2022.10.31
Sony Acceleration Platform 新規事業の基礎知識

フィジビリティとは? 意味や目的を解説

新規事業を進める際には、「その事業は本当に実現できるのか」「実行できる可能性はどれほどあるのか」といった検討が必要です。その手法が「フィジビリティスタディ」です。ここではフィジビリティスタディの一般的な概要をご説明します。

「フィジビリティ」とは

「フィジビリティ(feasibility)」とは「実行できること」「実現できる可能性」を表す英語で、日本語では事業の「実現可能性」「実行可能性」「実現見込み」などと訳されます。

◆ 主に使われる場
「フィジビリティ」というビジネス用語は、新規事業開発や新商品・サービス開発などの現場でよく使われ、企画中のビジネスで「実現できる可能性がどれぐらいあるのか」を指しています。

◆ 「フィジビリティ」と「フィージビリティ」の違い
「フィジビリティ」は英語の発音から「フィージビリティ」と表記されることもあります。官公庁の文書などでは「フィージビリティ」が使われているケースもあるようです。

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フィジビリティスタディとは

「フィジビリティスタディ」とは、新規事業や新商品・サービス開発の前に実現可能性や採算性を調査するもので、「実行可能性調査」「実現可能性調査」「事業化調査」などの日本語に訳され、「FS」「F/S」といった略語が使われることもあります。

 

フィジビリティスタディの目的

過去に自社が経験したことがない事業を立ち上げる場合や、これまで自社で取り扱ってこなかった商品・サービスなどを企画する場合、そのプロジェクトが本当に実現できる可能性があるのか、継続して利益を生み出すことが可能なのか、事前にフィジビリティスタディを行うことでビジネスモデルの解像度を高め、リスク回避ができるといわれています。また、調査・検証を通じて明らかになった課題を解決することで、よりビジネスが成功へと近づく可能性があります。

 

フィジビリティスタディの歴史

フィジビリティスタディが最初に行われたのは1933年。アメリカの当時の大統領フランクリン・ルーズベルトによるテネシー川流域開発公社(TVA)の設立時だといわれています。同社は世界恐慌への対策として設立され、32か所のダム建設を含む大規模プロジェクトが展開。このプロジェクトのフィジビリティスタディでは、技術面・経済面・政治面などで幅広く調査が行われました。TVAの設立によって、失業率の改善や電力供給の向上、地域振興などに好影響があったとされています。

 

フィジビリティスタディとPoCの違い

フィジビリティスタディと混同されやすいビジネス用語に「PoC(Proof of Concept)」があります。「PoC」は「ポック」または「ピーオーシー」と読み、「概念実証」と訳されることもあります。

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◆ PoCとは何か
PoCとは一般的に、新商品開発の際、実際の形に近いプロトタイプを使って技術面やニーズの検討などを行うものとされています。消費者のニーズを満たす商品になっているのか、技術面や費用面で改善する部分はないのか、アーリーアダプターへのデモンストレーションなどを通じて検証していきます。
一方、フィジビリティスタディはプロジェクトそのものの実現可能性を調査・検証するものと捉えるのが一般的です。

【SSAPのサービスメニュー】PoC実行についてはこちら

◆ 事例紹介:Sony Startup Acceleration Program(SSAP)ではフィジビリティの検証やPoCの実行を支援しています
SSAPの支援は大企業からスタートアップまで、規模も業種も多岐にわたります。一例として、慶応義塾大学医学部発のベンチャーである、株式会社グレースイメージングを支援しています。同社は独自の筋肉解析技術を活用して、アスリートの疲労を可視化するサービスを開発しており、SSAPではそのフィジビリティ検証からプロトタイプ開発までを一気通貫でサポート。ユースケースを検討し、商品仕様と検証を重ねることで、無駄のないプロトタイプ開発を実現しました。取り組みが認められ、2021年には慶應イノベーション・イニシアティブから出資を獲得し、東京都先端医療機器アクセラレーションプロジェクトの補助事業対象者に選定。治験に向けてSSAPが支援を続けています。

