2022.08.08
大企業×新規事業 -Inside Stories-

【ニチレイ編 #3】初のアプリサービスに、糖質50%オフのパーソナライズできる主食まで?

Sony Startup Acceleration Program (SSAP)によるオリジナル連載「大企業×新規事業 -Inside Stories-」は、SSAPの担当者が大企業内の新規事業組織のトップにインタビューする企画です。

今回インタビューしたのは、株式会社ニチレイ(以下ニチレイ)。ニチレイではグループ全体で新たな価値を持続的に創り出すべく、2022年4月より新価値創造部を設置し新規事業を生み出す仕組み作りや事業開発を行っています。

株式会社ニチレイ 戦略本部 新価値創造部長 柴田 雅浩さんが語る、食のフロンティアカンパニーで新規事業を行う理由とは?課題解決にこだわるニチレイ流の、事業創出の意外なアプローチとは?
ニチレイの新生・新規事業組織のリアルに迫ります。

戦後から先輩が築いた"ニチレイの歴史"を越える

――柴田さんが考える、新規事業に取り組む醍醐味はズバリ何ですか。

ニチレイの歴史を築いてきた先輩たちの軌跡を辿ると、ニチレイは常に社会課題を解決しつつ新しいチャレンジをしてきたことがわかります。新規事業は、既存事業の延長ではない新しい領域に踏み込み、社会のためにも会社のためにもなる事業を創れることが醍醐味なのではないでしょうか。

ニチレイは、「日本冷蔵」として1945年に創業しました。当時の日本は第二次世界大戦後で、食料不足が社会課題でした。「食料不足をなんとかしたい」という想いのもと、先輩たちが事業を開始したのです。1950年に入ると、ニチレイは冷凍食品などの加工食品へのチャレンジを始めます。それ以降、業務用のマーケットと家庭用のマーケットを築きつつ、美味しさの質も追及。こうやって、世の中のニーズや社会課題にあわせて、先輩たちがその都度イノベーションを起こしてきたわけです。

現代は、昔に比べると多岐に渡る複雑な社会課題がたくさんあります。そういった課題を解決するためにも、今ニチレイには新しいチャレンジが求められているのです。

インタビューに答える柴田さんの写真

食のフロンティアカンパニー"ならでは"の新規事業とは?

――新規事業組織から生まれた事業で、印象的だったものはありますか?

そうですね、ローンチした事業のうち印象的だったものとして2つご紹介します。

1つ目は、献立自動生成アプリ「me:new(ミーニュー) 。ニチレイとして初めてのアプリサービスです。me:newは「献立を考えるのが大変」「家庭内で食事の準備にかける時間を短縮したい」という方々の課題を解決するアプリ。最長1週間分の献立を自動作成してくれたり、買い出しの点でも、近所の特売情報の比較をしてくれたりします。

ミーニューのアプリ画面が表示されているスマホの写真 献立自動生成アプリ「ミーニュー」、1週間分の献立を自動作成できるアプリ。お子さまの年齢に合わせた献立提案と調理法アドバイスや、買い物リストの自動作成など、 さまざまな機能を搭載。

もともとこの事業は、社員から生まれたアイデアをもとに、社内で「conomeal kitchen」というニチレイ単独のアプリとして事業化したのですが、事業拡大を考える上で、単独でアプリサービスを行うのではなく、類似したサービスを展開するスタートアップ企業と協業する選択を取りました。両者の強みを活かしつつ、一緒に仮説検証を行うことが、事業を拡大する近道だと考えたのです。結果、スタートアップである株式会社ミーニューが展開していたサービスと統合し、現在は「me:new」の事業を推進しています。

――me:newはニチレイ初のアプリサービスなのですね。2つ目はどんな事業ですか?

2つ目は栄養素をパーソナライズできる新しい主食「ごはんのみらい」。2022年1月に発売開始したばかりで、個人の健康やライフスタイルに合わせた"新しい主食"を提案しています。独自の技術によって米を加工し、糖質を50%カットしながらも食物繊維は約10倍にした商品です。

ボトルタイプとパウチタイプのパッケージ写真 新しい主食「ごはんのみらい」、独自の技術によって米を加工することにより糖質を50%カットし、低カロリーで高食物繊維を実現した、フリーズドライの新しい主食。

健康に配慮した新しい麺類やパンが増える一方で、お米の新製品は多くありません。「現代人のニーズに合った新しいお米をつくろう」という社員のアイデアから、この事業は生まれました。

――「ごはんのみらい」は食の会社ならではの事業だと思います。どのようなバックグラウンドを持つ社員のアイデアだったのでしょうか。

「ごはんのみらい」の開発者は、実は過去に炒飯の開発担当だったことがあります。お米についての知識が豊富で、より美味しいお米を追求してきた人です。開発者は「新しくて健康的なお米であっても、美味しくなければお客様には受け入れられない」とこだわりを強く持ち、常にお客様の声を聞きながらより良い製品にすべくPDCAを回しているところです。
将来的には、今の製品よりも2倍も3倍も美味しくするぞ、と意気込んで頑張っています。

コロナ禍のピンチは臨機応変なピボットで乗り越えた

――コロナ禍で新規事業の組織や事業への影響はありましたか?

コロナ禍の影響を受けながらも、猛スピードでそれを挽回した事例が1つあります。それが、事業化プログラムのテーマの1つであった「こどもダイニング」という子ども向けの新しい料理教室。

当初このサービスはリアルの場での展開を想定していました。しかしコロナ禍でリアルでのサービス提供が難しくなり、ピンチに。しかしプロジェクトの臨機応変なピボットにより、オンラインでの提供に切り替えることに成功。約1か月でPoCまで行うことができました。もともとリアルで行おうとしていたコンテンツをオンラインで配信することに成功したのです。これは本当にピンチをスピーディに乗り越えられた、良い経験になりましたね。

ノートパソコンを見ながら、ボウルの中の野菜をしゃもじでかき混ぜているイメージ写真
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>>次回 【ニチレイ編 #4】ビジョナリーでなくてもいい、目指すのは"先頭に立って踊り続ける"新規事業組織 につづく

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※本記事の内容は2022年8月時点のものです。

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は、「あらゆる人に起業の機会を。」をコンセプトに、2014年に発足したスタートアップの創出と事業運営を支援するソニーのプログラム。ソニー社内で新規事業プログラムを立ち上げ、ゼロから新規事業を創出した経験とノウハウを活かし、2018年から社外にもサービス提供を開始。経験豊富で幅広いスキルとノウハウをもったアクセラレーターの伴走により660件以上の支援を24業種の企業へ提供。大企業ならではの事情に精通。(※ 2024年3月末時点)

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