2021.09.06
空飛ぶロボットの挑戦

#04 ドローンの「ソフトウェア」エンジニア

Sony Startup Acceleration Programから生まれ、ソニーモバイルコミュニケーションズ株式会社(後に、ソニー株式会社(現ソニーグループ株式会社)へ全株式譲渡)と株式会社ZMPが共同で設立したエアロセンス株式会社は、「最先端のドローン・AI・クラウドで変革をもたらし、現実世界の様々な作業を自動化し、社会に貢献する」ことをビジョンに掲げ、ドローンソリューションの開発・実用化に取り組んでいます。

今回は、エアロセンス株式会社 技術開発部 清水 悟さん、測量事業部 事業部長 兼 クラウド開発部 統括部長 菱沼 倫彦さんに、ご自身のキャリアやエアロセンス参画の経緯、今後の展望等をインタビューしました。

ドローンのソフトウェア開発。ハードだけではないトータルソリューションを。

――お二人の現在のエアロセンスでの役割をお教えください。

清水:私は技術開発部で電気ハードウェアおよびソフトウェアの設計を行っています。携わっている製品は、主に「エアロボマーカー(Aerobo Marker)」、「エアロボウイング(Aerobo Wing)」(VTOL(※1)型の垂直離着陸固定翼ドローン)等です。特にエアロボマーカーは開発から製造まで行ってきました。

菱沼:エアロセンスのエンジニアチームは、ドローン本体を担当する技術開発部とクラウドを担当するクラウド開発部の2つに分かれています。私はクラウド開発部でドローン測量やGNSS(※2)測位・基準点測量や点検を用途とするクラウドサービス開発を行ってきました。現在は開発全体の統括をしています。また同時に測量事業部(※3)の統括も行っており、エアロセンスパートナー(エアロセンス製品・サービスの代理店制度)を活用したエンドユーザーへのエアロボマーカー販売・エアロボクラウド導入や弊社測量用ドローン「エアロボ(Aerobo)」とドローン測量クラウド「エアロボクラウド(Aerobo Cloud)」を活用した測量(※4)業務の受託業務を推進しています。

※1  VTOL:Vertical Take-Off and Landing Aircraft
※2  Global Navigation Satellite System/全球測位衛星システム、GPS等の衛星測位システムの総称
※3  2020年度より、エアロセンスはビジネス領域を(1)ドローン事業(ドローン販売)、(2)測量事業(エアロボマーカー・クラウド販売・測量請負)、(3)受託開発事業の3事業として明確化した。
※4  山や川、家、道路などの互いの位置関係を正確に測ること。エアロセンスではこの測量を、ドローンを使用しクラウドデータ処理までワンストップにて高精度で実現する。
エアロボマーカーを手に持つ清水さんの写真
清水 悟さん エアロセンス株式会社 技術開発部

――お二人のご経歴とエアロセンスに関わった経緯をお教えください。

清水:私はエンジニアとして、電気ハードウェア設計を中心にシステム寄りの組み込みソフトウェア設計も行ってきました。
もともとソニーに新卒で入社し、光ディスクドライブの制御を担当していました。その後、AIBOの初代モデルなどロボットが話題になっていた頃に、ご縁があり二足歩行ロボットQRIOの電気設計等に携わりました。その後R&Dを行う部門内で設立された事業創出を目的とする部署に参画し、一緒にロボット開発をしていた佐部さん等と「これまで培ってきたロボット技術を活用して何か新しい事業を始められないか」と話すようになり、そこから生まれたのがエアロセンスです。

菱沼:私はソニーに中途入社後、ソニーの製品に組み込まれ、アプリケーションの開発基盤としても活用されていたウェブブラウザの開発に携わってきました。その中で、主にブラウザ内部のネットワークの通信部分の開発に携わりました。
2013年頃の社内募集で、当時新設されたクラウド開発の部署に異動し、ウェブを高速化するという目標に向けて技術開発を行っていました。
その後、エアロセンスの前身となる組織が設立された頃に、当時私が在籍していた部署の上司がエアロセンスの存在を聞きつけ、佐部さんに技術を売り込みに行ったことが、エアロセンス参画のきっかけになりました。これはちょうど、茗荷谷にZMPのオフィスを間借りしてプロジェクトをスタートした頃で、「エアロセンスの今後の展開にドローンで撮影したデータのクラウド解析等のニーズがあるはず」と技術を売り込んだ結果、当時私が担当していた技術を採用してもらえることになりました。2014年冬頃からは現在のエアロセンスのオフィスで開発をするようになりました。その頃はまさに、佐部さんチームの初期メンバーである清水さんや鈴木さんがドローンの原理試作をしていたタイミングでした。

