2023.01.24
Sony Innovation Fund presents Remarkable Startups

株式会社イクシス|ロボット×AI・XR技術による日本屈指のインフラソリューション

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は2022年8月より、革新的なテクノロジーをもつスタートアップに投資しビジネスをサポートするSony Innovation Fund(SIF)と協業し、SIFの投資先スタートアップに支援提供を開始しました。SSAPとSIFはこの協業により、有望なイノベーションを育み、豊かで持続可能な社会を創り出すことを目指しています。

本連載では、SIFの国内投資先スタートアップを1社ずつご紹介します。

株式会社イクシス 代表取締役 Co-CEO兼CTO 山崎 文敬さんに、会社のミッションや事業内容をインタビューしました。

代表取締役 山崎 文敬さん

――会社のミッションを教えてください。

当社のミッションは「ロボット×テクノロジーで社会を守る」です。インフラ老朽化、自然災害・異常気象、熟練技能者の減少といった社会課題を、ロボットやAI、XR、3Dの各技術を融合したサービスで解決することを目的としています。インフラをデジタルツイン(※1)化することをゴールに掲げ、現場で行われる作業の情報をサイバー空間上に忠実に再現する技術を開発しています。また、現場のDX化を支援するサービスも提供しています。今後はこれらの技術・サービスを、スマートシティなどの都市基盤へ展開していきます。

※1 現実の世界から収集した様々なデータをコンピューター上で再現する技術
株式会社イクシスの会社ロゴ

――イクシスではどういった事業を展開していますか?

イクシスではBIM/CIM(※2)双方向連動自動巡回ロボットシステム「i-Con Walker」を開発しており、主に建設業界で活用されています。i-Con Walkerは、サイバー空間でBIM/CIMを活用し属性情報とロボットを連動させることにより、BIM/CIM上で指定したタスクを現実空間でロボットが実行できる、インタラクティブなシステムです。さらに、現実空間の状況をBIM/CIMの属性情報にフィードバックさせることも可能です。

i-Con Walkerを用いてサイバー空間と現実空間がインタラクションする様子を是非動画でご覧ください。

このように遠隔モニタリングや予測シミュレーションを行うデジタルツインを実現するには、現実空間のデータをサイバー空間上に表現するだけでは不十分です。日々刻々と変化するインフラのジオメトリ(※3)情報や、内部構造も忠実にフィードバックする必要があるためです。そのためi-Con Walkerのように、インフラの施工や完成検査、点検維持管理の各フェーズで、サイバー空間と現実空間の双方向でデータを連携させる必要があるのです。

イクシスが開発するこの技術はさまざまな自律移動ロボットや作業ロボットをBIM/CIMと連携させることが可能で、最近ではソニーセミコンダクタソリューションズ株式会社(SSS)と共同開発が進んでいます。SSSで開発している「ロボティクスプラットフォーム」とi-Con Walkerを連携させ、建設分野で自律移動ロボットを社会実装する枠組みを検証する実証実験などに取り組んでいます。

※2 対象とする構造物等の形状を「3 次元モデル」と「属性情報(部材等の名称、形状、寸法など)」で表し、施工、維持管理の各段階においても、情報を充実させながらこれを活用すること
※3 形状の外形、サイズ、相対的な位置、空間上の特性に関する研究
i-Con Walker

――ビジネスアイデアが生まれたきっかけは?またビジネスとしてどのように具現化しましたか?

日本のインフラには、老朽化や熟練作業員の高齢化など、さまざまな課題があります。さらに、働き方改革や新型コロナウイルス感染症により非接触・非対面のワークフローも求められるようになり、インフラの省力化や高度化が喫緊の課題となっています。

インフラをデジタルツイン化することが課題解決の一助となることが期待されている一方で、刻々と変化する現実空間のジオメトリ情報などをリアルタイムに更新する技術は多くありません。また、自律移動ロボットの開発が盛んになる中、ロボットはクローズドな地図環境でのみ動作するものがほとんどで、新たに取得したデータなどは個別のデータベースで管理されている状況でした。

これらの状況を踏まえ、デジタルツインを実現するために現実空間とサイバー空間を連携・融合させることが必須だと考え、BIM/CIMの属性情報に着目しi-Con Walkerを完成させました。

――今後の期待や展望は?

インフラの効率的な管理やスマートシティの基盤データ管理においては、現実空間とサイバー空間がリアルタイムに連携していることが重要です。

i-Con Walkerはイクシスの自律移動ロボット・作業ロボットだけでなく、他社の自律移動ロボットや建設機械とも容易に連携できる仕組みになっています。今後、i-Con Walkerの技術を各社の素晴らしい技術と連携させ、国内のみならず海外のインフラ、さらには宇宙空間をも視野に入れ、デジタルツイン化を実現し社会の安全安心を実現していきたいと考えています。

Sony Innovation Fund(SIF)が注目しているポイント

SIFは株式会社イクシスに対し2019年3月・2022年6月に出資を行っています。イクシスへの出資を担当しているソニーベンチャーズ株式会社 鈴木 大祐より、注目ポイントをご紹介します。

1. 日本屈指のロボット関連技術・ノウハウ

イクシスは1998年の設立以降、長きに渡ってロボット技術を開発し、それらをさまざまな現場に導入してきました。多くの取引を経て、イクシスはインフラ業界や顧客を知り尽くしており、技術・ノウハウに磨きをかけてきました。インフラ業界・ロボット業界で屈指の知名度を誇っている点にも注目しています。

2. 実直で専門性の高い経営陣

SIFが出資させていただいてからも、我々とのコミュニケーションに真摯に対応してくださっています。投資の一番の要は信頼関係だと考えています。また、経営陣の方々はそれぞれ多様なバックグラウンドをお持ちで、専門性が高い点にも注目しています。

3. ソニーを含む他社技術との親和性

イクシスとソニーの共同研究が進んでおり、i-Con Walkerとソニーが持つ「ロボティクスプラットフォーム」との連携により建設分野での社会実装の枠組みが検証されています。このようにイクシスが開発するシステムは、他社が持つ技術と連携できるため、さらなる協業の機会も多くあると考えています。

連載「Sony Innovation Fund presents Remarkable Startups」では、今後も定期的にスタートアップをご紹介してまいりますので、お楽しみに!

 

※本記事の内容は2023年1月時点のものです。

Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、760件以上の支援を25業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2024年10月末時点)

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