2023.08.07
Sony Innovation Fund presents Remarkable Startups

株式会社ユビタス|最先端のストリーミング技術を有するクラウドゲームの先駆者が、世界の通信キャリアと提供するクラウドゲームサービス

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は2022年8月より、革新的なテクノロジーをもつスタートアップに投資しビジネスをサポートするSony Innovation Fund(SIF)と協業し、SIFの投資先スタートアップ企業に支援提供を開始しました。SSAPとSIFはこの協業により、有望なイノベーションを育み、豊かで持続可能な社会を創り出すことを目指しています。

本連載では、SIFの国内投資先スタートアップ企業を1社ずつご紹介します。各スタートアップ企業の知られざるストーリー、今注力するビジネスとは?スタートアップ企業の軌跡と未来に迫ります。

今回は、株式会社ユビタス CEO Wesley Kuoさんと、ソニーベンチャーズ株式会社 松島 弘と安藤 友の対談インタビューをお届けします。

株式会社ユビタス CEO Wesley Kuoさん
ソニーベンチャーズ株式会社インベストメントダイレクター松島弘
ソニーベンチャーズ株式会社インベストメント マネジャー安藤友

 

大手ゲーム会社に認められる、注目のスタートアップ企業

――まず、ユビタスの事業概要を教えてください。

Wesleyさん:ユビタスは2012年に設立した、クラウドストリーミングの技術を活かしたテックカンパニーです。大手ゲーム会社などのクラウドゲームサービスのプラットフォーム構築もサポートしており、株式会社スクウェア・エニックス・ホールディングス、株式会社セガなどへ技術を提供しています。
最近では自社パブリッシングにも取り組んでいて、2023年4月には、最新作として映画「エイリアン」の世界を舞台にした「Aliens: Fireteam Elite」をリリースしたばかりです。

これまではゲーム領域でクラウドサービスを中心に事業を展開してきましたが、今後はこれまで培った技術やネットワークを活かし、メタバース、生成AIやWeb3.0領域でのサービス提供にも取り組もうとしています。

株式会社ユビタスのロゴ
株式会社ユビタスのロゴ

――ゲーム領域で事業を展開しつつ、次のステップも見据えてらっしゃるのですね。SIFはユビタスに2021年2月に出資したと伺いましたが、出会いのきっかけと投資を決めた理由は?

松島:2020年半ば頃、ソニーのトップマネジメントからユビタスが資金調達を開始されたと伺いました。ちょうどSIFがクラウドゲームプラットフォームに関心を持っていたタイミングだったこともあり、出資検討を開始しました。

Wesleyさん:ご縁があって、ソニーのトップマネジメントの方々にユビタスのクラウドゲームサービスのデモをお見せする機会がありました。大変良い反応をいただき、それがSIFの皆さんとの出会いのきっかけでしたね。

安藤:ユビタスは低コスト、低遅延で安定したクラウドプラットフォームを提供可能としていた点が、社内外で高く評価されていました。その上、既に顧客も獲得されていました。「クラウドゲーム市場の成長と共に良いポジションが取れる、ポテンシャルのあるスタートアップ企業だ」と期待をし、投資に至りました。

ユビタスが提供するクラウドゲーミングサービス「GameNow」のイメージ
ユビタスが提供するクラウドゲーミングサービス「GameNow」のイメージ
台湾ニューメディアアートチーム「NAXS FUTURE」と業務提携し、Sunset Musicによる台湾初のメタバース音楽フェス 「Sunset Town」開催をサポートした際の様子
台湾ニューメディアアートチーム「NAXS FUTURE」と業務提携し、Sunset Musicによる台湾初のメタバース音楽フェス 「Sunset Town」開催をサポートした際の様子

ユビタスとSIF、それぞれの視点で見るユニークネス

――Wesleyさんが考える、ユビタスのユニークネスは何でしょうか?

