2022.10.31
Sony Startup Acceleration Program 新規事業の基礎知識

新規事業におけるフィジビリティスタディの進め方 

新規事業の実現可能性を検証するフィジビリティスタディ。ここでは、事業化に向けた新規事業プロジェクトの各段階で行われる検証手法との違いを説明しながら、フィジビリティスタディの進め方を解説します。

フィジビリティスタディとは

「フィジビリティ(feasibility)」とは「実行可能性」「実現可能性」「実現見込み」を意味します。フィジビリティを調査・検証することを「フィジビリティスタディ」といい、「実行可能性調査」「実現可能性調査」「事業化調査」などとも呼ばれます。また「フィジビリティ」は英語の発音から「フィージビリティ」と表記されることもあります。官公庁の文書などでは「フィージビリティ」が使われているケースもあるようです。

「フィジビリティ」についての詳細はこちら>>フィジビリティとは? 意味や目的を解説

◆ フィジビリティスタディの役割
これまで自社が経験してこなかった新規事業や、リリースしたことがない新商品・サービスのプロジェクトを立ち上げる際、フィジビリティスタディを通してその実現可能性を客観的に調査・検証することでビジネスモデルの解像度を高め、さまざまなリスクを回避できるといわれています。また、調査・検証によってそれまで気づかなかった課題を発見し、その課題を解決することでプロジェクトを事業化へと導ける可能性が高まります。特に世の中に存在しなかった新しい事業や商品・サービスの場合、実現可能性を見極めることが難しいため、社会の動向や政治・経済・法規制など、あらゆる面から丁寧に検証する必要があるとされています。

 

フィジビリティスタディとPoCについて

「フィジビリティスタディ」と混同されやすい言葉に「PoC(Proof of Concept)」(概念実証)がありますが、実施するタイミングや進め方に違いがあります。

◆ PoCの進め方との違いは?
フィジビリティスタディはプロジェクトそのものの実現可能性を調査・検証するものとされています。そのため、プロジェクトの企画段階で実施し、自社が持つリソースはもちろん、業界・市場を幅広く俯瞰し、さまざまな課題やリスクをできる限り洗い出して解決案を考え、プロジェクト全体の実現の可能性を探ります。プロジェクトがスタートする前での調査・評価のため、具体的な試作品や作業現場は存在せず、机上で検討する機会が多いといえます。
一方、PoCはプロトタイプを使って課題やニーズを検証していくもので、プロトタイプが完成した時点での実施となります。実際にターゲットとなりそうな特定のアーリーアダプターにデモンストレーションを行う、大規模に展開する計画の新サービスや新システムなどを限定された場所だけで行うなど、小規模に実施することで時間やコストを抑え、課題も浮き彫りになりやすいといわれています。

  • SSAPではPoCの実行を支援しています。
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◆ 【関連用語】PoV:実現可能なプロジェクトの価値を検証
PoCとよく似たビジネス用語に「PoV(Proof of Value)」があり、「価値実証」と訳されます。PoCはプロジェクトが実現可能かどうかを見極めるものですが、PoVは実現できることがすでにわかっているプロジェクトの価値を事前に判断するものです。例えば、今ある課題を解決することで、どれほどの恩恵を受けることができるのか。課題解決のために、その新商品・新サービスが本当に必要なのか。他に解決できる方法はないのか、などを検証します。PoVは、実際にテストマーケティングや試験的運用を行うPoCよりも時間やコストが少なく済むとされています。他に、経営戦略面を確かめるための「PoB(Proof of Business)」(事業実証)というフレームワークもあります。

◆ 【関連用語】パイロットスタディ:本格的調査の前に実施する小規模調査
「パイロットスタディ」とは、本格的な消費者調査などを行う前に小規模で行う予備調査のことで、「パイロットサーベイ」とも呼ばれます。パイロットスタディを実施することで、調査の実行可能性や調査することの意義、調査方法の良し悪し、結果の見通しなどが把握でき、改善を加えて本調査をより効果的に行うことができるとされています。

イメージ図

 

フィジビリティスタディの検証ポイント

フィジビリティスタディで検証すべきポイントは、「業界・市場」「技術面」「財務面」「運用面」の4つだといわれています。

「フィジビリティスタディ」の検証ポイントについての解説はこちら>>フィジビリティとは? 意味や目的を解説

 

