2020.12.25
宇宙を解放!「STAR SPHERE」プロジェクトの裏側

#01 ソニー 宇宙エンタテインメント準備室 室長 本村 謙介「空間の制約を解き放ち、感動を広げたい」

※プロジェクト名称は、2022年1月より「STAR SPHERE」に変更となりました。

ソニー・東京大学・JAXAは、「宇宙感動体験事業」の創出に向けて三者で共創契約を締結し、ソニーのカメラ機器を搭載した人工衛星の開発を開始することを発表しました。現在、SSAPが運営するクラウドファンディングサイト「First Flight」にて、宇宙視点による新しい価値創出と事業探索を行う『Sony Space Entertainment Project』の共創パートナーの募集を行っています。
本連載では、Sony Space Entertainment Projectのメンバーの方々お一人ずつに、それぞれのプロジェクト参画の経緯や業務内容、プロジェクトにかける想いなどをインタビューしていきます。

今回は、プロジェクト発足させて、ソニーの宇宙エンタテインメント準備室の室長である本村 謙介にインタビューしました。

有志の集まりから始まった、ボトムアップのプロジェクト。

――本村さんのSony Space Entertainment Projectでのご担当領域と役割、業務内容をお教えください。

私はプロジェクトにおいて、ソニー内のプロジェクト統括を行っています。プロジェクトはソニーでは大きく2つ、事業領域と開発領域があり、私はその両方を見ています。

――これまではどのようなキャリアを歩まれてきたのですか?

学生時代から宇宙分野に興味があり、実はソニーに入社した当時から「いつか宇宙に携われたらいいな」と思っていました。入社後はテレビ事業部にて新型ディスプレイの開発等を担当しました。もともと海外旅行が好きで、世界各地の美しい映像を高いクオリティで世界中に届けたいという想いのもと、ソニー液晶TV1号機、ソニー初のPDPTV「KZ-42HS500」、ソニー初の4Kテレビ「KD-84X9000」の設計等を行いました。またボトムアップの有志活動として、このプロジェクトの発祥の地となったソニーシティ大崎にあるコミュニティスペース「BRIDGE TERMINAL」の企画と開設も2016年8月に行いました。

BRIDGE TERMINALは、企画立案からプログラム策定、管理運営や家具のDIYまで、ソニーの社員が様々な部署から集まり、有志で行って出来上がったものです。時間や場所の制約をなくし、非日常的で予想外の使い方や思いがけない交流が生まれ、新しいアイデアや企画の創出を促すことを目的に創っています。レイアウトとしては、人とアイデアの新結合で生み出されたサービスやビジネスが、中央ランウェイを通って、センターのステージから世界に羽ばたくイメージとなります。

「BRIDGE TERMINAL」(写真:高木康広)
「BRIDGE TERMINAL」(写真:高木康広)

BRIDGE TERMINALは地上での取り組みですが、将来的には、そのコンセプトを宇宙空間にも広げていきたいと思っていました。まさに、BRIDGE TERMINAL で生まれたSony Space Entertainment Projectは、中央ランウェイを滑走して、センターのステージから宇宙へ飛び立つプロジェクトといえます。

――本村さんが企画されたイベントがSony Space Entertainment Project立ち上がりのきっかけとなったと伺いました。その経緯はどのようなものだったのでしょうか?

まず2016年11月頃に、民間企業が宇宙開発に取り組むための環境整備として宇宙関連の2つの法律(宇宙活動法※1と衛星リモートセンシング法※2)が国会で可決されました。日本の宇宙開発において、歴史的な転換点だったと言えます。宇宙ビジネスを発展させていくために必要な制度的インフラが整い、宇宙ビジネスコンテスト「S-Booster 2017」等も整備されてきて、宇宙開発の潮目が大きく変わったと感じました。

※1:人工衛星等の打上げ及び人工衛星の管理に関する法律
※2:衛星データの利用促進に向け、国の責務と共に高解像度の衛星データが悪用されないようデータの取扱いに制限を設けることや衛星データ取扱いに関する許可制度を設けることなどを定めた法律

