2021.10.06
「猫壁(にゃんぺき)」な人たち ~LIXILから生まれたキャットウォール~

#02 コミュニケーションデザインで“猫ちゃん目線”にこだわったワケ

Sony Startup Acceleration Program(以下SSAP)では、2019年7月から株式会社LIXIL(以下LIXIL)にサービス提供を開始し、2021年9月にはキャットウォール「猫壁(にゃんぺき)」を発表しました。

今回は、猫壁プロジェクトのコミュニケーションデザイン支援を担当したソニーグループ株式会社 クリエイティブセンターの北原 隆幸とSSAPのアクセラレーター木村 隆志にインタビューしました。SSAPがどんな支援をしたのか?コミュニケーションデザインでこだわったポイントは?等、プロジェクトの全貌に迫ります。

マーケティング施策の整理からムービー制作まで。

――猫壁プロジェクトでは、SSAPはどんな支援を提供しましたか。

木村:猫壁の一般販売に向けて、マーケティング施策の整理やコンセプトムービー・公式Webサイト等を支援しました。

SSAPアクセラレーター木村 隆志の写真
SSAPアクセラレーター 木村 隆志

――猫壁の一般販売に向けてマーケティング施策等を支援したのですね。木村さん・北原さんのプロジェクトでの役割は?

木村:私はプロジェクト全体の進行管理と、公式Webサイト等のマーケティング施策の整理を担当しました。
猫壁はBtoC商品として、エンドユーザーである猫の飼い主の方々に情報を届ける必要があります。しかしLIXILさんがこれまでメインで扱ってきたのはBtoB商品で、BtoCのWebサイト構築は比較的新たな取り組みとなります。その部分を、SSAPのノウハウをベースに支援しました。

北原:私の主な役割はクリエイティブディレクションの策定・コミュニケーションデザインの全体設計です。策定したクリエイティブディレクションに沿ってコンセプトを展開し、ムービー・スチル・コピー・公式Webサイトなど様々な制作物のディレクションを行いながら、クリエイティブパートナーと共に制作を行いました。

ソニーグループ株式会社 クリエイティブセンター 北原 隆幸
ソニーグループ株式会社 クリエイティブセンター 北原 隆幸

キックオフから約半年でローンチ。「猫ちゃんの目線」にこだわったワケ。

――どのようなスケジュール感で進みましたか。 

木村:2021年2月末のキックオフを経て、2か月間でまずWebサイトの骨子を固めました。5月からはWebサイトの制作に加えコンセプトムービーやスチル・コピー・イラスト等の制作も開始しました。
2か月で行ったWebサイトの骨子作りは、「誰に/何を見せて/その結果どういう行動をとってもらいたいか」を整理することから着手。LIXILさんのご意向等を棚卸しさせていただき、議論を重ねつつ、ペルソナやカスタマージャーニーの整理を行いました。

白を基調としたインテリムービー・スチル用の撮影風景
ムービー・スチル用の撮影風景

飽き性な猫ちゃんもたくさん運動して駆け回りたい猫ちゃんも、存分に遊べる場を作ってあげることができるだけでなく、少し年老いて運動量が落ちてきた猫ちゃんにとっての運動しやすいスペースを作ってあげることができるのも、この商品ならではの魅力です。
お使いいただく飼い主様やそのパートナーである猫ちゃんにとっても、楽しく豊かな暮らしを提供できる商品にしたいという想いを込めて商品をつくりあげてきました。

――Webサイトやムービーを見ていると、猫ちゃん目線での表現があって新鮮です。猫目線のコミュニケーションにした理由は?