新規事業におけるフィジビリティスタディの進め方

フィジビリティスタディは、一般的に「課題の明確化」「要求事項のリスト化」「代替案の明確化」「結果の評価」という4つのステップで進めていきます。

 ◆ 1.課題の明確化
自社の外部に存在する業界・市場面での課題のほか、技術面・財務面・運用面で「自社が現状抱えている課題」「今後、起こり得る課題」をあぶり出し、その課題に対するベストな解決案を考えます。

◆ 2.要求事項のリスト化
課題を解決するための要求事項や制約事項をリストアップします。予算の拡充、プロジェクトのための人員の確保、新たな部門の設立、必要な設備・資材の確保、システムの導入など、さまざまな要求事項が考えられます。同時に、課題解決に要する期間や費用なども算出します。

◆ 3.代替案の明確化
フィジビリティスタディによる検証を進めていくうちに、前述の課題解決案ではプロジェクトの継続や実現が困難だと判明する可能性もあります。そのため、課題解決案には複数の代替案を用意しておくことが重要だと考えられています。状況の変化に合わせて適した代替案を選択できるよう、柔軟に対応することが効果的なフィジビリティスタディの実行につながるとされています。

◆ 4.結果の評価
事前に決定していた評価項目に基づいて、フィジビリティスタディの結果を評価し、報告書にまとめます。

  • フィジビリティスタディで評価すべき項目とは
    評価にあたっては、一般的に「プロジェクトの目的と課題」「要求事項・制約事項」「課題解決案」「実現可能性と期待できる効果」の4つを特に重視します。一時的にリスクがあっても、最終的に利益を獲得できるのか、その事業が自社にどのような好影響を与える可能性があるのかを考えて評価する必要があるといわれています。フィジビリティスタディの結果、自社にとって有益なプロジェクトと判断できれば、プロジェクトを進めます。反対に、「採算がとれる可能性が低い」「リスクに見合った効果が期待できない」という結果が出た場合は、プロジェクトの中止という判断に至る場合もあります。また、フィジビリティスタディから一定の期間が経過したら、再評価を実施することもあります。再評価では業界や市場の変化を踏まえて、自社の技術・財務・運用面を俯瞰して見直すことができるため、プロジェクトを事業化へと近づける助けになるといわれています。

 

フィジビリティスタディの活用例

フィジビリティスタディは多くの企業で実施されているようです。例えば、以下のようなケースが想定できます。(いずれも架空の事例です)

◆ 上手く活用できたケース
海外輸出事業を行うA社では、新規の輸出先としてB国を開拓するため、フィジビリティスタディを実施。その結果、B国は政治・経済・社会面では比較的安定しているものの、パートナーとなる現地企業の選定に時間とコストがかかる見込みだと判明しました。そこでまずパートナー企業開拓のための人員を送り込み、業務委託契約の締結が確実となってから駐在所を設置して商品輸送を開始。B国でのビジネスを問題なく開始することができました。

◆ 上手く活用できなかったケース
C社はEC販売の新規事業を始める前にフィジビリティスタディを実施。これまで自社内で経験がなかった事業ではあるものの、提携する企業が開発したアプリケーションが高評価を得たため、自信を持って事業をスタートさせました。しかし、発足当初にアプリの不具合で消費者から多くのクレームを受け、対応する人員を増やすことになりました。見込んでいた利益が得られず、運用面の評価指標が不十分だったことがわかりました。

評価項目の設定や評価指標が不十分な場合、フィジビリティスタディ自体が失敗に終わることもあります。何をもってよしとするのか、明らかにしておくことが重要だといえます。

 

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Sony Startup Acceleration Programはソニーが手がけるスタートアップの創出と事業運営を支援するプログラムです。2014年から9年で、130件以上の事業化検証、20の事業を創出(2022年9月末時点)。それらを通じて培った経験やノウハウを生かし、アイデア出しから事業運営、販売、アライアンス・事業拡大に至るまで総合的に支援する仕組みを整備し、新規事業支援サービスとしてみなさまにご提供しています。

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