私はこの変化をチャンスだと捉え、ボトムアップな繋がりで交流のあった、宇宙二法(宇宙活動法と衛星リモートセンシング法)の制定やS-Booster立ち上げに貢献された内閣府 宇宙開発戦略推進事務局 参事官補佐(当時) 畑田康二郎さん(現 株式会社デジタルハーツプラス 代表取締役)にお声がけし、宇宙ビジネスのアイデアや企画の創出を促すことを目的に、2017年6月にJAXA協力による「宇宙ビジネス」講演会をBRIDGE TERMINALで開催することになりました。
この講演会のイベントは有志社員によるボトムアップな運営でしたが、畑田さんと15名のJAXA職員のご協力を得て100名以上のソニー社員が参加し、イベント後の懇親会では、宇宙ビジネスのアイデアはもちろん、新しい未来を作るコンセプトやビジョンなどについても活発な意見交換が行われました。

現在のプロジェクトでご一緒しているJAXAの方々やソニーのメンバーも、このイベントがきっかけで繋がり、イベント後も定期的に集まってブレストを行うようになり、徐々にメンバーが増えていきました。そう考えると、ボトムアップな繋がりというものは非常に大切だと思います。

プロジェクトが担うことと、目指す世界。

――Sony Space Entertainment Projectとは改めて、どのようなプロジェクトなのでしょうか?

このプロジェクトが挑戦するのは、テクノロジーの力で宇宙の視点を人々に解放すること、そして、エンタテインメントの力で宇宙感動体験を世界に広めることです。宇宙の視点は人々の意識に変化をもたらし、豊かな思考や創造性を解き放つと信じています。

2020年8月にソニー・東京大学・JAXAは、「宇宙感動体験事業」の創出に向けて三者で共創契約を締結しました。イメージングやセンシング技術の強みを持つソニー、超小型衛星システムおよび超小型推進系の開発実績を持つ東京大学が、ソニーのカメラ機器を搭載した人工衛星の共同開発を行い、衛星運用技術と宇宙事業ノウハウを持つJAXAの協力のもと、今まで実現できなかった、地上から自由にリアルタイムで遠隔操作できるサービスを構築していきます。プロジェクトが行う開発は大きく2つ、「超小型人工衛星の開発」と「地上システムの開発」です。
また、新たな時代を共に切り開くクリエイターやビジネスパートナーも2020年9月から募集開始していて、業種の垣根を超えて様々な想い・才能・技術をつなげ、宇宙の新しい価値創出を目指す人たちと共に、新たな事業を共創していきます。
山や海を楽しむことができるのと同様に、次世代を担う子供たちが宇宙空間でさまざまな体験を通じて、地球に思いを巡らせ好奇心を持ち、サステナブルな社会の実現に向けて、自ら取り組める機会も提供していきたいと思っています。

写真左:「宇宙ビジネス」講演会(2017年6月撮影)、写真右:プロジェクトメンバーとの打ち合わせ風景(2019年9月撮影)
写真左:「宇宙ビジネス」講演会(2017年6月撮影)、写真右:プロジェクトメンバーとの打ち合わせ風景(2019年9月撮影)

“Space Anywhere” 空間の制約を解き放ち、人類の感動を広げたい。

――ソニーでのこのプロジェクトの役割は何でしょうか?

ソニーグループはこれまで、クリエイティビティとテクノロジーの力を掛け合わせて、さまざまな領域で感動体験と新たな顧客価値を生み出し、社会に貢献してきました。このプロジェクトを通じて、ソニーグループの活動領域が地上に留まらず宇宙空間まで拡張され、新しいチャレンジと価値創造ストーリーの一躍を担えればと考えています。

――Sony Space Entertainment Projectにかける想いをお教えください。

歴史を遡ると、紀元前から人類は宇宙に関心を持っていました。例えば、紀元前384年出生の哲学者アリストテレスは、「天体論」等で宇宙に関する自身の見解(宇宙の構造)を述べています。当時の人々が宇宙を観察し想像力を働かせてきたことが、神話・数学・音楽・芸術などの誕生と発展に大きく寄与してきたと言えると思います。
その頃から2000年以上経った現代、再び宇宙をテーマに、新たな時代を共に切り開くクリエイターやビジネスパートナーとともに、クリエイティビティとテクノロジーの力で、新しいエンタテインメントを生み出し、皆さんのライフスタイル変革の大きなターニングポイントになればいいと思っています。

この記事を見て、一緒にプロジェクトで活動したいという方が現れてくれれば嬉しいですし、もっと色々な可能性を探っていきたいと考えています。

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Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、760件以上の支援を25業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2024年10月末時点)

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