2021.03.27
新規事業の基礎知識

#19アイデアを生み出す注目メソッド! 「アイデアソン」とは?

「技術はあるのに、その活かし方がわからない」「社内で何度ブレストしても、毎回同じような企画しか浮かばない」「発想の刺激が欲しい」など、事業開発の初期段階ではしばしばアイデア創出に関するこうした悩みが聞かれます。新規事業につながる良質なアイデアは、一体どのようなプロセスから生み出されるのでしょうか?

豊富なアイデアこそが、ビジネスの種

「アイデアとは既存の要素の新しい組合せである」―――これは、アメリカの広告界で活躍したジェームス・W・ヤングが、著書『アイデアのつくり方』の中で述べた有名な言葉です。どんなビジネスや事業も、ゼロから突然大きなアイデアが生まれたわけではなく、いくつもの小さなアイデアが掛け合わさってできたもの。そう考えると、早い段階でいかに多くのアイデアを集められるかが、成功の鍵であるともいえます。
Sony Startup Acceleration Program(SSAP)では、そうしたアイデア創出を含む新規事業開発支援プログラムを多数提供しています。今回はその中から、さまざまなビジネス領域で注目されている「アイデアソン」というメソッドについて詳しく解説していきます。

アイデア創出がうまくいく! SSAPの新規事業開発支援プログラムとは?> >詳しくはこちら

 

ご存知でしたか? 「アイデアソン」

アイデア×マラソン=アイデアソン!
アイデアソンとは、「アイデア」と「マラソン」が掛け合わさってできた造語です。その言葉の通り、決められた時間の中でグループごとにアイデアを出し合い、マラソンをするようにどんどんブラッシュアップさせ、結果を競うというものです。たくさんのアイデアを出し、さらにそれらを良質なアイデアにまとめ上げる手法として、近年注目を集めています。

ハッカソンとアイデアソンの違いとは
アイデアソンとよくセットで使われる言葉に「ハッカソン」というものがあります。これは「ハック」と「マラソン」を掛け合わせたもので、プログラマーやデザイナーなどの専門技術者が集まって、一つの目的を実現するために集中して作業するプロジェクトのこと。ハッカソンがあるアイデアを具現化するためのイベントだとすると、アイデアソンはアイデアそのものを出し合う(絞り込む)ために行われるもので、しばしばハッカソンの事前準備や練習として行われてきました。

「ハッカソン」について詳しくはこちらをご覧ください>>アイデアをカタチにするイノベーション手法 「ハッカソン」とは?

IT業界から始まり、今では他の分野でも
アイデアソンは90年代にアメリカのIT業界で始まり、2000年代には数々のイベントが盛んに行われるようになりました。もともとはハッカソンとセットで行われましたが、技術者が集まるハッカソンよりも参加の敷居が低く、またIT以外のさまざまなテーマにも応用できるため、今ではアイデアソンが単独で行われることも一般化。異業種間コミュニケーションやオープンイノベーションの場でも多く用いられています。

アイデアを出すだけが目的ではない
アイデアソンを行う最大の目的は、ただ大量のアイデアを出し合うだけではありません。視点の異なる多様なアイデアを持ち寄ることで、発想の転換を促し、特定のテーマに対する有効性の高い解決策を見つけることにあります。
またその過程において、多様なメンバーが濃密なディスカッションを行うため、コミュニケーションや論理的思考のトレーニングが目的となる場合もあります。

 

アイデアソンのメリット/デメリット

アイデアソンを活用するメリット
IT業界から始まったアイデアソンが他の業界でも広く使われるようになったのは、アイデアソンを行うことによるメリットの多さにあるといえます。

