2021.12.28
Sony Acceleration Platform 新規事業の基礎知識

新規事業におけるコンサルティングとは

新規事業開発で上手に活用したいのがコンサルティング会社などの外部の力です。Sony Startup Acceleration Program(以下、SSAP)の新規事業開発支援は、どのようなサービスを提供しているのか、進め方と活用方法をご説明します。

新規事業の現状と立ち上げで考慮すべきポイント

新規事業開発は「千三つ」(1000分の3)という言葉が存在するほど、成功する確率が低いものだといわれます。その主な理由をご紹介します。

◆ 不透明性が高い
新規事業開発はその企業が今まで関わってこなかった未知の領域への挑戦となるため、既存事業であれば把握できている市場データや顧客特性などがほぼない状態からのスタートとなります。さらに新規事業開発の経験が浅い企業や担当者の場合、事業アイデアが行き詰まる、的確なマーケティングができないなど、既存事業では経験しない部分でつまずく可能性もないとはいえません。そのため、ビジネスモデルの仮説検証が必要であり、現状認識や市場の状況が変わった際はこまめに軌道修正することが求められます。

◆ スピードが重要
世の中の変化のスピードが加速する時代、ビジネスモデルや商品・サービスのライフサイクルも短縮化の傾向にあります。特に市場が急成長している分野には参入する企業が多く、次々に新製品・サービスが生まれ、市場の環境変化が速いとされています。反面、社内では新規事業立ち上げのために経営陣への説明、社内リソースの確認、関係各部署との調整などが求められ、時間と労力を消費しがちです。新規事業を無事にローンチさせるためには、短期間で成果を出せる仕組みが求められます。

 

新規事業開発においてコンサルに依頼する意義とは

新規事業の事業化に至るまでには、ビジネス規模に相応な「人材」「コスト」「時間」が必要になります。特に事業開発に精通した「人材」は短期間で育成できるものではなく、新規事業立ち上げの知見を多く持つ外部人材を入れることで、ビジネスモデルの早期構築や的確なマーケティング、事業計画の立案へと進められる可能性が高まります。Sony Startup Acceleration Program(SSAP)はソニーがこれまでに実践してきた社内起業のノウハウを提供し、新規事業のアイデア創出から事業化まで一気通貫で支援するコンサルティングファームのような役割を担っています。「アクセラレーター」と呼ばれるコンサルタントが顧客ごとにマンツーマンで、スピーディでムダの少ない事業開発をサポートします。

新規事業開発におけるコンサルの役割について、こちらの記事もご覧ください>>#08新規事業の立ち上げを成功に導く、コンサルティングの役割

 

共通のゴールを設定して成果物を明確にする

コンサルタントと協働する際には、最終的な目標がブレないよう共通のゴールを設定することをおすすめします。「共通のゴール」とは具体的な成果物を指しており、お客様のご要望によりキービジュアルであったり、ニーズ検証報告書であったり、事業計画書であったりします。
SSAPでは支援の開始時にお客様との共通のゴールとして「カスタマーサクセス」を設定し、ゴールに向けて最適な支援サービスをご提供します。新規事業開発の過程では想定外の課題が発生することが多々あるため、早い時期にお客様の課題・ステータスを把握し、現状と理想のギャップを確認して必要な支援内容を決定しています。

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SSAPの新規事業開発支援で何を目指すのか

◆ 事業開発の構築力を身につける
新規事業開発の道のりは長く、主なフェーズだけでも、アイデア探索⇒ビジネスモデルの仮説構築と仮説検証⇒テストマーケティング⇒事業計画策定⇒サービス開発⇒販売準備⇒事業化などがあり、フェーズごとに企画力・運営力・実行力など幅広い能力が求められます。SSAPでは各フェーズに精通したアクセラレーターが客観的な視点でアドバイスを行い、その企業・組織に必要と思われるソリューションを提案・支援を行います。
SSAPと二人三脚で新規事業開発の全体像を俯瞰しながら推進することで、経験や知識・ノウハウが社内に蓄積されます。成長した社内人材が次の新規事業開発に取り組む、好循環を生み出すことも可能です。

 

