2022.08.17
大企業×新規事業 -Inside Stories-

【ニチレイ編 #4】ビジョナリーでなくてもいい、目指すのは"先頭に立って踊り続ける"新規事業組織

Sony Startup Acceleration Program (SSAP)によるオリジナル連載「大企業×新規事業 -Inside Stories-」は、SSAPの担当者が大企業内の新規事業組織のトップにインタビューする企画です。

今回インタビューしたのは、株式会社ニチレイ(以下ニチレイ)。ニチレイではグループ全体で新たな価値を持続的に創り出すべく、2022年4月より新価値創造部を設置し新規事業を生み出す仕組み作りや事業開発を行っています。

株式会社ニチレイ 戦略本部 新価値創造部長 柴田 雅浩さんが語る、食のフロンティアカンパニーで新規事業を行う理由とは?課題解決にこだわるニチレイ流の、事業創出の意外なアプローチとは?

ニチレイの新生・新規事業組織のリアルに迫ります。

新規事業で解決する、"食"と"健康"の社会課題

――ニチレイから生まれる新規事業を通じて、どんな社会課題を解決したいですか。

大きく2つあります。1つは「持続的な食料資源の調達課題」。もう1つは「人々の健康課題」です。
まず「持続的な食料資源の調達」、これはとても大きな課題です。これまで通りの手法だけでは、食料資源を持続的に生み出していくことは難しいと予測されています。食の安全保障の基準を順守しつつ、どうやって食料を作り出していくか。フードテックやDX(デジタルトランスフォーメーション)などの考え方も含め、検討していく必要性を感じています。
もう1つの「人々の健康課題」。現代の日本人は、食生活に起因する生活習慣病の増加や栄養バランスの偏りなどの課題を抱える人が多いと言います。このように食の健康や栄養課題は多岐に渡り、ニチレイがグループとしてどう取り組むかは大切なポイントです。この大きな課題に対しても、新たにチャレンジをしていきたいです。

白衣と医療用手袋をした人が顕微鏡をのぞいている、手前には野菜が置かれているイメージ写真と、白衣を着た人がタブレット端末をもってアドバイスをしているイメージ写真
イメージ

――食のフロンティアカンパニーとして、未来を見据えていらっしゃるのですね。

企業の視点でも、ニチレイとして長期経営目標「2030年の姿」の実現に向け、5つの重要事項(マテリアリティ)を定めています。その中の1番目が「食と健康における新たな価値の創造」。既存領域を超えた挑戦により、素材がもつ健康価値や冷力(※)の新たな可能性を見出し、デジタルを活用した豊かな食生活と健康寿命の延伸に貢献していきたいと考えています。

※「長期保存」「品質保持」「食材の再現性」といった特性を持つニチレイの技術

新規事業は、特別なものではない

――柴田さんにとって「新規事業とは?」を一言で表すと?

新規事業を一言で表すって、難しいですね(笑)。私の考えを端的に表現するなら、新規事業とは「誰もができるチャレンジ」でしょうか。

私自身、ビジョナリーとして自分で事業を推進していくと言うよりは、事業を行うプロジェクトのみんなをサポートする立場で新規事業に携わっています。その過程で、プロジェクトのメンバーが壁を越えた時にパッと表情が明るくなったり、お客様からの声にハッとしましたという気付きを聞いたり、会社のさまざまな部署の人たちに協力いただきつつ応援してもらったり。そういった瞬間に、この仕事をやっていて良かったなと思うのです。

新規事業には色々な関わり方があります。ハードルを上げすぎずに、日常にうまく溶け込めると、チャレンジする人も増え、結果的に多くの新規事業が生まれやすくなるのだと思います。

インタビューに答える柴田さんの写真

――新規事業は「意外に誰でもできるチャレンジ」だというイメージで、ハードルを下げたいとお考えなのですね。

この組織は「新価値創造部」という名称で、一見尖った名前に見えるかもしれません。しかし私は、全てのニチレイ社員1人ひとりが日常的にチャレンジできることがニチレイらしいイノベーションだと思っています。

新価値創造部として目指しているのは「ニチレイの先頭に立って"踊り続ける"組織」。そしてその過程で切り開いたものを仕組み化していきたいのです。

先頭で"踊り続ける"新規事業組織でありたい

――柴田さんがおっしゃる"踊り続ける"という言葉には、どういう意味が込められていますか?

ちょっと変な表現ですが、新規事業を発想し推進するメンバーには、1人ひとりに強い想いがあります。その想いを内に秘めることなく、どんどん全面に出して楽しく踊り続けて欲しい。そして、気付いたら周りのみんなも自然に踊っているような環境を作っていきたいと考えています。私達が率先して自分のアイデアを持ち”踊り続ける(明るく楽しく取り組む)"ことで、周りから見て「こんなこともやっていいんだ」とか「自分でもやれるんだ」と思ってもらい、心理的なハードルが下がり、新たなチャレンジに繋がれば良いと思っています。

――企業で新規事業に関わる方々に向けて「これだけは伝えたい!」ということはありますか?

新規事業は"特別なもの"で"尖った人がやるもの"だ、というイメージを持つ方が多いと思います。しかし実際はそんなハードルは必要ないですし、事業を推進するリーダーとしてだけでなく、サポーターとしても関われます。「私でも出来そうだな」「僕でもいいのかな」と思ってほしいです。

日常の1つ1つの仕事の、新たな小さいチャレンジもイノベーションです。ニチレイでは、まずは私達の組織が先頭に立ち踊りつつ、会社の新しい成長に向かって活動が続くことを目指しています。

-----------------------------------------------------

株式会社ニチレイ 戦略本部 新価値創造部長 柴田 雅浩さんに迫った今回の「大企業×新規事業 -Inside Stories-」。

インタビューのハイライトをまとめます。

ハイライト 新規事業に取り組む醍醐味:新しい領域に踏み込み、社会・会社のためになる事業を創れる、新規事業をマネジメントする上でのルール:シンプルに「チームみんなで話すこと」、立ちはだかる壁の乗り越え方:関係者の協力を仰ぎ会話を重ね、それを経験値にする

より詳しいインタビューの様子は、動画へ!

ニチレイ編 インタビュー記事・動画一覧はこちら 
連載「大企業×新規事業 -Inside Stories-」記事・動画一覧はこちら

各社のインタビュー記事・動画も公開中!
JR東日本編はこちら
ソニー編はこちら

 

※本記事の内容は2022年8月時点のものです。

Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は、「あらゆる人に起業の機会を。」をコンセプトに、2014年に発足したスタートアップの創出と事業運営を支援するソニーのプログラム。ソニー社内で新規事業プログラムを立ち上げ、ゼロから新規事業を創出した経験とノウハウを活かし、2018年から社外にもサービス提供を開始。経験豊富で幅広いスキルとノウハウをもったアクセラレーターの伴走により660件以上の支援を24業種の企業へ提供。大企業ならではの事情に精通。(※ 2024年3月末時点)

バックナンバー

大企業×新規事業 -Inside Stories-

ランキング