2023.02.06
Sony Innovation Fund presents Remarkable Startups

ナッジ株式会社|"推し活"クレジットカードから始まる未来の金融体験

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は2022年8月より、革新的なテクノロジーをもつスタートアップに投資しビジネスをサポートするSony Innovation Fund(SIF)と協業し、SIFの投資先スタートアップに支援提供を開始しました。SSAPとSIFはこの協業により、有望なイノベーションを育み、豊かで持続可能な社会を創り出すことを目指しています。

本連載では、SIFの国内投資先スタートアップを1社ずつご紹介します。

ナッジ株式会社とは?

ナッジ株式会社 代表取締役  沖田 貴史さんに、会社のミッションや事業内容をインタビューしました。

沖田 貴史さんの写真
代表取締役 沖田 貴史さん

――会社のミッションを教えてください。

私たちのミッションは「ひとりひとりのアクションで、未来の金融体験を創る」ことです。業界の概念にとらわれず、新たな価値観と行動様式を持つ金融機関をゼロから作り、ユーザーに寄り添った「Web3時代(※1)のチャレンジャーバンク」を目指しています。

※1 分散型のインターネットと称される次世代のインターネットのこと
ナッジ株式会社の会社ロゴ

――ナッジではどういった事業を展開していますか?

ミッションの実現に向けた第1弾のサービスとして、次世代クレジットカード「Nudge」を提供しています。

Nudgeは、申込みがスマホアプリで完結するだけではなく、カードの利用ごとの通知受け取りやカード機能の停止、利用履歴・返済金額の確認まですべてアプリで行うことができる、デジタルネイティブに最適化されたクレジットカードです。AIを用いた独自審査をすることで、フリーランスのような今まで発行しにくかった層にもクレジットカードを提供することが可能です。

またユーザーは普段のお買い物でNudgeカードを利用するだけで、Nudgeの提携先であるスポーツチームやアーティストなどの「クラブ」を応援することができます。一般のクレジットカードでのポイント相当分がNudgeの提携クラブに還元され、ユーザーにはクラブから体験型の特典が提供されます。具体的には、Nudgeユーザーだけの限定メッセージ動画や画像に加え、アーティストのクラブを選択した場合は、ライブグッズの割引券などを手に入れることができ、ファンの方々から喜ばれています。サービス開始から約1年で、累計クラブ数は100クラブを達成しました。柔軟に活用できるNudgeの特徴を活かし、加藤ミリヤさんをはじめとしたアーティストだけでなく、NPO法人や自治体など多くの提携先があります。

ファンの日常のお買い物が応援につながるイメージ図 クラブオーナーがクラブ会員へ限定特典を提供し、クラブ会員がNudgeへNudgeカードでの支払いをする、Nudgeがクラブオーナーへ応援を送る
Nudgeのサービスの特徴

クラブオーナーであるスポーツチームやアーティストはファンとのエンゲージメント強化や収益多様化などの課題解決にNudgeを活用することができ、活用用途は自治体などの地方創生、災害支援や植林活動などの社会貢献活動へも拡がっています。

クラブオーナーの一覧イメージ 縦長のカードのようなモチーフに、写真やイラスト、ロゴなど様々なクラブオーナーのビジュアルが映し出されている
クラブのイメージ

――ビジネスアイデアが生まれたきっかけは?またビジネスとしてどのように具現化しましたか?

私は1990年代からFintechに携わる中で、日本のキャッシュレス比率が世界各国よりも低いことに対して、課題意識を持っていました。調査を進める中で、インバウンドなどの効果によりキャッシュレス対応店舗が増えている他、「50-60代よりも20代のキャッシュレス比率が低い」という事実が判明し、この状況に驚くと同時にデジタルネイティブ世代に歓迎される、使いやすく便利で安心・安全なクレジットカードを提供したいと考えたことがビジネスアイデア誕生のきっかけです。

ビジネスを推進する上では、スマホアプリとの連動や初心者でも作りやすいカードの実現が必要でした。これには開業前から株主として協業している大企業である、株式会社クレディセゾン・凸版印刷株式会社・株式会社セブン銀行などとのオープンイノベーションが寄与しました。

コロナ禍で新たなファンエンゲージメントや収益多様性を模索するスポーツ・エンタメ業界との提携も加速し、より「推し活」を楽しんでいただけるクレジットカードになっています。

――今後の期待や展望は?

