2021.12.28
Sony Startup Acceleration Program 新規事業の基礎知識

ポジショニングマップの作り方

新規事業を創出するときにも、参入予定の市場の状況を前もって把握し、目指すべきポジションを決めておくことはとても重要です。
ポジショニングとは、市場において自社の立ち位置を定め、獲得していく活動を指します。自社の優位性はどこにあるのかを明らかにする手法として、「ポジショニングマップ」があります。新規事業の立ち上げにおいて事業の優位性を見つけることは欠かせません。ここでは、例を出しながらポジショニングマップの作り方を解説します。

ポジショニングマップを作る前に

ポジショニング(positioning)とは、「位置(ポジション)を決める」という意味です。マーケティングの世界では、競合他社との位置関係を明確にしたうえで、差別化すべきポイントを探し出し、自社の立ち位置を確かなものにする活動を指します。その上で自社が持つ独自性を効果的に顧客にアピールし認識してもらい、競合に比べ優位に立つことが目標となります。

「ポジショニング」について詳しくはこちら>>#43ポジショニングとは?

 

ポジショニングマップとは

ポジショニングマップとは、マーケティング戦略のフレームワークの一つで、タテ・ヨコの2軸で作られたマトリクス上に、自社・競合他社の製品・サービスを配置した2次元の図表です。マップとして配置することで、市場の全体像や参入各社の製品の立ち位置が視覚的に確認しやすくなります。
ポジショニングマップの2つの軸に設定するのは、「顧客のKBF (購買決定要因)※に大きな影響を与える要素」で、この軸の設定が有効なポジショニングマップを作るうえでの重要なポイントとなります。

※KBF(Key Buying Factor:購買決定要因)とは、購入対象となる製品の価値や価格の中で、顧客が商品の購買を決める際に、重視する要素のこと。例えばコンパクトデジタルカメラなら、ボディサイズ・価格・解像度・レンズの画角・カラー展開・重量などがKBFとしてあげられます。

 

ポジショニングマップを作る目的

自社・競合他社が市場においてどのようなポジションを占めているかを視覚的に表現したポジショニングマップは、その製品・サービスが今後どのようなマーケティング戦略をとるべきかを決めるのに役立ちます。他社と差別化できる独自のポジションはどこにあるのかを見極めることで、既存製品やサービスのマーケティング戦略を見直すときはもちろん、新規事業の立ち上げ時や新製品開発時にも活用できます。

マーケティング戦略の重要性について詳しくはこちら>>#44マーケティング戦略で重要な「ポジショニング」について解説

 

ポジショニングマップの作成手順

これまで、ポジショニングマップについての解説をしてきました。ここからは、実際に作る方法をご紹介します。おおまかな流れは以下のとおりです。

1. ターゲット層のニーズ、KBF(購買決定要因)を洗い出す
2. 競合を分析し比較する
3. タテ・ヨコ2つの軸を決定する
4. マトリクスに自社・競合をマッピングする

では、順に解説していきます。

1. ターゲット層のニーズからKBF(購買決定要因)を洗い出す
最初のステップとして、その製品に対する顧客のKBFを洗い出します。次に、その中でも顧客が特に重視するKBFを抽出します。KBFの洗い出し方、また最重要KBFの見極め方については、このあと詳しく解説します。

2. 競合を分析し比較する
抽出したKBFについて、自社製品とライバルとなる他社製品とともに分析・評価します。

抽出したKBFまとめた表

3. タテ・ヨコ2つの軸を決定する
ポジショニングマップをつくる上で、KBFの中からどの要素を軸に設定するのかは非常に重要です。自社製品の優位性を確認したい場合は、抽出したKBFのうち、自社製品がライバルに比べて優位にあるものを軸として選びます。より客観的に自社の置かれた立場を評価したい場合は、KBFのうち最も顧客の行動に影響すると思われる要素を抽出するようにします。

4. マトリクスに自社・競合をマッピングする
軸を設定したマトリクスに自社製品と他社のライバル製品をマッピングしていきます。完成したポジショニングマップは、今後の施策や事業開発、製品開発に落とし込んでいきます。

ポジショニングマップ

活用できるポジショニングマップにするには?

これまで、ポジショニングマップの作り方を解説してきましたが、実効性のあるポジショニングマップをつくるには、いくつか注意したいポイントがあります。

◆ 2つの軸の相関性はできる限り低くする
まず、2つの軸を設定するとき、もともと相関性の高い要素を軸に設定しないようにすることが大切です。例えば、「価格の高低」と「性能の高低」といった要素を軸に設定すると、価格が上がれば一般的に性能も高くなるため、右肩上がりに製品がマッピングされるだけで、差別化要素を見つけるのは難しくなります。これを防ぐためには、軸を選定する際は、「2つの要素が独立した関係のもの」を意識することをおすすめします。

