2021.03.29
Sony Startup Acceleration Program 新規事業の基礎知識

「事業開発」成功のポイントは?

最近では「Biz Dev」とも呼ばれる「事業開発」という言葉、新しいイノベーションを起こすことをイメージする人もいれば、今ある事業を成長させることだと考える人もいるかもしれません。事業開発の担当になったものの、何から始めればいいのかわからない人に、そんな“わかりそうでわからない”「事業開発」について、取り組む意義や成功のポイントを解説します。

そもそも「事業開発」とは?

ゼロから1へ。1から10へ
事業開発とは、文字通り「(新しい)事業を開発すること」。しかし一言で事業開発といっても、その内容はもう少し細かく分類されます。
一般的に、事業開発には「ゼロ→1」「1→10」「10→100」の3つのフェーズがあるといわれます。

  • ゼロ→ 1フェーズ: 「顧客課題」と「その課題を解決し、かつ実現可能なプロダクト/サービス」のセットを発見するフェーズ
  •  1 → 10フェーズ: ゼロ → 1フェーズで発見したセットを軸に、ビジネスモデルをつくり上げるフェーズ
  •  10→100フェーズ: 1 → 10フェーズでつくりあげたビジネスモデルにより、新規顧客を獲得し事業規模を拡大していくフェーズ

顧客課題とそれを解決する商品・サービスを作るだけでなく、作った商品・サービスのプロモーションや売り方を考えたり、売り上げやキャッシュフローなどの財務面を管理したり、事業を担当する人材を配置・育成したり、事業を成長させるための施策を用意したり…フェーズごとにやるべきことは多岐にわたります。事業開発と聞いてざっくりとしたイメージはできても、具体的な仕事内容がピンとこない人がいるのは、その意味する広さが原因なのかもしれません。

事業開発を担う「Biz Dev」とは?
こうした事業開発に伴うさまざまなタスクは、これまで事業部長やリーダーポジションに就く人によって行われてきました。しかしここ数年、イノベーションや新規事業の必要性の高まりに伴い、事業開発を専門的に行う「Biz Dev」という職種が注目を集めています。

  • 「Biz Dev」の4つの仕事
    Biz Devとは「Business Development」の略で、「職業分野」と「職業そのもの」の両方を指して使われます。アメリカのブログプラットフォーム「medium」に掲載されているBiz Devに関する有名な記事“Doing Biz Dev”では、Biz Devの「やるべきこと」として下記の4つがあげられています。つまり事業開発担当者が求められる仕事とは、大きく分ければこの4つに集約されるともいえます。
  1. Make Growth Happen(成長を引き起こす):事業を拡大させるためのあらゆる方法に挑戦する
  2. Test the Market(市場をテストする):開発した商品やサービスを市場のニーズに適合させる
  3. Evangelize for the Customers(顧客に伝道する):商品の価値を顧客に伝える
  4. Build the Network(ネットワークを構築する):外部のパートナーを見つける
  • 企業によって「Biz Dev」の定義は異なる
    日本では今、大手/スタートアップを問わず、事業開発担当やBiz Devポジションの求人が増えているといわれています。しかしまだまだ一般に浸透していない職種であることから、企業によってその定義は異なるようです。既存事業をドライブさせる、社内リソースを活用して新規事業を立ち上げる、外部と連携してイノベーションの可能性を探るなど、企業やブランドごとの成長フェーズや目的に合わせ、事業開発の具体的な中身が定義されると考えられます。

事業開発の本質は、新たな価値を提供する仕組みづくり
企業によって事業開発の具体的な内容は異なりますが、共通して言えるのは、いずれも「事業として足りない部分を補い、完成させていく」ということです。その足りないものが機能なのか、販路なのか、売り上げなのか…それらを見極めて補完することで、新たな価値提供の仕組みをつくり上げる。それが、事業開発の本質的な目的だといわれています。

大変な分、やりがいも大きい
このように仕事内容が膨大で多岐にわたる事業開発ですが、その分「新しい価値提供の実現」という大きな醍醐味があります。いま持っているスキルや技術を最大限に活かすことができ、それが「事業」というカタチになり、さらに社会の課題解決にもつながるのは、事業開発の最大のやりがいといえます。企業と個人の成長にとっても、事業開発は大きな価値をもつことが期待されています。

 

