2021.03.30
宇宙を解放!「Sony Space Entertainment Project」プロジェクトの裏側

#06 東京大学 船瀬龍さん・松下周平さん「好奇心を解放、人々に宇宙を届けたい」

ソニー・東京大学・JAXAは、「宇宙感動体験事業」の創出に向けて三者で共創契約を締結し、ソニーのカメラ機器を搭載した人工衛星の開発を開始することを発表しました。現在、SSAPが運営するクラウドファンディングサイト「First Flight」にて、宇宙視点による新しい価値創出と事業探索を行う『Sony Space Entertainment Project』の共創パートナーの募集を行っています。
本連載では、Sony Space Entertainment Projectのメンバーの方々お一人ずつに、それぞれのプロジェクト参画の経緯や業務内容、プロジェクトにかける想いなどをインタビューしていきます。

今回は、プロジェクトで使用する衛星の核になるバス部(※)の研究・開発を行う、東京大学 大学院工学系研究科 航空宇宙工学専攻 准教授 船瀬龍さんと、東京大学 大学院工学系研究科 中須賀船瀬研究室 博士課程2年 松下周平さんにインタビューしました。

※バス部は、電力、通信、姿勢制御などの人工衛星としての基本機能に必要な機器と衛星の主構造の総称。

衛星の核、バス部の研究開発の先駆け。

――船瀬さん、松下さんのSony Space Entertainment Projectでのご担当領域と役割、業務内容をお教えください。

船瀬:私は東京大学の中須賀・船瀬研究室にて小型衛星等の研究・開発を行っており、このプロジェクトでは研究室の責任者として全体を統括しています。私の研究室の学生約25人と研究員・スタッフが10名弱、このプロジェクトに参画しています。

松下:私は現在東京大学大学院 博士課程にて中須賀・船瀬研究室に在籍しており、現在は研究室内のプロジェクトマネージャーとしてこのプロジェクトに参画しています。

――Sony Space Entertainment Project参画の経緯をお伺いできますか?

船瀬:プロジェクトには 2019年12月頃に参画しました。実は私はJAXAの村木さんと大学院生の頃から知り合いで、このプロジェクトも村木さんを通じて声を掛けていただいた経緯があります。Sony Space Entertainment Projectとして衛星を作っていくという話が具体的に固まったころ、超小型衛星に実績がある我々の研究室に協力依頼をいただきました。

松下:私も中須賀・船瀬研究室の一員として2020年1月頃から参画しました。実は、衛星の研究・開発をしたくて博士課程に進んだタイミングで、船瀬先生からソニー・東京大学・JAXAの三者でのプロジェクトの話がきていることを伺いました。プロジェクトに参画すれば必然的に忙しくなり、自分自身の博士課程の修了に影響が出る可能性も考えましたが、研究室の今後や個人的な夢にも繋がるプロジェクトだと思い、先生に「是非一緒にやらせてください」と伝えました。

深宇宙探査機「EQUULEUS」の熱真空試験の様子(2019年撮影)
深宇宙探査機「EQUULEUS」の熱真空試験の様子(2019年撮影)

――Sony Space Entertainment Projectへの参画を当初は迷われていたとのこと、参画の決め手は?

船瀬:プロジェクトに参画したのは、我々の研究室としても狙いがあります。我々は超小型衛星の研究の先駆けとして、様々な衛星の設計を行ってきました。しかしミッションごとにゼロから設計するケースが多く、その効率化ができないかというのが我々の直近のテーマでもありました。「超小型衛星のプラットフォーム」のようなものの構築を検討していたのです。
今回のプロジェクトは、そのプラットフォームを構築するための良い機会と捉えることもできたので、その面でも非常に楽しみにしています。

松下:船瀬先生と一緒で、私も海外の研究等に劣らず我々が日々開発している技術をレベルアップしていくために、技術を組み合わせたプラットフォームを作ることが必要不可欠だと考えていました。このプロジェクトは良いタイミングで、その実現のショートカットになると思ったのです。また、ソニーとの共同プロジェクトだという点も魅力でした。普段関わることのない領域の企業であり、確固たる技術を持つソニーの企業文化に触れられるという点で、今後の糧になると確信しました。
また個人としてはずっと、「人類のための宇宙開発」をやりたいと思っていました。宇宙の研究者や宇宙飛行士だけでなく、色んな人が宇宙に触れられる世界になるといい、というイメージです。私自身のモチベーションは、このプロジェクトでそんな世界の実現が出来そうだという点にあります。

船瀬:個人的には、私がこのプロジェクトに魅力を感じたのはシンプルに「ワクワクする」からです。
これまで私は超小型衛星を軸とした研究・開発を行い、その成果に自分自身はワクワクしていましたが「もっと沢山の人の価値観を変えるような体験」を生み出せないかと悶々としていました。Sony Space Entertainment Projectでは、単に「地球を回る衛星を飛ばして写真を撮る」だけでなく、それによって「人々にどういう感情を起こさせるか」ということまで考えているんです。これはすごい、と率直に感じ、私がずっとやりたいと思っていたことにドンピシャだと確信したのです。

宇宙探索の「ワクワク感」が、モチベーションの源泉。

――お二人が宇宙の研究の道に進まれたきっかけをお伺いできますか?

