2023.05.26
Sony Acceleration Platform 新規事業の基礎知識

プロジェクトマネジメントとは? 手法や実施のポイントなど基本を解説

新規事業を立ち上げ推進するためにはプロジェクト単位で業務を進めることが一般的だと言われています。プロジェクトにはプロジェクト管理、すなわちマネジメントが必要不可欠ですが、どのように進めればよりスムーズに成果へと結びつけやすくなるのか、プロジェクトマネジメントの基本から紐解いていきます。

プロジェクトマネジメントとは

プロジェクトマネジメントの「プロジェクト」とは、特定の目的を達成するための業務や計画のことで、明確な期限が定められている活動を指します。「プロジェクトマネジメント」とは、プロジェクトを成功へ導くために綿密な計画を立て、人的リソースや品質、コスト、スケジュールを管理し、期限内に成果を挙げるべくコントロールすることをいいます。

◆ よく似た用語「プロダクト」「タスク」との違い
「プロジェクト」と似た言葉に「プロダクト」があります。「プロダクト」とは一般的に製品や成果物を指します。「プロダクトマネジメント」は製品を中心とした業務プロセスの管理を指し、製品が市場にある限り、マネジメントが続きます。
一方、「タスク」は業務において「やるべきこと」を指す言葉で、一つひとつの作業を示しています。「タスクマネジメント」は作業の目的・内容・優先順位などを整理し、その遂行の状況を管理するものです。

 

なぜプロジェクトマネジメントは必要なのか

プロジェクトを円滑に運営し、計画通りに遂行するには、メンバーが能力を発揮でき、効率的に業務を行える環境を整える必要があります。そのため、目の前の作業だけに捉われるのではなく、プロジェクト全体を俯瞰し、最終的に利益を最大化するために、マネジメントが行われます。

 

プロジェクトマネジメントを実施するメリット

プロジェクトマネジメントにより、チームの目標が明確になり、方向性を見失う恐れが減ると言われています。また、チーム全体が目標に向かって動くことが可能になり、現状把握や進捗確認などが行いやすくなります。さらに定期的に状況を把握することで、問題の早期発見につながります。

 

プロジェクトマネジメントの実施者は?

プロジェクトマネジメントの実施者には、大きく分けてPMO(Project Management Office)とPM (Project Manager)がいます。

◆ プロジェクトマネジメントを支援する組織「PMO」
PMO(Project Management Office)とは、企業や組織におけるさまざまなプロジェクトマネジメントの支援を横断的に行う事務局や構造システムを指します。企業や組織内の一部門のケースもあれば、外部の専門会社にPMO業務を委託するケースもあります。PMOの役割には、その企業・組織におけるプロジェクトマネジメントの方法を標準化すること、プロジェクトマネジメントの業務を支援すること、プロジェクトマネジメント研修など人材開発を行うことなどがあります。

PMOについて詳しくはこちら>>PMOとは? PMとの違いや役割について解説

◆ プロジェクトを牽引するプロジェクトマネージャー(PM)
個々のプロジェクトの総責任者を「プロジェクトマネージャー(Project Manager:PM )」といいます。プロジェクトマネージャーはプロジェクトの目的設定、スケジュール策定、メンバー選定、現状把握と進捗状況の確認など、常に判断と決定を求められる立場にあります。

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プロジェクトマネジメントを行ううえでの注意点

プロジェクトマネジメントを実施するうえで、特に注意すべきことがあります。

◆ 小さな問題点も早急に対処をする
プロジェクトは期限が決まっているため、納期に影響を与える可能性がある品質などの問題には早めに対処することが重要です。最初は小さな問題点に見えても、放置すると後々プロジェクト全体に影響を及ぼす問題に発展する可能性があります。そのためにも日頃からメンバーと定期的な会議やミーティングなどコミュニケーションを図って情報を集め、早めに問題の芽に気づき対処することが求められます。

 