事業開発を成功させるには

事業開発の基本ポイント
では、自社の事業開発をうまく進めていくには、どういった点に留意するとよいでしょうか。まずは基本的なポイントから見ていきます。

  • 既存技術の応用で初期投資を抑える
    どんな事業も、立ち上げ資金の調達は真っ先に立ちはだかる壁になりえます。初期投資を抑えるなら、既存の技術を応用した事業開発から着手するとよいといわれています。クラウドファンディングなど、外部から資金を調達する方法もあります。
  • 事業開発を担える人材育成サイクルをつくる
    人材育成とチームの意欲を高める環境づくりは、事業開発の成功の要です。事業開発においては、熱意やアイデアを持ち、共通の意識を持つ社員を中心に少人数のチームを組織することが望ましいです。さらに外部の経験者などから知見を吸収する機会を早い段階から設け、新しい人材を積極的に採用するなど、チームが意欲的になれる環境づくりを行えると理想的です。事業開発と人材育成をセットで行える仕組みが出来れば、企業の成長につながる有益なサイクル構築が実現できます。
Sony Startup Acceleration Program(SSAP)では、新規事業創出支援と人材育成のプログラムを通じて次代を担うリーダーの育成をサポートしています。>>無料オンライン説明会開催中!
  • 検証⇒改善をスピーディーに
    事業開発の成功には、計画から実行までのスピードだけでなく、検証や改善の結果を判断するまでのスピードも非常に重要です。テストマーケティングなどで市場の反応を見ながら、そのフィードバックをできるだけ早く吸収し、サービスやビジネスモデルを柔軟に軌道修正する。このサイクルが、事業開発を軌道に乗せるコツだといわれています。
  • ターゲットとニーズを的確に把握する
    事業の種となるのは、顧客が解決したいと願う困りごとやニーズです。仮説だけで終わらせず、事実はどうなのか、対象となる地域や業界のユーザーインタビューを実施するなどしてニーズを検証します。それをもとにターゲットのセグメンテーションを行い、顧客に対してどのような価値を提供できるかを検討していきます。
  • 事業開発のシステムを構築する
    事業開発をスムーズに進めるには、自社内に事業開発を行う環境や仕組みが整っていることが重要になります。例えばSSAPでは、事業アイデアや技術開発テーマを効率的に発掘・育成していく方法論「ステージゲートシステム」を導入し、新規事業創出のための基盤を構築しています。こうしたシステムを導入することで、事業判断のスピードを加速することが期待できます。
「ステージゲートシステム」について、詳しくはこちらの記事をご覧ください>>イチから分かる新規事業のすべて
  • 営業との連携で視野を広げる
    特にメーカーの新規事業で苦労するパターンとして、自社技術の新用途を思いついても、そこにアプローチできる販路を有していないことがあります。自社がどのような顧客を持っていて、どのような販路で商品・サービスを提供しているかを見ることで、強みが出せる顧客や販路を明確にする必要があります。
    そのためには、販路に関する知識や顧客との接点が豊富な営業との連携は欠かせません。また、営業に限らず、事業開発のチームにはできるだけ幅広い部署からメンバーを集めると、その分視野や知見が広がります。
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事業開発におけるお悩み解決のヒント

ヒント① 新規アイデアが生まれない ➡ 既存アイデアを組み合わせてみる
ビジネス書の古典『アイデアのつくり方』で著者のジェームズ・W・ヤングは「アイデアは既存の要素の新しい組み合わせである」と説いています。革新的なサービスや独創的なアイデアも、元をたどると既存要素の組み合わせで成り立っていることがほとんどです。
アイデア創出するためには、まず先述の情報収集によって他社の成功事例を見るなど、さまざまな情報をインプットしてみることをおすすめします。既存要素をより多く知ることで発想の幅が広がり、イチからアイデアを考えだすハードルが下がります。

SSAPのアイデア創出を無料のWebアプリで体験できます。>>事業化支援Webアプリ「StartDash」はこちら

ヒント② 技術やリソースが不足 ➡ オープンイノベーションを活用する
この10年ほどで、国内でも認知が高まったオープンイノベーション。社内社外の垣根なくアイデアやノウハウ、技術を取り入れ、革新的な製品やサービスを創出するイノベーション手法のひとつです。

  • オープンイノベーションのメリット
    オープンイノベーションは、文字通り「開かれた」体制で開発を進めるので、社内だけでは技術やリソースが不足している場合に大きな成果が期待できます。具体的なメリットとしては、外部の知識や技術の獲得、事業推進のスピードアップ、短期間・低コストでの開発が可能となる、などが挙げられます。
  • オープンイノベーションを成功させるには?
    こうしたメリットを最大化してオープンイノベーションを成功させるには、協業する企業・メンバー全員が、共通の目標に向かって進める組織づくりが肝心になります。プロジェクトの立ち上げに際しては、戦略・ビジョン等を明確にすること、解決すべき課題と目標をメンバーと共有すること、外部ネットワークの活用を含めた組織の全体像を描くこと、などが重視されています。
オープンイノベーションについて、詳しくはこちらの記事をご覧ください>>オープンイノベーションとは ー メリット、課題、組織作りまで、成功のポイントを解説しますー

ヒント③ PDCAサイクルが回らない ➡ リーンスタートアップを導入する
新規事業をどんなプロセスで進めればよいか分からないときに、一つの手法となり得るのが「リーンスタートアップ」方式です。これは2008年にアメリカで提唱された比較的新しいやり方で、時間と労力を無駄にせず商品やサービスを開発していくマネジメント手法です。

