2022.08.29
Sony Acceleration Platform 新規事業の基礎知識

マーケティングの「ペルソナ」とは?

マーケティングや商品開発に携わるうえで、必ずと言っても良いほど耳にする「ペルソナ」という言葉。「ターゲットの人物像」程度に大枠は理解しているものの、何のためにペルソナを使うのか、具体的にどのように作成すればいいのかなど、一歩踏み込んで理解している人は多くないかもしれません。今回は、マーケティングにおける一般的な「ペルソナ」の役割と重要性、設定するメリットとわかりやすい作り方を紹介します。

ペルソナとは、典型的なユーザー像のこと

「ペルソナ(persona)」はもともと、分析心理学で有名なユングが提唱した心理学用語です。一般的には人間が周囲に見せる仮面のような側面を指して使われますが、マーケティングでペルソナと言う場合には「商品やサービスを利用する(あるいは利用してほしい)典型的なユーザー像」のことを意味します。

◆ 「ターゲット」とは何が違う?
“商品やサービスのユーザー像”という点で、ペルソナをターゲットと同義で捉えている人もいるかもしれません。しかし大きく異なるのは、ターゲットが「20代/男性/会社員」といった「属性」で表されるのに対し、ペルソナは「個人」であるということです。ターゲットの中の1人をより具体的に描いたものがペルソナ、と考えると分かりやすくなります。

例:ターゲット 20代/男性/会社員、ペルソナ 早川楓太/28歳/男性/システムエンジニア/東京在住/独身・実家に父母と居住/趣味はサッカー観戦。自身でもプレイする

◆ BtoCにおけるペルソナ例
BtoCマーケティングにおいてペルソナを設定する場合、一般的には以下のような項目を具体的に描いていきます。架空の人物ですが、現実に存在しているような詳細な設定をします。
・名前
・年齢
・性別
・職業
・居住地域
・家族構成
・趣味
・情報収集方法やSNSの活用有無
・友人や家族との連絡方法
・休日の行動、過ごし方
・よく買い物をする場所
・買い物をする際の判断基準
・好きな雑誌、テレビ番組、音楽など
・迷ったときに誰に相談するか

項目が進むにつれ設定の細かさに驚かれたかもしれませんが、商品やサービスによってはさらに細かい設定も必要です。例えばフード関連のサービスであれば、上記に加えて「普段利用するスーパー」「食選びの重視点」「自炊の割合」なども設定していきます。

◆ BtoBにおけるペルソナ例
BtoBマーケティングにおいては、購入や採用のプロセスに関わる人物が複数になるため、BtoCよりペルソナ設定がやや複雑になります。具体的には、下記の3つのペルソナを考えます。

組織ペルソナ、担当者ペルソナ、決裁者ペルソナ
  1. 組織ペルソナ:業界、市場規模、企業規模、事業課題、意思決定プロセス、実現したいことなど
  2. 担当者ペルソナ:役職・役割、ビジネススキル、現在のお困り事、情報収集方法など
  3. 決裁者ペルソナ:役職・役割、抱えている課題、意思決定時の重視事項など

このほか、相手の組織体系や業種を踏まえながら購入プロセスに関わる人たちを具体的に想定し、必要な数のペルソナを描いていきます。

 

ペルソナを設定すると、訴求力が高まる

例えば誰かに贈り物をする場合、よく知る友人であればどのような商品が欲しいかを想像できますが、まったく知らない相手が対象だと何を選んでいいのか分からないことがあります。マーケティングも同様で相手を具体的に想定することで、その人の抱えるお悩みや、それを解決するためのアプローチ方法がイメージしやすくなります。
たくさんの人に売ろうと闇雲にターゲットを広げると、商品や発信のコンセプトが曖昧になり、かえって誰にも届かない企画になることもあります。ペルソナをしっかり設定することで、コンセプトが明確になり、特定の層から深く共感される訴求につながるといわれています。

 

訴求力UP以外にも! ペルソナ設定のメリット

ペルソナ設定は見込客への共感性を高めるだけでなく、プロジェクトを進めるうえでも大きなメリットがあります。

◆ チーム内で共通のイメージを共有できる
大まかなターゲット属性だけでは、プロジェクトに関わるメンバー間でイメージする人物像がバラバラになってしまうことがあります。しかしペルソナを細かく設定しておけば、ブレのない人物像を全員で共有することができ、企画やクリエイティブの方向性を定めやすくなります。

◆ 客観的な判断が下しやすくなる
何か物事を判断する際、個人的なバイアス(物事の見方に対する偏り)や先入観を持ってしまうことが少なくありません。ペルソナ設定は、そうした自分自身のバイアスを取り払い、認識のズレを正してユーザー視点の判断を下すために非常に効果的です。
「○○さんならどう考えるだろう?」とペルソナを思い浮かべながら考えを進めることで、自社の都合に偏った判断になっていないか、ユーザーは本当に喜ぶだろうかと、客観的に考えやすくなります。

 

ペルソナをつくるデメリットとは?

