2020.07.07
医療系ベンチャー、乳がん早期発見への挑戦 マイクロソニック株式会社

#01 MAMMOECHO開発のきっかけと、描く未来

Sony Startup Acceleration Program(以下SSAP)では、これまで培ってきた経験やノウハウを、スタートアップの事業化支援サービスとして社外にも提供中です。2019年10月からは、医用超音波に関する研究開発及びコンサルティングを行うマイクロソニック株式会社(以下マイクロソニック)にコンセプトデザインのサービスを提供。2020年7月に自宅で簡単に乳がんチェックが行える MAMMOECHOを発表しました。
MAMMOECHOの構想が生まれた経緯や、SSAPがどのようにサポートさせていただいたか等を、連載にてご紹介してまいります。

今回は、マイクロソニック株式会社 代表取締役 入江 喬介さんと、技術顧問の近藤真一さんに、プロジェクトの誕生の経緯や製品化にかける想いをインタビューしました。

乳がんの早期発見に貢献したい。二人三脚で始まったMAMMOECHOの構想。

――お二人のこれまでのキャリアと、本プロジェクトでの役割をお教えください。

入江:私はこれまでのキャリアで一貫して、超音波に関する研究開発や製品化・マーケティング等に携わってきました。株式会社日本無線医理学研究所での研究開発や、超音波診断装置で有名なAcuson(本社:アメリカ)日本支社の代表取締役副社長を経て、2000年にマイクロソニック株式会社を設立。現在は代表取締役社長として医用超音波に関する研究開発及びコンサルティングを行っています。今回のMAMMOECHOの件では、プロジェクトの提案者というところでしょうか。

入江 喬介さん   マイクロソニック株式会社 代表取締役 

近藤 :私は元々ソニーでエンジニアとして、主にカセットテープ、ビデオテープ、そしてプリント倶楽部としてヒットしたビデオプリンターの開発を行っていました。メイン業務の傍ら、社内のアイデアコンテストに応募して社内ベンチャー的な商品開発も行っておりました。
MAMMOECHOのプロジェクトでは、超音波技術以外のIoTの開発と設計を担当しています。MAMMOECHOの売りである「小型化」はソニーのエンジニア時代に培った機構設計技術で実現できました。また、従来とは違うアプローチにより「ポータブル」にすることもできました。

――MAMMOECHOは“自宅で簡単に乳がんチェックが行える”という新しい形の装置ですが、このアイデアのきっかけは何だったのですか?

入江:数年前に知り合いの医師から、「乳がん検診車に搭載するための装置として、新しい乳がん検診システムを開発して欲しい」という強い要請をいただきました。そんな彼の熱意に胸を打たれたことが、MAMMOECHOが生まれるきっかけとなりました。
彼は約70年もの間、医師として乳がん検診を担当されてきて、乳がんの検診率が一向に上がらない現状を憂えていました。「‟安全でかつ再現性のある“方式を用いて、何とか検診率を向上させ、乳がんによる死亡率を減少させたい」という強く語る彼から、私にもその想いが痛いほど伝わってきて、そんな装置を何としてでも形にしようと決意したのです。

近藤:私も実は入江さんと同じく「乳がんの早期発見に貢献したい」という想いをかねてから持っていました。学生時代ファンだったポピュラー歌手、オリビア・ニュートン・ジョンが乳がんになったという報道を見たとき、「彼女を救うために何か考えないといけない」と勝手に使命感に燃えたことがありました。また後に家庭を持ち、家族に女性が3人もいることにふと気付いたとき、家族の誰かが乳がんになり手遅れの状態になってしまわないためにも「彼女たちを病気から救えるものを作らないといけない」と考えていました。

そんな折、全く別分野の医療機器の開発で入江社長と出会い、開発を通じて意気投合。その結果、何としてでもこのMAMMOECHOのプロジェクトを実現しようと、二人三脚で進めてきました。

近藤真一さん マイクロソニック株式会社 技術顧問
近藤真一さん マイクロソニック株式会社 技術顧問

マイクロソニック単独で製品化を目指すには、課題が多かった。

――当初マイクロソニック社内で製品化を目指すにあたり、課題に感じていたことなどはありますか?

