2022.01.11
宇宙を解放!「Sony Space Entertainment Project」プロジェクトの裏側

#14 ソニー メカ設計・光学領域担当 西島 拓弥「テクノロジーで進化する未来を夢見て」

ソニー・東京大学・JAXAは、「宇宙感動体験事業」の創出に向けて三者で共創契約を締結し、ソニーのカメラ機器を搭載した人工衛星の開発を開始することを発表しました。現在、SSAPが運営するクラウドファンディングサイト「First Flight」にて、宇宙視点による新しい価値創出と事業探索を行う『Sony Space Entertainment Project』の共創パートナーの募集を行っています。
本連載では、Sony Space Entertainment Projectのメンバーの方々お一人ずつに、それぞれのプロジェクト参画の経緯や業務内容、プロジェクトにかける想いなどをインタビューしていきます。

今回は、ソニーで設計・開発チームでメカ設計・光学領域を担当する西島 拓弥(にしじま・たくや)にインタビューしました。

一点モノのカメラを育てるメカ設計。 

――西島さんのSony Space Entertainment Projectでのご担当領域は?

メカ設計(機械設計)です。メカ設計を担当しているメンバーは4名おり、私はその中の1人です。4名のうち私を含めた3名は、主務先の業務を行いながら兼務としてこのプロジェクトに携わっています。各々拠点も違う中メカニカルエンジニア同士、阿吽の呼吸(笑)で開発を続けています。
また、私は画質といった光学領域も担当しています。

――具体的には何をしていますか。

衛星に搭載するカメラユニットの開発を行っています。 一般に販売されている民生機器や業務用機器をそのまま衛星に搭載できれば一番スムーズなのですが、宇宙という特殊な環境を考えると一筋縄ではいきません。例えば、ロケット打ち上げ時の振動に耐えられるようなカメラの保持構造の検討や高真空が及ぼす影響など、どのように宇宙環境で使える仕様にするか、日々考えています。
また、開発の中で何度か試作と試験を行います。試験結果を読み解き、次に活かすのも私たちメカニカルエンジニアの仕事です。宇宙特有の試験は設備が大掛かりになりやすく、試験環境の立ち上げなど設計以外の苦労も結構あります。

アルミ製のような四角い箱に複数の導線がつながっている写真
初めて作製したプロトタイプ

――通常のカメラの設計と違う点は?

私は以前、現ソニー株式会社 イメージングプロダクツ&ソリューションズ事業本部(SIPS)でデジタルカメラの鏡筒設計に携わっていました。一般的なカメラは大量生産を前提に設計されていますが、このプロジェクトで作るカメラは1点もの。それが大きな違いです。通常、大量生産できるように金型を使うため、金型で作れる(金型から抜ける)形状で設計する必要があります。また、過去のトラブルから導かれた信頼性評価によって不具合をあぶり出すことができます。今回はたった1台を手塩にかけて育てるように、金属から1つ1つ削り出して部品を生産しています。金型ではできない形状を設計できますが、加工用の刃物が届くように配慮するなど工夫が必要です。また、過去参考になる製品が無いため、1から基準を決めて評価をする必要があり、創造力を働かせる必要がありました。さらに振動・熱・放射線・太陽光などの宇宙環境を模擬する評価は初めてです。そのため、今まで以上に気を使った考察が必要となります。
実際、熱真空試験という高真空下で高温や低温にさらす試験では、想像していなかった不具合に遭遇しました。真空がここまで影響するとは思いもよらず、ここは焦りましたね(苦笑)。でも次に活かせる学びを得ました。

また、宇宙放射線の影響でどうしても経年劣化してしまう部品があります。これは画質にも影響を及ぼすため、劣化度合いに応じてどのように画像を補正していくべきかの議論も行っています。