エアロボマーカーを手に持つ菱沼さんの写真
菱沼 倫彦さん エアロセンス株式会社 測量事業部 事業部長 兼 クラウド開発部 統括部長

――エアロセンスの事業に興味を持ち、参画を決められた理由は?

清水:「人の役にたつ」技術の開発をしたいという想いで、今までいろいろなロボットの技術開発を行ってきました。エアロセンスが描いているドローン事業は、人の役にたつものになると確信し、チャレンジすることに決めました。
菱沼:ドローンというハードウェアから取得したデータをクラウドで処理するという、ソフトウェアとハードウェアが統合されたビジネスであるところに面白さを感じました。また、例えば土木・建設業界であれば人手不足や作業効率の革新といった課題を解決していくことで、産業界や実社会に貢献できるというはっきりとしたイメージが持てたからです。

「なんでだ?」とゼロから勉強して辿り着いた、高精度なソリューション。 

――エアロセンスではトータルソリューションを提供しているとのことですが、具体的にどのようなサービスを提供しているのですか。

菱沼:エアロセンスは、会社のビジョンとして「最先端のドローン、AI、クラウドで変革をもたらし、現実世界の様々な作業を自動化していくことで、社会に貢献する」(※5)ということを掲げています。
お客様視点で説明すると、現場の業務への製品の導入のお手伝いから、現場で得られるデータをもとにお客様の仕事に必要なデータを生成し、解析するところまでを一貫してトータルでエアロセンスがサービスとして提供しています。すでに販売している製品を活用したソリューションと、ご要望を受けて既存製品を活用・カスタマイズしつつ、受託開発としてご提供するソリューションがあります。前者としては「エアロボ/エアロボウイング/エアロボマーカー/エアロボクラウド」を活用した測量・土木・建設向けのソリューションや「エアロボオンエア(Aerobo on Air)」を活用した長時間現場モニタリングなどがあります。後者としては橋梁などのインフラ構造物の点検/超広域のセンシング/物流などのための、機体やサービスのカスタマイズ開発があります。

※5  https://aerosense.co.jp/aboutにて会社のビジョンを提示。
イメージ図(左):エアロボマーカーを使用し、撮影や測量をしたい箇所を指定する様子
イメージ図(右):ドローンにより撮影されるデータや、測位結果

――クラウドサービス提供に伴い直面した問題はありましたか?あれば、それをどのように乗り越えましたか?

清水:私はエアロボマーカーを開発から担当してきました。今でこそ、国土地理院(※6)の基本測量機種台帳に登録されるぐらいの高精度を実現していますが、そこに至るまでには苦労がありました。
エアロボマーカーとは簡単に説明すると、置いた場所の緯度経度を高精度に計測する製品です。ドローンを用いた写真測量で使用されるため、計測精度が非常に重要になります。
2台のGNSS受信機を使って「相対位置」を高精度に計測することは比較的容易にできるのですが、国土地理院が管理している基準点にぴったり合う「絶対位置」の精度を実現することが難しいのです。
試行錯誤しては上手くいかず、「なんでだ?なんでだ?」と測量についてゼロから勉強しながら、原因究明と精度の改善をひたすらやっていました。もともとソニーのエンジニアで、測量の分野には全く知見が無かったですし、エアロセンスの他のメンバーも殆ど同じでした。

※6  日本唯一の国家地図作成機関であり、国土交通省の特別の機関
写真左:エアロボマーカーの製品写真
写真中央:座標データの取得イメージ
写真右:エアロボマーカーのモバイルアプリのイメージ図

