「プロジェクトを磨きに磨いて、ユーザーのもとで輝く価値を生み出す手助けをしたい」
Sony Startup Acceleration Program(“SSAP”)のアクセラレーターは、新規事業の立ち上げを支援し加速するマインドセットとスキルを兼ね備えたプロフェッショナル集団です。それぞれが実際の事業経験を通じて学んだ豊富で専門的な知識を持ち、様々な分野で新規案件の事業化や収益化をサポートしています。
本連載では、SSAPに所属する多数のアクセラレーターの中から各回1名ずつをピックアップしご紹介いたします。
後藤 庸造 Yozo Goto
――担当支援領域
プロデューサー、商品企画
- Seed Stageでの新規アイデアの事業検証から事業化、事業運営までを事業企画の観点から支援
- 顧客貢献価値の最適化と、市場における差異化の追求および存在価値の極大化を商品企画の観点から支援
――担当事例
REON POCKET、NYSNO-100などの社内案件のほか、社外案件も含め、商品企画を中心とした支援を広く担当
アクセラレーターインタビュー
――これまでのキャリアを簡単に教えてください。
1989年にソニー入社し、業務用映像・音響機器のマーケティングからキャリアをスタートしました。特に放送局向けカメラ/カムコーダー担当時に、全世界の主要放送局やスタジオが持つカメラの導入・更新時期や競合ポイントを徹底調査しセールスを展開、初めて業界シェアトップを獲得することに成功しました。
1998年にはハンディカムのハイエンドモデルの担当として、商品企画のキャリアがスタート。ジャーナリストにとって「サブ機」扱いだったハンディスタイルのカムコーダーの画質と使い勝手を徹底的に磨くことで、彼らの「スタンダード」へと押し上げることに成功、市場の創出につながりました。その後2000年からデジタルカメラの商品企画チーフを担当、Cyber-shot P1、P5などのヒットにより,フィルムカメラからの買い替えで急成長する市場にて、市場拡大スピード以上の販売増とシェアを獲得しました。
2002年からは、PDA(パーソナルデジタルアシススタント、携帯情報端末)のCLIEを担当し、電子手帳+オーディオ・ビジュアル+通信を手のひらサイズで扱え、複合機能商品上でアプリを利用するという、まさにスマートフォンの前身となった商品を送り出しました。ソニー初/当時世界最大サイズだったフルカラー有機ELディスプレイ搭載のCLIEも手がけました。その後も、テレビ、ウォークマン、ストレージメディアなどの商品企画を歴任しました。

この多部門多方面にわたる商品企画の経験・ノウハウを、今後ソニー内でさらに活かすことができないかと願っていたところ、SSAPがプロデューサーを募集していることを知りました。私にとってさらなる新しいビジネス領域にて力を発揮できる機会であり、 SSAPの「商品企画」分野で貢献していきたいと考え、2019年7月からSSAPに参画しました。
現在はこれまでの商品企画経験を活かして、社内外の起業を加速・支援するプロデューサーとして活動しています。また、SSAPが提供する事業化支援Webアプリ「StartDash」を利用し、受講者のアイデアの具体化やメンタリングを行う商品企画講座も開催しています。
――支援するうえで大事にしていることは何ですか?
さまざまな課題に対し、下した判断や結論に至った「背景・理由を残すこと」を大切にしています。
背景・理由の明確化は,限りある時間やリソースの中で無駄な手戻りを防ぎ、ブレずに事業化・商品化を進めるための指針となります。また、チーム内の意識の共有を助けます。それらの蓄積は商品価値自体の蓄積となり、販売活動時には商品のアピールポイントそのものとなっていくことでしょう。
また背景・理由は、その商品がどのような期待を担っているのかもクリアに示してくれます。その期待がどれだけ達成されているかという観点は、重要なレビューポイントになるはずです。課題に対して背景・理由を明確化するプロセスは、「商品が顧客の下で価値を最大限に発揮するにはどうあるべきなのか」、「自分たちにしか提供できない差異を顧客に存分に感じていただくにはどうすればよいのか」、という、貢献価値の磨き込みです。私のこれまでの多種多様な商品企画経験は、その多種多様な価値の磨き込み経験でもあります。支援する各プロジェクトを磨きに磨いて、顧客のもとで輝く価値を生み出す手助けをしたいと考えています。
――SSAPの活動を通して実現したいことはありますか?
これまでも多種多様な商品を企画・立案し、実現してきました。ソニーの持つ事業フィールドの中で、主力ともいえる映像・音響商品のラインナップ戦略やマーケティングを経験できたことだけでなく、さらに新規市場創出を狙う商品や業界初の技術を世に問う商品をも多数企画担当できたことは、成功も失敗も含めて全てが大きな自信と財産になっていると実感しています。
そして今、SSAPのプロデューサー・商品企画領域担当となったことで、フィールド自体を拡げ、より多くの多様なプロジェクトを支援するチャンスを得たと考えています。新規事業の立案・実現に対し、これまでの経験を活かしての貢献はもちろんのこと、さらに良い価値を提供できる企画を生み出すことで、お客様と共に新しい財産の獲得を目指していきたいです。
――オフの楽しみを教えてください。
趣味やこだわりの多さと深さには自信があります!
