事業計画書には決まったフォーマットというものはありませんが、ソニーの新規事業開発の視点ではスタートアップの事業計画書には、投資家や支援者などに理解してもらうために、工夫すべきポイントがいくつか存在します。ここではスタートアップを始める人に向けての、事業計画書の作り方を解説します。
事業計画書とは?
事業計画書とは、起業家や事業を運営する人が、自分の事業をどのように展開していくのかを可視化したものです。投資家に出資を求める際や、銀行など金融機関に融資を申し込む際に提出する書類にもなります。
スタートアップの事業計画書の特徴とは?
提示する相手は何を見ているか
事業計画書の主な目的は、投資家や金融機関に事業の内容を説明し資金調達することです。とくにスタートアップの事業計画書の場合は、その事業に投資する価値があるかどうかを判断する情報として、事業の社会的インパクトやビジネスの成長性、将来性などが重要視されることが多くあります。また、社内スタートアップであれば既存事業とのシナジーも問われるケースがあります。さらに、起業家本人の実績、経験、人柄も重要な判断材料となります。
数値の緻密さよりもビジネスモデルや将来性
既存事業の事業計画書は、過去の事業実績に基づいた根拠のある数字を求められることが多いです。一方で、スタートアップの場合は前述のとおり、ビジネスの成長性や将来性が重視されることが多く、事業内容の社会的インパクト、ビジネスモデルの独自性や実現性、競争優位性や成長戦略を語る必要があります。また、スタートアップの事業計画書でもさまざまな数値を提示する必要がありますが、既存事業のように正確に予測することは難しいため、数値に捉われ過ぎず、市場規模の大きさなど、将来にわたって利益を生み出せるポテンシャルを示すことが重要だといわれています。
ニーズの検証結果が求められる
今までになかった商品・サービスを展開するスタートアップの事業計画書においては、ニーズの検証結果も重要視されます。米国の調査会社CB Insightsの調査「失敗したスタートアップ101社」(※)によると、スタートアップの事業計画の失敗でもっとも多いのが、「市場ニーズがなかった」。これは事業計画策定時に市場ニーズ調査やユーザーインタビューを行っていれば防げたかもしれません。スタートアップの事業計画書において、ユーザーインタビューなどでニーズの検証結果を明記することは、欠かせない要素といえます。
スタートアップの事業計画書に必要な項目
スタートアップの場合、自社の技術や商品・サービスを語る前に、「その商品・サービスを必要とする顧客・ユーザーは誰なのか」「その商品・サービスで解決したい顧客・ユーザーの課題は何なのか」「顧客・ユーザーはどれほど存在するのか」など顧客・ユーザーの目線から入ると、投資家や支援者に事業計画を理解されやすくなるといわれています。その上で、自社の「ビジネスモデル」を語り、競合に勝つための「競争優位性と経営戦略」へと展開すると、説得力が増していきます。
事業計画書に盛り込んでいない内容も「想定問答集」で準備する
事業計画書を使って投資家や金融機関、取引先、社内外の協力者に説明をする際、相手の立場によりさまざまな質問を受けることになります。とくに投資家や金融機関は事業計画書を読むプロフェッショナルです。事業計画書には書かれていないリスクや自社の弱みなどについても質問を受けることがありますので、あらかじめ想定問答集を用意しておくことをおすすめします。
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スタートアップの事業計画書のポイント
経営者の実績、経験、熱意が重視される
既存事業とは異なり、起業前のスタートアップはまだ事業の実態がないため、経営者の実績、経験、熱意が重視される傾向にあります。スタートアップにおいては、先行きが不透明な中でも粘り強く事業計画を推進する精神力、プロジェクトメンバーや取引先と互いに理解し合えるコミュニケーション力などが必要とされます。事業計画書の内容にも、起業家や主要メンバーの過去の実績、経歴を盛り込み、また事業計画をプレゼンテーションする際には熱い思いを伝えることが重要です。
世の中の変化を捉え、大局観を説明する
社会の変化は速く、消費者ニーズも年々移り変わっています。コロナ禍やリーマンショックのように短期間でグローバルな社会変化が広がる傾向もあり、業界全体が変革の波に晒されることも珍しくありません。一般的に投資家は大局観で事業を見ることが多いため、スタートアップの事業計画書では、短期的な利益を追求することよりも、長期的、かつ全体的な視野で事業の成長性を示すことが重要となります。
聞き手の目線に合わせる
事業計画書は資金を調達したり、協力者を募ったり、社外と提携やアライアンスを組むなど、さまざまな用途に利用されます。見せる相手や見せる理由により、強調したい点や理解してもらいたい点が異なることがありますので、都度相手にわかりやすいプレゼンテーションや見せ方などを調整していくことも必要です。
事業のポテンシャルの高さを示す
スタートアップが画期的な技術やサービスを持っていても、どれだけニーズがあるか分からないなど、成長性に疑問符がつくような場合は投資家から「事業のポテンシャルが低い」と判断されかねません。そのような事態を避けるために、事業の「トラクション(牽引力)」をアピールすることをおすすめします。起業直後に事業を牽引するための初期顧客を獲得している事実や、顧客が急激に増える見込みとその根拠を示すことで、事業のポテンシャルをアピールできます。
実現性を明確にする
仮に目新しい事業計画であっても、実現の可能性が低いとみなされると資金調達は難しくなります。事業計画の実現性の高さを具体的に証明するには、ユーザーインタビューなどのニーズ検証だけでなく、商品開発やオペレーション、資金面など事業全体の実現性について根拠を提示することが重要です。また、前述のトラクションを示すことも、実現性の高さを感じさせる要因になります。実現性が低い要素があれば事業計画の見直しを行ってください。
競合との差別化を明確にする
競合との差別化を明確にするためには、まず競合の商品・サービスをよく調べる必要があります。そして差別化できる点を具体的に洗い出し、事業計画書に自社の優位点を記載します。差別化の内容は、機能・サービス内容、品質、価格、流通体制などさまざまですが、客観的事実や数値で示すとより説得力が増します。
事業計画書は事業を成功させるための手段。ツールを使って効率的に作成する方法も
事業計画書を作成するには、たくさんの項目を検討しなければならず、時間や手間がかかるものです。また、自分では時間をかけて考えたつもりでも、投資家から見たときに必要な情報が漏れていることもあります。ツールを使うことで抜け漏れなく効率的に事業計画書を作成することができます。
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