2024.12.10
大企業×新規事業 -Inside Stories-

【三菱電機編#2】新事業は社会へのメッセージ

Sony Acceleration Platformによるオリジナル連載「大企業×新規事業 -Inside Stories-」は、Sony Acceleration Platformの担当者が大企業内の新規事業組織のトップにインタビューする企画です。

今回インタビューしたのは、三菱電機株式会社(以下、三菱電機)。新たな成長事業領域での新規事業創出に取り組むビジネスイノベーション本部の取組みを中心に、大企業で新規事業創出を推進する意義や難しさや成功へ導くための仕組みとは何か?三菱電機が初めて社内に設立した新事業組織のリアルに迫ります。

三菱電機株式会社 執行役員 ビジネスイノベーション本部 副本部長 兼 ビジネスイノベーション統括事業部長 松原公実さん

デザインシンキングで培った粘り強さを新しい価値創出へ

――松原さんご自身はどのようなキャリアを経て現在に至るのでしょうか?

 私自身は三菱電機に入社以来『統合デザイン研究所』で経験を積んできたので、現在の活動やマネジメントのベースにはデザインシンキングがあると思います。

 三菱電機開発本部に属する「統合デザイン研究所」は、三菱電機の製品、サービスのデザインを一手に担う組織であり、UXデザイン、ソリューションデザイン、プロダクトデザインなどのアプローチで社会と結びつくデザイン開発に取り組んでいます。そこで所長の役割を務めました。もともとはデザイナーとして、新製品やサービスの企画提案からプロダクトデザインなども手がけていました。

デザインシンキングでは、ユーザー視点で課題を見出し、それを解決するアイデアを繰り返し検証するマインドセットが重視されます。壁に突き当たればためらわず前の段階に戻って、アイデアをブラッシュアップします。何度もそのループを回す粘り強さが求められます。

――デザイナー時代に培ったデザインシンキングは新事業組織のマネジメントにどのように役立てていますか?

デザインシンキングは新事業創出にも有効と考え、研修や統合デザイン研究所との交流を通して、ビジネスイノベーション本部のメンバーに刺激を与える機会を設けています。デザインシンキングは一つのアプローチに過ぎません。必要なのは自ら発想することに加え他者の素晴しいアイデアを受け入れる柔軟な姿勢と、アイデアを育てる多様な道筋を備えておくこと。それができる環境づくりが重要だと思います

ビジネスイノベーション本部は、本部内の交流やアイデアを出し合う場として「水トーク」という企画を開催しています。毎週水曜日、公募したテーマで自由に話し合う場です。テーマは皆の意見を聞きたいという相談事から新しいアイデアのプレゼンまでさまざまです。新しい価値の創出に議論は不可欠です。発言しやすい雰囲気の中で健全な衝突ができる組織にしたいです。

三菱電機株式会社 執行役員 ビジネスイノベーション本部 副本部長 兼 ビジネスイノベーション統括事業部長 松原公実さん

大企業が新事業に挑戦する意義とは

――総合電機メーカーである三菱電機で、新事業に取り組む意義は何でしょうか?

企業が新事業創出に投資するのは未来の事業ポートフォリオを作るためですが、言い換えれば「私たちは未来をこう変えていきたい」という社会へのメッセージにもなると思っています。

私が新事業創出への想いを胸に宿すキッカケになった出来事は、中央省庁へ出向していた時期に「大企業からはもうイノベーションは生まれないのではないか。これからはスタートアップの時代だ」という声が周囲にはありました。歯痒い気持ちを抱きながら、大企業だからこそできる挑戦があるはずという想いが芽生えました。

――今後、どのような事業を生み出していきたいですか?

これからのイノベーションは、志を同じくする仲間との総力戦だと思っています。ただ自社の収益を上げることだけを目的とするのではなく、企業の技術、ノウハウやアセットを社会にどう役立てて、イノベーションを起こしていくのか、社外のパートナーと一緒に考えていきたいです。新しいことに挑戦する皆さんに声をかけてもらえる組織になれるよう、皆で頑張っていきたいと思います。

※本記事の内容は2024年7月時点のものです。

Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、770件以上の支援を25業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2024年11月末時点)

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