2021.03.30
Sony Startup Acceleration Program 新規事業の基礎知識

これだけは押さえておきたい、起業のポイント

「スタートアップ」という言葉が浸透し、近年では、幅広い年齢層で起業をする人が増えています。起業をしたいと思ったら、何をすればよいのでしょうか。また、気をつけたいポイントは?起業に関して知っておきたいことをまとめました。

起業のメリット・デメリット

起業にはメリットもデメリットもあります。起業を検討するときには双方を理解しておきます。

起業の主なメリット
会社勤めをされている方にとって、会社から独立して起業することは「会社による制約がなくなること」といわれています。自分のやりたいことを事業内容にでき、時間の使い方も自分でコントロールできます。企業に所属していると自分のやりたいこととは直接関係しない業務で時間を取られることもありますが、起業すると自分の事業に関係ある業務だけに集中することができるといわれています。また、定年という枠組みもないので自分が働きたいと思う限り、働き続けることができるかもしれません。金銭面も自身の裁量で決められ、事業の利益が収入に直結します。頑張り次第で収入を増やせる可能性が広がります。

起業の主なデメリット
こちらはメリットの裏返しともいえますが、「会社の後ろ盾がなくなること」になります。起業してすべて自分で決められる裁量を得るということは、会社の業績は自分の経営手腕次第となり、責任とプレッシャーは間違いなく増大します。給与という安定した収入源がなくなるため、事業が軌道に乗るまでは収入が大きく減るリスクもあります。また、起業することによって、場合によっては会社員のときよりも「社会的信用」を得にくい場面があるかもしれません。たとえば、住宅ローンやクレジットカードの審査が厳しくなるといったことです。会社員と同様の社会的信用を築くには、数年にわたって事業を安定して経営することが必要といわれています。

 

実際に起業して「よかったこと」「苦労していること」

では、実際に起業した人の声を見てみます。「起業と起業意識に関する調査」(※1)によると、起業して自分の事業を始めてよかったことは、「自由に仕事ができた」が最多となっており、先に述べた起業のメリットを実感していることが分かります。
一方で、「事業を行ううえで問題だと感じていること」については「売り上げを安定的に確保しづらい」ことが上位で、事業を安定して経営することの難しさが読み取れます。

※1「2021年度起業と起業意識に関する調査」(2022年1月:日本政策金融公庫総合研究所調査)
事業を始めてよかったこととして「自由に仕事ができた」という回答が最多(57.9%)であった
事業を行ううえで問題だと感じていることとして、「売り上げを安定的に確保しづらい」という回答が最多(47.6%)であった

 

また、起業に関心を持っていても、実際に起業する人は一部に留まっています。起業関心層がまだ起業していない理由に「自己資金が不足している」がトップに上がっており、 起業に踏み切れない理由は金銭的、経済的な要因がネックになっていると読み取れます。

まだ起業していない理由として、「自己資金が不足している」という回答が48.6%で最多であった
 

起業家が増えているとはいえ、調査データをみると起業が簡単ではないことが伺えます。起業には事前準備が欠かせません。知識を持ち、きちんとした事業計画をたてることが成功につながるといわれています。

 

