ソニー・東京大学・JAXAは、「宇宙感動体験事業」の創出に向けて三者で共創契約を締結し、ソニーのカメラ機器を搭載した人工衛星の開発を開始することを発表しました。現在、SSAPが運営するクラウドファンディングサイト「First Flight」にて、宇宙視点による新しい価値創出と事業探索を行う『Sony Space Entertainment Project』の共創パートナーの募集を行っています。
本連載では、Sony Space Entertainment Projectのメンバーの方々お一人ずつに、それぞれのプロジェクト参画の経緯や業務内容、プロジェクトにかける想いなどをインタビューしていきます。
今回は、ソニーでプロジェクトの事業コンセプト整理やクリエイティブデザインを担当したクリエイティブセンターの宮崎 由香子にインタビューしました。
宇宙を解放する、コミュニケーションデザイン。
――宮崎さんのSony Space Entertainment Projectでの担当領域と役割は?
私はコミュニケーションデザインの担当として、プロジェクトの事業コンセプトの整理や対外向けの情報発信のリード、関連クリエイティブデザインの企画制作を行いました。
ソニーグループ株式会社のデザインチームであるクリエイティブセンターの中には、私が担当しているコミュニケーションデザインの機能の他にも、プロダクトデザインやUIデザインの機能もあります。このプロジェクトにはクリエイティブセンターも幅広く関わっています。
――コミュニケーションデザインでは、具体的に何を行いましたか?
プロジェクトのコンセプト策定のサポートから、公式Webサイトのデザイン、キービジュアルやタグライン・コピーライティングの企画制作、コンセプトムービーのデザイン等を担当しました。このプロジェクトでお馴染みのワード「宇宙を解放する」が、まさにタグラインにあたります。
――どのような流れで進めたのですか?
プロジェクトからデザイン関連の依頼をいただいてから約半年間、プロジェクトの目的やビジョン等を関係者からヒアリングしました。今回は東大・JAXAの方々も関わるプロジェクトだったので、できるだけ皆さんの意見を取り入れて形にできるよう、アンケート形式での調査等も行いました。
2020年8月にプレスリリースが出ることが決まってからは、公式Webサイトのローンチをリリースに間に合わせるべく、準備に取り掛かりました。キービジュアルやタグライン、コピーライティングもこのタイミングで行い、リリース後、何段階かに分けてWebのコンテンツをアップデートしました。
プロジェクトのメッセージが詰まったWebサイト。
――Webサイトのデザインにはストーリーがあると伺いました。
はい。以下のタグラインとコピーの通り、このプロジェクトでメンバーが実現したいいことは、エンタテインメントの力で人々に宇宙を身近なものとして届け、ひいては地球について改めて考えてもらうきっかけを作りたいということです。
Webサイト上でも同じ体験をできる設計にするべく、現在はページ全体を宇宙に見立てて各項目にストーリーを持たせています。を持っています。例えば冒頭のキービジュアルで描いているのは、宇宙を家族で・恋人同士で・一人で、それぞれの楽しみ方をする人々の様子。スクロールすると雲が出てきて、ここからどんどん地上に近づいていきます。プロジェクトのニュースや活動概要を紹介した後、ページ一番下では実は、沢山の人が空を見上げている様子を描いています。ここでは人に一番身近なSNS情報を掲載しています。
――他にこだわったポイントは?
最初のコンセプト整理の段階で、プロジェクト関係者それぞれの想いや考えを吸収し、それをデザイン面で端的にわかりやすく可視化するよう心掛けました。
例えば、これまで宇宙に対して持たれている「どこかとても遠い場所」というイメージではなく、実際に宇宙を自由に探索できるとしたらどんな気持ちになるだろうと感情移入できるような世界観を作ること。タグラインでもある「宇宙を解放する」ことが実現されれば、誰もが宇宙視点を得る体験ができ、それは結果的に人の意識の変革に繋がります。表面的な価値だけでなく、それが人々の生活にどのような変化を与えるのかまで踏み込んで考え、メンバーの意識を摺合せました。
人々のクリエイティビティが解放されることを願って。
――これまではどのようなキャリアを歩まれてきたのですか。
私はソニーには中途入社で、その前は子ども向けキャラクターを扱う会社のデザイナーとしてキャリアをスタートしました。ソニー入社後はUI/UXデザイナーとしてオーディオ領域のアプリ開発や組み込みソフトウェアのデザインなどを行いました。2020年から、コミュニケーションデザインのチームに異動し、主に会社や事業のブランディングを担当しています。
――様々な領域のデザイン経験があるのですね。やはり今回のプロジェクトに役立ちましたか?
今回はWebを中心としたコミュニケーションデザインを担当したので、アプリやソフトウェアのUI/UXの観点が様々なシーンで役立ちました。
またデザインの面では意外なところからインスピレーションを得ることもあり、実は今回のコンセプトはあるテーマパークの世界観からヒントを得ました。テーマパークの中では、初対面の人同士でも、同じコスチュームを着た人たちが気軽に声をかけあったり、アトラクションに乗っている人に手を振ったりできる自然なコミュニケーションがうまれます。このように共通認識があれば、老若男女問わずに自然と共感がうまれ、コミュニケーションを誘発することができます。「エンタテインメントを通じて宇宙を解放する」ことによってこういった世界観を創りたいのだと考え、そのイメージもデザインに反映しています。
――最後に、Sony Space Entertainment Projectに期待することをお教えください。
「宇宙を解放する」ことによって、人々のクリエイティビティが解放されること、それによって人々の意識や文化までもが変わっていくことを願っています。宇宙との関わり方は人それぞれで、家族との団らんの時間に宇宙を楽しんだり、宇宙から得たインスピレーションで創作活動を行ったり、一人でじっくりと瞑想しながら見るという方法もあります。
今後もプロジェクトの進化と共に、公式Webサイトをハブとして、表現も進化させていきます。