Sony Startup Acceleration Program(以下SSAP)は2019年9月より学校法人立命館(以下、立命館)が設立した「立命館・社会起業家支援プラットフォームRIMIX(Ritsumeikan Impact-Makers Inter X(cross))」と連携し、学生・生徒・児童のアイデアのブラッシュアップ、事業化への課題検証等を支援しています。2019年度は、総長ピッチチャレンジ(※)に参加する学生に向けてSSAPがアイデアを形にするための支援を行い、2020年度も継続してワークショップやトレーニング、コーチング等を行っています。
今回は、立命館大学 財務部次長 兼 人事部次長の酒井 克也さんと、SSAPのプロデューサー 宮崎 雅に、取り組み開始の経緯や両者の目指す姿について、インタビューしました。
SDGs等の社会問題を解決する人材を育てたい。
――立命館は、2019年12月に「立命館・社会起業家支援プラットフォーム RIMIX」を発表されていますが、これは具体的にどのようなものでしょうか。
酒井:RIMIX は、SDGsに代表される複雑な社会課題をビジネスを通じて解決する人材育成のために、立命館学園内外の交流・連携を充実・活性化することを目的として設けたプラットフォームで、Ritsumeikan Impact-Makers Inter-X(cross) Platformの略となります。RIMIXは、本学園の学生・生徒・児童が持つ問題意識発の挑戦を支援するものです。小学校から大学院までを有する本学園の一貫教育の特長を活かし、起業のきっかけ作りから資金的な支援(ファンド)までを可視化し外部の機関とも連携しながらシームレスに支援しています。この支援により、社会にインパクトを与える人(Impact-Maker)の輩出、またそのような人たちがRIMIXに関わることで更なる発展を目指すエコスシステムの確立を目指しています。
――RIMIXの活動では、SSAPも支援をさせていただいています。立命館の酒井さん、SSAPの宮崎さん、それぞれの今回の取り組みでの役割をお教えください。
酒井:私は学園の取り組み全体を俯瞰し、本学園が有していないプログラムやスキームを整理し、外部の協力してくださる機関を探しながら具体化・充実させるような役割を担っています。
宮崎:立命館さんとの取り組みでは大きく2つ、「プログラムの企画支援」と「プログラムの運用支援」を担っています。企画支援ではワークショップやトレーニングなどの企画の提案やアドバイスを行っています。運用支援では、学生へのメンタリングや総長ピッチチャレンジ前のオーディションで審査員も務めさせていただきました。
小学校から大学院まで一貫した支援を。“事業創出”をSSAPが補完する。
――RIMIXの活動の中で、立命館としてSSAPと連携することになった経緯はどういったものだったのでしょうか。
酒井:ソニー内の他の部門の方とお仕事をさせていただく機会があり、その方に当時はまだ形になっていなかった「RIMIX」構想をお話したところ、SSAPの小田島さんを紹介いただきました。品川にあるCreative Loungeを見学させていただき、SSAPの保有されているリソースをお伺いする中で、「いま立命館に足りていない部分を補完していただけるのではないか」と考え協業することを決めました。
――SSAPとの連携を決められたポイントがあれば、お教えください。
酒井:本学園には、社会貢献・連携やアントレプレナーシップ教育等についての様々なコンテンツがあるものの、社会課題への意識・関心を抱いてから起業・事業立ち上げまでのプロセスを俯瞰した組織的な活動ができていませんでした。このような課題認識に対して、ソニーはこれまでウォークマン®、aibo等、誰も形にしていなかったアイデアを形にされて来た、日本を代表されるメーカーであること、さらにその中でSSAPが社内で専門の部門として独立していて、近年多くの新規事業創出の実績があったことが一番のポイントでした。
さらに、Ideation, Incubation, Marketing, Expansion の4つのサービスを通じて、スタートアップの創出と事業拡大までを一気通貫でサポートしていることとそれらを支える様々なバックグラウンドを持つ多くのアクセラレーターがいて、多様なアドバイスが受けられそうと感じたことも非常に魅力的だと感じました。
今後、取り組みを豊富化してきたいと考えている中で、どのようなフェーズにおいても、ご相談させていただけるのではないかと感じたことも理由の一つです。
――SSAPとして立命館との連携、RIMIXへの参画の促進を決めた理由は何だったのでしょうか。
