Sony Startup Acceleration Program (SSAP)によるオリジナル連載「大企業×新規事業 -Inside Stories-」は、SSAPの担当者が大企業内の新規事業組織のトップにインタビューする企画です。
今回インタビューしたのは、ソニーグループ株式会社でスタートアップの創出と事業運営を支援するSSAP。
SSAPの責任者 小田島 伸至が新規事業組織の立ち上げの過程でぶつかった数々の“壁”、新規事業には意外にも関係が無かったポイントとは?これまでに19の事業を創出してきたSSAPの過去と今、そして未来に迫ります。
ターニングポイントは、異国の地での苦悩
――小田島さんはSSAPを立ち上げ、数々の新規事業を生み出してきました。これまでのキャリアで一番糧になっている経験は何ですか。
私のキャリアのターニングポイントは、ソニーのデバイス事業を開拓すべく、自ら希望した北欧・デンマークへの赴任です。北欧での私のミッションは、当時まだ市場が無かった現地でデバイス事業のビジネスを創出することでした。ノウハウも無い状態でのゼロからのスタートだったので、最初は本当に苦しかった。しかし、地道な努力やPDCAを回し続け、最終的には周囲の信頼を勝ち取り、ビジネスの立ち上げを実現。約2年で数百億円の事業の創出に貢献できました。
今当時を振り返っても、最初はとにかく孤独で辛かった記憶が鮮明です。しかし事業をゼロから立ち上げた経験は今でも強く頭に残っていますし、新規事業の推進にも通じています。
――異国の地でのビジネス創出、最初はとにかく辛かったとのこと。少し聞きづらいのですが…、具体的に何が苦しかったのでしょう?
そうですね、ゼロから事業を立ち上げなければならないのに、当時の私はその経験が無かったがために何をやれば良いのかも分からなかったことです。やっと道筋を立てられても知らないことだらけ。周囲の人に話を聞きに行ったり、とにかく本を読んだりの繰り返しの日々でした。試行錯誤しても結果はすぐに出ず、「上手くいくのだろうか」と不安になることも多かったです。
――その状態から、数百億円の規模の事業を創出できたのはなぜでしょうか。
自分で目標を作り、その実現のために強い思いを持ち続けたからですね。
私が北欧で気付いたのは「明確な目標をセットすること」の大切さ。そしてその上で「想っていれば必ず叶う」ということ。これに気付けた時が、社会人としての自分の大きなターニングポイントでした。
社会人になるまでは、私は周囲の人が与えてくれた目標に沿って何かに取り組むことが多かったですし、ソニーに入社してからも会社や組織が設定した目標が用意されていることがほとんどでした。しかし、海外赴任時には自ら目標をセットする必要があり、そのために日々何をやるべきかを考えました。
これらのことに気付いてからは、自ら目標を設定し、強く想ったことはほとんど叶うようになったように思います。
「3つのポイント」を満足させられるか?
――小田島さんが考える、新規事業に取り組む醍醐味はズバリ何ですか。
私が思うに、新規事業は「社会」「会社」「自分」の3つを満足させられるもの。そして私は、これらの3つの要素を満たせた時に幸福だと思います。新規事業に関わっていると、この幸福感を得る瞬間がとても多いです。
まず、新規事業は「社会」のためになって初めて、その製品・サービスをお客様に使ってもらえます。そして「会社」のためになっていると会社が応援してくれます。最後に「自分」。これは新規事業が自分の目標や成長に繋がっていると自分が満足することを意味します。一方で自分の目標や成長につながらないことに対して自らを犠牲にしていると自分が疲弊して、物事はうまく回らないです。
――「社会」「会社」「自分」の3つのポイントが満足している状態とは、具体的にどんな時?
例えば、新規事業を事業化した時に、製品・サービスを受け取ったお客様の喜びの声が届いた時。会社の色々な人から喜びのフィードバックをもらった時。新規事業に挑戦したプロジェクトメンバーが嬉しそうな時、そしてそれをサポートしてきた私自身にも励ましや感謝のメッセージが届き、それに自分の心が動いた時。新規事業を育成していると、何度もそういったシーンに遭遇します。その度に、この3つのポイントが大切だと確信に変わりましたね。
新規事業は、この3つのポイントを満たせるのが醍醐味ですね。逆に言えば、3つのポイントを満足させられなければ良い新規事業とは言えないです。
>>次回 【ソニー編 #2】たった1人、未知で複雑で壁だらけだった につづく
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※本記事の内容は2022年4月時点のものです。