2024.06.07
Sony Innovation Fund presents Remarkable Startups

【特集】ソニーベンチャーズ株式会社|世界のベンチャー企業への投資で、未来を創造する

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は2022年8月より、革新的なテクノロジーをもつスタートアップに投資しビジネスをサポートするSony Innovation Fund(SIF)と協業し、SIFの投資先スタートアップ企業に支援提供を開始しました。SSAPとSIFはこの協業により、有望なイノベーションを育み、豊かで持続可能な社会を創り出すことを目指しています。

今回は、SIFを運用するソニーベンチャーズ株式会社の代表取締役社長に2024年1月1日付で就任した波多野 和人さんとマネージングダイレクタージャパンの北川 純さんの対談インタビューをお届けします。

ソニーベンチャーズ株式会社 代表取締役社長 波多野 和人
ソニーベンチャーズ株式会社 マネージングダイレクタージャパン 北川 純

ベンチャー投資の魅力とは?

――まず、お二人のご経歴についてお伺いします。どのような経緯でSIFに参画することになったのか、お話しいただけますでしょうか。

波多野:私は昨年10月に日本に戻ってきたのですが、その前はSony Global Treasury Services, plc (UK)(※1)でマネージングダイレクターをしていました。その傍ら、Sony Network Communications Europe B.V.(SNCE)(※2)のビジネスインキュベーション活動にも関わっており、スタートアップの方々と接する機会が多くあり、スタートアップへの投資に強い関心がありました。スタートアップ企業から資本提携などのお誘いが多くあったのですが、SNCEの業務管轄外のトピックであり話を進められないことにもどかしさを感じていたところ、社長だった土川さん(現会長)からソニーベンチャーズへの参画の話があり、お引き受けすることにしました。

北川:私は2016年のソニーイノベーションファンド設立時のメンバーの一人です。ソニーネットワークコミュニケーションズ(SNC)でベンチャー投資に携わっており、その経験がきっかけで声を掛けていただきました。SNCでの当時の上司は波多野さんでした。

※1 ソニーグループの為替資金業務をグローバルに統括
※2 欧州を拠点に、主に法人向けソリューションサービスやインキュベーション事業を展開

――スタートアップへの投資に魅力を感じるのは、どのような点でしょうか?

波多野:スタートアップは市場の変化に素早く適応していくために事業展開のスピードが非常に速く、その躍動感とスピード感に魅力を感じます。マーケットのトレンドに対する高い感度、想定した事業シナリオが上手くいかなければ切り替えるピボットの速さ、マネタイゼーションへ持っていく速さはとても勉強になるところです。また、最新のテクノロジーやサービス、ビジネスモデルに触れられる点も醍醐味だと考えています。ソニーの各部門でのテクノロジー開発でどうしてもカバーできない領域に関して、我々のVC活動を通じて新しいテクノロジーに触れる機会は、ソニーにとって意義が大きいと考えています。

右、代表取締役社長 波多野 和人 左、マネージングダイレクタージャパン 北川 純

SIFの特徴

――今年度から新体制となりましたが、改めてソニーベンチャーズが運用しているファンドについて教えてください。

北川: 2016年にソニーグループとして初のコーポレートベンチャーキャピタル(CVC)である「Sony Innovation Fund」を創設し、ソニーの次の事業の育成を目的とした投資活動を行っています。その後も「Innovation Growth Fund」(2019年)、地球環境問題へ取り組む企業を支援する「Sony Innovation Fund: Environment」(2020年)や「Sony Innovation Fund 3」(2022年)、アフリカのエンターテインメント事業を支援する「Sony Innovation Fund: Africa」(2023年)等による活動を通じて、投資専門チームによる経験と運用実績をグローバルに積み重ねてきました。

運用する5つのファンドは、ファンドとしての運用総額が650億円を超え、現在までに全世界で170社を超える企業へ投資をしています。(図1)。

図1 Sony Innovation Fundの展開
図1 Sony Innovation Fundの展開

各ファンドの特徴として、スタートアップの段階に応じてファンドを使い分け、投資している点が挙げられます。最初にできたファンド1号にあたる「Sony Innovation Fund」は、ソニーのバランスシートから直接投資を行う、アーリーステージのスタートアップ向けのファンドです。ミドルからレイターステージのスタートアップへの投資には、ファンド2号、3号にあたる「Innovation Growth Fund」、「Sony Innovation Fund  3」を利用しています。この2つのファンドは、外部からスタートアップに直接投資しないLP(Limited Partner)投資家を迎え入れたファンド構造になっていて、ソニー本体とは別の意思決定プロセスの投資活動を行うことができるのが特徴です。