起業を成功に導くポイントと失敗を避けるために必要なこと

成功のポイント
起業で成功するために必要なことは色々ありますが、ここでは起業を始めるにあたって大切なことを一部ご紹介します。

  • 【1】 起業の目的を明確にすること
    起業する目的は何でしょうか?「なぜ、起業するのか」という理由を突き詰めてみることをお勧めします。起業することで、どんな自分になりたいのか、社会に何を提供したいのか。自分が実現したいこと(=目的)を設定することが、起業のスタート地点です。そして設定した目的が「本当に自分が実現したいこと」であるかが重要です。起業目的は事業の軸となる大切なものですので、事業を進めていくうえで困難が現れたときに、立ち戻る原点となるでしょう。揺るぎない信念を持っていることが大事だといわれています。
  • 【2】事業計画を立てること
    起業の内容を頭に思い描くだけではなく、具体的な計画に落とし込むことが必要です。顧客は誰か、どのように収益を上げるのかなど、一つひとつ具体化していきます。事業計画は地図のようなものです。何が足りないのか、何をすべきかが分かり、これを詰めていくことで夢の形が明確になり、実現性が高まります。
    「事業計画書」は事業の全体が可視化されるので、融資を受けるときにも役立ちます。作成するにはこちらの記事をご覧ください。>>起業に欠かせない「事業計画書」とは
  • 【3】事業の強みを知ること
    自分の事業が扱う商品やサービスのセールスポイントは何でしょうか?「強み」がわかればビジネスに勝算があるのかを考える際に役立ちます。事業計画を立てるときには、強みを考え抜くことが重要です。
  • 【4】情報をインプットすること、学ぶこと
    自分の起業したい分野(業界)の情報、知識を得ることはもちろん、モノやサービスなどの商品を売るための知識として、マーケティングについても理解を深めておくと、経営によい影響をもたらします。
  • 【5】相談先を持つこと(人脈を作る)
    事業経営をしていくと、自分一人では解決できない問題が出てきます。そういうときに頼れる相談先を持っていると大きな助けになるでしょう。また、人との出会いも意識的に増やしてみることをお勧めします。人脈を広げることで新しい取引が始まったり、良き助言者と出会えたり、ビジネスの可能性が高まるでしょう。

起業の失敗を避けるために必要なこと
失敗を避ける、言い換えると事業を継続していくために必要なことになります。

  • 【1】ニーズの検証をする
    多くの人から求められるアイデアだと思っていても、思い込みにすぎないかもしれないためどんな課題があるのか、ニーズが本当にあるのかを検証します。方法としてはターゲットへのインタビューなどがあります。
  • 【2】コスト意識を持つ
    資金の問題は事業継続できなくなった原因の上位にあがっています。事業では常にコストを意識することが欠かせません。特に立ち上げ時期には、売上よりも支出のほうが上回る期間が少なからずあります。資金計画はシビアに立てる必要があります。

<コラム>起業に失敗した理由の1位「ニーズがなかった」

CB Insightsが実施した調査「失敗したスタートアップ101社」(※)によると、失敗理由のトップは、"NO MARKET NEED"「市場ニーズがなかった」でした。失敗したスタートアップ企業の実に42%が該当しており、事前に「ニーズの検証をすること」がいかに重要であるかが分かります。また、2位は”RAN OUT OF CASH”「資金が尽きた」となっています。

※ 出典: CB Insights(https://www.cbinsights.com) / The Top 20 Reasons Startups Fail November 6, 2019付け記事より

市場ニーズがなかったという理由は、とくにプロダクトアウトの時に陥りやすい失敗といわれることがあります。たとえば「画期的な技術を開発した」ときは、画期的であるがゆえに、市場ニーズをとらえないまま事業を進めてしまうことがあります。ところが顧客は一向に増えず、そこで「市場ニーズがなかった」ことに気づくことになります。そうならないために客観的な目線を持つことが欠かせません。周りの人の意見やユーザーへのアンケートなど、第三者視点でニーズを検証することが必要です。

 

起業の仕方をイチから解説!

ここからは、具体的な起業の仕方について解説します。

起業アイデアを考える

商品・サービスの見つけ方
最初に課題を見つけます。社会問題を解決したり、困っている人の助けになったりするものはニーズがあるためビジネスにつながりやすいといわれています。普段の生活を見つめることで、自分自身や身近な人が困っていることなどから課題が見つかるかもしれません。見つけた課題を解決することが価値となり、ビジネスの種になります。
日々のニュースをチェックして情報をつかむことも重要です。とくにコロナ禍など、社会構造に大きな変革が起きたときには、新しいビジネスが生まれやすい環境だといわれています。