宮崎:SSAPは「あらゆる人に起業の機会を」というスローガンを掲げて起業家支援プログラムを提供しています。その中の1つに起業家教育プログラムもあります。RIMIXは社会課題に取り組む社会起業家を目指す学生を支援するプラットフォームということで、我々が実施している活動と大変親和性が高く、お役に立てる部分もたくさんあるな、と感じたのが大きな理由です。また立命館の事務局や先生の方々が学生のことを本気で考えていて、先進的な取り組みをいくつかすでに実施されていたことも、是非一緒にプログラムを作っていきたいと思った理由でした。
――2019年度、総長ピッチチャレンジに向けて支援させていただきましたが、立命館側・SSAP側共にどのような発見・成果がありましたか。
酒井:2019年度は主にIdeationの部分で支援をいただきました。体系だったプログラムの提供をいただいたこと、プログラム終了後のSSAP担当者による学生のメンタリング・フォロー等をいただいたことが、学生のアイデアを形にすることが出来たと同時に、プレゼンの手法等伝え方まで支援いただきその全てが学生にとっては貴重な学び・経験になったと感じています。
昨年度総長ピッチに参加した学生は、すでに起業をした学生、アイデアをブラッシュアップしている学生、新しい分野に挑戦している学生、そしてRIMIXの事務局のサポートに回ってくれている学生等、総長ピッチで終わりではなく自分たち自身で新しい課題・テーマを見つけ継続的に活動を続けています。
宮崎:普段は社会人の方々に支援させていただくことが多いのですが、立命館の学生と接して感じた特徴は大きく2つあります。1つは「多様性を重視していること」、もう1つは「グローバルな視点」です。
前者は個人の考え方や性差を越えてよりフラットな関係性や繋がりを意識している学生が多いことに気づかされました。デジタルネイティブな学生はSNSなどを通じて普段から他人との繋がりをより密に行っているイメージがあるのですが、それ故に人との繋がりに敏感でよりフラットな関係性を求める傾向があるように思えます。男女によってこうあるべきといった固定観念に疑問を投げかけるような提案もたくさんあるのでこちらがハッとされることも多々ありました。
「グローバルな視点」という点では、いまの学生は海外の学生と接する機会が多いせいか、日本に留まらずグローバルな視点で課題意識を持ち、まさに地球市民といった視点での問題提起が多いです。日本に留まらず、海外の教育や食料問題を取り扱うアイデアが多いのには驚きましたね。そういった社会課題を解決しようと頑張っている姿勢が印象的でした。
コロナ禍、参加学生は2倍。社会に大きなイノベーションを起こす活躍を。
――今年度は既にワークショップ・インプット等が開始されていますが、昨年度から何か変化等はございましたか。
酒井:今年度のプログラムには約80人の学生が参加しています。昨年度は構想の発表から総長ピッチまでの期間が大変短く、全体への周知ができていない部分もありましたが、総長ピッチが成功したお陰で内部での認知が広がりました。今年度はコロナ禍の中で、逆にオンラインのメリットを活用し、立命館大学のみならず、北海道の立命館慶祥高等学校から大分の立命館アジア太平洋大学まで多くの学生に参加いただき、参加人数は昨年度の2倍近くまで増えています。また、専門分野を活かして協力してくださる教員も出てきました。
全体のスケジュール感としては、下記をベースにプログラムが進行しているところです。
――今後の立命館とSSAPの取り組みに期待することをお教えください。
酒井:昨年度から取り組みをはじめ、今年度はIdeation, Incubationのプログラムで協業をお願いしています。参加した学生・生徒が、取り組みの中での経験を通じて、次のフェーズに進み起業し、Marketing, Expansionのプログラムで協業をお願いできるようなことが出てくることを期待しています。また、この取り組みに関わった学生がどのような形であれ世界のどこかで社会に大きなイノベーションを起こすような活躍をしてくれたら教育機関としては最高の喜びではないかと考えています。
宮崎:このプログラムから実際に社会起業家として活躍する方々をたくさん創出していきたいと思っています。そのような実績を積み重ねていく中で、学生の皆さんには卒業したら企業に就職をするという以外に、社会起業家を目指すというキャリアパスがある、ということを当たり前のように思ってもらえるようにしていきたいです。
今年度は大学生だけでなく、中学生や高校生もプログラムに参加してもらっています。起業家教育というのが特別なものでなく、若いうちから学んでいただき、早い段階から社会やそこにある課題に興味を持ってくれるようになるといいなと考えています。
今後も立命館の方々と一緒に社会課題の解決に本気で取り組みたいと思う、才能とやる気のある学生を全面的に支援していけたらと思っています。