船瀬:私が宇宙を目指したきっかけは、先ほども少しご説明した通り「ワクワク感」なんです。
高校生の頃、NASAの火星探知機が着陸に成功したというニュースで、火星の大地の写真を見たのですが、その時にゾクゾクしたのです。探査機が人の手を借りずに遠く離れた火星の地でフロンティアを切り開いて、人類の未知の世界を探索しているという点に感銘を受けました。その時から私のモチベーションの源泉は、その時に感じた「ワクワク」で、太陽系探査の研究・開発に携わりたいと考えるようになりました。

国際学会にて、研究室で開発している衛星を発表する船瀬さん(2018年撮影)
国際学会にて、研究室で開発している衛星を発表する船瀬さん(2018年撮影)

松下:私は、宇宙飛行士という職業に興味を持ったことがきっかけでした。幼い頃、運動と勉強がそれなりに得意だったことで、周囲から冗談半分に「将来は宇宙飛行士もいいんじゃない?」と言われることがありました。そこから興味を持ち始め、宇宙飛行士について調べるうちに憧れを抱くようになり、今でもチャンスがあればぜひ目指したいと思っています。またそれに加えて、高校1年生の時に学校で行われた進路講演会で、現在所属している中須賀・船瀬研究室の中須賀真一教授の話を聞いて「面白い!」と率直に感じたことも、宇宙への興味を加速する出来事となりました。

――これまではどのようなキャリアを歩まれてきたのですか?

船瀬:私は大学の学生時代に研究室で初めて超小型衛星に触れ、世界初のCubeSat(※)の開発に明け暮れていました。大学で博士号を取った後、やはり探査の領域に携わりたいと考えJAXAに就職しました。はやぶさやはやぶさ2、太陽系探査のミッション等の開発を行う中でふと、「誰でも宇宙・惑星にアクセスできる世界を実現したい」と思う機会が何度もありました。JAXAの開発するような大きな(そして高コストで開発期間も長くなってしまう)探査機ではなく、超小型衛星を使った太陽系探査という領域に興味を持ったと共に可能性を感じたため、現在は東大に戻り研究・開発を行っています。

松下:私は小学生の頃に宇宙飛行士になりたいという夢を持ち、航空宇宙学科を目指して東京大学に入学しました。学部では「進学振分け制度」でうまくいかず、機械工学科に所属していましたが、大学院で現在の中須賀・船瀬研究室に入ることができ、今も衛星開発に関する研究開発を続けています。

※10cm立方、1kgの超小型衛星のこと。人工衛星のサイズとしては当時世界最小だった。

「人々にどういう体験をさせたいか」まで描き、「全世界の人に宇宙を届ける」。

――ソニーのメンバーと仕事をして感じられたギャップ等はございますか?

松下:我々は大学で日々研究開発を行っている身なので、いかに最先端の技術を開発するかという点で物事を見る傾向があります。ソニーの方々も企業でありながらそういった視点にも柔軟に立ちつつ、それを商品としてどう開発して事業にしていくか、という視点と両立させるのが上手いと思います。

船瀬:そうですね、プロジェクト内のソニーのメンバーは、良い意味で大企業っぽくなく、自由で柔軟な発想を持った方が多いイメージです。ただ会社としてはさすが大企業、と思わせられる部分も多く、様々な領域のプロフェッショナルが集まりアイデアを形にするための体制をしっかりと整えてくる印象です。

松下:ソニーのメンバーは、プロジェクトのフェーズによって必要になる人材が増えると、そのタイミングで適切な方を引き連れてきてくれます。チームで共有しているチャットツールにも、どんどんメンバーが増えてきています(笑)。

――Sony Space Entertainment Projectにかける想いをお教えください。

船瀬:私は今回に限らず、宇宙の研究開発を通じて「好奇心を解放する」というコンセプトで、人々の好奇心・ワクワク感を刺激したいと思っています。
本来私は、超小型衛星を使った探査がやりたくて、地球を回る衛星には正直あまり興味はなかったのですが、唯一ドンピシャで興味を持てたのが、このプロジェクト。プロジェクトで準備している衛星は、「人々にどういう体験をさせたいか」までを描いているところが魅力的で、その実現を楽しみにしています。このプロジェクトが、私が目指している「好奇心の解放」の第一歩になればいい、そう思います。

松下:私個人として「全世界の人に宇宙を届ける」ことを夢に見ています。Sony Space Entertainment Projectでは、そのコンセプトが実現できそうです。そんな夢のある大規模なプロジェクトに携わっている、手伝っている、という点が私の大きなモチベーションです。
中須賀・船瀬研究室としては、今回のプロジェクトで得られる共通プラットフォームの知見も重視して、今後もプロジェクトの成功を目指したいです。

深宇宙探査機「EQUULEUS」の熱真空試験の様子(2019年撮影)
深宇宙探査機「EQUULEUS」の熱真空試験の様子(2019年撮影)

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