2022.08.01
大企業×新規事業 -Inside Stories-

【ニチレイ編 #2】チームで事業を創る必勝法

Sony Startup Acceleration Program (SSAP)によるオリジナル連載「大企業×新規事業 -Inside Stories-」は、SSAPの担当者が大企業内の新規事業組織のトップにインタビューする企画です。

今回インタビューしたのは、株式会社ニチレイ(以下ニチレイ)。ニチレイではグループ全体で新たな価値を持続的に創り出すべく、2022年4月より新価値創造部を設置し新規事業を生み出す仕組み作りや事業開発を行っています。

株式会社ニチレイ 戦略本部 新価値創造部長 柴田 雅浩さんが語る、食のフロンティアカンパニーで新規事業を行う理由とは?課題解決にこだわるニチレイ流の、事業創出の意外なアプローチとは?
ニチレイの新生・新規事業組織のリアルに迫ります。

新規事業推進のヒントをくれた「本格炒め炒飯®」

――柴田さんはニチレイの新規事業組織をマネジメントされていますが、これまでのキャリアで一番糧になっている経験は何ですか。

私は1992年に入社しました。冷凍食品などの加工食品の営業からキャリアをスタートし、人事や商品企画、マーケティング、経営企画をなど経験。基本的にニチレイの本社ビル内でキャリアを積んできました。
私の場合、今の糧になっているのはこの中のどれか1つというより、キャリアで培ってきた"人の繋がり"全てが財産です。この繋がりは、社内はもちろんのこと社外の主要な関係者との関係性も含みます。

――"人との繋がり"が今に活きているのですね。ちなみにすごく気になるのですが…、商品企画や営業面で携わった商品の中で最も印象的だったものは?

一番の思い出は、家庭用の冷凍食品で有名な「本格炒め炒飯®」の開発に携わった時のことでしょうか。私は商品企画担当として、工場の方々とコミュニケーションを取りつつ商品開発を行い、商品が形になってからはプロモーションに加え営業もしました。今振り返ると、世の中に貢献できる商品を作りたい一心で奔走する日々でしたね。

子どもの頃や若い頃に炒飯を食べた記憶はあまりなかったのですが、商品開発に携わってから、私の大好物No.1はチャーハンになりました(笑)。

「本格炒め炒飯」のパッケージと、中華鍋で炒飯を炒めているイメージ写真
「本格炒め炒飯®」の商品画像・イメージ

――炒飯愛を感じます!「本格炒め炒飯®」の開発の過程で一体何があったのですか?

「本格炒め炒飯®」を開発した時には、チームメンバーと色々な店舗の炒飯を食べ歩きました。加えて、開発メンバーとある店舗の料理長に炒飯の調理法を教えていただいたり、鍋で炒飯を作る過程を動画で撮って適切な温度などを研究したり。ニチレイの冷凍食品は、"手作りの美味しい料理の再現性"が重要なので、このように料理の工程や配合のノウハウをプロに教えていただくことも多いのです。

私はもともと、食べて飲むことが大好きです。美味しいものを囲んで人と会話をすることが好きだからかもしれません。炒飯の開発に携わる過程でとにかく沢山の炒飯をチームメンバーと何度も食べ会話をした記憶と、プロから教えていただいた炒飯の奥深さ。これらが私にとっての炒飯の魅力ですね。1つの商品を開発し育てた経験は、事業の育成に通じています。

新規事業特有の"孤独"を防ぐ、柴田さん流コミュニケーション

――新規事業の組織をマネジメントする上で大切にしているルールや考え方はございますか。

大切にしていることはシンプルで、「チームみんなで話すこと」です。チームの中で誰かが1人で悩みや問題を抱え込まない環境を作るようにしています。

新規事業を推進している方々は特に、日々未知の課題に遭遇するわけですから1人1人が孤独です。そんな彼らが悩んでいる時には、部やチームのミーティングで、またOne on Oneミーティングでその悩みをテーブルの上にあげてもらうようにしています。その課題の解決に向けてアイデアを出し合うのはもちろんのこと、精神面でも励まし合うことが大切です。

――なるほど。「チームみんなで話す」ことはとても大切な一方で、継続して行うことは意外に難しい気がします。

ニチレイの新規事業組織である新価値創造部には前述の通り、新規事業の仕組みを作るグループと事業を実際にインキュベーションするグループの2つがあります。2つのグループは日々取り組む業務の内容は違いますが、敢えてこの両者の相互コミュニケーションの場を定期的に設けています。これが意外に面白いのです。

"新規事業の仕組みを作る人"と"実際に事業を推進する人"は考え方が全く違います。仕組みを作る側からすれば「そんなやり方で事業化が成功するのか?」という意見があったり、事業を推進する側からすれば「そんな仕組みでは新規事業は生み出せない」という考えがあったり。そういった日々の小さな違和感や発見を、お互いにテーブルの上に乗せて議論をします。その結果、新しい方向を見つけ出せるのではないかと思っています。

女性社員がガラスの壁に貼られたポストイットに書き込もうとしているイメージ写真
イメージ

――お話を伺っていると、柴田さんは社内外の関係者とのコミュニケーションを常に円滑に進めていらっしゃるように思います。そのコツはありますか?

私はいつも、自分より相手に興味を持つタイプなので、その人がどんな行動をするのかを観察しつつ、何を考えているかを知りたくてとにかく話をします。ただそれを意識的に行っているというよりは、私は根本的に“人”が好きで、その人の行動や考えに純粋に興味があるのですよね。これを言うと驚かれることもありますが、今までの人生で特定の人を心底嫌いになったという記憶がありません。

私は今、新規事業組織をマネジメントしていますが、あくまでも自分は新規事業を推進する方々を「サポートする」立場だと捉えています。プロジェクトリーダーやメンバーとして新規事業を行う立場の人たちは私よりもっと大変だと思います。

そんな彼らが悩んだ時には必ず時間を設けて話をして、壁を越えられるようにサポートをしたいと思っています。知財や法務などの部署の方々との連携で課題が生じた時も同じです。

新規事業を推進する上では、社内・社外問わず多くの方とコミュニケーションを取る必要があります。課題が生じたら、誰とどう連携して解決するか。それを考え実際に前に進んでいくことは、本人の成長や各部署の成長にも繋がります。それが新規事業組織をマネジメントする仕事の面白いところでもありますね。

インタビューに答える柴田さんの写真

>>次回 【ニチレイ編 #3】初のアプリサービスに、糖質50%オフのパーソナライズできる主食まで? につづく

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※本記事の内容は2022年8月時点のものです。

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は、「あらゆる人に起業の機会を。」をコンセプトに、2014年に発足したスタートアップの創出と事業運営を支援するソニーのプログラム。ソニー社内で新規事業プログラムを立ち上げ、ゼロから新規事業を創出した経験とノウハウを活かし、2018年から社外にもサービス提供を開始。経験豊富で幅広いスキルとノウハウをもったアクセラレーターの伴走により660件以上の支援を24業種の企業へ提供。大企業ならではの事情に精通。(※ 2024年3月末時点)

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