎重に
所属や立場の違う人たちが集まってアイデアを出し合うので、アイデアを誰のものとするかといった権利の取り扱いを定めておくことは、後々のトラブルを防ぐためにも非常に大切です。
ポイント⑧ 企画やファシリテートにはプロの力も借りて
アイデアソンのテーマ設定やファシリテートには、アイデア創発やブラッシュアップのスキルやノウハウが必要です。特に新規事業創出に向けたアイデアソンの場合は、いかに現実的な事業化に結び付けていけるかといったビジネスの視点が欠かせません。実際にイノベーションや新規事業開発の経験があるメンターやプロのアクセラレーターをアサインしたり、支援プログラムを利用したりすることで、より有意義なアイデアソンを行うことが可能です。
初めてのアイデアソンにおすすめの支援プログラム
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SSAPのアイデアソン支援プログラムでは、実際にソニーで商品開発等を経験してきたメンバーが講師やメンターとなり、アイデアソンのテーマ設定から当日のファシリテートまでをお手伝いします。社内でアイデアソンを行うのが初めての場合も、安心して実施できます。
プロジェクトとしても、単発ワークショップとしても活用できる
SSAPでは、人材育成の研修プログラム提供から、中長期におよぶ新規事業開発プロジェクトサポートまで、それぞれの目的に合わせて支援内容をカスタマイズしてご提供しています。研修の一環として単発でアイデアソンを体験したい場合も、アイデアソンの成果を事業創出へ着実に結び付けたい場合も、お気軽にご相談ください。
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