――続いて、ソニーベンチャーズの特徴について教えてください。

北川:我々の最大の特徴は、ソニーの多岐にわたる事業領域から培った、技術や知財戦略、ビジネス、グローバルな知見等の多様な専門性の視点から、投資先候補を評価できる点です。最終的な投資判断を行う投資委員会メンバーには、各部門のトップが名を連ねています。(図2)。

図2 Sony Innovation Fundの投資委員会
図2 Sony Innovation Fundの投資委員会

さらに、投資後にも、ゲーム、エレキ、金融、半導体、音楽、映画等、幅広い事業を有している点でレバレッジを利かせて、投資先の企業価値向上・事業成長に繋がるバリューアップ活動を行えることが、もう一つの特徴です。

――LPとして参画する外部投資家には、どのようなメリットがあるのでしょうか。

北川:LPとしてソニーのファンドに参加することで、グローバルなマーケット動向やテクノロジートレンドを知ることができるメリットがあるほか、ソニーがそれらをどのように評価しているのかという点にもご興味をお持ちいただいていると認識しています。また、投資先企業やソニーの事業部門、LP各社との連携の可能性もあり、スタートアップ、LP、ソニーの三者間でwin-win-winの関係構築を目指しています。

――CVCは「戦略的リターン」と「財務的リターン」の両立にジレンマがあると聞きますが、そのバランスをどのように取っていますか。

波多野:完全に一方に偏るのではなく、適切なバランスを取ることが重要だと考えています。我々は投資先との協業については必須の条件とはせず、投資判断においては、イノベーションの度合いや会社の将来性を総合的に評価しています。一方で、投資検討プロセスにおいて関連事業部門との間で協業可能性がある場合には、協業イメージの解像度を上げていき、投資後はスタートアップと社内部門のコミュニケーションを促進します。その結果、約4割の投資先がソニーグループと何らかのエンゲージメントがあります。

さまざまな領域のベンチャー企業と協業するビジネスモデルへの挑戦

――投資戦略について教えてください。

北川:投資分野はヘルスケア、金融、エンタープライズ、エンタテイメント、ディープテック、環境など多岐にわたっています。日本国内だけでなく、米国、欧州、インド、アフリカと言った地域でグローバルに投資しています。投資検討の際には、単にテクノロジー面だけでなく、新しいサービスやビジネスモデルの観点も重視しています。

これまでの投資先は世界中で170社超にのぼり、スタートアップとの接点が多いのが特徴です。グローバルの投資比率はおおむね、アメリカが4割、日本が3割、ヨーロッパが2割、インドが1割程度となっていて、好バランスだと考えています。

――SIFの活動についてお話しいただきましたが、新体制においてその他に重要視しているポイントがあればお願いします。

波多野:SIFではCVCという特徴を活かし、自社事業との相乗効果により投資先の企業価値向上につなげていきます。一方で、ソニーグループが行う他の投資案件においても有機的な関係性の中で相互に発展していきたいと考えています。

投資活動は、単に投資して終わるというのではありません。例えばM&Aがあったり、その中にはポストマージャーインテグレーション(PMI)もSIFでやっていますし、ファンドのマネジメントという形で、管理、モニタリングもしています。このような活動を内部ではビジネスインキュベーション(BI)と呼んでいます。

SIFの強みを活かし、投資活動の各過程で創出される価値を社内外に幅広く還元し続けることを目指しています(図3)。

図3 ビジネスインキュベーション(BI)
図3 ビジネスインキュベーション(BI)

グローバル展開へのさらなる挑戦

――メンバーの活動拠点についても教えてください。

北川:チームは日本国内外に拠点があり、メンバー総勢30名強が在籍しています(図4)。日本のほか、米国(シリコンバレー、ロサンゼルス)、欧州(英国、イタリア)、イスラエル、新興国ではインドへ拠点を広げています。さらに昨年開始したアフリカファンドの拠点も立ち上げており、世界銀行傘下のIFC(国際金融公社)とタッグを組んで現地のクリエイターとの接点構築を図っています。

