2021.03.27
Sony Acceleration Platform 新規事業の基礎知識

オープンイノベーションの成功事例とは?(SSAPの事例より)

オープンイノベーションは海外で盛んでしたが、いまや日本国内でも、大企業、中小企業、ベンチャー企業など企業規模にかかわらず、オープンイノベーションに取り組む会社が増えました。オープンイノベーションにより誕生した製品やサービス、技術、そしてビジネスモデルなどについての話題をメディアで目にする機会も増えたかもしれません。特にAIなど技術のめざましい進化により、イノベーションは活発化しているといえます。
また、オープンイノベーションにより新たに生まれたテクノロジーや製品・サービスを、クラウドファンディングで支援している方もいるでしょう。海外だけでなく日本国内でも誰もがオープンイノベーションに参画できる時代になりました。
これらの企業はどのようにオープンイノベーションに取り組んできたのでしょうか。Sony Startup Acceleration Program(以下、SSAP)が支援してきた様々な取り組みの事例もまじえ、オープンイノベーションの成功事例についてご紹介します。

オープンイノベーションとは

2003年、ハーバードビジネススクールのヘンリー・チェスブロウ博士が提唱した概念が、「オープンイノベーション」です。事例をご紹介する前に、まず比較対象である「クローズドイノベーション」との違いなど、定義について解説します。

オープンイノベーションについて詳しくはこちら>>#12オープンイノベーションのメリットを理解して事業の成長を加速させよう

◆ オープンイノベーション
オープンイノベーションとは、社内社外の垣根なくアイデアやノウハウ、技術、知識を取り入れ、革新的な製品やサービス、新規事業、ビジネスモデルなど新たな価値を創出するイノベーション手法のひとつ。社内のリソースだけでなく外部のリソースを活用する、つまり他社と連携しながら、新たなアイデアや技術開発を通じて、自社内だけでは生み出しづらかった新たな価値創造をするのがオープンイノベーションの目的です。

◆ クローズドイノベーション
一方、資金や人材、情報、技術などの経営資源や研究開発などのすべてを、外部リソースに頼らず自社内で完結させるのが、クローズドイノベーションです。自前主義とも呼ばれ、世界に誇る日本企業のものづくりの成功は、クローズドイノベーションによって支えられてきたといわれています。オープンイノベーションに比べると、自社内ですべてまかなうため時間もコストもかかる点がデメリットだと考えられています。

 

オープンイノベーションが注目される理由

近年、IoTなどの技術開発が急速な進化を遂げ、普及したことにより社会に様々な変化をもたらしました。市場のグローバル化、コモディティ化、さらに消費者のニーズや価値観も多様化したことで、プロダクトサイクルの短期化も一気に進みました。このような加速化、多様化した市場では、スピードが求められます。そのため時間もコストもかかる傾向にある自社開発だけに頼っていては、事業の成果が得られにくくなってきました。

こうした課題は日本国内の市場だけでなく、世界の市場でも同様のため、オープンイノベーションが大きな注目を浴びるようになりました。これらの理由から、ビジネスにおいてオープンイノベーションの導入は経営戦略としても欠かせない要素になりつつあるといえます。

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オープンイノベーションのSSAP事例

スタートアップの創出と事業運営を支援するプログラムSSAPは2014年、ソニー社内の新規事業開発を目的にスタートしたプロジェクトでした。5年をかけて社内起業の仕組みを整備。様々な新規事業をゼロから創出してきました。
その間、共通の課題を持つ社外の方々から多数のお問い合わせをいただき、2018年10月1日よりこれらの仕組みを社外の方にもご利用いただけるプログラムへと展開させました。より一層、多くのアイデアやノウハウ、技術、人材が交流し新たなオープンイノベーションの実現を目指しています。これまでの支援、取り組みから、6つの事例をご紹介します。