◆ フィジビリティスタディの要素
フィジビリティスタディには、「業界・市場」「技術面」「財務面」「運用面」の4つの要素があると考えられています。「業界・市場」は外的な要素に、「技術面」「財務面」「運用面」は内的な要素に分けることができます。

  • 業界・市場
    政治・経済・社会の動向、法規制の現状や法整備の方向性、さらに業界の動向や市場予測、競合先の分析など、外部の要因を調査し、プロジェクトがビジネスとして成立する可能性を予測するものです。
  • 技術面
    新たな商品・サービスを企画する際、自社の技術で生産・提供することが可能なのか、市場ニーズに応えられるだけの生産・提供能力があるのか、継続的に生産・提供することができるのか、社内の技術面から評価します。施設・設備面だけでなく、技術力のある人材を必要なだけ確保できることも重要な評価要素だといわれています。
  • 財務面
    そのプロジェクトをスタートさせることでどれほどの資金が必要になるのか予測し、財務面で実行可能かどうか、評価するものです。企画から事業化までにかかる投資額や、それによりどれほどの利益を得ることができるのか、投資収益率(ROI)を予測します。
  • 運用面
    スタートさせたプロジェクトを最後まで遂行することができるのかを評価します。プロジェクトを完遂させるために社内で協力できる組織構造になっているのか、人的リソースは充分か、運用面での知識やノウハウを備えているか、さらに運用面で適用される法的要件についても精査します。

◆ フィジビリティスタディはどのタイミングで行うのか?
フィジビリティスタディはプロジェクトを正式に発足させるかどうか判断するためのフレームワークとして利用されるのが一般的です。そのため、プロジェクトがまだ計画段階にあり、具体的な作業が発生する前に実施することが望ましいとされています。まだ大きな開発コストがかかっていない時点で実現可能性を評価することで、不必要な投資や作業、人の動きを抑えられます。このとき、プロジェクトによっては、自社の強み・弱みを外部環境と照らし合わせながら分析するSWOT分析を実施することもあります。

SWOT分析など、マーケティング環境の調査・分析に役立つフレームワークについてはこちら>>新規事業の立ち上げに役立つフレームワーク25選

◆ フィジビリティスタディの進め方
フィジビリティスタディに要する期間はプロジェクトの規模や内容により異なり、短いもので数週間~数か月、長いものでは数年に及ぶケースもあります。一般的には、まず「課題の明確化」から始め、「要求事項のリスト化」「代替案の明確化」「結果の評価」へと進めていきます。

フィジビリティスタディの進め方ついてはこちら>>新規事業におけるフィジビリティスタディの進め方

 

評価項目を明確にすることが重要

フィジビリティスタディを実施する際は、事前に評価項目を決定しておくことが重要だとされています。評価結果は社内や取引先企業、投資家などを説得する重要な情報となり得ます。複数の評価項目を設定した場合には、項目ごとに評価結果の根拠を明示し、総合的に判断します。

◆ フィジビリティスタディの評価領域
フィジビリティスタディの評価領域には主に以下の項目が挙げられます。

・技術能力
・予算
・法的要件
・採算性
・損失やリスク
・運用上の実行可能性
・プロジェクト実施期間

特に、実現可能かどうかを判断するためには、技術力・予算・人材リソースの充足度の確認が重要だといわれています。

 

フィジビリティの検証など、新規事業にまつわることならSSAPにお任せください

SSAPでは新規事業開発における「フィジビリティ検証」などの支援を行っています。フィジビリティスタディは評価項目が曖昧なまま進めると、それ自体が目的化してしまい、プロジェクトがなかなか前へ進まない事態に陥るケースがあります。SSAPにはフィジビリティスタディをはじめとした、各種フレームワークに精通したアクセラレーターが多数在籍しています。

Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、760件以上の支援を25業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2024年10月末時点)

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