2021.09.24
空飛ぶロボットの挑戦

#05 トップシェアを目指して日本全国に営業を

Sony Startup Acceleration Programから生まれ、ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社(後に、ソニー株式会社(現ソニーグループ株式会社)へ全株式譲渡)と株式会社ZMPが共同で設立したエアロセンス株式会社は、「最先端のドローン・AI・クラウドで変革をもたらし、現実世界の様々な作業を自動化し、社会に貢献する」ことをビジョンに掲げ、ドローンソリューションの開発・実用化に取り組んでいます。

今回は、エアロセンス株式会社 ドローン事業部 営業部長 今井 清貴さんに、ご自身のキャリアやエアロセンス参画の経緯、今後の展望等をインタビューしました。

日本全国どこの営業先でも、お客様の目でデモを見てもらう。

――今井さんの、現在のエアロセンスでの役割をお教えください。

私は2020年にエアロセンスに入社し、現在は機体の販売・メンテナンスビジネスを担うドローン事業部にて営業機能を統括しています。営業を担当しているメンバーは全事業部を合わせて現在数人で、私は主にエアロボウイング(Aerobo Wing)の営業担当として、日本全国のお客様に対してのエアロセンス製品・サービスの営業活動・ファン作りを行っています。

――これまでのご経歴とエアロセンスに関わった経緯は?

前職は外資系メーカーの日本法人にて、三脚・カメラバッグ・双眼鏡など、写真・光学機器関連製品の営業に従事しておりました。2015年頃からは国内にドローンが流通し始めたことをきっかけに、ドローン関連企業から「収納・運搬用のバッグやケースを作れないか」という問い合わせを多くいただくようになりました。こうして前職でドローン関連商品に携わる機会が増えたことにより、ドローンの持つ魅力や可能性に引き込まれました。 そのような中でエアロセンスを知る機会があり、高い技術力を持つとともにメンバーの開発にかける情熱に感銘を受けました。そして、ご縁があり現在こうしてドローン営業に携わっています。

――空を飛ぶ「ドローン」の営業は、色々な面でハードルが高そうです。工夫されている点はありますか?

そうですね、各ドローンの特徴やお客様の課題をどう解決できるかを、説明だけで具体的に伝えることはなかなか難しいです。そのため一番意識しているポイントは、「お客様の目でドローンの飛行デモを見てもらう」ことです。営業先は日本全国津々浦々。つい先日は北海道の北広島市まで行って飛行デモをしてきました。営業に行く際は必ずデモ機を持参し、営業先の近くのドローンが飛ばせる場所で飛行デモをします(※)。また実際に東北の営業先で飛行デモをした時の様子がこちらです。 

東北でのエアロボウイングの飛行デモの写真
東北でのエアロボウイングの飛行デモ      ※事前に許可申請を行った上で実施しています。

やはり目の前で飛行デモを見てもらうと、エアロセンスの技術力を目で見て理解してもらえるため、ただ会議室で商談をする時よりも格段にお客様の反応が良くなり、その場で導入が決まったこともあります。

導入先からは「残業が10分の1に減った」という喜びの声も。

――エアロセンスの製品やサービスはどのような用途で使用されていますか。

我々のビジネスはBtoBで、主なお客様はゼネコンや建設コンサルティングの方々です。エアロセンスの製品は、大きく「測量」と「点検」の二つの用途で使われています。
まず「測量」の分野では、土木現場等の様子をドローンで空から撮影しデータ化します。地上で測量するよりも圧倒的に早く、より詳細に計測することが可能です。過去には、東日本大震災の復興工事やメガソーラー敷設工事など、大手ゼネコン(飛島建設株式会社様、大和ハウス工業株式会社様、株式会社大林組様など)から大規模現場の測量を依頼されて実施して、通常では数週間かかるような測量成果を1~3日程度で作成しました。他社の写真測量ソリューションと比較しても1/4~1/2に効率化できると評価いただいたこともあります(測量の事例一覧ページ:https://aerosense.co.jp/case/survey)。現在はエアロボ測量のユーザー様がこうした現場での測量を担っています。

測量分野や点検分野での作業の軽減、業務効率化に貢献してきたエアロボ(Aerobo)の写真
測量分野や点検分野での作業の軽減、業務効率化に貢献してきたエアロボ(Aerobo)

