2021.09.30
Sony Startup Acceleration Program 新規事業の基礎知識

アントレプレナーの起業に学ぶ新規事業の起こし方

社会の変化のスピードが速く、グローバル化が急速に進む時代では、事業の持続的発展のために新規事業の必要性に直面する企業が少なくありません。ところが、社内にノウハウが蓄積されておらず、「どのように始めればよいのかわからない」「どの社員が新規事業に向いているのかわからない」といった悩みをよく耳にします。そこで本編では、アントレプレナーの起業をヒントに新規事業の起こし方を考えます。

アントレプレナーとは

「アントレプレナー」という言葉は、フランス語の「entrepreneur(始める、企てる)」という動詞から派生し、中世のフランスでは「仲買人」や「貿易商」を意味したといわれています。約100年前にイノベーション理論を確立した経済学者ヨーゼフ・アロイス・シュンペーターが「イノベーションを遂行する当事者」と定義し、経営学者ピーター・ドラッカーなどがアントレプレナーシップについて取り上げて以降、広く一般にも知られるようになりました。今では「起業家、企業家、事業を起こす人」という意味で使われています。

「アントレプレナー」について詳しくはこちらの記事もご覧ください>>#30いまこそ企業に必要な アントレプレナーシップ(起業家精神)について

アントレプレナーが社会に求められている理由

バブル崩壊以降、日本の経済成長率は伸び悩み、2021年の世界各国の経済成長率ランキングでは191か国中157位という結果になっています。このように閉塞感のある時代において社会に変革を起こすためにはイノベーションが必要であり、従来にない発想とアプローチで事業を立ち上げ活躍できるアントレプレナーが求められています。

※出典 IMF World Economic Outlook Databases(2022年10月版より)
 

アントレプレナーに求められる資質

アントレプレナーという言葉の由来がイノベーションと密に関わっているように、アントレプレナーには新たな製品やサービスを創出し、世に送り出すための創造性が必要とされています。さらに、アントレプレナーはひとつの事業を企画・立案し、資金面・マーケティング面・人材面などさまざまな課題を克服しながら事業を推進しなくてはならないため、経営者としてのマネジメント能力が求められます。また、ひとつの事業を個人で推進していくことは難しく、投資家やビジネスパートナー、幹部社員候補、優れた技術を持つエンジニアなど、自分とは異なる多様な能力を持つ人との人脈づくり・ネットワークづくりも欠かせません。時にはリスクを背負うこともあり、困難に立ち向かう強い精神力も必要といわれています。

 

アントレプレナーたちの起業ケース

◆ case1. 社会を変えるために起業する
世界には貧困、格差、環境、教育、医療、福祉などの課題が多くあります。こうした社会的課題を自分たちの技術やサービスを使って解決することを目的に起業する人を「社会起業家」と呼びます。ボランティア団体や海外援助活動との違いは、会社を設立するなど企業として収益を生み出し、政府や外部組織からの支援がなくても継続的に運営を続けていける体制を目指す点です。

◆ case2. 自分のアイデアを具現化する
「この業界にはこんな製品やサービスが足りない」「自分ならこんなサービスが欲しい」といった大小さまざまなアイデアを起点にビジネスモデルを考え、起業するケースです。小売業やサービス業のように古くからある業界であっても、新たな売り方や価値を持たせたサービスを考案し、事業を成功させた事例は多数存在します。既存のビジネスモデルを大きく変えるだけでなく、マイナーチェンジの提案やコアターゲット層ではなくニッチな層のニーズを狙うなど、方法はさまざまです。

◆ case3. 自分の持つスキルを生かす
建築・製造・ITなど技術分野のエンジニア、財務・法律・建築・コンサルティング・教育などの資格や専門知識を持つスペシャリスト、輸送・運動・調理・美容など人々の生活に関わる仕事で資格や特技があるなど、自分が持つスキルやこれまでのキャリアを生かして起業する人も少なくありません。

◆ case4. 会社から独立して起業する
会社員として勤務していた会社で新規事業を担当していた人が、事業の進展に伴って社内ベンチャーとして子会社化し、社長に就任するパターンや、会社との話し合いの結果、独立系企業としての道を歩み始めるパターンなど、親会社との関係によりその後の展開が変わります。老舗ブランドの「のれん分け」もこの一形態です。

