2023.04.10
大企業×新規事業 -Inside Stories-

【ライオン編 #1】社外の副業人材も活用!新規事業は「飛び地の開拓」と「選択と集中」の二刀流

Sony Startup Acceleration Program (SSAP)によるオリジナル連載「大企業×新規事業 -Inside Stories-」は、SSAPの担当者が大企業内の新規事業組織のトップにインタビューする企画です。

今回インタビューしたのは、ライオン株式会社(以下、ライオン)。ライオンでは新価値創出をリードするビジネス開発センターを2020年に設置し、事業の拡張・進化を目指しています。

ライオン株式会社 ビジネス開発センター ビジネスインキュベーション 部長 樫田 航太郎(かしだ・こうたろう)さんが語る、企業内で新規事業を創出するためのライオン流アプローチとは?自社のアセットを活かして生まれた最新の新規事業と、今後の戦略は?ライオンの新規事業組織のリアルに迫ります。

ライオン会社入社後、薬品事業部、オーラルケア事業部で製品企画に従事。2022年1月よりビジネス開発センタービジネスインキュベーションを統括。

創業から130年以上の老舗企業が、今新規事業に注力するワケ

――まず、ライオンの社風を改めて教えてください! 

ライオンのパーパスは「より良い習慣づくりで、人々の毎日に貢献する(ReDesign)」です。習慣をつくることにより社会に貢献すべく、ライオンでは創業から130年以上さまざまな事業を展開しています。

社風というと少し悩みますが、ライオンには自由闊達な雰囲気があります。手を挙げればやりたいことをやれる環境があり、一緒に働く社員も温かい人が多く、新しいことにチャレンジしやすい会社なのではないでしょうか。新規事業に関わっている人は特に、アイデアを出したり新しいものを創り上げたりすることが好きな人が多いです。

ライオン株式会社のロゴ

――新しいことにチャレンジしやすい会社なのですね。樫田さんがリードされている新規事業組織はどのようなきっかけで作られましたか?

昨今、ビジネス環境は大きく変化し、競争が厳しくなっています。それに対応しようと、かつては、いろいろな部署で新規事業の立ち上げや支援を行っていました。
それらを1つにまとめ、イノベーションを加速させていこうということで、2020年に「ビジネス開発センター」という本部を設けることになりました。ビジネス開発センターでは新規事業だけでなく、ライオンの既存事業のマーケティングやブランディングの支援をし、事業の拡張・進化を目指しています。イノベーション創出に必要な3要素「顧客体験開発」「ビジネスモデル設計」「テクノロジー活用」を横断的・俯瞰的に捉えて新たな生活習慣を提案し、既存事業の変革や新規事業の創出に向けて活動しています。

体制図/出典:ライオン統合レポート2021 P51
体制図/出典:ライオン統合レポート2021 P51
https://www.lion.co.jp/ja/ir/library/ar/2021/pdf/ir2021_A3.pdf

私が統括する組織はビジネス開発センター内の1つの部署「ビジネスインキュベーション」で、ライオンで今取り組んでいる新規事業のテーマとそのオーナー(プロジェクトリーダー)が集まる組織です。新規事業のオーナーは、ビジネスインキュベーションに完全に異動する形で、100%専任で集まっています。

ライオンの二刀流 新規事業戦略とは?

――組織ではどういった戦略で新規事業を展開しているのですか?

ライオンでは、既存事業領域に捉われない「飛び地の開拓」と、領域を定めた「選択と集中」、2つの戦略で新規事業開発に取り組んでいます。

――2つの違うアプローチ、興味深いです。1つ目の戦略である「飛び地の開拓」ではどういった取り組みをしていますか?