SSAPの事業開発コンサルティングの特徴

◆ 実務に携わってきたプロフェッショナル集団
SSAPには長年ソニーの社内などで新規事業開発に携わってきたプロフェッショナルが「アクセラレーター」として多数在籍しています。お客様に最適な支援を提供するため、ビジネスデザイン・マーケティング・組織開発・技術戦略・財務戦略など新規事業開発の各フェーズで、その領域に精通したアクセラレーターがマンツーマンで対応。専門家ならではの的確な支援をしています。

◆ スピード重視。3か月で成果を出します
SSAP創設以来、社外へのサービス提供実績は144件※に上り、約3か月で成果を出すことを目標にしています。製品化までの最短スピードは約1年。新規事業の育成と検証をレンタル感覚で行えるため、自社だけでは想定以上にかかりがちなコストと時間を節約できます。(※2021年11月末時点の実績)

◆ 人材育成まで任せられます
事業化までアクセラレーターがパートナーとして伴走することで、自社内の新規事業開発担当者はプロフェッショナルによる一連の事業化プロセスをともに経験することができます。その結果、現業の業務と人脈だけでは獲得することが難しかった戦略やノウハウを学ぶことも可能です。

 

SSAPでの新規事業開発の進め方

1. アイデア創出・用途探索
SSAPでは異業種の人材が交流し、自社内や同じ業界内では生まれなかったアイデア創造を育むワークショップや、アイデアの種を検討し、事業プランへと展開させていくトレーニングを提供します。トレーニングでは事業アイデアの顧客提供価値について、アクセラレーターを交えたブレストも行います。自社の強みであるコア技術を基点とした事業の場合は、その用途のブレストを実施し、新規事業アイデアが市場のニーズにマッチしているのか、事業化に足るターゲット層が存在するのか、アイデアが現実的か、などを客観的な視点でアドバイスします。

2. ビジネスモデルの仮説構築
顧客セグメントや事業アイデアの顧客提供価値の仮説が出来上がったら、ビジネスモデルの仮説構築へと進みます。SSAPのアクセラレーターやゲスト講師が仮説の立案方法をレクチャーし、顧客の課題を解決する具体的なソリューション案とビジネスモデルの仮説を立案します。

3. ビジネスモデルの仮説検証
ビジネスモデルの仮説の完成後、その検証へと進みます。アーリーアダプターや顧客となりそうなユーザーにインタビューし、顧客が抱える問題やその解決方法に立案したビジネスモデルが機能するかどうかを検証します。インタビュー手法はSSAPより事前にレクチャーします。

4. ビジュアライズ(コンセプトの可視化・プロトタイピング)
それまでは机上のアイデアに過ぎなかったものを具体的に設計・デザインし、試作機を制作する過程です。SSAPのエンジニアや商品企画担当者が伴走し、要素技術を検証。事業化実現の可能性を確認し、試作機開発をサポートします。SSAPのデザイナーによるサービスコンセプトや、製品自体のデザインも可能です。

5. テストマーケティング(ニーズ調査・PoC)
新規事業の商品・サービスがユーザーにとって本当に欲しいものかどうか、さらに商品の価値を正しく訴求できているかどうか、オンライン・アンケートなどで定量調査を実施します。さらに定性調査として、ペルソナに該当する人に直接インタビューして細かくヒアリングし、「なぜその商品・サービスが欲しいと思ったのか」など、顧客のインサイトの発見を目指します。調査には開発した試作機なども活用。SSAPは調査の手法や分析方法などをアドバイスし、結果分析を商品・サービスの改良へとつなげます。

6. 事業計画策定
ニーズの有無と実現性が見えた段階で、事業計画書を策定します。収益計画、開発計画を練り、事業の蓋然性やスケジュールが見えた段階で、社内外にピッチを行い、承認と投資を求めます。SSAPでは質問に回答するだけで事業計画書など必要なドキュメントを作成できる事業化支援Webアプリ『StartDash』を提供し、スムーズな作成をサポートしています。

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新規事業にまつわるさまざまなお悩み、課題にお応えします。