メリットが多い一方で、ペルソナ設定はそれなりに時間がかかる作業です。時間や工数が十分ではないプロジェクトの場合、ペルソナ設定に時間をかけすぎることが必ずしも効果的でない場合もあります。
また、取り扱う商品やサービスが多岐にわたる場合は、複数のペルソナ設定が必要になります。闇雲にペルソナ設定を行うのではなく、施策の目的や規模感などから「どこまで設定するのか」を判断することが大切だといわれています。

 

ペルソナ設定のコツと注意点

上記のデメリットを念頭に置いて頂きたいだけでなく、ペルソナ設定を行う前に知っておきたいコツや注意点を以下にまとめました。すでに業務でペルソナ設定を実践している人も、思い当たる点がないか振り返ってみることをおすすめします。

◆ 先入観や想像だけで描かない
「どんな人に買ってもらいたいか」を考えていくと、どうしても自社にとって都合の良い顧客像をイメージしてしまいます。しかしこれから買ってもらいたい相手は、言い換えれば「現時点で買っていない人」だと考えられます。その人にどのようなニーズがあり、なにが障壁となっているのか、思い込みや理想ではなく実際の声やデータを参考にして考えることが大切だといわれています(※詳しくは後述します)。

◆ 身近な人を参考にする
ペルソナを描くには、ターゲット層に当てはまり、イメージに近しい実際の人物をベースに考えるのが一番着手しやすい方法です。生活からあまりにかけ離れた人物だとイメージしづらい場合があるので、まずは家族や友人の中から探してみるのがおすすめです。
ただし商品やサービスによっては、ターゲット層に当てはまる人が身近にいないこともあります。そうした場合は、ターゲット層が読みそうな雑誌やWebメディアなどをリサーチし、その読者やフォロワーをモデルに考えていくのも1つの手です。

◆ 設定を細かくしすぎない
1人の人物を深掘りしていくペルソナ設定は興味深く楽しい作業なので、ついつい細かく考え過ぎてしまう場合があります。しかし、商品やサービスに関係のないことまで設定しても、時間とコストがかかる一方になってしまうかもしれません。
ペルソナ設定のプロセスでは、目的を忘れないことが肝心といえます。商品・サービス開発におけるペルソナ設定であれば、ユーザーが喜ぶ機能やポイントを見つけるため。マーケティング施策におけるペルソナ設定であれば、購入に至るまでにどのような情報を必要としているかを知るため。そこから外れた細かな情報収集に、時間を割きすぎないことが大切だといわれています。

◆ 必要に応じて修正を
用意したペルソナをもとにプロジェクトを進めていくと、想定とは異なる事実が見つかることもあります。つくり上げたペルソナに固執せず、定期的に設定を見直すことで、よりリアリティのあるペルソナをつくりやすくなります。

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ペルソナ設定 3つのステップ

以上のコツと注意点を踏まえたうえで、ここからはペルソナ設定の基本となる3つのステップをご紹介します。

◆ ステップ1:お客様アンケートやインタビューで「リアルな声」を収集
注意点の1つ目に「先入観や想像だけで描かない」を挙げましたが、ペルソナ設定は想像だけでなく実態をもとに設定することが重要です。一般的に、まずはリアルな声の収集から始めます。
例えばお客様アンケートで収集したデータや、SNS・インターネットから集めたコメント、ターゲット層に当てはまる人物から実際にインタビューして聞き出した意見などは、ペルソナ設定の重要な要素になります。

◆ ステップ2:集めたデータをグルーピングする
データを集めたら、年齢・性別・職種・家族構成などの属性や、人格・価値観・興味・ライフスタイルなどの視点からグルーピングします。
この時、数の少ない特殊な声や事例をペルソナのベースにしても、あまり効果的とはいえません。ターゲットとする人たちの中にどういった傾向が見られるかを分析し、ペルソナに採用する属性や考え方を慎重に選択していきます。

◆ ステップ3:ペルソナ像を具体的に書き出す
「BtoCにおけるペルソナ例」で挙げた項目などを参考に、具体的な人物像を設定していきます。目的から外れた細かな設定まで掘り下げる必要はありませんが、文字だけで書き出すのではなく、写真やイラストなどのビジュアルイメージも合わせて考えることをおすすめします。ファッションや雰囲気など、言語化しづらい部分のイメージを共有しやすくなります。

こちらの記事で、ペルソナの作成方法を詳しく紹介しています。>>新規事業開発に有効な「ペルソナ設定」の進め方

 

マーケティングにペルソナをどう活かす?

ペルソナができあがったら、いよいよ業務の中にペルソナ視点を取り入れていきます。活用方法はさまざまですが、マーケティングにおいて真っ先に実施すると良いとされるのが「ペルソナをベースにしたカスタマージャーニーマップの作成」です。
カスタマージャーニーマップとは、ユーザーが商品・サービスを知ってから購買に至るまでのプロセスを可視化したものです。このカスタマージャーニーを具体的なペルソナ視点で作成することで、どのタイミングでどういった情報を求めているのか、情報接点はどこかなどを明確にしやすくなります。そしてそれらをベースにコンテンツや施策を企画すれば、より深く見込客に届く、鋭いマーケティングを考えることができるといわれています。

 

商品企画をするなら、ぜひペルソナ設定を!

商品やサービスの新規開発においては、ペルソナ設定が非常に重要になると考えられます。どういった暮らしをしているのか、その暮らしの中でどのような機能やサービスを求めているのか…使う人の日常ストーリーを鮮明に思い浮かべることができれば、既存の思い込みや先入観に縛られない、新たな開発のヒントが見つかるかもしれません。
実際にペルソナを活用することで、国内でも「これまでなかったジャンルのサービスが誕生した」「製品の新たな売り込み先を発見できた」などの成功事例が数多く生まれているようです。
また、商品の細かな仕様を決める際にも、いかに具体的な用途や使用シーンをイメージできるかが要になります。その場合も、ペルソナに基づいたユーザーシナリオがあることで、より適切かつスムーズに仕様を策定することが期待できます。

◆ 自社だけでは不安な方へ、SSAPがペルソナ設定から商品開発までサポート
Sony Startup Acceleration Program(SSAP)では、商品・事業開発に必要なプロセスを一気通貫でサポートする事業開発支援サービスを提供しています。ペルソナ設定のお手伝いはもちろん、商品仕様への落とし込みも一緒に考え支援いたします。ぜひ一度ご相談ください。

Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、760件以上の支援を25業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2024年10月末時点)

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