顧客は誰?
その商品やサービスが誰に向けてのものなのかを考えます。顧客を明確にすることで、よりそのビジネスの進むべき方向が定まってきます。
顧客とは、商品・サービスに対価(お金)を払う個人または法人などを指します。

顧客に提供できる価値は何?
あなたの商品・サービスが、顧客のどのような課題を解決できるのかを考えます。

既存商品・サービスとの差別化
あなたのアイデアと類似する商品・サービスが既に世の中にないかを調べます。類似の商品・サービスが存在する場合は、あなたのアイデアの方が優れている点は何かを考えます。

起業アイデアの見つけ方について詳しくはこちらをご覧ください>>ビジネスアイデアの見つけ方・まとめ方

 

事業計画をたてる

アイデアを可視化し、事業の全体像を把握する
アイデアの実現に向けて、事業の計画を立てます。思い描いたアイデアをビジネスにするために、計画をしっかりと詰めていくことが必要です。大変ですが事業計画を可視化することで、起業の成功をぐっと引き寄せることができます。

事業化支援Webアプリ「StartDash」なら、学びながら一人でも事業計画を立てられます>>詳しくはこちら

 

起業の形態を考える(個人か法人か)

事業を拡大する場合は法人化も視野に
事業を運営するための事業体として、必ずしも法人(会社)が必要とは限りません。法人がなくても個人事業主として事業を運営することが可能です。しかし、事業を拡大し、より多くの顧客に商品・サービスを届けるためには、法人を設立する方が有利な場合が多く、必要なタイミングで法人を設立します。

法人設立のメリット・デメリット
起業にあたり、個人事業主として活動する場合と法人を立ち上げる場合では、次のようなメリット、デメリットがあるといわれています。

  • 主なメリット
    ◆ 節税メリット
    個人事業主と比較すると、利益が大きい場合は税率が相対的に安くなる、損失を長期間繰り越せる、経費にできる項目が増えるなど、法人にすることで節税効果を期待できます。
    ◆ 信用の向上
    資金調達や外部パートナーとの取り引きをするときは、一般的に法人の方が信用を得やすくなるといわれています。
  • 主なデメリット
    ◆ 設立、運営コスト
    法人設立には費用と手間がかかります。例えば株式会社の設立には、業種を問わず30万円程の初期投資と、設立のための書類作成が必要です。また、会計処理などの事務手続きにも費用がかかります。

 

起業の手続き 

個人事業主の場合
税務署に、「個人事業の開業届」を提出します。帳簿作成の手間はかかりますが、損失の繰り越しなどができる青色申告制度を利用したい場合には、「所得税の青色申告承認申請書」の提出もあわせて行います。

法人の手続きの場合
法人として株式会社や一般社団法人など、会社設立する場合、公証人役場で「定款の認証」を受けます。定款とは、会社の商号や事業内容、役員選任ルールなど会社の基本的な規則を定めたものです。定款の認証を受けたら、「定款」と「設立登記申請書」を法務局に提出し、登記を行います。これで新会社に法人格が認められ、会社が成立したことになります。

起業の手続きについて詳しくはこちらをご覧ください>>起業の方法

 

起業資金の集め方

融資を受ける 
一般的な資金調達方法で、金融機関などからお金を借りることです。返済には利息がつきますが、投資に比べると調達がしやすく、国や自治体による創業時の優遇制度もあります。

投資を受ける 
投資家から株式と引き換えに資金を調達する方法(第三者割当増資)です。融資に比べて審査基準が厳しいことが多く、経営者の実績や事業の将来性が求められます。返済の必要はありませんが、株主に対して事業の状況を説明する責任が発生する上、株主総会での議決権を与えることになります。会社の運営方針に影響が出るため、投資家の特徴や株主比率などを考慮して慎重に資金調達を行う必要があります。