Wesleyさん:他社と比較した際のユニークネスは、主にユビタス独自のテクノロジーと、大企業とのネットワークにより長年蓄積されたノウハウと経験値です。

まず、ユニークなテクノロジーが2つあります。1つは「クロスプラットフォームを実現する“GDKテクノロジー”」。GDKとはゲーム統合用キットを指し、ゲーム会社が提供するゲームソフトと、ユビタスのクラウドプラットフォームの統合を簡単にするツールです。これにより低コストでスピーディーなゲーム配信が実現でき、ゲーム会社から好評をいただいています。従来、ユーザーがゲームをプレイするデバイスに合わせてソフトウェアを毎回作らなければなりませんでしたが、ユビタスのGDKを用いるとデバイスに関係なくゲームで遊べます。

もう1つが「柔軟な“GPU仮想化テクノロジー”」。GPU(Graphics Processing Unit:画像処理装置)の仮想化テクノロジーもユビタスのユニークネスです。GPU領域では多くの特許を取得しており、ユビタスのGPUサーバーは競合他社と比較しユーザーの5~10倍の負荷に耐えることが可能です。私たちの技術は外部環境に依存しないので、新たなGPUメーカーが台頭したとしても、スピーディーにアップデートを行うことが出来ます。

また、私たちユビタスはスマートフォンやパソコンなど、多くのデバイス事業を展開する大企業とのネットワークがあります。そのため、デバイス同士の連携やフットプリント(※1)の最小化にも、確かなノウハウと経験があります。

※1 プログラムが動作する際のメモリ使用量の多さ(メモリーフットプリント)

――SIFの皆さんは、ユビタスのどこに注目していますか?

安藤:私たちSIFはユビタスの3つのポイントに注目しています。

1.クラウドゲームの高度なインフラ技術 2.事業のグローバル展開 3.大手パートナー企業の獲得

まず、1つ目は「クラウドゲームの高度なインフラ技術」。これはWelseyさんがおっしゃった通りで、ユビタス独自のソリューションが、実際に多くのゲームタイトルに採用されています。ストリーミングにより気軽にプレイできるクラウドゲームの人気拡大を、ユビタスの技術が支えています。

松島:2つ目は「事業のグローバル展開」。ユビタスは本社を日本に、主な開発拠点を台湾に置いていて、商流はグローバルに構築しています。提携している企業も、韓国や中国、欧州、インドなど幅広くカバーされています。
3つ目は「大手パートナー企業の獲得」。大手モバイルキャリアや国内外を代表するゲーム会社、通信インフラ会社とパートナーシップを構築していますし、直近では2023年3月にGoogleとの業務提携も発表されたばかりです。

ユビタス創業までの知られざる裏話

――話は創業時にさかのぼりますが、Wesleyさんがユビタスを創業することになったきっかけを教えてください!

Wesleyさん:私は大学在学中に一度起業しました。大学ではコンピューターサイエンスを学び、最初に起業した会社では携帯電話向けのゲームを作っていました。大学卒業後しばらくして日本のゲーム会社である株式会社アプリックスに事業を売却し、取締役として日本に3年程滞在しました。その後、立ち上げたのがユビタスです。前職で多くのテレコム企業やエレクトロニクス関連企業と提携していたことが寄与し、ユビタスのビジネスも初期の頃から支援いただきました。

―― 一貫してゲーム領域でビジネス展開をされていますが、Wesleyさん自身もゲームがお好きなんですか?

Wesleyさん:はい、私は今で言うガラケーでiモードが主流だった時からオンラインゲームをよくやっていて、Javaを用いてゲームを作ったこともあります。ただ、デバイスの制限があったり、ダウンロードに時間がかかったりすることにフラストレーションがありました。だから、自分でそれを解決するソリューションを開発しビジネスにしました。ユビタスのソリューションはデバイスに関係なく高性能で遊べます。

私は幼い頃からずっと新しいものを試すのが好きで、挑戦するのも好き。それが私のパーソナリティです。新しい商品や技術が出たら必ずすぐに試します。最近だと生成AIですね。新しい商品や技術を、どうやったらサービスに応用できるかをいつも考えています。

――起業後は、どのように事業を成長させてきましたか?

Wesleyさん:当初は大手通信事業者と組んで、クラウドストリーミングを一緒に開発しました。その後はコンソール向けゲームを開発するゲーム会社へソリューションを提供してユビタスのプラットフォームを用いたクラウドゲームを普及させました。ユビタスはこういった形で、大きな企業にサポートいただきながら成長してきたのです。

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信頼を勝ち得るまでは大変なことばかりだった

――事業を拡大する過程で苦労したことは何でしょうか?

