Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は2022年8月より、革新的なテクノロジーをもつスタートアップに投資しビジネスをサポートするSony Innovation Fund(SIF)と協業し、SIFの投資先スタートアップに支援提供を開始しました。SSAPとSIFはこの協業により、有望なイノベーションを育み、豊かで持続可能な社会を創り出すことを目指しています。
本連載では、SIFの国内投資先スタートアップを1社ずつご紹介します。
株式会社カウシェ 代表取締役CEO 門奈 剣平さんに、会社のミッションや事業内容をインタビューしました。
――会社のミッションを教えてください。
「世界一楽しいショッピング体験をつくる」が私たちのビジョンです。
お買い物をするお客さまとモノを売りたい事業者の双方がワクワクするようなショッピング体験を実現することで、「モノを購入する」という目的に留まらず楽しさを追求できる場所として、デジタルの買い物体験のアップデートを目指します。
――カウシェではどういった事業を展開していますか?
シェア買いアプリ「カウシェ」を運営しています。このアプリは1人では買い物ができず、友人や家族、またはSNS上の誰かと、自分を含めて2人以上で「シェア買い」をすることにより、商品を通常価格よりお得な価格で購入できるのが特徴です。
具体的な使い方は3つのSTEPがあります。まずはアプリ上で販売されている商品を選び、グループを作成します。次に、グループURLを周囲にシェアして商品を一緒に購入する仲間を募ります。最後に、アプリ上で表示されているシェア買い必要人数を集められればシェア買いが成功し、商品が発送されるという流れです。
カウシェのアプリを使うことで、買い物の醍醐味ともいえる「この商品、いいよね?」「一緒に買おうよ!」といったやり取りをオンラインで実現。「ショッピングの楽しさ」だけでなく「お得な買い物体験」も提供します。(商品により割引率は異なります。)
商品を出品している事業者にとっては、「シェア買い」を成立させたいユーザーによる、SNS等での自発的な商品情報拡散が期待できます。
――ビジネスアイデアが生まれたきっかけは?またビジネスとしてどのように具現化しましたか?
カウシェを創業したのは2020年4月。ちょうど新型コロナウイルス感染症の影響で、世界的に小売業界が冷え込んだ時期でした。私の母親も東京で飲食店を営んでおり打撃を受けました。このような家族の姿を近くで見て、コロナウイルスの影響を大きく受けている事業者が業種を問わず多いことを実感しました。
一方で、私が生まれ育った中国では、状況が異なりました。特に小売業界が打撃を受けているように見えなかったのです。その要因として、中国ではライブコマースやオンラインでの共同購入など、ソーシャルネットワークを活用した様々な販売方法が根付いていたことがあると考えられます。リアル店舗での販売が難しくなっても、オンラインでの売買でその分をカバー出来ていたのです。
その中でも特に成長が速かったのがとあるECプラットフォーム。日本でもこのプラットフォームに着想を得た新しい販売方法のモデルでビジネスを立ち上げれば、小売業界の事業者を救えるかもしれない。こういった想いで、カウシェのサービスを2020年9月に開始しました。
――今後の期待や展望は?
これまでのEコマースは、安い・早い・欲しいものが探しやすいなど、「効率性」の提供を重視したサービスがほとんどでした。そのような中、カウシェは敢えて「楽しい」を重視したEコマースを実現することで、お客様と事業者の双方にメリットを提供したいと考えています。そして2025年度までに流通総額1,000億円を目指しています。
SIFは株式会社カウシェに対し2022年6月に出資を行っています。カウシェへの出資を担当しているソニーベンチャーズ株式会社 北川 純より、注目ポイントをご紹介します。
1.SNSを活用したEコマース市場の拡大
米国・中国・インドなどでは、既存の大手Eコマースとは異なり、SNSを活用したEコマース市場が大きく拡大しています。ユーザーのオンラインでの購買活動が変化しているのです。
日本においてはまだそうした大きなムーブメントは見られませんが、SNSを活用したPR・マーケティングの一般化、インフルエンサーマーケティングの成長など環境が整いつつあり、今後の大きな成長が期待されています。
2.海外でも成功事例のあるユニークなビジネスモデル
カウシェが提供するサービスでは、出品する事業者は完全成果報酬モデルで無償での出店が可能です。一方で商品を購入するユーザーは、お得な価格で商品購買が可能になります。非常にユニークなビジネスモデルで、海外でも多数の成功事例があります。また、流通取引総額(GMV)も前年同月期1,200%(2021年5月と2022年5月の比較)と加速度的な伸びを続けています。
3.事業立ち上げ・EXIT経験を有する経営チーム
代表取締役CEOの門奈さんを中心とした経営チームの皆さんは、Eコマース・Webサービス領域での事業立ち上げ、EXIT経験を有しています。攻めと守りの観点を含め、バランスがとれた優れた方々で構成されています。
また、彼らが掲げている「世界一楽しいショッピング体験をつくる」というビジョンには共感する部分が多いです。オフラインでユーザーが当たり前に体験している買い物の楽しさをオンラインでも体感してもらいたいというユーザー視点での発想は、他のEコマースのサービスと比較しても大きな差異化ポイントになると考えています。
連載「Sony Innovation Fund presents Remarkable Startups」では、今後も定期的にスタートアップをご紹介してまいりますので、お楽しみに!
※本記事の内容は2022年10月時点のものです。