融資、投資を受けるには通常「事業計画書」が必要です。事業計画書の作り方はこちらをご覧ください>>起業に欠かせない「事業計画書」とは

助成金、補助金を利用する
自治体によっては、起業支援として助成金や補助金を交付しているところもあります。どちらも融資と違って返済の必要はありません。助成金は自治体が定める要件を満たしている場合に給付されます。補助金は事業計画書などの内容審査を経て採択されると給付されます。自治体ごとに支援内容は異なりますので、起業する地域の情報を確認してください。

「クラウドファンディング」という方法も
インターネットを介して、事業内容の将来性や社会貢献度の高さを訴え、それに共感・応援してくれる不特定多数の人たちから、少額ずつ資金を調達する方法です。テストマーケティングなどにも活用でき、新たな資金調達の手段として注目されています。

資金繰り計画も立てておく
資金繰りとは、事業の継続に必要なお金を管理することです。入ってくるお金と出ていくお金を把握し、資金不足に陥らないようにします。

資金調達の方法について詳しくはこちらをご覧ください>>起業の方法

 

開業後のお金の知識

会計の知識
会社や事業の経済活動を記録・測定・伝達する手続きです。株主など外部に情報を伝達するための「財務会計」と、社内向けに活用するための「管理会計」があります。作成は税理士に依頼できますが、会計知識を持っていれば、自社の財務状況が読み解け、経営戦略を考える材料にできます。

税金の知識
起業すると、様々な税金が発生します。個人事業主と法人では、同じくらいの利益でも払うべき税金の額は異なることがあります。

  • 法人にかかる税金
    法人税、法人事業税、消費税、固定資産税・償却資産税など。
  • 個人事業主にかかる税金
    所得税、個人住民税、消費税、個人事業税、固定資産税・償却資産税など。

 

起業の相談ができる支援機関

各地にある支援機関では起業に関する相談窓口を設けています。無料で利用でき、研修やセミナーを開催していることもありますので、積極的に利用してみましょう。

全国の商工会議所:https://www5.cin.or.jp/ccilist

中小企業支援センター:https://www.chusho.meti.go.jp/soudan/todou_sien.html

日本政策金融公庫:https://www.jfc.go.jp/n/branch/

 

起業について学ぶ

本で学ぶ
起業に関する書籍は多く出ています。アイデア出しに関する本、開業手続きに関する本など、目的別に選べます。本はいつでもどこでも学べるのがメリットです。

セミナーで学ぶ
支援機関が開催するセミナーから、ビジネススクールが開催するセミナーなど、様々です。最近はオンラインによるウェビナーも増えており、時間的に制約がある方でも参加しやすくなっています。

Webで学ぶ 
Sony Startup Acceleration Program(SSAP)が提供している無料のWebアプリ「StartDash」は、起業に必要なノウハウが学べます。起業準備を始めたい方におすすめします。>>詳しくはこちら

  • StartDashを利用して、起業を始めた方の声
    「起業をしたい」という想いと、StartDashとの偶然の出会い。
    (事業アイデアコンテスト『StartDash Idea Contest - 2020 Spring』最優秀賞 受賞者)
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まとめ

この記事では、起業のメリット・デメリット、事業計画、資金調達など、起業をスムーズに進めるために押さえておきたい重要なポイントをご紹介しました。これから起業を始めたいと思っている方は、参考にしてみてください。またあわせて、無料の事業化支援Webアプリ「StartDash」を使えば、事業立ち上げに足りないものや必要な要素を抜け漏れなく確認できます。起業準備にぜひご活用ください。

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Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は、「あらゆる人に起業の機会を。」をコンセプトに、2014年に発足したスタートアップの創出と事業運営を支援するソニーのプログラム。ソニー社内で新規事業プログラムを立ち上げ、ゼロから新規事業を創出した経験とノウハウを活かし、2018年から社外にもサービス提供を開始。経験豊富で幅広いスキルとノウハウをもったアクセラレーターの伴走により660件以上の支援を24業種の企業へ提供。大企業ならではの事情に精通。(※ 2024年3月末時点)

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