2022.08.29
Sony Acceleration Platform 新規事業の基礎知識

起業の強い味方! インキュベーションの活用メリットとは?

企業内新規事業創出やスタートアップで、インキュベーションを活用するケースが増えています。事業開発や起業に伴う不安や疑問を解消しながら、事業化へと導くインキュベーション。活用するメリットや具体的な支援内容、支援の受け方などを詳しくご紹介します。

卵を育てるように起業を支援するインキュベーション

ビジネスにおける「インキュベーション」とは、「起業や新規事業開発を支援する活動全般」を指します。英語のincubationには「孵化」という意味があり、雛を育てるさまにビジネスの成長支援を喩え、こう呼ばれるようになりました。

◆ インキュベーションの目的
近年、新規事業開発や起業がさかんに行われる一方、実際に事業として存続しているものは多くありません。インキュベーションは、そうした困難な事業開発や起業を多角的に支援することで、より実現と継続の可能性が高い事業へと成長させるために行われます。
一般的には、支援を受ける側は不足している資金やノウハウを得てスムーズに事業開発や起業を進めるためにインキュベーションを活用し、支援する側は産業・経済活動への社会貢献や将来的な投資などを目的に、資金とノウハウを提供します。

◆ インキュベーションを行うのは誰か
インキュベーションを提供するのは、ベンチャーキャピタルや大手企業のインキュベーション事業部、国、自治体、大学などさまざまです。こうした組織・団体は「インキュベーター」と呼ばれ、昨今では複数のインキュベーターが連携して産学協同で行うインキュベーションなども増えています。

◆ 投資家による出資との違い
資金の提供というと、エンジェル(個人投資家)による出資を思い浮かべるかもしれません。インキュベーションがエンジェル(個人投資家)と異なるのは、資金だけの支援ではないという点です。インキュベーターは、資金調達の方法も含めた“事業開発・起業ノウハウ”を提供し、事業創出に導く総合的な支援を行うといわれています。

 

インキュベーションを利用するメリット

インキュベーションの活用は、起業や新規事業の立ち上げ経験が少ない場合にこそ大きなメリットがあります。

◆ 準備段階からサポートを受けられる
事業開発や起業経験が少ないと、まず何を始めたらよいか、段取りや計画を立てる時点から迷いが生じてしまいがちです。インキュベーションを受けることで、効率的な手段や手順をあらかじめ知ることができるので、スタートで躓くリスクを減らせます。

◆ 必要な環境を整えやすい
資金が十分にないうちは、オフィスや必要な設備を揃えるだけでも大きな負担です。インキュベーターの多くは場所や設備の提供も行っているので、より低コストに、かつ恵まれた環境で事業開発や起業をすることができます。

◆ 頼れる人脈やつながりを築ける
インキュベーターとして支援にあたるのは、さまざまな業界で起業や事業創出を手掛けてきた経験者が多いです。知識と経験を持つ頼れる存在がいることは、何より大きな支えになりえます。また、それぞれのインキュベーターが複数の事業開発・起業を支援していることが多いので、インキュベーターを介した横のつながりも広げることが期待できます。

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インキュベーターによる支援内容とは?

インキュベーションで受けられる支援は、一般的に「ヒト」「モノ」「カネ」「情報」のいわゆる4大経営資源をカバーしています。

◆ 「ヒト」の支援
インキュベーションでは、各プロジェクトに対して「インキュベーションマネージャー」や「アクセラレーター」と呼ばれる支援担当者がつきます。知見と経験をもとにさまざまなアドバイスを提供し、プロジェクトを推し進めるサポートをします。

アクセラレーターについて詳しくはこちら>>#15アクセラレーターとは?

◆ 「モノ」の支援
インキュベーションを利用している企業は、インキュベーターが所有するオフィスや施設を相場よりも安く利用できることがあります。事業内容によっては、研究室や工場まで利用できる場合もあるようです。インキュベーターによって提供する施設に特徴があるので、代表的なインキュベーション設備についてはこのあと詳しくご紹介します。

◆ 「カネ」の支援
潤沢な資産のもとで事業開発や起業ができるのは稀なケースで、銀行や投資家、クラウドファンディングなどの資金援助を受けることが多くあります。
インキュベーションでは、その資金調達の方法やノウハウ、金融機関との交渉についてのアドバイスなども提供してもらえる場合があります。

