2024.11.26
大企業×新規事業 -Inside Stories-

【オカムラ編#3】会社を動かし、アイデアを具現化できる人材を育てるマネジメント

Sony Acceleration Platformによるオリジナル連載「大企業×新規事業 -Inside Stories-」は、Sony Acceleration Platformの担当者が大企業内の新規事業組織のトップにインタビューする企画です。

今回インタビューしたのは、株式会社オカムラ。戦後、航空機の技術者たちが、資金、技術、労働力を提供し合って創業したオカムラは、1945年からモノづくりを通して日本の発展に貢献する、オフィス家具メーカー。新たな協業や市場の開拓など、オカムラの意外な新規事業とは?モノづくりが起点となる新規事業組織のリアルに迫ります。

新規事業に挑戦する姿勢が未来の人材を育てる

――常に新たなアイデアが必要とされる新規事業を推進するときに、どのようなことを大事にされていますか?

 オフィスでのコミュニケーションの起点となるいちご栽培の仕組み「City Farming(シティファーミング)」や、観光地での手ぶら観光の実現を目指す自動搬送型荷物保管システム「BAGGAGE KEEPER(バゲッジキーパー)」など、他社からの提案や既存プロダクトといったアイデアの種から新規事業を育ててきました。

新規事業を計画から実行に移す時は、なるべくアイデアを育てるプロセスを型に当てはめないよう心がけています。他社の事例を参考にしたプロジェクト推進の型などがありますが、意識しすぎてしまうと型へ合わせることに一生懸命になってしまう。新規事業で生み出したい価値を形にすることを第一に、まずはがむしゃらに動いてみるマインドを大切にしています

そして、失敗を恐れずに新規事業へ挑戦する姿勢こそが、未来のオカムラを支える人材を育てることにつながると思います。

新規事業はうまくいかないのが大前提です。とにかく思いついたアイデアは可視化して、ディスカッションを重ねながら様々な気づきを得たり、失敗も経験することで人材が育ちます。フューチャービジネス推進事業部が起点になることで、新規事業に挑戦する人材を輩出したいと思っています。将来的にはどの事業部でも新規事業の構想が活発に動き出して、オカムラ全体で新しい価値を連続的に生み出せるようになるのが理想です

株式会社オカムラ オフィス環境事業本部 フューチャービジネス推進事業部事業部長 佐滕直史さん

大企業で大きな組織を動かすために必要なこと

――大企業の中で新規事業を推進するとなると、会社内での立ち回り方も求められてくると思います。

新規事業ではアイデアを具現化するマインドだけでなく、会社の大きな組織の歯車の動かし方も大切だと考えています。

 営業所に所属していた際、10億円分のオフィス家具を貸し出すという話が舞い込んできました。しかし、当時のオカムラは、オフィス家具を売る仕組みはありましたが、貸し出す仕組みがありませんでした。大きなビジネスチャンスを無駄にしないため、各部署と掛け合い、なんとかオフィス家具を貸し出す仕組みをつくりあげ、商談成立まで繋げることに成功しました。

本当にいろいろな事業部の人を巻き込んでつくり上げました。事業化のゴールに辿り着くためには各領域を専門にする人たちの知識や経験、賛同が必要でした。その時に掴んだ組織という歯車の動かし方は、事業部のメンバーにも心がけてもらっています。どんなに面白いアイデアでも一緒になってつくり上げてくれる協力者がいないと形にはなりません。事業部を超えてリソースを生かすためには? 予算をつくるにはどこに提案するべきなのか? そういった組織の動かし方が身につけば、新規事業のアイデアの種を見つけた時もすぐに実行に移せます。

新しい事業を生み出す扉はすべての世代に開かれている

――佐藤さんのお話を聞いていると、新規事業への挑戦を先導することがご自身の成長にもつながり、アイデアを事業へと育てるプロセスを楽しんでいるように見えます。

 人は自分で得た経験を信じるしかないと思っています。私自身、他社の新規事業の事例などを参考にすることはあります。ただ、そこで得た情報だけでは事業はうまくいかないんです。どれだけ壁にぶつかったのか、どれだけ人との対話を通してアイデアを見つけることができたのか、そういった経験の中で自分の感性を磨いていくことが大切だと思っています。だからこそ、新規事業を推進する上では、失敗を恐れずに挑戦し続けられるマインドが必要不可欠だと思います。

株式会社オカムラ オフィス環境事業本部 フューチャービジネス推進事業部事業部長 佐滕直史さん

――アイデア探しに奔走し、人の挑戦を促し、まだ見ぬ価値を形にするため奔走。新しい事業を推進する人材に期待することは何でしょうか?

私の事業部では半分以上が50歳以上のシニア世代です。若者が持つ目標への情熱などは素晴らしいですが、シニア世代だって、ぜんぜん負けてないと思います。また、30年近く社会で活躍してきた人たちは圧倒的な知識と経験を持っています。火がついたシニア世代の活躍ぶりといったら、20代の若手社員とは次元が違う迫力があります。つまり、新規事業への挑戦の門扉は、すべての世代に開かれているんです。いつ、だれから、どんなアイデアが生まれて、大きな事業に育っていくとも限らない。どんなキッカケで未来が拓けるか予想できないから楽しいんですよね。

※本記事の内容は2024年7月時点のものです。

Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、770件以上の支援を25業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2024年11月末時点)

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