2021.01.21
宇宙を解放!「STAR SPHERE」プロジェクトの裏側

#02 ソニー 事業開発リーダー 中西 吉洋「地球を好きになる人を増やしたい」

※プロジェクト名称は、2022年1月より「STAR SPHERE」に変更となりました。

ソニー・東京大学・JAXAは、「宇宙感動体験事業」の創出に向けて三者で共創契約を締結し、ソニーのカメラ機器を搭載した人工衛星の開発を開始することを発表しました。現在、SSAPが運営するクラウドファンディングサイト「First Flight」にて、宇宙視点による新しい価値創出と事業探索を行う『Sony Space Entertainment Project』の共創パートナーの募集を行っています。
本連載では、Sony Space Entertainment Projectのメンバーの方々お一人ずつに、それぞれのプロジェクト参画の経緯や業務内容、プロジェクトにかける想いなどをインタビューしていきます。

今回は、プロジェクト発足させて、現在ソニーの事業開発リーダーを務める中西 吉洋にインタビューしました。

ボトムアップ活動から生まれたプロジェクト。事業化の経験を活かす。 

――中西さんのSony Space Entertainment Projectでのご担当領域と役割、業務内容をお教えください。

プロジェクトでは事業開発を担当しています。人工衛星はまだ打ち上がっていませんので、事前に事業の仮説を作り、それをソニーグループや外部パートナーと一緒になって磨きながら事業を組み立てていきます。少人数のチームのため業務内容は多岐にわたりますが、具体的には東大・JAXAとのコミュニケーション、グループ内や外部への営業、開発チームと人工衛星の仕様検討、WEBやSNS、社内トップマネジメントとのコミュニケーションなど、すべきことは何でもやっています。

――事業全般を担当されているとのことですが、これまではどのようなキャリアを歩まれてきたのですか?

学生時代は情報知能工学を専攻しており、2002年にソニーに新卒で入社しました。最初に入った部署は「Human Interface Lab」で、ユーザーインターフェースの評価や提案を担当。その後クリエイティブセンターに異動し、UIチームでインフォメーションアーキテクト業務を担当しました。情報をどう整理したらわかりやすいか、操作しやすいのかというような視点でデザイナーや設計と二人三脚でソニーの商品開発に携わりました。

2007年頃からはFIFA ワールドカップのプロジェクトに加わり、2010年には一つのプロジェクトのリーダーとして、アフリカ大陸にあるガーナの無電化地域約20か所でソニーのプロジェクターと200インチのスクリーンを使ったパブリックビューイングを行いました。

当時パブリックビューイングに使用したプロジェクター
当時パブリックビューイングに使用したプロジェクター

その後、自分で企画する商品を世に出したい強く思うようになり、当時ソニーの横断的な組織であったUX開発本部で事業部の方から様々なことを学び、自身で企画をしたIoTデバイス「Smart Tennis Sensor(スマートテニスセンサー)」の事業化に挑戦しました。現在はテニスセンサーの一般販売からテニススクール運営会社と一緒に事業を創るBtoBtoCのビジネス「Smart Tennis Lesson(スマートテニスレッスン)」へと進化しています。

Smart Tennis Sensor(スマートテニスセンサー)
※Smart Tennis Sensor(スマートテニスセンサー)
Smart Tennis Sensorは、専用アプリケーションと組み合わせて使用することで、プレイヤーのショットを即時分析し、スマートフォンやタブレット上にプレイデータを表示することができます。ラケット上でボールを捉えた位置やボールの回転、速度など、従来容易に可視化できなかったテニスのプレイ内容を、手軽に楽しみながら確認いただくことで、プレイの上達をサポートします。
Smart Tennis Lesson(スマートテニスレッスン)
Smart Tennis Lesson(スマートテニスレッスン)
Smart Tennis Lesson(スマートテニスレッスン)
映像とセンサーを組み合わせ、打球フォームやデータ、配球やポジショニングをテニスコート上ですぐに確認できる最先端のテニスレッスン支援システム。また、クラウド上に保管した映像やデータを生徒一人一人に配信することで、テニスレッスンの可能性が広がります。

――中西さんのSony Space Entertainment Project参画の経緯はどのようなものだったのでしょうか?

本プロジェクトはボトムアップ活動から生まれたもので、2017年頃からソニーの宇宙好きな人が集まって、JAXAや東大の方々とブレストを行うワークショップ等がよく行われていました。私がプロジェクトに参加することになったきっかけは、ある日ふと流れてきたボトムアップ活動のメーリングリストでそのワークショップの存在を知り、参加したことです。当時のボトムアップ活動のメンバーはエンジニアの方々が多く、事業系のキャリアのある私は珍しい方でした。その日、JAXAや東大の方々とも名刺交換をし、話が盛り上がり、自分自身がかねてより宇宙に興味があったこともあり、定期的にワークショップやブレストに参加するようになりました。

挑み続ける根気と覚悟と、ステークホルダーとのWin-Win-Win。 

――事業開発リーダーとして事業プランを立案されてきたとのことですが、ボトムアップ活動からどのように進めましたか?