プロジェクトマネジメントが失敗する原因

新規事業におけるプロジェクトマネジメントが失敗する原因には、管理方法の失敗、リスク対策の失敗、上層部の理解を得るための調整の難航などがあると言われています。
管理方法の失敗については、「マネジメントが上手くいかず、メンバーが離脱した」「現状把握が甘く、納期に遅れが生じた」「コストが予想以上に膨らんだ」など、さまざまな事態が想定でき、いずれもプロジェクトマネージャーの力量が問われるところです。
リスク対策の失敗にはリスク想定の漏れ、対策の弱さ、新たなリスクの発見の遅れなどが挙げられます。
また、新規事業プロジェクトを推進するうえで新たな目標を設定し挑戦する必要があり、それなりの人的リソース・資金・時間が必要ですが、上層部の理解を得られないとこれらを確保しづらくなります。プロジェクト発足当初は理解を得られていても、周辺状況の変化や進捗の遅れなどにより、上層部の考えが変わり状況が変化することもあり得ます。

 

プロジェクトマネジメント成功のポイント

プロジェクトの成功にはどのような点に留意すればよいのか、フェーズごとに紹介します。

◆ 【目標設定phase】プロジェクトの目的・目標を明確化し、共有する
そのプロジェクトが最終的にどのような目的・目標を持つかを発足時に明確にし、メンバー全員に共有します。最終的なゴールを全員がイメージすることで、目的・目標がブレにくくなり、個々のメンバーが異なる方向を向くことを防ぐと言われています。

◆ 【計画phase】目的・目標に必要な計画を立てる
プロジェクトの目的・目標の達成に必要な計画を立案します。計画を立案する際、最終的な納期と求められる成果物から逆算することで、必要な人員・コスト・設備などを割り出します。

◆ 【実行phase】タスクを見える化し、工程をつくる
計画立案を進めていくと徐々に具体的なタスクが見えてくるので、そのボリュームや所要時間から各工程のスケジュールを作成します。また、スケジュールを作成する際には、マイルストーンを設定することをおすすめします。月次報告、デザインレビュー、フェーズごとのゲートレビューなど、適切と思われるタイミングをマイルストーンにすることで、大幅な遅れが出ていないか、計画を見直す必要が生じていないか、確認することができます。

◆ 【実行phase】メンバーの役割分担を明確にする
プロジェクトチームには社内のさまざまな部署からメンバーが入るケースが少なくありませんし、外部からメンバーを集めることもあります。普段の職場とは異なるメンバーが集まるため、発足時に一人ひとりの役割分担を明確にしておくことが重要です。その結果、責任の所在が明確になり、必要な対策をスピーディに打ちやすくなると言われています。

◆ 【実行phase】コミュニケーションを密にし、チームワークを大切にする
プロジェクトはチームで行うものであり、チームワークの良し悪しは業務に少なからず影響を及ぼします。また、新規事業のプロジェクトチームには一般的な職場以上に多様な職種やバックグラウンドを持つ人材が集まる可能性があります。そのため、プロジェクトマネージャーはメンバー一人ひとりと積極的にコミュニケーションをとり、情報共有を図る必要があります。コミュニケーションの際はメンバーの立場やキャリア、スキル、経験などに配慮しながら、情報を伝達・共有することが重要です。そのうえで適材適所の業務に就いてもらい、客観的な評価を与えることが、メンバーのモチベーション向上につながるとされています。

◆ SSAPでの進め方をご紹介します(チームワークを高めるコツ)
Sony Startup Acceleration Program (SSAP)では、これまで多くの企業内新規事業プロジェクトに伴走してきました。プロジェクトを推進するうえでのチームワークに関するご相談をいただくことも多く、そういった方々には「チームワークを高めるためのコミュニケーションで重要な3つのポイント」を支援の際にお伝えしています。

新規事業プロジェクトは困難の連続であることが多く、ともすればメンバーの心が折れそうになり、チーム機能が低下する可能性があります。そんなときにプロジェクトマネージャーはどのような対応をすべきか、SSAPではノウハウの提供はもちろん、そういった新規事業プロジェクトの管理ができる「PM(プロジェクトマネージャー)育成支援」などのサービスも用意しています。