北原:家族の一員として我が子のように猫ちゃんを大切にする飼い主さんにとって、「飼い主さん自身の便利さや手軽さ」よりも、「猫ちゃんの心地よさ」が共感を生みやすいと考えたからです。言葉を喋れない猫がどういう気持ちになる商品か。そこを何よりも最初に伝えるべきだと思いました。

猫壁のプロモーションムービー(ムービーでは猫ちゃんの目線でキャットウォールを見られます)

猫壁は、建材メーカーであるLIXILさんならではの高品質で信頼性のあるキャットウォール。購入者である飼い主さんにとっては、壁に着脱できる便利さよりも、猫ちゃんにとって自由にキャットウォールのレイアウトを変えられることがいかに嬉しいことか、気まぐれで飽きやすい猫にとってもいかに新鮮な楽しさ与えられるかが大切です。これらの理由から、猫ちゃんからの視点を大切にしたコミュニケーションデザインを行いました。

ムービーの撮影風景
ムービーの撮影風景(猫目線のムービーは、実は猫壁に猫の目の高さにカメラを置いて、このように撮影していました)

木村:5月からのムービー・スチルの制作の際には、我々ソニーメンバーも撮影現場に連日通い、LIXILさんや撮影クルーと、時間の許す限りクオリティーを追求しましたね。

目指すのは「売り切り」ではなく、商品を通じた「コミュニティの創出」。

――お2人がそれぞれこだわったポイントは?

北原:コミュニケーションデザインとしては、日常の日の光や風など自然界がもつ温もり、猫ちゃんの視点や気持ちなど、猫壁があることで楽しくなる毎日が想像できるような表現できないかと考えました。
この商品の目指すところは「売り切り」ではなく、買っていただいたお客さまの声や意見を汲み取りながら、猫ちゃんにとってよいものを共に作りだす商品を通じた「コミュニティの創出」です。ローンチ時には組み込みきれていませんが、今後SNSや購入さまを通じ、「猫壁」という1つのコミュニティを育ていく仕掛けをコミュニケーションの設計に組み込んでいます。

木村:マーケティングの観点では、LIXILさんの意向や施策の想定効果を、予算・時間軸と天秤にかけつつ、納得感のあるコミュニケーション手法を選定しました。
またWebサイトの制作フェーズでは、心は熱く頭は冷静に、常にプロジェクト全体を俯瞰する事を意識していました。
新規事業のプロジェクトでは、予想外の出来事が生じてスケジュールに影響が出ることがよくあります。今回も何度かそういった場面が生じましたが、常にプロジェクトを俯瞰する視点を持つことで、変更可能なラインと死守すべきラインを明確にし、停滞させることなくプロジェクトを前に進められたと思っています。

猫壁の公式Webサイト
猫壁の公式Webサイト

――猫壁の今後にかける想いをお聞かせください!

北原:この商品は拡張性があります。1パーツから購入できるためご家庭によって様々なレイアウトが可能。また、猫壁ウォールは飼い主さんのインテリアツールとしての可能性もあります。家の壁を有効活用することで猫と飼い主の新しい関わり方・楽しみ方を見つけ、今まで気づかなかった猫ちゃんの表情や仕草を発見してみてください。いつもの毎日を、もっと豊かなものにしていただければと思います。

木村:猫壁は、猫ちゃんの個性に合わせて、ユーザーが自由にレイアウトを変更できる、ユニークな商品です。まずは猫ちゃんと飼い主さんの日々のコミュニケーションが豊かに、そして幸せになることを信じています。
また、猫壁は良い意味で「遊び」のある商品なので、今後きっと、我々の想像を超えるユニークな使い方や将来像が、ユーザーから生まれてくる予感がします。そこで是非、ユーザー同士で楽しんでほしいですし、LIXILさんにはユーザーと共に猫壁を進化させていただきたいと思います。
さらには、猫壁がLIXILさんのBtoCビジネスの起点となり、今後ますますビジネスの幅が広がり、LIXILさんの想いが多方面に伝わることを期待しています。

猫壁の使用イメージ図
猫壁の使用イメージ図

猫壁の詳細はこちら

Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、760件以上の支援を25業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2024年10月末時点)

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