2021.12.28
Sony Startup Acceleration Program 新規事業の基礎知識

「共創」とは? ソニーの事例も紹介

この数年、「共創」という言葉をビジネスシーンでよく耳にするようになりました。「共創」とは何か? なぜ今、「共創」が求められているのか?「共創」が生まれた社会背景と実践する際に押さえておきたいポイントをご紹介します。

共創(コ・クリエーション)とは

「共創」という言葉は英語の「co-creation」の日本語訳で、2004年に米国ミシガン大学ビジネススクール教授のC.K.プラハラードとベンカト・ラマスワミが共著『価値共創の未来へー顧客と企業のCo-Creation』の中で述べた概念が始まりと言われています。
企業がそれまで自社内だけで行ってきた企画・開発・事業化活動などを消費者、協力企業、教育機関、研究機関、自治体など、さまざまなステークホルダーと対話・協業しながら進め、既存商品の改善や新しい商品・サービスの開発、さらには新しいビジネスモデルを生み出していくことを指します。最近では「オープンイノベーション」の要素を含んだ考え方として広義で使われるようになり、新規事業の開発においても共創を取り入れていく動きが広まっています。

 

共創が必要とされている理由

人々の価値観や嗜好やライフスタイルが多様化し、求める商品・サービスも画一的でなくなった今、企業は多角的な視点で開発に臨む必要があります。また、グローバル化・情報化が進み、社会の変化のスピードが速くなり、商品やサービスの消費サイクルも加速しています。一度は業界内で競争優位を確立できても、ほどなく市場が変化して優位性を失うケースも少なくありません。このような消費社会の変化に対して、一企業の力だけで対応するのではなく、さまざまなステークホルダーとともに新たな価値を創造していこうとするのが共創です。
未来が見通しづらいVUCA(※)の時代に企業の成長を支える策の一つとして、注目されています。

※VUCAとは先行きが不透明で、将来の予測が困難な状態のことをいいます。詳しくはこちらの記事をご覧ください>>#36VUCAの時代を生き抜くために 企業や私たち個人には、どんな力が必要か?

 

共創が生み出す効果

自社以外の相手と共創することで、これまでになかったニーズに気づき、自社だけでは生まれなかったアイデアを発想し、自社にはない技術を使って新規の商品・サービスの開発が可能になるといわれています。その結果として、市場に新しい価値を創造し、ビジネスイノベーションを起こす可能性も考えられます。
また、共創することで技術やノウハウを獲得できるだけでなく、アイデアの生み出し方や新たなマーケティング手法、これまでになかった販路なども獲得でき、社内の人材育成面からも良い影響をもたらすと思われます。

 

共創の3つのタイプ

共創は、相手との関係により3つのタイプに分類できます。

◆ 双方向
企業が一方的に顧客に商品やサービスを提供するのではなく、顧客とともに課題に取り組み、解決策を考え、新たなビジネスモデルを構築していくものです。顧客からのフィードバックは自社商品・サービスの向上のためのアイデアの宝庫であり、共にソリューションを考えることで新商品・サービスの開発の端緒になる可能性もあります。この関係では、顧客をビジネスの相手として見るのではなく、フラットな視点で「共に解決していく」「共によりよいものを創り出していく」相手と捉えることが重要です。

◆ 共有
一つの課題やテーマに対して、企業・研究機関・自治体などがコンソーシアムやコミュニティを設け、オープンに議論し、アイデアを出し合うものです。同じ課題へのアプローチであっても、視点が異なる相手から出されるソリューションは自社内で想定できなかった内容が含まれているかもしれません。この関係では、特定の人に依存したり、誰かが利益を独占したりするのではなく、それぞれが自発的にリーダーシップを発揮し、参加者全員が各専門分野で新たな価値の創出のために動くことが理想です。

◆ 提携
一つの課題に向き合うとき、垂直統合型ビジネスでは企画開発費の高騰や人材不足、社内の無理解などにより、どこかにボトルネックが生まれてしまうと、プロジェクトの推進が難しくなりがちです。そこで共創により、自社内で不足しているアイデア、技術、人材などを外部との連携により確保し、価値を生み出していこうとする関係です。昔からよくある発注者と提携業者という関係ではなく、対等なパートナーとして共有の場で忌憚のない意見を述べ合い、目的に向かって協業します。この提携の関係では、業界の違いや企業の規模などによる上下関係を持たず、互いに不足しているものを補い合う姿勢が重要です。

イメージ図

 