SSAPのアクセラレーターが解説する「チームワークを高める3つのコツ」について、詳しくはこちら>>困難な状況に打ち勝つ「チームワーク」を高める3つのコツ

 

プロジェクトマネジメントに必要なスキル

プロジェクトマネジメントを効果的に行うにはさまざまなスキルが求められますが、特に必要と言われているスキルを挙げます。

◆ コミュニケーションスキル
プロジェクトを動かすのはあくまでも「人」です。メンバーとのコミュニケーションはもちろん、他部署と連携する際のコミュニケーション、上層部の理解と協力を獲得するためのコミュニケーション、取引先や協力企業とのコミュニケーションなど、プロジェクトマネージャーは常に人とコミュニケーションをとりながら、仕事を進めていく必要があります。

◆ 先を予測するスキル
例えば、どのようなときにミスが起きやすいのか、どのようなきっかけでコミュニケーションに齟齬が生まれやすいのか、現状から近い未来を予測することで、失敗を事前に回避できることは少なくありません。プロジェクトマネージャーには全体を俯瞰し、問題が起きそうな場合は先手を打って対策を打ち、プロジェクトをスムーズに進めていく力が求められます。

◆ QCDの管理スキル
どんなプロジェクトでも最終的な目標は、Quality(品質)、Cost(コスト)、Delivery(納期)を達成し、利益を生み出すことです。企業でプロジェクトを推進するうえで利益を生み出さないことには事業の継続自体が困難になってしまいます。プロジェクトマネージャーには利益を確保したうえでQCDをバランスよく把握し、コントロールするスキルが求められます。

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主なプロジェクトマネジメントの具体的な手法

プロジェクトマネジメントをスムーズに進行し、スケジュールやコストなどを管理しやすくする手法をいくつかご紹介します。

◆ PMBOK(Project Management Body Of Knowledge:ピンボック)
PMBOKは1980年代にアメリカで発表されたプロジェクトマネジメントの手法で、今では世界各国で使用されているものです。PMBOKの目的はQCDの管理であり、目標を達成するためのプロセスも含めてコントロールの対象としていることが特徴です。対象となるのは、スケジュール管理、品質管理、コスト管理などの10の知識エリアで、これらを「立ち上げ」「計画」「実行」「監視・管理」「終結」という5つのプロセスに分割します。「どのプロセスで何をすべきか」が明確化できるとされています。

◆ ガントチャート
Excelなどを使用し、縦軸にタスクを一つひとつ書き出して、作業名・担当者・開始予定日・終了予定日などを記入します。横軸には日時などを設定し、横軸の進み具合で各タスクの進行状況を見える化したものです。具体的にどのタスクが遅れ気味なのか、並行して進めるべきタスクは何か、などがひと目でわかり、適切な対策を打てる可能性が高まります。

◆ WBS(Work Breakdown Structure)
プロジェクト開始前にすべての工程で必要なタスクを洗い出し、管理しやすいレベルまで細分化したうえで、樹形図にまとめます。どの工程でどんなタスクや作業が必要なのか、最初にメンバー全員が把握することができ、優先順位を決めることができるとされています。WBSで洗い出したタスクにプロセスを加えたものが、ガントチャートです。

◆ PERT(Program Evaluation and Review Technique)
「前の工程が終わらないと、次の工程が始められない」という各工程の依存関係を整理し、フローチャートで表したもので、各工程の関係性が明確になるため、どの工程が重要なのか見極めることができると言われています。各タスクに必要な所要時間や人員を割り出し、フローチャートに見える化することで、プロジェクトのスムーズな進捗を図ります。特定の工程の所要時間が変化すると他の工程にも影響が出る可能性があるため、プロジェクト進行中に何度も繰り返し実施することがポイントです。

