2023.07.24
Sony Innovation Fund presents Remarkable Startups

ノイン株式会社|Z世代を魅了する、化粧品業界のゲームチェンジャー

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は2022年8月より、革新的なテクノロジーをもつスタートアップに投資しビジネスをサポートするSony Innovation Fund(SIF)と協業し、SIFの投資先スタートアップに支援提供を開始しました。SSAPとSIFはこの協業により、有望なイノベーションを育み、豊かで持続可能な社会を創り出すことを目指しています。

本連載では、SIFの国内投資先スタートアップを1社ずつご紹介します。 

ノイン株式会社とは?

ノイン株式会社 代表取締役 渡部 賢さんに、会社のミッションや事業内容をインタビューしました。

代表取締役 渡部 賢さん
代表取締役 渡部 賢さん

――会社のミッションを教えてください。

私たちのミッションは「本当にほしい化粧品が見つかって、それが当たり前に買える世の中をつくる」です。日本国内の化粧品EC化率(※1)は未だ7.52%(※2)と伸びが悪く、一方で地方を中心に百貨店は減少の一途で、ドラッグストアでは新商品の配荷がなかなか無いなど、購入機会の不平等は広がるばかりです。また、自分の肌悩みの解決や理想のメイクの実現方法などのために、数多ある化粧品の中から最適な商品に出会うのは困難です。ノインではこれらの負の体験を解決することで次世代の体験価値を創出し、化粧品業界を引き上げるゲームチェンジャーになるべく、事業を展開しています。

※1 全ての商取引のうちEC市場で取引される割合を示す指標のこと
※2 引用元:https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220812005/20220812005-h.pdf?_fsi=DB4Srb0h
ノイン株式会社のロゴ
ノイン株式会社のロゴ

――ノインではどういった事業を展開していますか?

お客様がほしい化粧品をいつどこからでも購入することができる「EC事業」、sopo(ソポ)・ABUR(アブール)などプライベートブランドをつくりコスメを販売している「ブランド事業」、そして化粧品ブランド様のマーケティング支援を行う「広告事業」の3つの事業を展開しています。まだまだ小さい会社ですので、「1つの事業に絞った方が良いのでは?」と思われることもあるかもしれませんが、この3つの事業を行っていること自体がノインの特徴、そして強みだと思っています。

例えば、sopoはECのデータやお客様の声を反映した商品開発を行い、累計販売数は200万本を突破しました。この販売戦略やPOS(※3)を実際に動かしたマーケティング施策をもとに、他の化粧品ブランド様のマーケティング支援もさせていただいています。

また、自社でプライベートブランドを持っていることも優位性の1つです。先ほど日本の化粧品EC化率は7.52%というお話をしましたが、そのお客様のほとんどが大手ECモールを利用していると言われています。大手ECモールに太刀打ちするためには、どうしても価格競争になってしまい、それでは結果的に自社の成長に繋がりません。しかし、ノインにはプライベートブランドがあります。「このブランドの商品はここでしか買えないから」という理由で選んでもらえるECを目指しています。

「本当にほしい化粧品が見つかって、それが当たり前に買える世の中をつくる」という弊社のミッションは、3つの事業が成長しあってこそ達成できるものだと考えています。

※3 Point of Sales:販売管理
EC事業のイメージ
EC事業のイメージ
ブランド事業のイメージ
ブランド事業のイメージ
広告事業のイメージ
広告事業のイメージ

――ビジネスアイデアが生まれたきっかけは?またビジネスとしてどのように具現化しましたか?

私は今までのキャリアでメディア・コンテンツ関連の事業に多く関わってきました。そのため「モノが売れるメディアをつくりたい」という想いがありました。加えて化粧品業界の構造を調査すると、モノが売れるメディア自体が業界の課題解決につながる選択肢の1つであると考え、会社設立当初より現在の事業構造の着想がありました。

ビジネスの具現化方法は、最初に行ったアクションはInstagramでの化粧品メディアの運営でした。業界理解・消費者インサイトの獲得・事業資産の形成の3つの目的から行った運用を通じ、商品の選定眼・情報の伝え方を学習しつつ、お客様の源泉となるフォロワーの獲得を行い、後にECアプリを開始しました。

――今後の期待や展望は?