◆ 「情報」の支援
新規事業創出において欠かすことのできない市場動向やターゲット顧客についての調査データ、商品・技術開発で必ず確認すべき著作権や特許、技術関連の知識。こうした無形の情報を提供してもらえることも、インキュベーションの大きな価値の1つです。
また、インキュベーターが開催するセミナーや交流会は、異業種・同業種を超えた有益な情報交換ができる場。知見を広げながら、幅広いネットワークを築くことができます。

 

インキュベーションを受けるには

インキュベーションを受けるには、各インキュベーターが用意している「インキュベーションプログラム」を利用するのが一般的です。
ビジネスサービスとしてプログラムを展開している場合や、行政や大学が助成金付きのプログラムを公募している場合など、幅広い利用方法があります。インキュベーターや社内外の起業経験者に直接依頼するケースもありますが、コネクションがないと支援を受けるのが難しい場合もあるので、どういったプログラムがあるのか一度リサーチしてみることをお勧めします。

 

インキュベーションプログラムの例

具体的なインキュベーションプログラムの内容は、インキュベーターの得意分野や専門領域によって多岐にわたります。例えば、ソニーグループが展開しているスタートアップの創出と事業運営を支援する「Sony Startup Acceleration Program(SSAP)」では、下記のようなプログラム内容を用意しています。

  • 事業性判断のための支援
    ビジネスモデルの確からしさを検証し、事業化・投資判断ができる状態まで支援。
     
  • 事業立ち上げのための支援
    事業開始までに必要なリソースやプロセスを可視化し、最短で事業開始の準備を支援。
     
  • 事業運営のための支援
    事業開始後における、さまざまな事業運営の課題解決や事業拡大に向けたノウハウ、販促支援などを提供。
より具体的なプログラム内容や事例はこちらの記事でご紹介していますので、あわせてご覧ください。>>#55インキュベーションプログラムの活用方法 ~ソニーの新規事業支援プログラム内容と活用事例をご紹介~
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インキュベーション施設を利用する手も

「インキュベーション施設」とは、起業家やスタートアップ企業の事業支援を目的とした施設のことです。一般的なレンタルオフィスよりも安価な賃料で事務所スペースが借りられる場合もあり、事業に関して有識者や専門家からのアドバイスやサポートが受けられることが特徴です。

◆ 運営団体によって施設特徴は異なる
インキュベーション施設の特徴は運営団体の種類によって異なるため、利用を検討する場合は自分の目指す事業に合った施設選びが大切です。

  • 大学が運営する場合
    大学が運営するインキュベーション施設では、大学の研究をビジネスに結び付けることを前提としています。アカデミアとビジネスの双方に詳しいインキュベーションマネージャーが、学内ベンチャーを支援することが多いです。
     
  • 行政や中小企業支援機構が運営する場合
    地域の特性に合った事業の支援を行います。地域産業の活性化につながる新規事業創出を支援するほか、地元企業との協業イベントなどを展開している場合もあります。
    また、地域密着という点では、信用金庫をはじめとする金融機関によるインキュベーション施設もあります。融資相談や地元企業とのマッチングが強みとされています。
     
  • 民間企業・団体が運営する場合
    民間が運営するインキュベーション施設では、それぞれの団体の得意分野や専門領域に特化した支援を行っています。

◆ インキュベーション施設を利用する際の留意点
それぞれの施設ごとに強みがあり、専門分野に必要な設備(ものづくり設備やラボ、調理スペースなど)や、ネットワークの構築が期待できるインキュベーション施設は、利用することでより低コストかつ高効率に事業開発・起業できるメリットがあります。一方で、誰もが自由に利用できるわけではないため、利用検討に際しては以下のような点への留意も必要です。

  • 厳しい入居審査や手続きがあるか
  • 改装の可否など自由度が少ないかどうか
  • 入居期限があるか

◆ ソニーグループのインキュベーション施設「Creative Lounge」
民間の企業では、本社の施設内に社内ベンチャーや新規事業創出を支援する場を設けている例もあります。
SSAPでは、品川にあるソニーシティ(ソニーグループ本社ビル)1Fに、「共創」をコンセプトとしたオープンラウンジ「Creative Lounge」を設けています。ソニーグループ社員の紹介があれば一般の方も利用でき、レーザー加工機や3Dプリンター、UVプリンターなどの高度なデジタル設備を使ってプロトタイプを創ることもできます。

Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、760件以上の支援を25業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2024年10月末時点)

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