「点検」の分野では、人間が行くと危険な場所の点検や、人力で行うと時間とコストがかかってしまう点検をドローンで代替しています。例えばこれまで、竹中工務店様が担った南相馬での汚染土壌管理ヤードのシート点検や、不動テトラ様における海岸や防波堤の消波ブロック(テトラポッド)の点検等にも導入されました。またANAホールディングス株式会社様と航空機の点検の実証実験を行うなど、先端的な取り組みも多くあります(点検の事例一覧ページ:https://aerosense.co.jp/case/inspection)。
昨年の10月に発売を開始したエアロボウイングは、国産として唯一のVTOL(Vertical Take-Off and Landing Aircraft:垂直離着陸型 固定翼高速ドローン)で、発売当初より全国から次々とお問い合わせをいただいております。離着陸の際に滑走路が不要で、高速で長距離・広域を飛行できるので、今まで到達困難だった山間部や災害地での活用を考えてくださっているお客様もいらっしゃいます。測量や点検の分野のすそ野もより広げる商品になるのでは、と期待しております。また、昨今日本では自然災害が多い影響で、地方自治体や災害協定を結んだ企業の方からの自然災害時の情報把握のためにとお声掛けいただくことが増えてきました。

下から見たエアロボウイングとその大きさの写真
下から見たエアロボウイングとその大きさ

――ゼネコン等を中心とした様々なお客様に使われているのですね。実際に製品やサービスを導入したお客様から、何か反響はございましたか。

「測量」の用途で使われたユニークな事例の1つとして、佐藤工業株式会社様にエアロボマーカー(Aerobo Marker)を導入いただいた案件があります。先方はトンネル工事等において、斜面形状等の計測をより効率的に・正確に行いたいというニーズをお持ちでした。

エアロボマーカーを地面に置きスイッチを押している写真
遠隔でのデータ確認をも可能にしたエアロボマーカー

これまで本社からデータを確認するメンバーも現場に足を運んで測量を実施していたのですが、エアロボマーカー導入後はマーカーを現場に送り作業を指示するだけで、本社にいながらデータを確認することが可能となりました。また、現場で実際に測量を行うメンバー・本社でデータを確認するメンバーともに業務がスムーズになり「作業期間が1/3に減った」とのことで、非常に気に入っていただけました。エアロボマーカーはりんご1個分ほどの軽さで非常にコンパクトな製品である上に、ボタン一つで簡単に動かすことができるので、現場への導入ハードルが低いことも喜ばれたポイントです。コロナ禍でのリモートワークにも適した素晴らしい活用事例だと思います。

佐藤工業株式会社の事例でエアロボマーカーを使用し撮影したデータの写真
佐藤工業株式会社の事例でエアロボマーカーを使用し撮影したデータ

さらに、株式会社データアシスト様では、測量現場で撮った画像の解析にエアロボクラウド(Aerobo Cloud)を用いたところ、今までつきっきりでかかっていた解析が短縮でき、残業が10分の1になったと感激していただきました。

トップシェアを目指して、まずは「エアロセンス」の名を知ってもらう。

――エアロセンスの製品には、エアロボ、エアロボウイングやエアロボマーカー等の既製品の他にも、お客様からのリクエストにこたえてドローンを開発する「受託開発」もあると伺いました。

はい、営業部の別のメンバーが「受託開発」を担当しており、お客様からのリクエストに応じてドローンやシステム機能をカスタマイズしながら開発をするケースもあります。土木・建設での用途に加え警備・監視等の用途でも新たなソリューションを開発しています。すばらしい製品が身近で開発されていく事は、ガンダム世代の私にとってはこれ以上ない喜びです。そして、お客様との対話を通じて開発した製品やソリューションは、また別のお客様に役立てていければとも思います。 

――エアロセンスの今後にかける想いをお教えください。

営業の観点から、まずは多くの人に「エアロセンス」の名を知ってもらうことが大事だと考えています。今現在行っているように、ドローンの飛行デモを伴った営業活動をこれからも継続する予定です。我々はお客様に役立つ良いものを作っているという確固たる自信があるので、知名度が上がりお客様の選択肢に我々の製品が入るようになれば、より多くの方に受け入れていただけると自負しています。
現在のドローン業界でのシェアは、トップは他社さんですが、5年後にはそのシェアを変えたい一心でこれからも全国を飛び回って頑張っていきます。

Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、760件以上の支援を25業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2024年10月末時点)

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