複数の導線がつながっているアルミ製のような四角い箱のそばで、ノートパソコンを操作している写真
衛星用カメラユニットの振動試験の様子

入カメラの設計を経て、新規事業である「toio™」と「Sony Space Entertainment Project」へ。 

――これまではどのようなキャリアを歩まれてきましたか。

私は2012年にソニーに入社し、現イメージングプロダクツ&ソリューションズ事業本部 商品技術センター コア技術第1部門にてデジタルカメラの設計に携わりました。鏡筒内にあるシャッター、絞り、防振等のアクチュエータ(※)の設計やその量産立ち上げが主な業務でした。
2013年には社内のアイデアコンテストに応募して、商品設計部門長賞を受賞しました。この時は鏡筒の大幅な小径化を実現する新機構のシャッターを提案し、この技術は「DSC-RX10M3」に搭載され、自ら量産立ち上げまで行いました。この経験が確実に今の衛星用カメラの開発に役立っています。
その後はSSAPから生まれたロボットトイ「toio™(トイオ)」のプロジェクトに参画し、メカ設計PL(プロジェクトリーダー)を担当しています。現在toioは、ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)に事業移管され、オフィスのすぐ隣には「PlayStation®5」のメカニカルエンジニアのメンバーがいます。PlayStationのメンバーの協力やアドバイスをいただきながら、toioも日々進化し続けています。

※アクチュエータ:電気・空気圧・油圧などのエネルギーを機械的な動きに変換し、機器を正確に動かす駆動装置
絵本の上でtoioを動かしている写真、紙工作を取り付けたtoioの写真、色鉛筆を取り付けたtoioで図形を描いている写真
toioを使った遊び

――「Sony Space Entertainment Project」参画のきっかけは?

私はソニーの社内異動制度「キャリアプラス」を利用して2020年12月にプロジェクトに入りました。昔から宇宙が好きで、自分の技術でプロジェクトに貢献できればと思ったのが応募のきっかけです。
中学生の時にSFテレビドラマシリーズ「スタートレック」に出会い、その世界観に憧れ宇宙好きになりました。その流れで大学では航空宇宙工学を専攻したのですが、当時の宇宙産業はとても特殊な環境に感じられ、またエンジニアとして広い視点を持ちたいという思いもありソニーに入社しました。

スタートレックの世界を実現したい。 

――カメラの設計を経て、新規事業であるtoioの設計も経験されています。これまでの経験は、今の衛星用カメラの設計に活きていますか?

両方の経験が、違うベクトルで役立っています。デジタルカメラの設計で学んだメカ設計・光学の基本・基礎が活かせていますし、toioでは新規事業という小さなプロジェクトでの動き方を学びました。
ソニーのカメラ事業の歴史は長く、様々な課題をどう克服してきたか等、ノウハウの宝庫です。一方でtoioのような新規事業ではこの積み重ねが不足しがちです。スタートアップのような小さなチームで一番大切なのは、自分自身が目の前の課題を「いかに自分事と捉えられるか」だと思っています。例えば何か課題があった時、それを指摘するだけでは物事は何も前には進みません。課題を見つけたらそれをどう解決するか仮説をたて、周囲の協力を仰ぎながら自ら動く。実際、衛星用カメラユニットの開発においても、課題を見つけたら東大、JAXAの方や古巣のSIPSメンバーにすぐ相談します。臨機応変にスピーディに動くことは、toioのプロジェクトで学んだやり方です。

toioの分解ワークショップの写真、マスクに手袋を身に着け感染対策をしている
toioの分解ワークショップの講師をした際の様子(写真左が西島さん)

――最後に、Sony Space Entertainment Projectにかける想いは?

学生時代に一度夢見た宇宙開発に携わるチャンスをつかめたのは、とても幸せなことです。 2022年の衛星打ち上げに向けて乗り越えなければいけない課題はまだまだあります。社内外問わず様々な方に協力いただきながら未知の領域を開拓していくのはとても刺激的です。ソニーの宇宙事業が持続的に発展するよう、一つ一つ技術を積み重ね、次に繋げていきたいです。
また個人的にはこの宇宙感動体験事業が、スタートレックが描く未来を実現するための布石になったら良いなと思っています。テクノロジーによって様々な課題を解決し、あらゆる多様性を尊重し、互いに刺激し成長できる世界を夢見ています。長寿と繁栄を。

三人の俳優さんと一緒に、ぬいぐるみを持つ西島さんの写真
SFテレビドラマシリーズ「新スタートレック」の俳優さんと(右から2番目が西島さん)

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※本記事の内容は2022年1月時点のものです。

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