2017年にボトムアップ活動として本プロジェクトが開始してから、メンバーそれぞれが本業をしながら放課後活動的にブレストを続けていました。しかしメンバーからは「いつかソニーとして事業にしたい」という声もあがるようになりました。私はアフリカでのプロジェクト経験や「スマートテニスセンサー」の事業立ち上げの経験があったので、そこから得たノウハウをもとに、メンバーと事業化に向けたプラン立てを開始しました。

「お客さんは誰か?」「どんな商品・サービスだったら買ってもらえるか?」「いかに事業として継続できるか?」等のポイントをはじめとした視点からプランを詰めて、社内のキーパーソンとなる方々に時間をいただきプレゼンを実施。その方々からいただいたフィードバックを咀嚼し再度プランを練り直す。そんなことを繰り返すうちに社内トップマネジメントから机の上での活動としてGOの判断いただき、ついに2020年5月、宇宙エンタテインメント準備室が設置されました。しかし、まだ社内外に少しプロジェクトについてお話しできる段階に来ただけで、これからが大変だと認識しています。

――過去のキャリアが今回のSony Space Entertainment Projectで役立った点はございますか?あれば具体的にお教えください。

まずマインドとして、会社の中で新規事業をやらせてもらうからこそ「後ろ盾を捨てる覚悟」が必要だと思います。FIFAワールドカップでのパブリックビューイングのプロジェクトやスマートテニスセンサーの事業化に挑戦をさせてもらう際、周囲のメンバーもその気概で目をギラギラさせていましたし、自分自身もそのつもりで突き進んだので立ち上げられたのだと強く思います。新規事業は立ち上がる前にも後にも時間がかかります、困難があろうとも心折れずに挑み続ける根気と覚悟が必要。そのマインドを常に持っておくことは、今回も意識しています。

FIFAワールドカップでのパブリックビューイングのプロジェクトでの様子
FIFAワールドカップでのパブリックビューイングのプロジェクトでの様子

また、新規事業は、社内外の多くの方々の助けがあってこそ立ち上がれるもの。ですので、ステークホルダーとなる方々にメリットがある形となるよう、Win-Win-Winを意識し動いています。例えば「スマートテニスレッスン」の事業は、テニススクールのコーチの方と毎日のようにやり取りをして立ち上がりました。その際に、スクール側にはどんなWinがあるのか、その先のお客様にはどんなWinがあるのかを考えながら創り上げていくことが事業を前に進めるカギ。その際の経験も活かし今回のプロジェクトでも、関係者とのコミュニケーションは丁寧に行うように心がけたいと思います。

幼い頃の夢は「宇宙飛行士」。地球を好きになる人を増やしたい。 

――Sony Space Entertainment Projectにて最近嬉しかったこと、ワクワクしたことはありますか?

分かりやすいところで言うと、JAXAの油井宇宙飛行士とリモートですがお話しできたことでしょうか。あとは、JAXAや東大、外部パートナーの方、そしてソニーグループの新しいメンバーと未知の仕事に携われることに対して、何とも言えないワクワク感があります。

Sony Space Entertainment Projectキックオフの様子
Sony Space Entertainment Projectキックオフの様子

――Sony Space Entertainment Projectにかける想いをお教えください。

実は私の幼い頃の将来の夢は「宇宙飛行士」でした。父親がよく宇宙の番組を見ていた影響と、なんとなく宇宙から地球を見たいという気持ちがありました。
宇宙は遠い存在であり、最近少しずつ宇宙旅行のような話も出てきてはいますが、実際に宇宙に行ける人はほんの一部の人に限られています。我々の人工衛星はソニー製のカメラシステムを搭載し、宇宙から撮影した静止画や動画を人々に届け、撮影する機会も提供していきます。宇宙から地球を見ることで“地球は美しく儚い”、“環境問題は他人事じゃない”、“国・地域同士の争いなんてなくなればいい”など、意識が変わるきっかけにできるのではないか。
地球上のある大きな課題をこのプロジェクトだけで解決できるとはもちろん思っていませんが、多くの人が宇宙から地球を見つめることができれば、何かが動き出すのではと信じています。

私がプロジェクトを通して実現したいことをシンプルに言うと「地球を好きになる人を増やす」ということかなと思います。
このプロジェクトを進めるためには、ソニーが持っている「テクノロジー」と「エンタテインメント」のパワーをフル活用することが必要だと考えています。そして事業としてサステイナブルでないと続きません。ビジョンを高く持ち、自分たちの武器を磨いて継続し、ゴールに向かっていきたいと思います。

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Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、760件以上の支援を25業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2024年10月末時点)

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