新規事業開発に着手した企業からよく聞かれる悩みをご紹介します。

「新規事業を推進する上での課題は?」こちらの記事もご覧ください>>#07新規事業が思いつかないとお悩みの方に。 新規事業の育成を支援します

◆ アイデアが出てこない
新規事業担当者が陥りやすい悩みのひとつが、「事業アイデアが浮かばない」です。トップダウンで新規事業担当に任命され、業務のかたわらに考えるものの、現実味のある事業アイデアはなかなか浮かぶものではありません。その一方、会社からは短期間の成果を求められるケースも少なくないといいます。
そこでSSAPでは、アイデアの発案から事業創出までのフェーズを4つのステージに分解した「ステージゲートシステム」を提供。アイデア創出のフェーズでは、自社内での「アイデアソン/ハッカソン」「インフォセッション」「短期集中型コンセプトメイキング」などのワークショップの企画・運営をサポートします。

◆アイデアを形にすることができない
「社内でアイデアが生まれても、それをどのように事業化につなげていけばいいのかわからない」という悩みも、よく伺います。せっかく生まれたアイデアを具体的な事業プランにまでブラッシュアップしていくには、それなりのスキルが必要だといわれています。
SSAPでは講義形式、個別コーチング、実践型演習などでアイデアを磨くトレーニングを提供。内容・期間・回数なども顧客に合わせて柔軟に対応します。また、ソニーの経験豊富なエンジニア・デザイナー・商品企画担当者が、アイデアを可視化するコンセプトデザインやプロトタイピングを支援します。

◆ 新規事業の評価方法、評価軸がない
新規事業のアイデアが複数あり、ビジネスモデルの仮説を構築できても、それを評価する方法や評価軸がないと進めてよいものかどうか社内で判断がつかず、スピーディな事業化に結びつけることが困難になります。そこで「ステージゲートシステム」を活用し、事業アイデアを審査するための評価体系を設計。審査基準、審査項目、審査方法を定義し、効率的に評価を行います。評価のタイミングはアイデア創出⇒ビジネスモデル仮説構築⇒ビジネスモデル仮説検証⇒事業準備のフェーズごとに設け、事業判断のスピードの加速へとつなげます。

◆ 事業化を進める組織の運営ノウハウがない
新規事業開発を自社内に根付かせるため、SSAPでは組織開発支援も行っています。ソニーグループの新規事業オーディション事務局長経験者が、貴社の課題の整理や事務局運営スキルを解説。「ステージゲートシステム」のスムーズな導入や、評価体系の構築をサポートします。プロジェクトマネージャーの育成支援ではSSAPがプロジェクトマネージャーの補佐役となり、スケジュールの可視化や定例会議の各種運営などを代行しつつ、新規事業をリードする人材を育成します。

 

支援クライアント 実績ご紹介

SSAPは2014年にソニーグループの社内起業用の仕組みとしてスタートし、2018年10月には社外へサービス提供を広げる体制を敷きました。2021年11月末現在、19業種144件の社外向けサービスの提供実績があります。サービス提供先は、京セラ株式会社、株式会社LIXIL、カシオ計算機株式会社、住友化学株式会社などの大企業から、株式会社グレースイメージングなどのベンチャー企業まで、さらには東京大学、学校法人立命館などの教育機関へもサービスを拡大しています。

 

事例ご紹介

◆ 事業アイデアのないところから1年半で事業化へ
子ども向けの音の鳴る仕上げ磨き用ハブラシ「Possi」は、京セラ株式会社のエンジニアの「子どもが嫌がる仕上げ磨きが楽しい時間になれば」という発想から生まれた製品です。京セラ社員のみでプロジェクトチームを発足しましたが、2018年10月よりSSAPに支援を依頼。アクセラレーターがプロデューサー的な立場でメンバーの意見をまとめて方向性を示し、ニーズ検証⇒商品開発⇒事業開発へとスピーディに進行。スタートアップ支援Webアプリ『StartDash』も活用して事業化に至るまでに何が必要なのか見える化し、財務計画や物流ルートの開拓など通常エンジニアには親しみがない業務もサポートしました。「Possi」は支援スタートから約9か月で製品化に成功。クラウドファンディングを経て、2021年5月に一般発売されました。

【連載】「ソニー・京セラ・ライオン」大企業の三社共創、9か月でアイデアが形に
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新規事業開発に課題をお持ちの方に、SSAPのコンサル内容を詳しくご紹介します

SSAPは事業会社であるソニーグループが多くのイノベーションと新規事業を生み出してきた経験と実績をもとに、既存のコンサルティング会社とは異なる手法でお客様にコンサルサービスを提供しています。

Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、760件以上の支援を25業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2024年10月末時点)

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