Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は2022年8月より、革新的なテクノロジーをもつスタートアップに投資しビジネスをサポートするSony Innovation Fund(SIF)と協業し、SIFの投資先スタートアップに支援提供を開始しました。SSAPとSIFはこの協業により、有望なイノベーションを育み、豊かで持続可能な社会を創り出すことを目指しています。
本連載では、SIFの国内投資先スタートアップを1社ずつご紹介します。
株式会社よりそう 代表取締役社長CEO 芦沢 雅治さんに、会社のミッションや事業内容をインタビューしました。
――会社のミッションを教えてください。
株式会社よりそうは、「よりそう力で世界を変える」をミッションに掲げ、テクノロジーを駆使してライフエンディング業界に関わる様々なステークホルダーの「不」の解消を目指しています。ビジョンは、「社会によりそうライフエンディング・プラットフォームの創出」です。
昨今、超高齢化社会が進展し人生100年時代が到来すると言われています。その潮流の中で、多くの人が人生を終わりから逆算し「残りの人生をよりよく生きたい」と願っているそうです。また「終活」の概念が浸透したことで、大切な人の死を事前に準備する方も増えてきました。私たちよりそうは、こうした時代の変化や人々のニーズを汲み取り、一人ひとりの人生によりそい、仕組みとテクノロジーで世の中を幸せにする提案を続けていきます。
――よりそうではどういった事業を展開していますか?
私たちは、一連のライフエンディングサービスを包括的に取り扱い、必要なタイミングでお客様に適切なサービスを届ける事業を展開しています。
大切な方とのお別れはその場限りで終わるものではなく、ご供養をはじめ、相続や整理など日ごろ馴染みのない出来事が断続的に発生します。よりそうは会員制度を充実させることで、お別れにまつわるお悩みを抱えた全てのご家族によりそいます。
例えば終活やお葬式の領域では、「よりそうお葬式 」を展開しています。
「よりそうお葬式」はインターネットを経由して全国一律プランのお葬式を提供するサービス。ご家族の最後の時が穏やかな時間になるようプラン内容を厳選し、一日葬や家族葬といった新たな葬儀形式を、明瞭なセット価格で提供しています。
またご供養や手続きの領域では、菩提寺のない方でも亡くなった方をご供養できるようお坊さんをご紹介したり、仏壇や位牌を、お求めやすい価格で提供するECサイトを提供しています。
――ビジネスアイデアが生まれたきっかけは?またビジネスとしてどのように具現化しましたか?
私は学生時代からウェブサイトを制作しており、2009年3月に株式会社よりそうの原型となる株式会社みんれびを設立しました。当初はさまざまなジャンルのレビューサイトを作り事業を行っていましたが、その中で特にユーザーを集めていたのが、当時まだ競合が少なかった葬儀のレビューサイトでした。
ただ、人がいつ亡くなるかは分からないことがほとんどで急な相談のニーズも多い。そのため365日、24時間のコールセンターが必要だと感じ、仕組みを確立しました。当時は私も電話に出ていました。こうしてコールセンターまで作ったことが、葬儀のレビューサイト自体の価値向上に繋がりました。
また、葬儀ビジネスに不明瞭な点が多いことを課題と捉え、2013年には葬儀の明瞭な価格体系を打ち出した葬儀サービスや、法事や法要に定額のお布施で僧侶を手配する葬儀関連サービスの展開も開始。これまでは、お布施の金額を誰かに相談したとしても「お気持ちです」という答えしか返ってこないことが普通でした。そこで価格を明確にした上でパッケージとして成り立つ葬儀のニーズを汲み取ったのです。
――今後の期待や展望は?
よりそうは、ご家族が各ライフイベントで感じる負担や不安を「一元化」「テクノロジー」「安心感」によって解消するため、お葬式を起点として前後のタイミングまで包括的にサポートするライフエンディング・プラットフォーム構想を強化します。
また、パートナー葬儀社のDX(デジタルトランスフォーメーション)を支援することで葬儀業界の負を解消するサービスを構築し、お客様とパートナーの両面から業界構造の変革を促すプラットフォーマーとなることを目指します。
SIFは株式会社よりそうに対し2021年12月に出資を行っています。よりそうへの出資を担当したソニーベンチャーズ株式会社 深田 陽子より、注目ポイントをご紹介します。
1.一層の高齢化に伴うライフエンディング市場の拡大
日本の年間死亡者数は増加傾向にあり、2040年には約168万人に達する見込み(※1)だと言われています。また人生最後のライフイベントである葬儀とその隣接市場(法要・お墓・仏壇など)も非常にポテンシャルの大きい市場です。家族葬を中心としたよりそうのBtoCの葬儀仲介サービスは、今後葬儀自体が小規模化されていく時代だからこそ、ますます利用者が増えると考えています。
またよりそうは遺族とのタッチポイントを有しており、葬儀を起点に故人の資産整理や相続等の金融サービスへと広がると注目しています。さらに、葬儀業界のDXも徐々に進み始めていることから、よりそうの提供するBtoBの業務改善システムの需要の高まりにも期待ができます。
2.顧客満足度の高さと事業パートナーからの厚い信頼
葬儀というものは、残された遺族にとって二度とやり直しのきかない、大切な人との最後のお別れの場です。そのため間違いやミス、失礼があっては許されません。よりそうは、顧客のみならず事業パートナーである葬儀社からも評判が高く、競合と比較しても高いクオリティと丁寧なカスタマーサポートが特徴です。
遺族の精神的な負担と金銭的負担を最大限減らし、大切な人との最後の時間を過ごすことに集中させてくれる。これはよりそうが提供するかけがえのない価値だと考えています。
3.三者にメリットをもたらすビジネスモデル
よりそうは「お客様」「パートナー葬儀社」「よりそう」の三者にメリットをもたらすビジネスモデルを実現しています。
まずお客様へのメリットとなるのは、お葬式の費用の安さです。よりそう経由でお葬式を行うと、従来の3分の1程度の価格・明朗会計でお葬式をあげることができます。パートナー葬儀社に対しては、よりそうの集客による稼働率アップで収益増加をサポートしています。一般的に町の葬儀社は、稼働率が低いと言われています。よりそうは葬儀社の余剰キャパシティに着目したのです。最後によりそう自身は、これらのサービスにおいて企画・集客・アフターケアに注力し、固定資産が不要となるビジネスモデルを構築しています。
このように、三者にメリットをもたらすビジネスモデルを実現していることがよりそうの事業全体の成長を支えています。
連載「Sony Innovation Fund presents Remarkable Startups」では、今後も定期的にスタートアップをご紹介してまいりますので、お楽しみに!
※本記事の内容は2022年9月時点のものです。