Wesleyさん:苦労したことはたくさんありますが、最も大変だったことは「信頼を勝ち得ること」でしょうか。ユビタスは3~4人で創業したので、当時は本当に小さな会社でした。他社と提携したくても、相手は私たちのことを知らないので、いくらアピールしても技術面や事業の収益性を疑われます。
また、私たちの事業のコアである技術検証にもかなりの時間とコストをかけました。その苦労があったからこそ、現在のユビタスがあります。今はエンジニアやプロダクトマネージャーなどを徐々に採用していき、従業員約130人の会社にまで成長しました。

――初期の頃は周囲の信頼を得ることに苦労するスタートアップ企業が多いと聞きます。どのようにその壁を乗り越えたのですか?

Wesleyさん:最初は本当に大変なことばかりでしたが、投資家などから紹介してもらって、大企業とネットワークを持てるようになりました。一度デモを見てもらって、企業側がリスクを許容できると判断した範囲内で、仕事を任せていただけるように。最初はユビタスとしては採算が合わないケースも多かったですが、そこは地道に信頼を積み重ね、徐々にトップクラスのクラウドゲームを手掛けられるようになりました。

――SIFの投資後、ソニー・SIFとの関わりや支援で役立った点はございますか?

Wesleyさん:SIFの皆さんにソニーグループ各社をご紹介いただく等、ユビタスのビジネス展開の加速に繋がる支援をいただきました。ソニーグループの方々とは、特にゲーム、メタバース、加えてユビタスがコンテンツ開発を開始した生成AI (※2)の3つの分野で協力していければと期待しています。

※2 テキスト、画像、または他のメディアを生成することができる人工知能システムの一種
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コンテンツ事業のパートナーをお探しの方にも

――ユビタスの今後の展望は?SIFの松島さん・安藤さんのユビタスへの期待もぜひ教えてください!

Wesleyさん:ユビタスが今まで培ったネットワークやテクノロジーを用いて、お客様にとって魅力的なサービスを提供していきたいと強く想っています。おかげさまで、ユビタスが展開するサービスを通じて、提携先の企業、エンドユーザーとなる方々を繋ぐ1つのサイクルが出来ています。このサイクルで今後も好循環が生まれるようにしたいです。

今後は特に、クラウドサービス領域に加えて、メタバースやWeb3.0領域でのサービス提供にも力を入れたいです。例えばメタバースではVRヘッドセットで、ユビタスのクラウド技術を活用いただけたら嬉しいです。
また、生成AIを用いたコンテンツ軸でのビジネスの可能性も広がっています。もしご興味ある方がいらっしゃれば、まずはデモをお見せできるので、お声がけください。

松島:既にユビタスは国内外で多数のモバイルキャリアやゲーム会社を顧客に持っています。顧客のニーズに基づいてクラウドプラットフォームのカスタマイズも行っています。顧客目線での対応経験も豊富ですので、もし今後コンテンツ事業等で配信事業者のパートナーをお探しでしたら、ぜひご相談ください。

安藤:ユビタスはクラウドゲームにとどまらず、メタバースの配信なども手掛けています。低コストかつ安定したライブストリーミングが可能ですので、ぜひ今後も多くの方にご関心をお持ちいただけると嬉しいです。

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連載「Sony Innovation Fund presents Remarkable Startup」では、今後も定期的にスタートアップをご紹介してまいりますので、お楽しみに!

※本記事の内容は2023年8月時点のものです。

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は、「あらゆる人に起業の機会を。」をコンセプトに、2014年に発足したスタートアップの創出と事業運営を支援するソニーのプログラム。ソニー社内で新規事業プログラムを立ち上げ、ゼロから新規事業を創出した経験とノウハウを活かし、2018年から社外にもサービス提供を開始。経験豊富で幅広いスキルとノウハウをもったアクセラレーターの伴走により660件以上の支援を24業種の企業へ提供。大企業ならではの事情に精通。(※ 2024年3月末時点)

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