2022.09.12
Sony Innovation Fund presents Remarkable Startups

メディフォン株式会社|多様な社会を実現する、遠隔医療通訳サービスと健康管理システム

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は2022年8月より、革新的なテクノロジーをもつスタートアップに投資しビジネスをサポートするSony Innovation Fund(SIF)と協業し、SIFの投資先スタートアップに支援提供を開始しました。SSAPとSIFはこの協業により、有望なイノベーションを育み、豊かで持続可能な社会を創り出すことを目指しています。

本連載では、SIFの国内投資先スタートアップを1社ずつご紹介します。

メディフォン株式会社とは?

メディフォン株式会社 代表取締役CEO 澤田 真弓さんに、会社のミッションや事業内容をインタビューしました。

澤田 真弓さんの写真
代表取締役CEO 澤田 真弓さん

――会社のミッションを教えてください。

多様な新しい社会のための医療インフラを構築することがミッションです。「多様な人々が支え合い、共に成長することで、新しい社会システムの構築に貢献する」を企業理念として掲げています。

母国語に関係なく、必要な時に納得して医療を受けられる「新しい時代の多文化共生社会」を支えるプロダクト展開を通じ、あらゆる人々が安心して暮らすことのできる社会創りに貢献していきます。

メディフォン株式会社の会社ロゴ

――メディフォンではどういった事業を展開していますか?

主に医療現場向けサービスと一般企業向けサービスの2種類を展開しています。

医療現場向けには、電話やビデオを通じた遠隔医療通訳サービス「mediPhone(メディフォン)」や外国人患者受入れ研修を展開し、外国人患者受入れ体制整備を包括的に支援しています。医療通訳事業のブランドをmediPhoneに統一しております。

スマートフォンにmediPhoneの画面が映っている画像 レスポンシブに対応したメニュー画面や、通訳された会話がチャット欄に表示されている
mediPhoneの画面イメージ

一般企業向けには、予防医療を多言語で支援するクラウド健康管理システム「mediment (メディメント)」を展開しています。人事や総務担当者の大きな負担であると言われる健康管理業務をクラウドで一元化し、産業医とのオンライン面談やワクチン接種状況把握機能などの新型コロナウイルス対策も網羅。ニューノーマル時代に対応し従業員のパフォーマンス向上に貢献するさまざまな機能を搭載しています。

ノートパソコンにmedimentの画面が映っている画像 ワクチン接種状況が棒グラフで確認できるようになっている
medimentの画面イメージ

――ビジネスアイデアが生まれたきっかけは?またビジネスとしてどのように具現化しましたか?

ある医師から伺った医療現場での悩み事がきっかけでした。その医師は「ヒンディー語の患者さんが来院した際、言葉が通じず問診すらできない。支援を依頼するところも分からず困っている」と言うのです。この時、私は「外国人患者の医療課題」を認識しました。

その後私は医療現場のリサーチを始め、こうした課題を解決するために医療現場で医療従事者と外国人患者の会話を通訳する「医療通訳者」という方々がいることを知りました。しかし医療通訳者は、NPO団体やボランティアとして活動されていることが多いのです。命にかかわる重責を担う仕事にもかかわらずプロフェッショナルとしての報酬が発生していないことに、私は疑問を持ちました。

加えて、医療通訳者は医療現場で医師に同行することが多く、拘束時間が長いです。また通訳をするためには最新の医療知識を勉強する必要もありますし、日本で外国人患者が増加する昨今、通訳者の負担が非常に大きく持続するのが難しいのではないかと思いました。

そこで私たちは、医療従事者と患者さんのため、そして医療通訳者のためにも、通訳者がプロフェッショナルとして報酬を得つつ持続的に成長し活躍できるよう、遠隔医療通訳の仕組みを構築しようと決めました。

――今後の期待や展望は?

臨床現場の遠隔医療通訳サービス「mediPhone」と予防医療のクラウド健康管理システム「mediment」を社会に浸透させたいと考えています。その上で、mediPhoneとmedimentを連携させ、個人の健康と医療従事者のサポートを目指しています。

これらの事業により、個々人が主体的に自身の健康に関わり、できるだけ長く自分の意思で健康でいられるようになり、最終的には臨床現場の負担軽減が実現します。私たちが目指すこの仕組みが、新しい多様な社会には必要だと思っています。

Sony Innovation Fund(SIF)が注目しているポイント

SIFはメディフォン株式会社に対し2022年6月に出資を行っています。メディフォンへの出資を担当したソニーベンチャーズ株式会社 鈴木 大祐と田附 千絵子より、注目ポイントをご紹介します。

ソニーベンチャーズ株式会社 シニア インベストメント ダイレクター 鈴木 大祐
ソニーベンチャーズ株式会社 インベストメント ダイレクター 田附 千絵子
注目ポイント 1.医療通訳事業での黒字経営の実績 2.2.	健康管理SaaSの市場規模の大きさ 3.3.	病院・医師会・自治体とのネットワーク

1.医療通訳事業での黒字経営の実績

メディフォンは主に2つの事業、遠隔医療通訳サービス「mediPhone」と予防医療のクラウド健康管理システム「mediment」を展開しています。先に事業を開始していたmediPhoneとその関連事業で既に黒字経営を実現しています。今後も会社として着実に成長していくことが期待でき、必ず結果を出すコミットメント力とその実力に大きく注目しました。

2.健康管理SaaSの市場規模の大きさ

予防医療のクラウド健康管理システム「mediment」の市場となる健康管理SaaSは市場規模が大きいです。しかし約6割の企業はこういったシステムは未導入であると言われており、白地が大きい点に注目しています。
また、medimentは早いペースで受注が増加しており、営業力に加え、開発力・CS(Customer Success)力が強いと考えています。

3.病院・医師会・自治体とのネットワーク

遠隔医療通訳サービス「mediPhone」は、多くの病院や医師会、自治体に既に導入されています。そのため今後、医療分野でmedimentや他事業を展開する際にクロスセルが期待できます。また、病院や自治体を顧客に持つことで会社の信頼感が高まり、企業向けの営業がスムーズになるだけでなく、産業医からの推薦も期待できます。加えて、2024年より行われる医師の働き方改革(※)の影響で、医師の仕事をより効率的にすべく、mediPhoneやmedimentの需要が高くなることが想定されます。このように多くの点を考慮し投資に至りました。

※2024年度より行われる、長時間労働の医師の労働時間短縮及び健康確保のための措置の整備等。(https://www.mhlw.go.jp/content/10800000/000818136.pdf

 

連載「Sony Innovation Fund presents Remarkable Startups」では、今後も定期的にスタートアップをご紹介してまいりますので、お楽しみに!

 

※本記事の内容は2022年9月時点のものです。

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は、「あらゆる人に起業の機会を。」をコンセプトに、2014年に発足したスタートアップの創出と事業運営を支援するソニーのプログラム。ソニー社内で新規事業プログラムを立ち上げ、ゼロから新規事業を創出した経験とノウハウを活かし、2018年から社外にもサービス提供を開始。経験豊富で幅広いスキルとノウハウをもったアクセラレーターの伴走により660件以上の支援を24業種の企業へ提供。大企業ならではの事情に精通。(※ 2024年3月末時点)

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