SSAPの支援事例① 共創パートナーとの協業を通じた宇宙感動体験事業の創出
ソニー・東京大学・JAXAは、「宇宙感動体験事業」の創出に向けて三者で共創契約を締結し、ソニーのカメラ機器を搭載した人工衛星の開発を開始することを発表しました。
プロジェクト名を「STAR SPHERE」とし、超小型衛星システムおよび超小型推進系の開発実績を持つ東京大学と、衛星運用技術と宇宙事業ノウハウ・知識をもつJAXA、そしてイメージングやセンシング技術に強みを持つソニーの3つの組織で共創。
地上から自由にリアルタイムで遠隔操作できる人工衛星上のカメラシステムを構築し、今までは実現できなかった宇宙空間の映像を宇宙飛行士さながらのリアリティある視点で人々に届けることを目指しています。

Sony Space Entertainment Projectのキービジュアル

このプロジェクトは、もともと2017年にJAXA協力のもとソニーの有志社員が開催した「宇宙ビジネス」講演会で知り合った仲間から、ボトムアップ的に生まれました。現在は、SSAPが運営するウェブマーケティングサイト「First Flight」を通じて、新たな時代を共に切り開くクリエイターやビジネスパートナーの募集を開始。業種の垣根を超えて様々な想い・才能・技術をつなげ、宇宙の新しい価値創出を目指す人たちと共にパートナーとして、新たな事業を共に創出することが目的です。

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SSAPの支援事例② SSAP・京セラ・ライオンがタッグ!音が出る子どもの仕上げ磨き用歯ブラシ「Possi」誕生ストーリー
ブラシの振動による骨伝導技術で、歯磨き中に音楽が聞こえるというユニークな製品「Possi」は、京セラ株式会社(以下、京セラ)のコア技術である圧電セラミック素子の技術を活用して、SSAPとのオープンイノベーションにより誕生した製品です。
当初は、京セラ社内だけで「音の鳴る歯ブラシ」の開発も検討されていましたが、事業化するには、まず安心して子どもの口に入れられる歯ブラシを提供できなければならないと、本格的なパートナー探しを開始。ライオン株式会社と出会い、ビジネスパートナーとなりました。

ライオン株式会社 萩森敬一さん、京セラ株式会社 稲垣智裕さん、SSAP 宮崎雅

「Possi」は2018年10月に事業開発をはじめ、約1年半後にクラウドファンディングの形で市場導入を実現。多くの反響を受け、2020年12月に京セラにて正式に事業化が決定しました。顧客の声をもとに事業開発した後も、伝えるべき製品の利用メリットを整理して売上拡大を目指している成功事例です。

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SSAPの支援事例③ ソニーとエムスリーが手を結び目指した、医療の質向上と医療現場の負担軽減
医療・ヘルスケア分野においては、2020年12月から新たな取り組み「COMPASS Project(コンパスプロジェクト)」がスタートしています。エムスリー株式会社(以下、エムスリー)の医療・ヘルスケア分野における知見や事業開発力と、ソニーのテクノロジーやエンタテインメント分野で培ったノウハウや技術を掛け合わせ、協業することで、医療現場の課題解決と持続可能な事業の創出を目的としています。

COMPASS Projectのキービジュアル

ソニーネットワークコミュニケーションズ株式会社の世界最小・最軽量(※1)コミュニケーション通信端末と見守りサービス「amuelink(アミューリンク)」を活用したアイデア募集や、医療・ヘルスケア分野で、事業創出を目指す企業の事業化や検証の支援が事例としてあげられます。
コロナ禍で、あらためて医療現場で働く方々の大変さが注目され、医療現場の課題解決を実現できるイノベーションが求められるなか、よりよい環境の創造を目指しています。
※1:音声機能付きLTE GPSトラッカーとして世界最小・最軽量 (2020年12月10日広報発表時点 ソニー調べ)

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SSAPの支援事例④ 技術の種から社会課題を解決する製品へ。アイデアコンテストを通じた新たな用途探索支援
45年以上にわたり太陽電池を研究開発してきた京セラの保有する技術「薄型軽量太陽電池モジュール」をテーマに用途アイデアを募集するコンテストを、SSAPは実施しました。
この技術は、京セラの従来品と同等の出力、耐久性のまま重量は1/4以下、薄さは1/10以下と大幅な薄型化・軽量化を実現。さらに製品を曲げることにも成功しました。
太陽電池の“軽い”“薄い”“曲がる”という特徴を活かした新しい用途の開拓を目的に、自社内だけでは発想しきれなかった新たなアイデアや使い方を、アイデアコンテストを通じて、業界を問わず広く社外から募集し、注目されました。

