Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は2022年8月より、革新的なテクノロジーをもつスタートアップに投資しビジネスをサポートするSony Innovation Fund(SIF)と協業し、SIFの投資先スタートアップに支援提供を開始しました。SSAPとSIFはこの協業により、有望なイノベーションを育み、豊かで持続可能な社会を創り出すことを目指しています。
本連載では、SIFの国内投資先スタートアップを1社ずつご紹介します。
株式会社RevComm 代表取締役 會田 武史さんに、会社のミッションや事業内容をインタビューしました。
※2023年4月17日 追記
株式会社RevCommは、米国Forbes、Sequoia CapitalならびにMeritech CapitalがAIを活用してビジネスを展開する最も有望な未上場企業を表彰する「Forbes AI 50 2023」にアジア企業として唯一、選出されました。
代表取締役 會田 武史さん
――会社のミッションを教えてください。
社名であるRevComm(レブコム)はRevolution × Communicationが由来です。
「コミュニケーションを再発明し、人が人を想う社会を創る」という理念のもと、音声技術とAIによりコミュニケーション課題を解決する企業です。
――RevCommではどういった事業を展開していますか?
日本の1人当たりGDPの順位が相対的に低下する中、1人当たり生産性の向上が大きな社会課題となっています。RevCommは、音声解析AI電話「MiiTel(ミーテル)」、AI搭載オンライン商談解析ツール「MiiTel for Zoom」の提供により、日本企業の生産性向上、経営効率向上に貢献します。
「MiiTel」は、電話営業やコールセンターの応対内容をAIが解析し、営業・顧客対応の生産性を飛躍させるAI搭載クラウド電話です。文字起こし・要約機能により、システムへの入力工数が劇的に減る一方で迅速かつ正確に情報共有できるようになります。また話し方も定量的に可視化される為、担当者が自ら振り返ってセルフコーチングできようになります。MiiTelはインドネシアをはじめ海外においても提供開始しており、今後、グローバルで生産性向上に貢献します。
2022年7月にはAI搭載オンライン商談解析ツールMiiTel for Zoomの提供を開始し、営業や顧客対応のみならず議事録作成など様々なシーンで使われるようになっています。
――ビジネスアイデアが生まれたきっかけは?
MiiTelのビジネスアイデアは、マクロから演繹的に考えた結果生まれたものです。今後3~5年で大きな波になり得る要素技術は何か?を検討した結果、量子コンピュータやブロックチェーンなども候補にあがったものの、最終的に実現可能性も鑑みてDeep Learning(AI)だという結論に。その上で、自分自身がペイン(苦痛)に感じていた「日本社会では現状、コミュニケーションコストが高い」という課題に一石を投じるべく、AI×ボイスコミュニケーションの領域にチャレンジすることにしました。
――ビジネスとしてどのように具現化しましたか?
MiiTelを実現するためには、3つの技術が重要でした。それが、「電話サーバーのクラウド化」「音声解析エンジン」「CRM(顧客関係管理を行うシステム)と連携可能なWeb・モバイルアプリ」。MiiTelはこれら3つの領域の掛け算で成り立っています。
RevCommではこれらを全て自前で、フルスクラッチで開発しています。事業の具現化には優秀なエンジニアに加わってもらうことが絶対条件であったため、仲間づくりにも力を入れました。現在RevCommにはグローバルで約200名の仲間が集い、ビジョンに向かって日々邁進しています。
――今後の期待や展望は?
RevCommは2020年10月にSIFより出資をいただき、現在では1450社が導入、累計コール数1億回を超えるまでに成長しました。営業や顧客対応におけるコストを下げ利益を上げるこれまでにない画期的なサービスとして、企業規模、業種を問わず幅広い企業の事業活動に貢献しています。音声技術とAIにより、コミュニケーションにおける摩擦をなくし、お互いの想いがより伝わる社会を目指しています。
SIFは株式会社RevCommに対し2020年10月に出資を行っています。RevCommへの出資を担当したソニーベンチャーズ株式会社 北川 純と安藤 友より、注目ポイントをご紹介します。
1.各分野に長けたチームの強さ
CEO會田さんのビジョンの大きさ、コミット力、統率力、それをやり切るための修正力は私達が過去にお会いした多くのスタートアップの中でも群を抜いていました。これに加えて、RevCommのマネジメント層には、多くの成功体験を持ち合わせた優秀な方々が各機能に揃っています。これらの点から大変強いチーム構成であるだけでなく、鳥の目、虫の目の使い分けが非常に上手い印象を持っています。
2.対象マーケットの大きさと成長性
一口にSaaSと言っても様々ですが、MiiTelはHorizontal SaaS(※)であり、幅広い産業の法人をターゲットとしているため市場が広大です。既に一部展開もされている海外まで含めると裾野はさらに広がります。売上成長の速度はSIFのグローバル投資先の中でもトップクラスの水準であり、今後についてもさらに期待しています。
3.プロダクトの洗練度
MiiTelが録音文字起しや可視化といった単なるDXではなく、AIをコアバリューとした顧客のペインを解決するソリューションとして昇華されている点が、多くの顧客に支持されている要因だと認識しています。新型コロナウイルスの影響で会議や商談のオンライン対応が普及しても、電話業務はヒューマンリソースがベースとなってしまいます。その点、MiiTelは業務効率化だけでなく「できる営業スタッフの再現性を高める」ことで、顧客の営業生産性をダイレクトに改善できるからこそ、加速度的な導入件数の増加につながっているものと捉えています。
連載「Sony Innovation Fund presents Remarkable Startups」では定期的にスタートアップをご紹介してまいりますので、お楽しみに!
※本記事の内容は2022年8月時点のものです。