売り場・ブランド・プロモーションにおいて、この3つの有機性を我々の強みとし、常に自社サービスは新しい取り組みにチャレンジし結果を残したいと考えています。またそのノウハウを業界全体にオープン・シェアすることでマネタイズしつつ、業界改革の中心的な存在であり続けたいと思っています。
まだ事業として未成熟ではありますが、ノインが培っているデータやマーケティング手法をはじめとする資産を利活用し、海外展開(まずはアジア中心)やリテールテックの領域についてもソリューションを提供していきたいと考えています。このアクションの連続の中で、化粧品業界のBtoC、BtoBの両方の領域にノインが「いなくてはならない」インフラのような存在となれるよう邁進してまいります。

Sony Innovation Found(SIF)が注目しているポイント

SIFはノイン株式会社に対し2021年10月に出資を行っています。ノインへの出資を担当しているソニーベンチャーズ株式会社 深田 陽子より、注目ポイントをご紹介します。

ソニーベンチャーズ株式会社インベストメントダイレクター深田陽子
注目ポイント1.化粧品ECマーケットの成長ポテンシャルの高さ 2.相互作用する3つの事業バランス力 3.Z世代への感度の高さと圧倒的なリーチ力

1.  化粧品ECマーケットの成長ポテンシャルの高さ 

化粧品市場は国内約4兆円に迫る市場規模(出荷ベース)(※4)と言われておりますが、業界全体のDXが遅れており、化粧品のEC化率は、他の商品群(例えば衣類は19%、家電は37%、書籍類は42%台)と比べて2020年当時は圧倒的に低く、わずか6%台でした。(※5)
今後は人々の化粧品の買い方の多様化もさらに進み、トレンドに敏感な若者世代のSNSを中心とした情報収集の影響も加速するため、業界の中ではEC化率は20%前後レベルまでに伸びると考えられています。
ノインは投資時と比較して取り扱いブランド数・商品数を大きく伸ばしており、ラグジュアリーブランドが多いデパコスからプチプラ(※6)まで数多くのブランドの信頼を勝ち得ている点からも、化粧品業界のDXを牽引していく存在になっていくことを期待しています。

2.  相互作用する3つの事業バランス力

ノインでは、化粧品ECプラットフォーム事業に加え、広告事業と自社プライベートブランドの小売事業を展開しています。単独事業展開では難しい、それぞれの事業で得られるユーザーの行動データ(顧客データ、売上データ、SNS施策データなど)を総合的に捉えることが出来ているのは大きな魅力です。これにより、将来的な顧客ニーズやトレンドを先読みできる仕組みが構築されており、「次にバズる」商品開発やプロモーション戦略を実現できている点は、ノインの大きな優位性だと思っています。

3.  Z世代への感度の高さと圧倒的なリーチ力

ノインは独自の美容系インフルエンサーネットワークやコミュニティを通じて、トレンドに敏感なZ世代へ、ブランドや商品の魅力を確実に伝えて「ファン」にするノウハウと影響力を持っています。この世代へのリーチは、有名化粧品ブランドや大手広告代理店もリーチするのが難しいと言われています。
メイクや美容の悩みが尽きない世代の興味関心を惹きつけ続けることの難しさは容易に想像できますが、ノインはユーザーとのインタラクティブなコミュニケーションを通じて高いエンゲージメントを築いており、常に感度を高める工夫をしている点にも注目しております。

※4 引用元:https://www.meti.go.jp/policy/mono_info_service/mono/bio/cosme/cosme_vision2021.pdf
※5 引用元:https://www.meti.go.jp/press/2022/08/20220812005/20220812005-h.pdf?_fsi=DB4Srb0h
※6 デパコス:デパート(百貨店)で販売される化粧品類を指す/プチプラ:プチプライスの略で値段が安いことを指す

連載「Sony Innovation Fund presents Remarkable Startup」では、今後も定期的にスタートアップをご紹介してまいりますので、お楽しみに!

※本記事の内容は2023年7月時点のものです。

Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、760件以上の支援を25業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2024年10月末時点)

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