「オープンイノベーション」も共創の一つの手段

共創には知見や成果を共有するオープンな環境が欠かせません。組織を超えてこれまでにない新しい価値を生み出すイノベーティブな取り組みとして、「オープンイノベーション」も共創の一つの形態といえます。

Sony Startup Acceleration Program (SSAP)では、オープンイノベーションによる企業間連携を進めています。詳しくはこちらの記事をご覧ください>>【連載】「ソニー・京セラ・ライオン」大企業の三社共創、9か月でアイデアが形に

◆ オープンイノベーションとは
オープンイノベーションとは、社内社外の垣根なく、アイデアやノウハウ、知識、技術を採り入れ、革新的な商品・サービスやビジネスモデルなど、新たな価値を創出するイノベーション手法です。連携する相手は他社、大学、研究機関、自治体など多種多様で、それぞれが持つ技術や強みやノウハウを提供し合うことで新たなアイデアや技術・商品・サービスが生まれやすくなるといわれています。また、自社内で一から技術や人材を育成しようとすると膨大なコストと時間を要しますが、すでに技術やノウハウを持っている企業や組織やスペシャリストと組むことで、短期間で成果を挙げやすくなります。

オープンイノベーションについて詳しくはこちらの記事をご覧ください>>#11オープンイノベーションとは ー メリット、課題、組織作りまで、成功のポイントを解説しますー

 

共創の実践に必要なことは

実際に共創を行うには、共創パートナーと「技術」「価値」「体験」の3つを共有することが必要だといわれています。

◆ 技術の共有
企業の技術力とは一朝一夕に築き上げられるものではなく、技術系人材の育成とともに時間をかけて培われるものです。技術を一から構築するには膨大な時間とコストと労力が必要ですが、共創パートナーから自社にない技術の提供を受けたり、自社の技術を提供したりすることで、比較的スピーディに業界の中で技術的優位性を築ける可能性があります。

◆ 価値の共有
社会のどんな課題を解決したいのか。ユーザーのどんなニーズに応えたいのか――そもそも共創するための目的が一致していなければ、プロジェクト成功の可能性は低くなりがちです。共創パートナーとは所属する組織は異なっても、同じビジネスの価値を追求することを確認し合い、ともに全力でプロジェクトに臨む姿勢を日頃から示しておくことが大切です。

◆ 体験の共有
共創を進めていく中で、パートナーの事業や技術や強みなどを実際に体験し、「この技術はすごい」「ここから学ばせてもらおう」と考えるようになると、相手への理解と信頼感が深まります。プロジェクトの立ち上げからアイデア出し、開発、ビジネスモデル構築、事業化準備へと進む過程で多くの体験を共有することで、互いの強み弱みを知り、団結力も高まりやすくなります。

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SSAPでの共創の事例

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)での共創の事例をご紹介します。

◆ 1年で新商品を開発。京セラ&ライオン&ソニーの共創プロジェクト
2021年5月、京セラ株式会社で一般販売が始まった子ども用仕上げ磨き用ハブラシ『Possi』。「歯磨きを嫌がる子ども向けに、音楽を楽しむことができる歯ブラシがあれば…」という京セラのエンジニアの発想からスタートし、2018年10月、SSAPに新規事業立ち上げの支援を依頼。SSAPが事業化ノウハウを提供し、事業化支援アプリ「StartDash」などを利用するうちに歯ブラシの技術と知見が必要であることが明確になり、ライオン株式会社に事業計画をプレゼンテーションしました。その結果、2019年1月に共創パートナーとして参画してもらうことになり、3社合同プロジェクトとして再スタート。「顧客視点」「本音でコミュニケーション」「時間厳守・スピード重視」をモットーにプロジェクトを進めました。2019年7月にはソニーのクラウドファンディングにも挑戦し、2,000万円の目標金額をクリア。2020年12月、事業化を実現しました。

Possi連載ページ
【連載】オープンイノベーションによる企業間連携 Possi誕生ストーリー
ソニーの新規事業支援プログラム SSAP紹介パンフレット 無料ダウンロード

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は、「あらゆる人に起業の機会を。」をコンセプトに、2014年に発足したスタートアップの創出と事業運営を支援するソニーのプログラム。ソニー社内で新規事業プログラムを立ち上げ、ゼロから新規事業を創出した経験とノウハウを活かし、2018年から社外にもサービス提供を開始。経験豊富で幅広いスキルとノウハウをもったアクセラレーターの伴走により660件以上の支援を24業種の企業へ提供。大企業ならではの事情に精通。(※ 2024年3月末時点)

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