幼少時にピアノを教えてくださった先生のおかげで絶対音感が身につき、学生時代はキーボード演奏や打ち込みにハマり、レコーディングスタジオの機材やPA(Public Addressの略で、広い場所で音を行き渡らせるための設備、マイク・アンプ・スピーカーなどのシステム全体を指す)を学びました。また、中学2年の時に初代のウォークマンが発売されたのですが、その機能音質に満足できず10万円近いソニーの「デンスケ」というポータブルデッキを買いAV機器にもハマりました。昭和末期のDCブランド(国内で広く社会的なブームとなった日本の衣料メーカーブランドの総称)ブームの時にファッションを学び、スウォッチとG-SHOCKから時計に入り、東京ラブストーリーからドラマにハマリ、ガンダムどころかルパン三世以来アニメ好きをキープ、他にも映画、クルマ、食、歴史などなど、誰とでも共通の趣味が1つや2つはあるので、話題に困らないことが「特技」でありオフが何時間あっても足りません。
その中でも現在は、写真撮影とそれに関連した旅行や外出が、メインの楽しみです。子どもの頃から鉄道が好きで、そのうちに鉄道の写真を撮りたくなり、中学生の時に一眼レフを買ってもらったことからカメラにハマりました。春は桜、夏は海と花火、秋は紅葉……と遠出をすればあちこち撮影しますし、もちろん鉄道も忘れずに撮ります。
新潟・柏崎の尺玉(2019年7月 新潟県柏崎市)
目黒川の桜(2019年4月 中目黒付近)

沖縄・伊良部島にてStand Up Paddle
――最後に一言お願いします。
最後にもう1つだけ、私の商品企画に対するこだわりエピソードを。
企画に「プロジェクト名」を付ける際には、必ず何日もかけてこだわって考えてきました。まるで我が子の名前を付けるように。多少、事業部門内でのネーミングルールや制限があったとしても、考えに考えて意味を二重三重に持たせるなど、それじゃあ名前負けだよと笑われるくらいのプロジェクト名を付けるのです。笑われるほどに考え抜いたプロジェクト名は、商品が世にリリースされ廃番になるような時まで、その命名理由も含めて忘れられることはまずありませんでした。
企画を立ち上げた時の思いや狙いを込めてプロジェクトを進めていけば、メンバー、そしてユーザーにも必ず伝わる……!そのような名前から考えに考えた新しいプロジェクトが、世の人に伝わっていく感動を、SSAPを通じて再び味わいたいです。
あらゆる人に起業の機会を。
Sony Startup Acceleration Programはソニーが手がけるスタートアップの創出と事業運営を支援するプログラムです。2014年から6年間で、60件以上の事業化検証、16の事業を創出(2020年12月1日時点)。それらを通じて培った経験やノウハウを生かし、アイデア出しから事業運営、販売、アライアンス・事業拡大に至るまで総合的に支援する仕組みを整備し、スタートアップ支援サービスとしてみなさまにご提供しています。
バックナンバー
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Vol1Interview2019.09.09「会社の垣根を超えて、新しいことが生まれる社会を作りたい」
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Vol2Interview2019.09.26「新しい商品で溢れる楽しい世界を。」
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Vol3Interview2019.10.17「机の下に眠ったアイデアを、お客様の元に。」
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Vol4Interview2019.11.14「いろいろな人と接し、気づき、チャレンジを繰り返す」
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Vol5Interview2019.12.09「誰もがアイデアを形に、形をビジネスにできる世の中を作りたい」
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Vol6Interview2019.12.26「ソニーとスタートアップとの協業だからこそ実現可能なイノベーションを。」
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Vol7Interview2020.02.06「『あらゆる人に起業の機会を。』を実現、誰もが楽しく起業のノウハウを学べる環境を提供したい」
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Vol8Interview2020.04.03「海外と日本の“橋渡し役”として、国内外のスタートアップを支援していく 」
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Vol9Interview2020.04.30「新規事業のキーワードは“昔からある需要に、新しい技術でこたえる”こと」
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Vol10Interview2020.06.08「お客様の新規事業を成功させることで、より一層の信頼と安心を。」
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Vol11Interview2020.06.18「5年先も見えない面白い世の中!変化の波に乗ろう!」
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Vol12Interview2020.07.14「0→1の再現性を高め、スタートアップの“Hardware is hard“な状況を改善したい」
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Vol13Interview2020.08.20「ゴールを可視化・お客様の強みを活かし、チームでプロジェクトの成功を。 」
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Vol14Interview2020.09.03「プロジェクトを磨きに磨いて、ユーザーのもとで輝く価値を生み出す手助けをしたい」
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Vol15Interview2020.09.21「新しいモノを作り上げることの面白さに魅了される毎日」
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Vol16Interview2020.10.15「世の中の課題を解決するテクノロジー。それを生み出し届けるための事業を起こす支援をしたい」
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Vol17Interview2021.01.28「ソフトウェアの見える化を進め、プロジェクトをメンバーと共に創っていく」
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Vol18Interview2021.02.18「“開発スピード”と“品質”の両面で、スタートアップの夢のサポートを」