  • 多様な人が参加できる
    アイデアソンは、エンジニアやプログラマーのように特別なスキルを持っていなくても、アイデアさえ出せれば誰でも参加することができます。企業の中で行う場合も部署や職種を超えたメンバーで実施できるので、開催のハードルが低く、アイデアも広がりやすいというメリットがあります。
  • ディスカッション力が身に付く
    アイデアソンの特徴は、お互いのアイデアを決して否定せず、受け入れながら議論を進めていく点にあります。可能性を探りながら前向きかつ建設的に議論できるので、良質なディスカッションスキルが身に付きます。また時間の制約があることも、だらけず効率よく物事を考えるトレーニングになります。
  • 主体性が鍛えられる
    縦割りの組織に属していると、自らアイデアや意見を述べて仕事をする機会をあまり持てない場合があります。しかしアイデアソンは、どんなアイデアも歓迎される場。1グループも5~6名程度と少人数で行うことが一般的なので、自然と参加意識が高まり主体的に発言できるようになります。

アイデアソンのデメリット(注意点)
アイデアソンを行うこと自体へのデメリットというのは、ほとんどありません。ただし、開催するうえで気を付けておきたいことが何点かあります。

  • 1回で事業化につながるとは限らない
    たった1回のアイデアソンから新しい事業のアイデアが生まれるケースは、それほど多くはありません。アイデアソンは、何度か繰り返し実施するのが理想的。上手くいかなかったからと1回で終わらせてしまうと、かえって時間やアイデアがムダになってしまうかもしれません。
  • 初心者だけで行うと、迷走する場合も
    アイデアソンにおいて大切なのは、アイデアを出すテーマをしっかりと固め、方向性を見失わずに議論を進めていくことです。アイデアソンに慣れていない参加者が多いと、議論するうちに話がどんどん別の方向に発展し、迷走してしまうことも。あらかじめチームのまとめ役やリーダーを決めておくとよいでしょう。
  • まだまだ認知度が低い
    ビジネスや人材育成において注目を集めているとはいえ、一般的な認知はまだ低いようです。メリットや有効性が理解されていないと、社内で開催するための承認が下りづらく、参加者が集まらないなどの問題にもつながります。

 

具体的にどんなシーンで活用されているのか

アイデアソンが活かせるのは、課題解決が求められる場
人が最もアイデアを必要とするのは、解決すべき大きな課題に直面したときだと考えられます。たとえば日本でアイデアソンやハッカソンが広まったきっかけに、2011年の東日本大震災があります。未曾有の大災害からの復興に向け、多様なスキルや知見を持つ人たちがさまざまな場でアイデアを出し合いました。それに象徴されるように、これまで経験したことのない問題や未知の領域に挑む際に、アイデアソンは特に効果を発揮するといえます。
また最近では、次世代リーダー育成の観点から、産学協同でのプロジェクトも増えています。
以下は、アイデアソンが活用される主な領域です。SSAPで支援しているいくつかの事例もあわせてご紹介します。

アイデアソンが活用されている主な領域

  • 新規事業開発
    新しい商品やサービスの開発や、既存事業の見直しをする際に、企業の担当者や外部有識者などを集めて行われます。企業間のオープンイノベーションでもよく用いられます。
  • スタートアップ
    これから新しいビジネスを起こそうとする人や学生が集まって行われます。多くの場合「メンター」と呼ばれる指導役がつき、プロの視点から事業化に向けてアイデアのブラッシュアップをサポートします。
  • IT領域
    技術が中心だと考えられがちなIT領域ですが、その技術を生み出す/活かすには、アイデアが必要です。技術的側面が強いハッカソンとあわせて、アイデア創出を重視したアイデアソンがしばしばセットで行われます。
  • オープンデータ領域
    公的機関が所有するデータを活用して社会課題などを解決するために、行政職員やプランナー、NPO、IT技術者が一緒になってアイデアソンが行われます。
  • 地域活性化領域
    地域が抱える課題の解決や、観光、災害復興などさまざまな目的に合わせアイデアソンが行われます。地域住民や企業、大学生など、多様なメンバーが集まってディスカッションできる貴重な機会になります。

アイデアソン活用事例(SSAP事例より)