◆ 重要度の高いKBFを意識する
ポジショニングマップを作っていると、競合との関係性を意識しすぎるあまり、「自社がいかにライバルと差別化を図れるか」という意識が強くなり、自社製品の得意分野ばかりに偏るなどバイアスのかかった軸を選んでしまうことがあります。優位性を探すことが主な目的であればかまいませんが、より客観的に市場を分析したいときは、消費者ニーズを意識して、その購買行動を左右できる要素を比較できる軸を設定します。

 

よく使われる軸の要素例

ポジショニングマップの作成において、軸をどう設定するかが重要なことはこれまで述べてきた通りです。ここで、代表的な軸の設定の仕方を紹介します。

1. 機能や性能に関連する軸
その製品の機能や性能は、最も比較しやすい要素です。例えばノートパソコンであれば、「画面サイズ」や「重量」、「処理速度」などが軸となりえます。ただし、やや専門的な内容が含まれる場合は、そのような専門知識を持つ客層がターゲットの製品である場合にのみ適用するなどの検討が必要です。

2. 製品・サービスの価値に関連する軸
その製品が持つ本質的な価値は、比較に値する要素です。例えばマッサージチェアであれば、「高級志向か大衆志向か」「リラクゼーション重視か機能性重視か」といった軸が考えられます。先述したとおり、単純に「価格と品質」といった相関性の高い軸を選ばないよう注意が必要になります。

3. 用途に関連する軸
その製品がどのようなシーンや用途で使われるかも、ポジショニングマップの軸となります。例えば、ワイヤレスイヤホンであれば「スポーツシーンで使うのか普段使いか」などがあげられます。

 

ポジショニングマップを使って何を見るか

ポジショニングマップは作成して終わりではなく、実際のマーケティング活動や新規事業開発に役立ててこそ意味があります。では、ポジショニングマップをどのように分析すれば、自社や自社製品の課題を発見できるのかをみていきます。

◆ 自社製品の魅力を分析する
適切なポジショニングマップを作成することで、自社製品が顧客に向けてアピールすべき「魅力」を発見しやすくなります。自社の広告戦略が、顧客が感じている魅力とずれていないか確認し、今後の戦略に落とし込んでいきます。

◆ 自社の隠れた優位性を見つける
価格や機能、性能などさまざまな軸を用いたマップを複数作ることで、自社製品が優位なポイントを多面的に確認することができます。一見目立たない特徴も、スポットライトの当て方しだいで自社の強みとして押し出せるかもしれません。

 ◆ 狙うべき空白領域を見つける
これから新規事業をスタートさせる場合や新製品を開発する時などは、ポジショニングマップによってまだ他社が進出していない空白領域(ブルーオーシャン)を発見できる可能性があります。自社が狙っているポジションにすでに他社(製品)が進出している場合も、その内容を詳しく整理、分析し、さらに上をいく事業や製品開発を行うための判断指標にもなります。

イメージ図

 

ケーススタディ「ワイヤレスイヤホン」の場合

では、実際にポジショニングマップを作ってみます。例としてワイヤレスイヤホンを取り上げます。
(※こちらのマップサンプルは実在する商品・メーカーとは関係ありません。)
 

1. ターゲット層のニーズ、購買決定要因(KBF)を分析する
ワイヤレスイヤホンには、従来のコードタイプのイヤホンと同様に「サウンドの良さ」が求められるほか、ワイヤレスならではの「充電にかかる時間」や充電後の「再生時間」がポイントになります。また、使用中に落下する可能性もあるので「装着性」も重要です。ユーザー像を考えると、ファッション性やデザインもKBFとなるでしょう。このように、まず考えられる限りのKBFを洗い出し、さらに、その中からターゲット層が購買決定をすると考えられるKBFを決めます。
ここでは、「価格」「重低音サウンド」「高音質」「装着性」「充電時間」「再生可能時間」「コンパクトさ」「ブランドイメージ」「デザイン」を選んでみました。

2. 競合を分析し比較する
選んだKBFを表にして、他社製品と比較します。

ワイヤレスイヤホンのKBFの図

3. タテ・ヨコ2つの軸を決定する
次に、顧客重要KBFの中から、軸となりうる要素を選びます。ワイヤレスイヤホンはランニングやジムでのトレーニング時に使われることも多いため、「スポーツ用途」なのか「音楽鑑賞用」なのかをまず軸としてみました。また、このデバイスの重要な要素である音質も好みが分かれ、重低音が響くサウンドが好みの人とバランスの良さを重視する人がいます。そこで、「高音質重視」と「重低音重視」の軸を設定してみました。

4. マトリクスに自社・競合をマッピングする
自社と他社の製品をマッピングしてみたのが下の図です。自社製品が差別化を図ることができるのは、「音質と音楽鑑賞を重視するユーザー」であることが見て取れます。さらに、新たに次期製品を開発するのなら、高音質とスポーツ用途で使いやすいという特徴をあわせ持つデバイスにするなどの指標にもなります。

ポジショニングマップ

 

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他にも新規事業立ち上げ時に役立つフレームワークをご紹介しています>>#06新規事業の立ち上げ時に活用したいフレームワーク25選

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