Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は2022年8月より、革新的なテクノロジーをもつスタートアップに投資しビジネスをサポートするSony Innovation Fund(SIF)と協業し、SIFの投資先スタートアップに支援提供を開始しました。SSAPとSIFはこの協業により、有望なイノベーションを育み、豊かで持続可能な社会を創り出すことを目指しています。
本連載では、SIFの国内投資先スタートアップを1社ずつご紹介します。
株式会社MICIN 代表取締役 原 聖吾さんに、会社のミッションや事業内容をインタビューしました。
――会社のミッションを教えてください。
MICINは「すべての人が、納得して生きて、最期を迎えられる世界を。」をビジョンに掲げています。ミッションは「医療をもっと身近に簡単に。健康医療データから一人ひとりの生き方に新しい選択肢をつくる。」ことです。
我々は、誰もがいつでも・どこでも医療と繋がれる仕組みをつくり、そこで蓄積される健康や医療のデータから新しい生き方の選択肢をつくりだします。そして、病気になる前もなった後も、1人ひとりが自分らしく生きられる毎日を届けるべく、すべての人が、納得して生きて、最期を迎えられる世界に向け、邁進します。
――MICINではどういった事業を展開していますか?
我々は2015年11月に創業し、医療機関や薬局向けにオンライン診療サービス「curon(クロン)」やオンライン服薬指導サービス「curonお薬サポート」などの医療サービスの提供を行っています。他にも、デジタルセラピューティクス(※)の開発、臨床開発向けのソリューション提供といった医療事業を展開しています。また2021年には「MICIN少額短期保険株式会社」を設立し、現在は主に病気の方を対象とした新しい保険サービスの開発・提供を行っています。病気が発覚してからは入れる保険の制約が増えてしまうことが多いですが、MICIN少額短期保険では例えばがんを経験した方々にも加入いただけるがん保険などを展開しています。
――ビジネスアイデアが生まれたきっかけは?またビジネスとしてどのように具現化しましたか?
私は大学卒業後、医師として臨床現場で働いた経験があります。その時、多くの患者さんが「病気になるなら、こんな生き方をしていなかったのに」と、人生の最期に自分の生き方を後悔していました。病気のリスクは誰にでもありますが、実際に病気に気付くのは大抵の場合、症状が深刻になってからです。
この経験から私は「テクノロジーを活用することで、健康なうちから将来病気にかかる可能性やリスクを知ることができるのではないか」「医療の仕組み自体を整えることで、個々人が納得して最期を迎えられるのではないか」と考え、医療データの活用を軸に創業したのです。
医療データを活用するためには、情報がデータ化されていることが大切です。しかし創業当時、医療系の情報はまだあまりデータとして蓄積されておらず、加えてデータを活用するための土台も整っていない状況でした。そこでまずは、当時解禁されたばかりだった「オンライン診療」を皮切りにビジネスを展開しました。このサービスを通じて個人情報に配慮する形でデータ蓄積の基盤を作り、現在はオンライン診療・服薬サービスの品質向上に活かしています。また、製薬企業や医療機関などに向けてバーチャル臨床試験システムを提供し治験データのデジタル化によるデータの適切な管理や治験の効率化に活かしています。
――今後の期待や展望は?
MICINのビジョン「すべての人が、納得して生きて、最期を迎えられる世界を。」の実現に向けて、現在展開している4つの事業(オンライン医療事業、臨床開発デジタルソリューション事業、デジタルセラピューティクス事業、保険事業)を組み合わせ、他社が追随できないエコシステムを構築していきたいと考えています。
SIFは株式会社MICINに対し2020年9月に出資を行っています。MICINへの出資を担当しているソニーベンチャーズ株式会社 鈴木 大祐より、注目ポイントをご紹介します。
1. 大規模なオンライン診療プラットフォーム
MICINでは、日本でも有数の大規模なオンライン診察のプラットフォームを運営しています。また、医療機関に限らず薬局に向けたサービスも開始し、オンライン診療から臨床開発向けの医療事業まで患者との接点を広く持つ企業となっています。
2.大手製薬会社も含む安定した顧客基盤
MICINはオンライン診療のイメージが強いと言われていますが、実際は製薬会社に向けた製薬マーケティング・メディカル支援サービスなどの事業も幅広く展開しています。従来の製薬マーケティングは、患者向けにはマス広告、医師向けには営業やWeb媒体の活用などによる情報提供が一般的で手法が限られていました。しかし、製薬会社はMICINが提供するサービス群をタッチポイントとして活用することで、より幅広い層へのアプローチが可能になります。大手製薬会社を含め多くの顧客がおり、年々事業規模も拡大しています。
3.ビジネス環境に応じたアジャイル開発
新型コロナウイルス感染症の影響により、オンライン診療は追い風が吹いたりおさまったりと状況の変化は著しいです。MICINにとっては外部環境の変化が大きい数年間だったはずですが、その状況下でも売上を最大化できるように経営資源を最適化し続け、アジャイルな事業開発を行っています。
連載「Sony Innovation Fund presents Remarkable Startups」では、今後も定期的にスタートアップをご紹介してまいりますので、お楽しみに!
※本記事の内容は2022年11月時点のものです。