Sony Startup Acceleration Program(“SSAP”)のアクセラレーターは、新規事業の立ち上げを支援し加速するマインドセットとスキルを兼ね備えたプロフェッショナル集団です。それぞれが実際の事業経験を通じて学んだ豊富で専門的な知識を持ち、様々な分野で新規案件の事業化や収益化をサポートしています。
本連載では、SSAPに所属する多数のアクセラレーターの中から各回1名ずつをピックアップしご紹介いたします。
安住 仁史 Hitoshi Azumi
――担当支援領域
プロトタイピング&マニュファクチャリング
- 新規アイデアの実用化・量産化をモノづくり・電気・メカ・ソフトウェアの観点から支援
――担当事例
REON POCKET、株式会社グレースイメージングなどのプロトタイプ作成から量産支援までを広く担当
アクセラレーターインタビュー
――これまでのキャリアを簡単に教えてください。
大学では機械工学専攻だったのですが、その頃から机上の勉強だけでなく実際にモノづくりをする場を求めていて、ロボットベンチャーでアルバイトのエンジニアとして働いていました。そこでは、0から1を生み出すプロトタイピングに携わり、「一点物」の試作品を作る業務を行っていました。また、学生スタートアップである「OpenPool」の手伝いも並行して行っており、アメリカのオースティンで毎年行われる大規模イベントのSXSW(サウス・バイ・サウスウエスト)への出展やKickstarter (*1)へのプロジェクト掲載などを通して、スタートアップに深く関わってきました。
その後、スタートアップやベンチャーでは経験できなかった大規模な量産のモノづくりを体験してみたいと思い、2015年にソニー入社。スマートフォンのメカエンジニアとして、XperiaのX Performance、XZ1 Compact,、Xperia 1のメカ設計を担当しました。海外の部品メーカーや組み立て工場にも出張し大規模量産の立ち上げをイチから経験できたことは、今の業務に大変役立っています。
事業部での量産を一通り経験し、やはり新規事業に携わりたいという希望が大きくなってきた2018年に、SSAPで育成していた新規事業のメカ設計担当として参画したのち、アクセラレーターとして新規事業にチャレンジする方々のモノづくりを広く支援しています。
*1 映画、音楽、アート、シアター、ゲーム、コミック、デザイン、写真など、多種多様なクリエイティブプロジェクトに向け、クラウドファンディングによる資金調達を行う手段を提供している。
――支援するうえで大事にしていることは何ですか?
新規事業では、とにかくスピード感が重要です。特に検証フェーズでは、プロトタイプを用いた検証をして初めてわかることが多い。そのため、プロトタイプをスピーディーに作って試すことを繰り返す、アジャイル的なハードウェア開発が必要になります。私もソニー本社にあるCreative Loungeの機材を活用し、日々プロトタイプを作成しています。私の専門はメカ設計ですが、初期のフェーズでは電気やソフトウェアも自ら実装しています。そうすることでプロトタイピングのスピードも上がりますし、全体としてハードウェアがどうあるべきかの理解も深まります。
また、支援するプロジェクトのコアとなる技術への深い理解も非常に重要です。プロトタイピングサービスを提供する際には、お客様の技術を深く理解した上で実現性を検討する必要があるので、まずは柔軟に知識を吸収して、支援するお客様と同じ目線になることを大事にしています。そのために、開発された技術の背景となる論文や他社の取り組みなどのリサーチは欠かせませんね。
――SSAPの活動を通して実現したいことはありますか?
何もないところから何かを生み出すのは大変なことですが、0→1の再現性を高めていくことで、スタートアップ界隈でよく言われる“Hardware is hard“な状況を改善したいと思っています。現状モノづくりでは、経験不足などが理由で本質以外の部分で躓くポイントがあまりにも多く、断念してしまう人が多いのではないかと思っています。SSAPがモノづくりを支援することで、より多くの人が製品の価値に関わる部分に注力でき、世の中の人に必要とされている製品を、確実に送り出せるようになることが理想です。SSAPの提供するプロトタイピングサービスをさらに発展させることで、ソニー設立趣意書にある、「自由闊達にして愉快なる理想工場の建設」を実現したいです!
――オフの楽しみを教えてください。
DIYが趣味です。飼っているハムスターの小屋や、自分で使うための家具などを自作しています。
電子工作も時々していますが、何を作っているかは内緒です。
――最後に一言お願いします。
新しいチャレンジには失敗がつきものです。できるかどうかわからないことに取り組むからこそ、面白い。何かを生み出したいけれどどうすればよいかわからない、ハードウェアの知識や経験不足から、アイデアをなかなか形にできないという方のお手伝いができればと思っています。「量産の壁」を、一緒に乗り越えましょう。