Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は2022年8月より、革新的なテクノロジーをもつスタートアップに投資しビジネスをサポートするSony Innovation Fund(SIF)と協業し、SIFの投資先スタートアップに支援提供を開始しました。SSAPとSIFはこの協業により、有望なイノベーションを育み、豊かで持続可能な社会を創り出すことを目指しています。
本連載では、SIFの国内投資先スタートアップを1社ずつご紹介します。
株式会社Shippio 代表取締役 佐藤 孝徳さんに、会社のミッションや事業内容をインタビューしました。Shippioは2017年に開催されたSSAP主催のスタートアップ企業を対象としたコンテスト「第2回 Startup Switch」にて優勝した企業です。
――会社のミッションを教えてください。
Shippioは「理想の物流体験を社会に実装する」をミッションに、国際物流産業のアップデートを目指すスタートアップです。国際物流には、多くの書類作成・管理、手続きが発生します。また取引に介在するステークホルダーも多岐に渡り、コミュニケーションが非常に煩雑で非効率でした。Shippioはテクノロジーを活用し、世の中の人々がスムーズに国際物流サービスを受けられる社会を目指して国際物流領域のDX(デジタルトランスフォーメーション)を推進する、日本初のデジタルフォワーダー(※1)です。
――Shippioではどういった事業を展開していますか?
Shippioは、貿易業務を効率化するオンラインプラットフォームと、国際輸送・通関手配・陸送手配などを含むフォワーディングサービスを提供する、日本初のデジタルフォワーダーです。貿易業務を行う顧客企業に対し、クラウドサービスとオペレーションの両方を提供する点が特徴です。
クラウドサービスは、見積・発注・スケジュールの一括管理・貿易書類をクラウドで管理でき、一気通貫で利用することで業務工数の大幅な削減が可能です。
――ビジネスアイデアが生まれたきっかけは?またビジネスとしてどのように具現化しましたか?
Shippioの創業者である私と取締役COO土屋の2人は、大手総合商社で10年にわたりグローバルビジネスの経験を積んできました。日本でもグローバルに通用する事業を起こしたいと考えた時に、島国である日本の生命線である「国際物流・貿易」の領域に注目したのがきっかけです。
2016年の創業当時、日本の物流スタートアップでは、配送やラストワンマイル(※2)に着目している会社はいくつかありました。一方で、国際物流、国際サプライチェーンという観点で事業に取り組んでいる会社はまだなく、この領域にビジネスチャンスがあると考えました。当初は貿易SaaSの開発に取り組みましたが、当時はまだDXという言葉すら浸透しておらず、お客様に貿易SaaSを導入していただくことは非常に難易度が高い状況でした。
事業も軌道に乗りきらなかったため切り口を変え、我々自身が物流に必要な免許を取得し、物流のオペレーション機能を持った上で業界に飛び込むことにしました。それが現在提供しているクラウドサービスの始まりです。
UI・UXがシンプルで感覚的に使えるクラウドサービスと、従来のフォワーディングの両方を提供する「デジタルフォワーダー」という形態です。結果的に、この形態で国際物流サービスを一気通貫で提供出来るようになり、利用者数を増やしてきました。
――今後の期待や展望は?
Shippioは国際物流領域における課題の特定と解決を、オペレーショナル・エクセレンス(※3)とプロダクト・サービス開発の両輪で実行し続けることが大切だと考えています。そうすれば、産業の生産性に大きな変革を与える会社として認知されると信じています。
DXの先のIX(インダストリアルトランスフォーメーション)を推進できるよう、日々事業開発やプロダクト開発に取り組んでまいります。
日本の各産業における新陳代謝とスタートアップ企業の台頭が、この国の未来には必要だと考えています。
SIFは株式会社Shippioに対し2019年11月・2022年9月に出資を行っています。Shippioへの出資を担当しているソニーベンチャーズ株式会社 北川 純より、注目ポイントをご紹介します。
1. 総合商社での実績があり、熱量が高いチーム
総合商社出身であるCEO佐藤さんとCOO土屋さんのバックグラウンドはもちろん、高い山を登ろうとするチームの熱量に注目しています。
初めてShippioの方々にお会いしたのは2016年のSony Innovation Fund設立直後でした。Shippioも同年に設立されたばかりでまだ社員数3名の会社でしたが、今は社員数60名を超える規模の会社に成長。事業を推進する上で立ちはだかった壁もありましたが、それらをチームの知識・ノウハウと行動力で乗り越えてきました。
2. 超巨大な国際物流マーケット
国際物流という超巨大マーケットを対象としていることもShippioの注目ポイントの1つです。国際物流はそのステークホルダーの多さがデジタル化が進みづらい要因のひとつと言われていますが、米国や欧州などでは、この分野で大きく成長したスタートアップが複数存在しています。Shippioは日本の国際物流分野でのリーディングスタートアップとして、ステークホルダーと調和しながら市場のデジタル化をさらに推進してくださると期待しています。
3. グローバルビジネスとしての展開
Shippioの事業そのものがグローバルビジネスですので、潜在的な市場が大きい点にも注目しています。
またShippioは日本を拠点として活動していますが、エンジニアを中心として日本語を母国語としないメンバーも多く在籍しており、組織の観点でもグローバル化、ダイバーシティが推進されています。
連載「Sony Innovation Fund presents Remarkable Startups」では、今後も定期的にスタートアップをご紹介してまいりますので、お楽しみに!
※本記事の内容は2023年1月時点のものです。