  • リーンスタートアップの手順
    まず顧客の仮説を立て、顧客ニーズに基づいた商品・サービスの要素を持った試作品を短期間でつくります。この際、試作を作り込みすぎず、最低限必要な機能でスモールスタートすることがポイントです。
    そしてその試作品を顧客に実際に試してもらい、反応を計測・学習しながら、より満足できる製品・サービスへとスピーディーにブラッシュアップしていきます。
  • リーンスタートアップのメリット
    リーンスタートアップを取り入れると、下記のようなメリットが期待できるといわれています。
    ーコストと時間の節約
    リーンスタートアップの大きなポイントは、試作品を最低限の要素でつくることです。試作品をつくり込みすぎると、検証・改善のタイミングが遅れ、求める結果が得られなかったときの時間的・コスト的ロスも大きくなります。試作品を簡易化することで、全体的なコストと時間を大きく削減できます。
    ー市場で優位に立てる
    技術革新や社会の変化が目まぐるしい今、効率的に事業開発をマネジメントできる手法を身につけておけば、市場の変化にも柔軟に対応していくことができると考えられています。市場における認知度や開発スピードでも、ライバルに差がつくかもしれません。
    ー顧客の反応をいち早く得られる
    リーンスタートアップでは検証段階から顧客のレビューを実施するので、リアルな顧客ニーズをいち早く獲得することができます。さらに、顧客の声を実際に反映して商品を改善していくので、顧客からの信頼にもつながります。

 

事業開発を一気通貫でサポート! SSAPの支援サービスと成功事例

SSAPの事業開発支援は何が違う?
新規事業開発や課題解決を目指す企業や団体、教育機関などを支援するSony Startup Acceleration Program(SSAP)では、アイデア創りから商品化、事業運営、販売・事業拡大までを一気通貫でサポートする事業開発支援サービスを提供しています。
「せっかくのアイデアが社内に埋もれてしまっている」「事業に結び付けられない」といった企業の現状に着目し、知識と事業経験の豊富なアクセラレーターがプロジェクトに伴走して支援することでアイデアの事業化実現をサポート。事業開発の経験を通じて、社内の次世代リーダー育成プログラムとしてもお役立ていただけます。

【成功事例①】 BtoC向けの社内ベンチャーを実現! 京セラ「Possi」開発

ライオン株式会社 萩森敬一さん、京セラ株式会社 稲垣智裕さん、SSAP 宮崎雅

BtoB向け事業をメインとする京セラ株式会社は、2018年に自社が持つ技術を使ったBtoC向け新規事業開発に着手。SSAPの支援サービスを活用し、「子どもが嫌がる歯磨きを楽しい時間に変える」というコンセプトの音が出る子どもの仕上げ磨き用歯ブラシ「Possi」を開発し、市場導入を実現しました。

>>詳しくはこちら

【成功事例②】 乳がん検診率向上を目指したパーソナル乳がんチェックシステム「MAMMOECHO」
医用超音波に関する研究開発及びコンサルティングを行うマイクロソニック株式会社では、超音波検査機を小型化する技術を応用し、自宅でできる乳がんチェック「MAMMOECHO」を開発。SSAPはコンセプトデザイン支援を提供し、マイクロソニック株式会社が持つアイデアを可視化。ユーザビリティを向上させながら、抵抗感なく女性に受け入れられるデザインを実現しました。

>>詳しくはこちら

幅広い企業、組織に支援実績があります
2014年のサービス開始以来、SSAPは大手企業をはじめ、株式会社グレースイメージングなどのベンチャー企業、東京大学、東京藝術大学や学校法人立命館などの教育機関など、幅広い組織や団体にサービスを提供しています。
2021年2月末時点で、社外向けサービスの提供実績は85件を突破。こうした実績とともに積み重ねた知見やノウハウを、次のサービスへとさらに活かしています。

SSAPの支援サービスがわかる! 無料オンライン説明会実施中
事業開発のご担当者に向け、サービス内容が詳しくわかる無料の説明会を実施しています。オンラインでご参加いただけますので、お気軽にお申し込みください。

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柔軟かつオープンな取り組みで、事業開発を成功へ

既存の技術を活用しながら、新たな価値提供の仕組みをつくる事業開発。さまざまなノウハウや手法、支援サービスを取り入れることで、思いがけない商品やサービスの誕生につながる可能性があります。社内外を問わずリソースをフル活用し、柔軟なアイデアと組織体制で事業を創造することが、変化の激しい次世代を生き抜く鍵となるかもしれません。

ソニーの新規事業支援プログラム SSAP紹介パンフレット 無料ダウンロード

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は、「あらゆる人に起業の機会を。」をコンセプトに、2014年に発足したスタートアップの創出と事業運営を支援するソニーのプログラム。ソニー社内で新規事業プログラムを立ち上げ、ゼロから新規事業を創出した経験とノウハウを活かし、2018年から社外にもサービス提供を開始。経験豊富で幅広いスキルとノウハウをもったアクセラレーターの伴走により660件以上の支援を24業種の企業へ提供。大企業ならではの事情に精通。(※ 2024年3月末時点)

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