まずはクレジットカード事業であるNudgeを軌道にのせることが目標です。
若年層にNudgeの申し込みのしやすさ、アプリでの利用状況などの管理のしやすさなど、安心・安全な点を広く知ってもらいたいと考えています。そして「18歳になったらNudgeのカードを作る」といった、大学生を中心とした若年層のメインカードとなるようなムーブメントを作っていきたいと思います。

また、私たちはビジョンとして「未来の金融体験を創る」ことを掲げています。クレジットカードに留まらない金融サービスや、ファンエンゲージメントと一体になった新たな金融サービスを、株主などを含める「Nudgeファミリー」の方々と一緒に創り出していきたいと考えています。

Sony Innovation Fund(SIF)が注目しているポイント

SIFはナッジ株式会社に対し2021年10月に出資を行っています。ナッジへの出資を担当しているソニーベンチャーズ株式会社 北川 純と安藤 友より、注目ポイントをご紹介します。

ソニーベンチャーズ株式会社 シニア インベストメント ダイレクター 北川 純さん
ソニーベンチャーズ株式会社 インベストメント マネジャー 安藤 友さん
注目ポイント 1. 拡大するキャッシュレス決済市場へのチャレンジ、2. ユニークなビジネスモデル、3. 創業者のバックグラウンド

1. 拡大するキャッシュレス決済市場へのチャレンジ

近年、日本におけるキャッシュレス決済の市場は政府による後押しなどもあり、拡大傾向にあります。しかし小売市場全体におけるキャッシュレス決済の割合は、世界各国と比較するとまだ非常に低い水準です。その要因として、産業全体のデジタル化の遅れに伴う企業側の間接コスト負担の大きさ、ユーザー視点でのシームレスな決済体験の整備の必要性などの観点で大きな課題があると言われています。Nudgeはこうした大きな市場、社会課題の解決に独自のアプローチで取り組んでいます。

2. ユニークなビジネスモデル

Nudgeは「登録少額包括信用購入あっせん業者(※2)」としてスマホ世代向けに自由度の高いクレジットカードを発行しています。具体的にはスマホアプリのみでの申込・利用管理に加えて、スポーツ、チーム、アーティストとの提携により、ユーザーは決済利用額に応じて自分の選択したクラブから特典が得られます。またクラブ側は決済手数料の一部を収益として得ることができます。
最近ではNFTを用いたファンエンゲージメント施策の実証実験などにも取り組んでいます。

※2 2021年4月より施行された制度により、極度額10万円以下の範囲内でクレジットカード発行等の包括信用購入あっせん業を営むことができる事業者を指す

3. 創業者のバックグラウンド

創業者で代表取締役社長の沖田さんは、決済関連企業の立ち上げ参画から同社社長として上場を果たした実績を有するなど、国内Fintech分野ではまだ数少ないシリアルアントレプレナー(※3)の1人です。また、ナッジ創業の前はブロックチェーン関連企業の社長を務められており、同分野においてもエキスパートである点も含めて、非常に稀有な存在であると認識しています。

※3 連続して事業を立ち上げた経験を持つ起業家

連載「Sony Innovation Fund presents Remarkable Startups」では、今後も定期的にスタートアップをご紹介してまいりますので、お楽しみに!

 

※本記事の内容は2023年2月時点のものです。

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は、「あらゆる人に起業の機会を。」をコンセプトに、2014年に発足したスタートアップの創出と事業運営を支援するソニーのプログラム。ソニー社内で新規事業プログラムを立ち上げ、ゼロから新規事業を創出した経験とノウハウを活かし、2018年から社外にもサービス提供を開始。経験豊富で幅広いスキルとノウハウをもったアクセラレーターの伴走により660件以上の支援を24業種の企業へ提供。大企業ならではの事情に精通。(※ 2024年3月末時点)

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