Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は2022年8月より、革新的なテクノロジーをもつスタートアップに投資しビジネスをサポートするSony Innovation Fund(SIF) と協業し、SIFの投資先スタートアップに支援提供を開始しました。SSAPとSIFはこの協業により、有望なイノベーションを育み、豊かで持続可能な社会を創り出すことを目指しています。
本連載では、SIFの国内投資先スタートアップを1社ずつご紹介します。
テックタッチ株式会社 代表取締役 井無田 仲さんに、会社のミッションや事業内容をインタビューしました。
――会社のミッションを教えてください。
テックタッチ株式会社のミッションは「すべてのユーザーがシステムを使いこなせる世界」を作ることです。近年テクノロジーは進化し続けていますが、一方でその多機能さゆえ、ITシステムを使いこなすのは難しくなっています。私たちは、サービスの提供を通じて、操作がわからないことから生じるシステムへの抵抗感をやわらげ、DX(デジタルトランスフォーメーション)を加速させていきたいと考えています。
――テックタッチではどういった事業を展開していますか?
前述のミッションから、私たちはシステム利活用支援ツール「テックタッチ」を提供しており、多くの企業などで導入いただいています。
「テックタッチ」ではシステム画面上でナビゲーションを表示することで、リアルタイムで操作を案内できます。多数ある入力項目のうち必要箇所のみをハイライトしたり、定型作業を自動入力したりなど、エンドユーザーのWebシステム利用の習熟・システムの高度活用を実現します。
導入いただく企業の業務担当者はコーディングの知識は不要で、直感的にナビゲーションを作成できます。システムの使い勝手を担当者自身が改善していくことができるのです。
「テックタッチ」は2023年時点で200万人以上のユーザーに利用され、2年連続でDAP(デジタル・アダプション・プラットフォーム※1)市場の国内シェアNo.1を獲得(※2)しています。2019年度週刊東洋経済「すごいベンチャー100」選出、グッドデザイン賞、2022年度ASPIC IoT・AI・クラウドアワード 基幹業務系ASP・SaaS部門 準グランプリ受賞、「SAP AWARD OF EXCELLENCE 2023」において「Partner Innovationアワード」受賞など、多くの団体からの評価もいただいています。
――ビジネスアイデアが生まれたきっかけは?またビジネスとしてどのように具現化しましたか?
テックタッチは、CTOの日比野 淳と2人で創業しました。私は複数の金融機関でバンカーとして企業の資金調達やM&A助言業務に従事後、IT企業で大規模サービスの開発・グロースなどに関わり、その後2018年にテックタッチ株式会社を起業しています。
起業までに自身が経験した、システムの使い手(ユーザー)としての「金融業界のシステムが使いづらい」という感覚と、IT業界におけるシステムの作り手として「システム利用者が使いやすいシステムを作るのは難しい」という両方の課題意識から「システムの使い手と作り手の橋渡しとなるプロダクトを提供したい」と考え、IT企業にいた時代に同僚だった日比野と起業しました。
ビジネスの具現化にあたっては、50社以上の企業にヒアリングを行いました。そこでさまざまなシステムを使いやすくするツールに大きなニーズがあることを確信し、「テックタッチ」の開発をスタートしました。
――今後の期待や展望は?
当社ではこれまで、主に大企業の社内システム向けに「テックタッチ」の提供を進めてきましたが、最近はより幅広い領域でのシステム利活用の支援が始まっています。例えば、中央官庁・自治体などの電子申請システムやWebサイト、SaaS開発事業者がお客様向けに提供するシステムにも「テックタッチ」を搭載いただいた事例もあります。「テックタッチ」を更に多くの領域で活用していただくことで、すべてのユーザーがシステムを使いこなせる世界、ひいては高度なITリテラシーが要らない世界を実現したいです。
そして、将来的には海外にも進出したいと考えています。本来、日本人が得意とする直感的に操作できる優れたUI/UX設計と、業務遂行の中で効率性や品質を徹底的に磨き上げる「カイゼン」(※3)の姿勢を活かした「テックタッチ」というプロダクトを、グローバルな課題解決のために展開していきたいと考えています。
SIFはテックタッチ株式会社に対し2022年10月に出資を行っています。テックタッチへの出資を担当しているソニーベンチャーズ株式会社 鈴木 大祐と岡田 康彦より、注目ポイントをご紹介します。
1.DX推進における顧客のペインを捉えたソリューション
テックタッチのプロダクトはDAPと言われるサービスであり、世界的にはイスラエルのWalk Meという企業が先駆者となっています。日本ではDX推進が各社の喫緊の課題となっており、日本国内においてテックタッチは草分け的存在です。
DX推進の第一歩として、各社でサービスや業務をアナログからデジタルに移行されるケースが多いですが、業務担当者がまだ使いこなせていないソフトウェアも多くあります。テックタッチのプロダクトはそういったシーンで幅広く活用できる「今までありそうでなかった」ソリューションであると考えています。
2.実行力とリーダーシップに長けた経営陣
テックタッチは事業推進においてさまざまな施策を打ち立てる上に、それらの実行力に長けています。テックタッチの経営陣と毎月行っている定例報告会での報告内容には毎回目を見張るものがあります。また、共同創業者の井無田社長と日比野CTOのもとに集まった外資系コンサルやPE(Private Equity)ファンド(※4)、グローバルクラウドサービス企業などの出身者による強力なリーダーシップによって会社全体がまとまっており、スピード感のある経営を実現されていると認識しています。
3.エンタープライズ、官公庁・自治体などへの導入実績
スタートアップ企業でBtoBビジネスを行う場合、まずは中小企業でニーズが満たせることを確認してから、徐々に対象とする企業規模を大きくしていくケースが多いです。しかしテックタッチの場合は、既に各業界を代表するようなエンタープライズや官公庁・自治体への導入実績を多数有しています。それらの導入実績からノウハウを蓄積しつつ、各社のシームレスなDX推進とソフトウェア導入効果の引き上げに貢献しているサービスだと考えています。
連載「Sony Innovation Fund presents Remarkable Startups」では、今後も定期的にスタートアップをご紹介してまいりますので、お楽しみに!
※本記事の内容は2023年4月時点のものです。