  • スタートアップ創出を目指す産学協同アイデアソン(東京大学)
    東京大学では2019年より、スタートアップ創出を目指して企業と大学・学生が協業する社会連携講座を開始。年1回のニーズ検証結果をピッチするイベント「オーディション」を軸に、アイデアソンを含むトレーニングやワークショップが行われています。>>詳しくはこちら
  • ベンチャー人材育成の一環としてのアイデアソン(立命館)
    学生・生徒・児童のアイデアのブラッシュアップや事業化への課題検証等を支援する「立命館・社会起業家支援プラットフォームRIMIX(Ritsumeikan Impact-Makers Inter X(cross))」では、大学生のみならず高校生も対象としたアイデアソン・ワークショップを開催し、若い世代の柔軟な発想力を鍛える場としてアイデアソンを活用しています。>>詳しくはこちら
  • SDGs達成に向けた社会課題解決を考えるアイデアソン(UNOPS)
    国連プロジェクト・サービス機関(UNOPS)が開催する持続可能な開発目標(SDGs)に取り組むスタートアップや企業を支援するプログラム「Global Innovation Challenge」では、SDGsの達成に向けてニーズやシーズの観点からさまざまなアイデアソンを開催しています。アイデアソンを通じてイノベーション領域における才能と意欲のある人材を発掘し、SDGsに取り組むアイデアを社会実装にまで発展させることを目指しています。>>詳しくはこちら

 

アイデアソンの実施方法

アイデアソンの運営体制
アイデアソンを効率的に行うには、企画・管理を行う事務局スタッフの他にも、アイデア創出のノウハウやメソッドを持つ人に参加してもらうことが望ましいです。以下に、一般的な運営体制をまとめました。

  • 運営事務局
    アイデアソン全体の企画や参会者の管理、会場準備などを行います。
  • 司会・ファシリテーター
    アイデアソンを進行し、話しやすい雰囲気づくりなども担います。
  • メンター・アクセラレーター
    ファシリテーターと同様、アイデアを出しやすい流れをつくるとともに、発想方法や議論の進め方などを講師的な立場からアドバイスします。
  • 有識者・専門家
    専門的なテーマを扱う場合、有識者や専門家がそのテーマや課題に関する正しい知識をインプットします。

アイデアソンの流れ
一般的なアイデアソンの流れは下記のとおりです。

アイデアソンの詳しい流れはこちらをご覧ください>>失敗しない「アイデアソン」のやり方とポイントを解説!
  • ①チーム分け
    1チームが5~6名の少人数になるように設定します。
  • ②テーマ説明
    アイデアソンのテーマを全員に説明します。
  • ③問題定義
    テーマに関して、解決すべき課題は何か、何が解決のネックになっているかなどの問題点を共有します。
  • ④インプット
    テーマに関する必要な知識や情報をインプットします。
  • ⑤アイスブレイク
    初対面の参加者同士が話しやすいよう会話と頭の準備体操をします。
  • ⑥アイデア出し
    グループごとにテーマに対して自由にアイデアを出し合います。
  • ⑦アイデアの絞り込み
    出されたアイデアからブラッシュアップするものを絞り込みます。
  • ⑧ブラッシュアップ
    グループでアイデアを改善しながら発表用に仕上げていきます。
  • ⑨プレゼンテーション
    各チームのアイデアを発表します。
  • ⑩審査
    審査員が優れたアイデアの選出や各グループへの講評を行います。

 

ここがポイント! 上手くいくアイデアソンのコツ

テーマと目的を明確に
アイデア出しを行う際、たくさんのアイデアが出れば良いものが見つかるだろうと思いがちですが、良いアイデアを引き出すには的確な「問い」が必要です。テーマが不明瞭で、解決すべき課題の本質を共有できていないと、アイデアを絞り込むための指針が持てず迷走してしまう場合もあります。

できるだけ多様な人を集める
普段は異なる分野や部署で活動するメンバーが集まって、多様な視点からアイデアを出し合うのがアイデアソンの醍醐味。企業内で行う場合もできるだけ社外からの参加者を招いたり、部署を超えて参加者を募ったりすると、アイデアにも幅が生まれます。