◆ case5. 事業を進めるうちに起業に行き着く
アントレプレナーの中には当初から起業を考えていたわけではなく、勤務先の状況や人間関係などから独立することが自然な流れとなり、創業に至る人もいます。また、ボランティア活動や市民活動、芸術活動などを続けるうちに法人化した方が動きやすいと考え、結果的に起業に行き着く事例もあります。

 

アントレプレナーになるには

◆ 専門的に学ぶ
近年、国内でもアントレプレナーシップ(起業家精神)を学べる場が増えています。欧米諸国に比べるとまだまだ少ないものの、アントレプレナーシップを専門的に学ぶ学部を設置する大学や専門学校が増加し、2019年度は全国で約3万人※の学部生・院生がアントレプレナーシップ教育を受講しています。社会人向けに、自治体や企業などが主催する起業家スクールなどでワークショップや講座が開かれています。

※出典:文部科学省「令和2年度大学におけるアントレプレナーシップ教育に関する調査報告書」

Sony Startup Acceleration Program(以下SSAP)では、大学などの教育機関にもアントレプレナー育成支援プログラムを提供しています。

  • SSAPの事例 立命館・社会起業家支援プラットフォームRIMIX(Ritsumeikan Impact-Makers Inter X(cross))
    RIMIXはSDGsに代表される社会課題を、ビジネスを通じて解決する人材育成のためのプラットフォームです。小学校から大学院までの一貫教育の特徴を生かし、起業のきっかけ作りから資金的な支援までを可視化し、外部機関とも連携しながらシームレスな支援を続けるもので、社会にインパクトを与える人の発掘と輩出を目指します。SSAPは同事業がスタートした2019年度から総長ピッチチャレンジに参加する学生を支援。2020年度もワークショップやトレーニング、コーチングなどを担当しています。
    >>詳しくはこちら

◆ 企業内で身につける(イントレプレナー)
勤務する会社の中で新規事業立ち上げに携わり、OJTで一歩一歩アントレプレナーシップを身につけていくことも可能です。経営者と従業員の距離が近い中小企業の場合、経営者の日頃の行動をそばで見て失敗や成功例を学び、自然に身につけていくケースもあります。ただし、一般的にはそのようなノウハウが蓄積されていることは少ないのが実情です。SSAPには企業活動に沿って企業内起業家を複数育成してきた実績があります。

  • SSAPの事例 インナーウェア装着型冷温ウェアラブルサーモデバイス「REON POCKET」
    ソニーの技術者が中国出張時の酷暑の経験からヒントを得て、シャツの首元のポケットに冷やしたり温めたりできるウェアラブルデバイスを装着するアイデアを発案。SSAPでのオーディション、アクセラレーターによるサポート、専門家によるコーチング、クラウドファンディングでの資金集めを経て、2020年7月、一般発売されました。
【連載】「REON POCKET」舞台裏
【連載】「REON POCKET」舞台裏

◆ 説明会で詳しくご紹介します
SSAPではアントレプレナー育成を考える企業や、アントレプレナーシップを身につけたい社内のリーダーや起業家候補に向けて、オンライン説明会を実施しています。アントレプレナーシップ教育には、講演会や座学で知識を吸収するだけでなく、ビジネスプランの作成やそれに基づく仮説検証、顧客ヒアリングなどの実践的な内容が欠かせません。2014年のスタート以来、多数の事業化実績をもつSSAPで効率的かつスピーディな人材育成をご検討ください。

ソニーの新規事業支援プログラム SSAP紹介パンフレット 無料ダウンロード

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は、「あらゆる人に起業の機会を。」をコンセプトに、2014年に発足したスタートアップの創出と事業運営を支援するソニーのプログラム。ソニー社内で新規事業プログラムを立ち上げ、ゼロから新規事業を創出した経験とノウハウを活かし、2018年から社外にもサービス提供を開始。経験豊富で幅広いスキルとノウハウをもったアクセラレーターの伴走により660件以上の支援を24業種の企業へ提供。大企業ならではの事情に精通。(※ 2024年3月末時点)

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