◆ CCPM(Critical Chain Project Management)
各工程やタスクの所要時間からバッファ(余裕)を取り除いた最短時間を割り出して、スケジュールを策定。別にプロジェクト全体のバッファを設定し、各工程やタスクの遅れが発生した場合はプロジェクト・バッファで吸収するものです。進捗の遅れとバッファの残り具合を可視化でき、全体スケジュールを管理しやすくなるとされています。同じ手法を予算策定でも活かすことができます。

 

プロジェクト遂行に管理ツールを活用してみる

前述の手法だけでなく、新規プロジェクトのマネジメントを行う際に役立つツールをご紹介します。

◆ 新規事業のプロジェクトにおけるアイデア発想から事業化まで一気通貫で進められる「StartDash」
SSAPではプロジェクトに携わる人に向けて、事業化支援アプリ「StartDash」を無料でご提供しています。チーム内のアイデア共有や進捗管理、分担作業などをサポートする「チーム機能」も用意。最大30人のメンバーに対応しています。StartDashをチームメンバー全員で使用することでメンバー間の情報共有や作業分担が円滑になり、事業の準備をさらに加速することが可能です。

詳しくはこちら>>「StartDash」

 

プロジェクトマネジメントに関する資格もあります

プロジェクトマネジメントに関する資格で、代表的なものに以下があります。

◆ プロジェクトマネージャー試験(PM)
独立行政法人情報処理推進機構が運営する試験で、特にITシステム開発プロジェクトを担当する人を対象としています。全体計画、予算、スケジュール、品質管理など、プロジェクトマネジメントを行う際に必要な体系的な知識やスキルを問う内容です。環境の変化やステークホルダーの要求に応えながら運営していくプロジェクトマネージャーの自己啓発を促すものです。

◆ PMP®(プロジェクトマネジメント・プロフェッショナル)試験
アメリカのプロジェクトマネジメント協会(PMI)が認定する国際資格です。プロジェクトマネジメントの知識・スキル・経験を測り、認定するもので、試験に加えて実務経験を示した職務経歴書などを提出する必要があります。3年ごとに更新する必要があり、その時点でのマネジメントの力量を証明するものと言えます。

 

プロジェクトマネジメントの理解や実践をSSAPが支援します

SSAPではプロジェクトマネジメントのさまざまなシーンで、必要な支援をご提供します。

◆ 新規事業創出のプロジェクトをあらゆる面からサポートしています
SSAPではプロジェクトマネージャーの育成支援や「PMO(プロジェクトマネジメントオフィス)代行サービス」をご提供しています。プロジェクト運営には企画、タスクの洗い出しと整理、スケジュールの可視化、工程管理など、さまざまな業務がありますが、すべてを経験済みのプロジェクトマネージャーはそう多くはありません。そこで経験豊富なSSAPのアクセラレーターが、プロジェクトマネジメントに関するさまざまな相談に対応します。プロジェクトの立ち上げ期であるアイデア創出からビジネスモデルの仮説構築、検証、事業計画書策定までのフェーズで、プロジェクトマネージャーに伴走・サポートし、短期間で成果を可視化します。

◆ 【事例紹介】ライオン株式会社の新規事業プロジェクトマネジメントに伴走
SSAPはライオン株式会社が手掛けるお口のフィットネスサービス「ORAL FIT(オーラルフィット)」に対し、事業化のための体系的なノウハウや知見を提供し事業化の実現を支援しました。「ORAL FIT」は50~60代の口腔機能の衰えに対応するお口のフィットネスアプリで、自宅で1日10分、2カ月間トレーニングを続けることで咀嚼力や滑舌、嚥下機能などの改善が期待できるものです。SSAPではアクセラレーターが初期フェーズの全体整理からマーケティング、コミュニケーションデザインなど、プロジェクト全体をサポート。第三者視点でプロジェクトを分析することで、「内側に入り込んだ伴走」を提供し、チーム内の認識の調整やペルソナのすり合わせなどを行いました。ORAL FITは2022年11月に一般発売を実現しました。

Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、760件以上の支援を25業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2024年10月末時点)

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