京セラのプロジェクトメンバーとSSAPによるディスカッションの様子(2020年2月撮影)

コンテストには多くの応募があり、2021年2月1日、審査員特別賞3名、アイデア賞10名のアイデアが採用されました。企業で開発された優良な技術を社会に広く公開することでオープンイノベーションを促進し、技術の新たな用途を発掘するという、まさに社外の新しいアイデア・発想を取り入れ成功した、オープンイノベーションのよい事例といえます。

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SSAPの支援事例⑤ 「産学協創エコシステム」の発展を!東京大学で社会連携講座を開設
企業と大学・学生が連携し、スタートアップを創出する「産学協創エコシステム」の発展を目指し、SSAPは2019年度に東京大学と社会連携講座を開講しました。本講座では、学生が実際にアイデアをカタチにし、事業にしていく一連の事業開発プロセスを実践的に学び、スタートアップに必要な考え方やスキルの習得を目的としています。
2019年12月にはオーディションも開催され、選出された2チームの案件に対して、事業化支援サービスを提供しています。2020年4月からはSSAPがハブとなり、東京藝術大学との連携も促進し、さらなるオープンイノベーションを加速させています。

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SSAPの支援事例⑥ プロトタイピングを中心に、慶応大学医学部発のスタートアップへの事業化支援
慶応大学医学部発のスタートアップ企業、株式会社グレースイメージングに対し、プロトタイピングを中心としたサービスを提供。ソニーのモノづくりのノウハウを最大限に活用し、アイデアを可視化し、開発スピードの高速化と高クオリティを実現しました。
東京都支援事業「先端医療機器アクセラレーションプロジェクト(AMDAP)」の支援が決定するなど、SSAPのプロトタイプ開発等の支援を経て、スタートアップのアイデアの社会実装や事業拡大をより加速させています。

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SSAPサービス紹介
ご紹介したとおりSSAPでは、会社、大学などの公的教育機関、専門の知識を有する研究機関、そしてアイデアコンテストなどのイベントを通して一般の方、いわゆる顧客側も巻き込んで知見やアイデアを提供してもらうなど、様々なオープンイノベーションを支援しています。
さらにSSAPのサービスとして提供している無料のWebアプリ「StartDash」は、チェックリスト形式の質問に回答するだけで、事業アイデアに不足なものはないか、やるべきタスクは何かなどを事前に把握できるものです。
オープンイノベーションは、社内外のプロジェクトメンバー間で齟齬が生じないよう、認識のすり合わせが重要となります。StartDashを活用し、ステップに沿ってドキュメント化することにより、課題の共有にも役立ちます。オープンイノベーションの機会を様々な立場の方に提供できるきっかけになればと考えています。

無料の事業化支援Webアプリ「StartDash」ついて>>詳しくはこちら

 

オープンイノベーションで自社に新しい風を

冒頭でもご説明したように、物事が加速化・多様化する現代社会において、ひとつの会社や組織、また個人だけで実施できることは少なくなりつつあります。オープンイノベーションという手法いわば戦略によって、多くの人を巻き込んでいくことが成功につながると考えられています。
別の視点では、一個人が思いついたアイデアであっても、事業として実現できれば、社会課題を解決できる可能性があるともいえます。さらに、このようなアイデアの実現があらゆるところで起きれば、世の中の課題がひとつひとつ解決され、持続可能な社会の実現へもつながっていくかもしれません。
オープンイノベーションによって社会のあらゆる場で、人とアイデアが結合し新しい事業が創出される。そんな社会の実現をSSAPは支援しています。SSAPの支援を活用して新しい取り組みや事業拡大のスピードアップにお役立てください。

 

SSAPのオンライン無料説明会を開催中

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)では、SSAPに少しでもご興味をお持ちの方に向けて、無料の説明会を実施しています。新規事業ご担当者の方に向けた総合説明会をはじめとして、参加者のみなさまの関心にテーマを絞った説明会もご用意しています。まずはお気軽にご参加ください。

Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、760件以上の支援を25業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2024年10月末時点)

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