菱沼:エアロボマーカーについては、お客様へのデータ提供の面でも苦労がありました。
我々のお客様はエアロボマーカーを、現場の形状を3次元復元するための対空標識としてだけではなく、工事現場の基準点を設置するための測量目的で、測量機器それ自体としてもご活用されます。最終的には我々のクラウドサービスから国が定めた基準に則った測量の成果をお客様にご提供する必要があります。
当初はエアロセンスにいた誰もが測量分野では新参者で、測量結果の帳票を国が定めたフォーマットに則って出力できるようにしてみたものの、その内容(測量成果値・精度)がお客様やその発注者の求める基準を満たしきれているのか理解が及ばない部分もあり、不安もありました。
しかしその後、測量事業部に測量機器メーカーでの長年の経験と測量士の資格がある営業メンバーが参画。また他にも様々な専門知識のある方々から随時フィードバックを受けながら、測量とは何かという根本部分の知見を深めながら改善を積み重ねました。その結果、お客様にご納得いただける現在の精度に至っていますが、わかっていなかった・知らなかったことが現れることはあるため、現在でもさらなる改良を進めています。
清水さんが言及したエピソードとも共通するのは、とにかくお客様に寄り添ってニーズを聞きながら微調整を行うのが我々のやり方であり、エアロセンスの中で「エンジニア」と「営業」が密に連携できているからこそ実現できているのだと思います。

「人の役にたつ」ドローン、SDGsにも貢献できるはず。  

――2020年8月には、固定翼産業用ドローン「エアロボウイング(Aerobo Wing)」を発表。そんな新製品に対する想いは?

清水:現在、エアロボウイングの製品化を担当しています。お客様からいただいた「長時間、かつ広範囲にドローンを飛ばしたい」というご要望に応えるべく生まれた製品です。

菱沼:エアロボウイングで航続距離の能力が大きく拡張されたことにより、より広い領域、例えば森林、河川のマッピング等までをカバーできるようになる予定です。そうすることで、国土の保全や災害の抑止のような分野でも世の中に貢献ができるようになると思います。
また、クラウド開発部では、最小限の対空標識の設置で(※7)、ドローンのセンサーで取得した画像・データの位置精度を格段に高めることができるPPK(Post-Processed Kinematic)という測位技術を導入し、クラウドで処理できるようにしているところです。広域な領域に対空標識をたくさん置くのはエンドユーザーにとって負担が大きいため、この機能はエアロボウイングと組み合わせて利用できると、特にお客様に対する付加価値になります。この機能をエアロボウイングでも利用できるように、目下検証を実施しているところです。近いうちにエアロボウイングの付加価値を向上する機能として、お客様にも利用できるようになる予定です。
清水:そうですね、そのような改善に加えて、お客様視点では、固定翼機でも簡単に操作できるドローンを創りたいと考えています。

エアロボウイング製品画像
※7  厳密には、出来上がった3次元モデルの精度を確かめるために検証用にマーカーを置くことが推奨されるが、通常の測量よりも設置数を大幅に削減できる。

――お二人それぞれの、エアロセンスの今後にかける想いをお教えください。

清水:エアロセンスではお客様のニーズがダイレクトに伝わってくるので、それに合わせてソリューションとして幅広い価値を提供できるのが強みです。これからもその姿勢を維持していきたいと考えています。
また、これまで「人の役にたつ」技術開発を目指してきましたが、単に人ができないことを代替するだけでなく、人と共存するドローン、そしてその技術の出口としてのエアロセンスのサービスの発展に繋げていきたいと思います。

菱沼:まずは、エアロボウイングの付加価値をお客様に届けるところ、既存製品を国内に浸透させていくところを着実に進めていきたいと考えています。将来的には、エアロセンスの認知度を海外でもあげるべく頑張っていきたいと思っています。また、エアロセンスは持続可能な開発目標(SDGs)の17項目全てに貢献しうるビジネスなのではないかと考えています。例えばエアロセンスが提供するサービスは、災害をなくすことにも、食糧に困る人をなくすことにも貢献できるはずです。そういった意味でも、いま世の中で求められている価値に貢献するべく、ビジネスの発展を目指していきたいと考えています。

あらゆる人に起業の機会を。

Sony Startup Acceleration Programはソニーが手がけるスタートアップの創出と事業運営を支援するプログラムです。2014年から7年間で、80件以上の事業化検証、17の事業を創出(2021年6月末時点)。それらを通じて培った経験やノウハウを生かし、アイデア出しから事業運営、販売、アライアンス・事業拡大に至るまで総合的に支援する仕組みを整備し、スタートアップ支援サービスとしてみなさまにご提供しています。

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