図4 Global One Team
図4 Global One Team

求められるのは「やり切る力」

――CVCとして、どんな人材が必要とされるのでしょうか。

北川:マネージングダイレクターに就任した1月に、メンバーにはあらためてプロフェッショナルとしてのさらなる成長をお願いしました。必要な能力として、3つのスキルを高めてほしいと考えています。1つ目はファイナンススキル、2つ目はビジネスに関する知見、3つ目はベンチャーコミュニティ、ソニーグループ内でのネットワークです。これらのスキルは最初から全員が備えているわけではないので、クロストレーニングを通じて相互補完し合いながら全員のスキルアップを図っています。

――スキル以外に求められるものとしては何がありますか?

波多野:ベンチャー企業が成功する確率はそれほど高くありません。厳しい側面があるのも事実ですが、それ故に投資後のバリューアップまでやりきる力が大切だと思います。出資をするのが目的ではなく、スタートアップのソーシングを行い、投資を検討、実行、バリューアップ、株式売却やM&Aなどのエグジットによる投資資金の回収および利益の確定までの一連のプロセスをやりきることが重要です。そのためには、スタートアップ企業や社内の事業部門とのコミュニケーションも重要になります。

大成功した案件を、アーリーステージでどういう意見をその時にされていたか紐解くと、だいたい意見が一致しないような案件が成功している場合が多くあります。その時にどれだけ思いを持ってやりきれるか、勇気を持てるか、が重要だと考えています。

あと面白いところで言うと、通常、テクノロジーの目線、新しいビジネスモデルの目線、新しいサービスの目線のどれかに着目して投資しますが、特にテクノロジーではない面を見ることで、新しいものが見えてくる場合もあります。そのような際は、ソニーのマネジメントを説得するというやりきる力が必要になってきます。

――経営トップとしてお忙しいと思いますが、仕事への取り組み方やストレスへの対処法などがあれば教えてください。

波多野:毎日を充実させることを心がけ、仕事を楽しんでいます。スタートアップと向き合う中で新しいことを学ぶ知的欲求が満たされる部分があり、それが働く動機になっているのかもしれません。メンバーにも、ストレスを感じることはあっても、笑顔で働いてほしいと伝えています。仕事は基本的にチームで行うものだと考えているので、メンバーが楽しく働ける環境作りにも心がけています。

新体制で目指す未来

――最後に今後の課題と方向性について教えてください。

波多野:就任後に8つのタスクフォースを立ち上げて、様々な改善策を検討しています。バリューアップの強化、新規ファンドの組成、組織活性化などをテーマとしています。投資先の事業価値を最大化するために、ソニーのリソースを活用した支援を強化したいと思います。グローバルな活動を一層拡大していくと同時に、ソニーへの貢献も高めたいと考えています。

――スタートアップの皆さんやSIFに興味がある皆さんへのメッセージをお願いします。

波多野・北川:ソニーグループ内はもちろん、スタートアップの皆様、LPの皆様のご支援があり、2016年の設立以来、SIFの活動を大きく発展させることができました。

これからも当社の強みを最大限発揮して、クローバルでスタートアップエコシステムの拡大に貢献していきたいと思っていますので、ご関心お持ちいただけるスタートアップ、VC、事業会社などの皆様は是非お気軽にご連絡いただければ幸いです。

また、SIFで働くキャピタリストについても採用活動をしています。日本からグローバルでご活躍いただけるユニークかつエキサイティングなポジションですので、その文脈でも興味をお持ちの方々からのご連絡もお待ちしています。

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連載「Sony Innovation Fund presents Remarkable Startup」では、今後も定期的にスタートアップをご紹介してまいりますので、お楽しみに!

※本記事の内容は2024年5月時点のものです。

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は、「あらゆる人に起業の機会を。」をコンセプトに、2014年に発足したスタートアップの創出と事業運営を支援するソニーのプログラム。ソニー社内で新規事業プログラムを立ち上げ、ゼロから新規事業を創出した経験とノウハウを活かし、2018年から社外にもサービス提供を開始。経験豊富で幅広いスキルとノウハウをもったアクセラレーターの伴走により690件以上の支援を24業種の企業へ提供。大企業ならではの事情に精通。(※ 2024年5月末時点)

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