入江:大きく2つ、「資金面や人手の課題」と「技術・開発面での課題」がありました。1つ目の課題では、まずは開発資金が必要でしたし、人手の面でも、設計・開発・製品化を全て自社内で行うことには限界を感じていました。
2つ目の技術・開発面では、MAMMOECHOに内蔵する専用回路基板の設計・製作や、無線化のための回路設計・製作など、行うべきことは沢山あるうえに、それらを小型に、かつ安価に高画質化しなければならない、という大きな課題もありました。

近藤:製品が形になった後、お客様への製品の「魅せ方」にも課題を感じていました。
1つ目はブランド力。どんなに性能が良くても、マイクロソニックからヘルスケア商品を発売しても受け入れてもらえないのではないか、と懸念していました。2つ目はデザインです。女性に好んで使ってもらえるようにするにはどうすればよいか、という点です。3つ目は、製品のネーミングです。製品名をいくつか考えてみたこともありましたが、どうしても、B級SF映画に出てきそうな「超音波○○○」などという機能が先行した味気ないものしか思いつきませんでした。

――製品化にあたりSSAPを活用されるに至った背景は?

近藤:前述の通り、マイクロソニック単独では資金面や人手等が足りていませんでした。入江社長とベンチャーキャピタルに直接売り込みに行ったこともありましたが、なかなか良い結果は得られませんでした。
そこで私がふと思い出したのが、ソニーのボトムアップ活動でした。私がソニーに在籍していたころは、製品のアイデアをプレゼンして開発の機会をいただく活動も行っていたので、「ソニーの中に、私たちのアイデアの事業化を支援してもらえる場があるのでは?」と考えたのです。そう思いネットで検索したところSSAPのWebページを発見し、入江社長と相談し即問合せしてみました。

入江:そうでしたね。実は私は個人的にもソニーファンで、超音波診断装置の開発の際にもお世話になっていたこともあり、ソニーに対しては親近感がありました。

MAMMOECHOは医療・ヘルスケアの未来を創る申し子であり、オンライン診療の先駆け。

――今回はコンセプトデザインの支援をさせていただきましたが、役立った点があればお教えください。

近藤:おかげさまで当初課題に感じていた点が、全て解決されました。
デザインに関しては、ユーザビリティの観点でも一目で扱い方がわかる製品になった上、抵抗感なく女性に受け入れられるデザインになり、とても感謝しています。

「自分のお部屋で、簡単に、乳がんチェック」、というキーワードから優しいカーブを持ったフォルムが生まれ、複雑なボタン操作を排除し、本体をトントンとタップすることでチェック動作が開始するインターフェイスが生まれました。機器の動作を確認する音やLEDの光、視覚的に動作を確認出来るカバー部の透明スリットや、持った時に手になじみ滑りにくい素材使用など、機能が優しいデザインに溶け込んで表現されていると思いました。

入江:MAMMOECHOのデザインが出来ていく過程で、SSAPのアクセラレーターやデザイナーの方々と何度もディスカッションし、段々と私たちの構想が形になっていくという体験は、とても勉強になりました。

――今回のプロジェクトにかける想いをお聞かせください。

近藤:私はMAMMOECHOを、「すべての女性から、乳がんの心配がなくなればいい」と思い開発してきました。開発が遅れると遅れるだけ、乳がんが進行して不幸になる方がおられると思い、ここ1年は24時間MAMMOECHOのことを考え続けてきました。
MAMMOECHOを使っていただき、「日頃の自宅での乳がんチェックで何か見慣れないものが見つかった時には病院行って受診すればいい」という安心感を持っていただきたいです。このように、医療の分野で世の中の女性の未来に貢献できればと考えています。

入江:先ずは、MAMMOECHOを使っていただくことによって、「乳がん検診の検診率が向上し、女性の健康と病気の予防に少しでも役立って欲しい」というのが一番の想いです。健康・予防は一人一人が自分自身で考え、守り、行っていくものだと考えます。MAMMOECHOは、それを手伝う一つの道具や手段と言うよりは、「パートナー」として傍にいる存在であってほしいと思います。
MAMMOECHOは、医療・ヘルスケアの未来を創る申し子です。まさに、IoTや AI、 そしてオンライン診療の先駆けとなるでしょう。更に、もっともっと夢は広がると確信します。

入江 喬介さん   マイクロソニック株式会社 代表取締役 

>>MAMMOECHOの詳細はこちらから

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Sony Startup Acceleration Programはソニーが手がけるスタートアップの創出と事業運営を支援するプログラムです。2014年から6年間で、50件以上の事業化検証、15の事業を創出(2020年7月1日時点)。それらを通じて培った経験やノウハウを生かし、アイデア出しから事業運営、販売、アライアンス・事業拡大に至るまで総合的に支援する仕組みを整備し、スタートアップ支援サービスとしてみなさまにご提供しています。

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