ライオン社員を対象にした社内起業プログラム「NOIL」が、この戦略に基づく取り組みです。2019年から開始し、今年で5年目を迎えました。
NOILは、事業アイデアを持つ社員がプログラムに応募し、選定されたアイデアの事業化を目指す仕組みです。自身が応募したアイデアが事業化案件に選ばれると、そのアイデアのオーナーは我々の組織であるビジネスインキュベーションに完全に異動し、事業立ち上げを推進します。

実際にNOILから生まれ、ビジネスインキュベーションで育ててきた事業アイデアは何件もあり、その多くはライオンの既存事業の領域と比較して「飛び地」のものです。NOILの仕組みが、1つ目の戦略である「飛び地の開拓」と言えます。

NOIL 最終審査会の様子
NOIL 最終審査会の様子

――社内起業プログラムによる「飛び地の開拓」が1つ目の戦略なのですね。2つ目の“領域を定めた「選択と集中」”とは、具体的に何を指しているのでしょうか。

領域を定めた「選択と集中」は、ライオンが中期経営計画で掲げている「4つの提供価値領域」に沿った事業開発を指します。以下の図の通り、「オーラルヘルス」「インフェクションコントロール」「スマートハウスワーク」「ウェルビーイング」の4つから成り立ちます。

4つの提供価値領域/出典:中期経営計画
4つの提供価値領域/出典:中期経営計画(https://www.lion.co.jp/ja/company/vision/

「オーラルヘルス」は創業当時からメインの事業としてやってきている領域。ハブラシや歯みがき用品がこれにあたります。オーラルケアメーカーの強みを活かし、既存の事業の枠を超えた事業拡張を目指しています。「インフェクションコントロール」は、その名の通り感染症予防を指し、既存事業でいうとハンドケア用品などの領域です。人々の健康維持をどのように実現するかがテーマです。「スマートハウスワーク」はいかにスマートな暮らしを提案するかをテーマに、暮らし全般を指す領域。「ウェルビーイング」は、人々の心と身体の健康に貢献すべく、それぞれに合った製品・サービスや習慣の提案を指します。

このように4つの領域を定めて選択と集中を行い、既存事業の最適化だけでなく、新規事業についてもこの領域に沿って検討する動きが、2つ目の戦略である「選択と集中」です。

4つの領域のイメージ/出典:中期経営計画
4つの領域のイメージ/出典:中期経営計画(https://www.lion.co.jp/ja/company/vision/

新規事業チームに、他社の副業人材も活用⁉

――NOILで社員から生まれたアイデアを事業に育てているのですね!選定されたアイデアをどのように育成しているのでしょうか。

アイデアの発案者の方々は、新規事業のオーナーとしてビジネスインキュベーションに異動し、業務の工数を100%新規事業に充てます。これまでオーナーとなった方々は、入社からずっと研究職をされてきた方、BtoBやBtoCの営業を行ってきた方など、多種多様なバックグラウンドを持っています。

プロジェクト推進の上ではチームが必要なので、他部門や他社の人材にも入ってもらいプロジェクトごとにチームを作っています。他社の方々は実は副業人材で、本職はIT企業に所属しているエンジニアなどの方々がいらっしゃいます。

――社外の副業人材を活用し新規事業を推進されているとは驚きました!

新規事業を推進する上で、社内のリソースだけでは足りない面もあります。そういった点を中心に副業の方々にサポートいただき、事業を確実に前進させていく役割を担ってもらっています。

社外の副業人材を活用

>>次回 【ライオン編 #2】”新規事業 “と“「ガリガリ君」香味のハミガキ“に共通するコト につづく

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※本記事の内容は2023年4月時点のものです。

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は、「あらゆる人に起業の機会を。」をコンセプトに、2014年に発足したスタートアップの創出と事業運営を支援するソニーのプログラム。ソニー社内で新規事業プログラムを立ち上げ、ゼロから新規事業を創出した経験とノウハウを活かし、2018年から社外にもサービス提供を開始。経験豊富で幅広いスキルとノウハウをもったアクセラレーターの伴走により660件以上の支援を24業種の企業へ提供。大企業ならではの事情に精通。(※ 2024年3月末時点)

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