出されたアイデアを否定しない
相手の意見に対し反対意見を唱えることで討論を展開するディベートとは違い、アイデアソンの基本は「ディスカッション(議論)」です。自分の意見が否定されると、アイデアを積極的に出しづらくなり、活発な議論に発展しない可能性が高くなります。

ファシリテートにはプロの力も借りて
アイデアソンのテーマ設定やファシリテートには、アイデア創発やブラッシュアップのスキルやノウハウが必要です。特に新規事業創出に向けたアイデアソンの場合は、いかに現実的な事業化に結び付けていけるかといったビジネスの視点が欠かせません。実際にイノベーションや新規事業開発の経験があるメンターやプロのアクセラレーターをアサインすることで、より有意義なアイデアソンを行うことができるでしょう。

 

ノウハウと実績がつまったSSAPのアイデアソン支援

数多くの事業開発を経験してきたSSAPがノウハウを伝授
新規事業開発や課題解決を目指す企業や団体、大学などを支援するSony Startup Acceleration Program(SSAP)では、アイデア創出に向けたさまざまなワークショップの企画・運営をサポートしています。その支援メニューの一つとして、アイデアソン/ハッカソンのサポートも実施しています。>>サービスの詳細はこちら

アイデア創出のプロがサポート
SSAPのアイデアソン支援プログラムでは、実際にソニーで商品開発等を経験してきたメンバーが講師やメンターとなり、アイデアソンのテーマ設定から当日のファシリテートまでをお手伝いします。社内でアイデアソンを行うのが初めての場合も、安心して実施できます。

プロジェクトとしても、単発ワークショップとしても活用できます
SSAPでは、人材育成の研修プログラム提供から、中長期におよぶ新規事業開発プロジェクトサポートまで、それぞれの目的に合わせて支援内容をカスタマイズしてご提供します。研修の一環として単発でアイデアソンを体験したい場合も、アイデアソンの成果を事業創出へ着実に結び付けたい場合も、お気軽にご相談ください。

オンライン説明会を開催中! ぜひご参加ください>>詳しくはこちら

 

これからのビジネスとアイデアソン

アイデアソンの活用シーンは広がっている
DX(デジタルトランスフォーメーション)やSDGsへの対応が広がる今、事業変革や社会課題解決に向けたアイデア創出がこれまで以上に求められています。すでに多くの企業や教育の場で注目が高まっているアイデアソンですが、今後もそうしたアイデア創出に役立つメソッドとして、さらに多くのシーンで有効活用されることが予想されます。
また、多様な人と良質なディスカッションができることから、コミュニケーションのトレーニングや人材育成の機会としてもますます広がっていくと思われます。

一過性のブームで終わらせないために……
一方で、アイデアソンを実施してみたものの、せっかく生み出された成果を事業に結び付けられなかったり、その後のメンバー交流がなかったりと、一時的なイベントやブームとして終わってしまうケースも見られます。こうした課題を乗り切るには、アイデアソンを有効に活用するノウハウと、積極的にアイデアソンを続けていく組織づくりが大きな鍵になります。プロのサポートや社外との連携を上手く取り入れながら、貴社のビジネスに新しい風を吹き込むアイデア創出を、ぜひ実現させてください。

「アイデアソン」実施方法やポイントについて詳しくはこちらをご覧ください >>失敗しない「アイデアソン」のやり方とポイントを解説!
あらゆる人に起業の機会を。

Sony Startup Acceleration Programはソニーが手がけるスタートアップの創出と事業運営を支援するプログラムです。2014年から7年間で、60件以上の事業化検証、17の事業を創出(2021年3月末時点)。それらを通じて培った経験やノウハウを生かし、アイデア出しから事業運営、販売、アライアンス・事業拡大に至るまで総合的に支援する仕組みを整備し、スタートアップ支援サービスとしてみなさまにご提供しています。

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