Sony Acceleration Platformによるオリジナル連載「大企業×新規事業 -Inside Stories-」は、Sony Acceleration Platformの担当者が大企業内の新規事業組織のトップにインタビューする企画です。
今回インタビューしたのは、株式会社オカムラ。戦後、航空機の技術者たちが、資金、技術、労働力を提供し合って創業したオカムラは、1945年からモノづくりを通して日本の発展に貢献してきた、オフィス家具メーカーです。新たな協業や市場の開拓など、オカムラの意外な新規事業とは?モノづくりが起点となる新規事業組織のリアルに迫ります。
連続的に短いスパンで新たな価値を生み出す
――まず、フューチャービジネス推進事業部の設立背景と事業目的を教えてください。
創業から80年を迎えようとしているオカムラは、新規事業創出に取り組む新たなフェーズに突入しています。創業時は鉄やアルミを使った日常生活用品の製造から始まりました。その後、在日米軍向けのスチール製家具を経て、価値提供の場を広げながら、オフィス環境事業、商環境事業、物流システム事業など現在の既存事業を確立してきました。しかし、世の中は変わりつつあり、既存事業による持続的な価値提供だけでは通用しなくなってきています。これからは新規事業による価値を短期間で連続的に社会へ提供していく必要があります。オカムラは既存事業を成長させてきた強力なモノづくりのDNAと、新規事業のアイデアを組み合わせることで、「需要創出型企業」への変革が実現すると考えています。
そして、オカムラが目指す新規事業創出を専門的に担うのが、私が統括するフューチャービジネス推進事業部です。
――フューチャービジネス推進本部は新規事業をどのように定義されていますか?
オカムラは複雑化する社会の状況に応えるため「需要創出型企業」への変革を進めています。モノづくり企業としての経験を生かしつつ、オープンイノベーションに積極的に取り組み、新たな事業領域を開拓しています。その変革を先導するのが新規事業創出に特化したフューチャービジネス推進事業部です。新規事業の定義は企業によって異なると思いますが、私たちが大切にしているのは、オープンイノベーションや社内のプロダクトを活用し、新しい価値を連続的に短いスパンで生み出すことです。
――「需要創出型企業」への変革にむけてどのような取り組みを行っているのでしょうか?
フューチャービジネス推進事業部では、既存の事業領域において事業部や外部企業との連携を通した新しいモノやサービスの創出と、新しい事業領域でオカムラの既存製品を活用した新しい市場の創出に取り組んでいます。(図を参照)。
事業部や部門、社内外の枠を超えて事業推進を行い、オカムラが持つ技術や知見を新価値創造へと結びつけるための活動を先導しています。また、事業部や外部企業と協力してアイデアを形にして、既存製品の可能性を新しい視点を持って考えていくことも日々行っています。
――新規事業を創出するためのコツは何だと思われますか?
フューチャービジネス推進事業部の目的は、変わりつつある社会の需要に対して、継続的に新しい価値を生み出すことです。社会問題は複雑化し次から次へと新しい概念が次々と生まれる中で、既存事業や外部企業と密に連携することにより、オカムラが「需要創出型企業」に変革するための新規事業創出を目指しています。
新規事業創出のためには2つのアプローチが必要だと考えています。1つ目は、既存の事業領域で事業部や外部企業との連携を通じて新しいモノやサービスを創出することです。2つ目は、新しい事業領域でオカムラの既存製品を活用し、新しい市場を開拓することです。前者のアプローチでは、外部企業のアイデアや技術からインスピレーションを得ることで、社内では想像し得なかった価値を生み出すことができます。後者のアプローチでは、オカムラがこれまで培ってきたモノづくりを異なる視点から再解釈し、新たな価値を見出すことが可能です。
オカムラはモノづくり企業として、プロダクトベースで新しい価値を提供しようという精神を持っています。オフィス家具の印象が強いオカムラですが、実際にはスーパーマーケットのショーケースや、物流を支える仕分けシステム、フォークリフトのパワートレーンなど、多岐に渡る製品を手掛けています。そのモノづくりの多様性は非常に豊かであり、オカムラのDNAが生み出す製品には、まだまだ多くの可能性が秘められています。
>次回「2つのアプローチでソリューションや空間の新たな可能性を見出す」へ続く
※本記事の内容は2024年7月時点のものです。