2019.09.12
「REON POCKET」舞台裏

#03 マーケティング・PRの戦略

Sony Startup Acceleration Program(以下SSAP)では、2014年から社内を中心とした新規事業創出プログラムを始め、5年間で14の事業を立ち上げてきました。2019年7月22日(月)には、SSAPのオーディションを通過した新規事業アイデア、インナーウェア装着型冷温ウェアラブルデバイス「REON POCKET」のクラウドファンディング開始を発表。そんな「REON POCKET」のクラウドファンディング舞台裏を、連載にてご紹介してまいります。

連載最終回では、「REON POCKET」プロジェクトリーダーの伊藤陽一と、社外メンバーとしてマーケティング・PRを担当する浅野哲志さんに、クラウドファンディング成功に至ったストーリーをインタビューしました。

ファッション・テクノロジー分野への挑戦。お互いの専門領域から、新しい価値を生み出す。

――クラウドファンディングに向けて、いつ頃から準備されていたのですか?

伊藤陽一 ソニー株式会社 Startup Acceleration部 「REON POCKET」プロジェクトリーダー 浅野哲志さん 「REON POCKET」プロジェクトメンバー ファッション専業広告会社勤務
写真左:伊藤陽一 ソニー株式会社 Startup Acceleration部 「REON POCKET」プロジェクトリーダー 写真右:浅野哲志さん 「REON POCKET」プロジェクトメンバー ファッション専業広告会社勤務

伊藤:まず2017年の夏頃からアイデアの検討を始め(参考記事:「REON POCKET」クラウドファンディング舞台裏 #01 REON POCKET誕生秘話)、2019年1月末にSSAPの新規事業アイデアのオーディションを通過し、春からクラウドファンディングに向けて準備をしてきました。マーケティング・コミュニケーションを担当した浅野さんには、「REON POCKET」のアイデアが固まってきた2018年3月頃に声を掛けました。

――そうだったのですね。浅野さんに声をかけたのはなぜですか?

伊藤:浅野さんは、ファッションを専門にしたマーケティング・PRに精通しており、エレクトロニクス製品のマーケティング・PRにも携わった経験がある人だったからです。今回の「REON POCKET」の全体コミュニケーションは、ファッション分野・テクノロジー分野の両方をバランスよく見ることができる人に頼みたいと思っていたので、その経験と実績のある浅野さんはまさに適任で、とても貴重な存在でした。

――浅野さんは「REON POCKET」のアイデアを聞いたときどのような印象を持ちましたか?

浅野哲志さん 「REON POCKET」プロジェクトメンバー ファッション専業広告会社勤務

浅野:初めてアイデアを聞いたとき、2つの側面から、面白そうだと感じました。
1つ目は「REON POCKET」の将来性。昨今、ソフトウェアを使った個人最適化は、どの分野でも話題になっています。「REON POCKET」が日常的なデバイスになれば人々の生活は変わると確信しました。「REON POCKET」は、暑い・寒いという温度による不快を軽減できる “人類全員がターゲットになり得る”デバイスであり、凄いポテンシャルを秘めていると思いました。
もう1つは、自分自身のプロジェクトへの関わり方。広告会社とクライアントであるメーカーさんとの関わり方は、基本的には既に出来上がった製品を、どうコミュニケーションしていくかを考えることが殆どです。しかし今回はプロジェクトメンバーになったことで、製品が出来上がる前の段階から、製品が生まれた後のことまでを考えながらマーケティング・コミュニケーションを検討できたので非常にやりやすかったです。そういった新しい関わり方ができるという点でも、挑戦してみたいと思いました。

――お互いの専門領域を生かしながら、「REON POCKET」の構想がスタートしたのですね。

伊藤:初めて浅野さんに「REON POCKET」のアイデアの話をした際、「女性が冬でも、我慢せずルブタンを履ける世界になったら良い」と言ってましたよね。

浅野:確かにそう言った記憶があります。女性のファッションに関する調査をしたことがあり、その結果で「女性にとっての“利便性”は、“可愛さ”を超えない」ということがわかりました。例えば冬でも、寒さを我慢してスカートを履いたり、薄手のコートを着たりしてお洒落する女性がいる。厚手で軽いダウンで寒さをしのぐという機能性衣料の利便性よりも、見た目の可愛らしさの方が重要だったりします。そういった人たちにも新しい価値を提供できる製品になれば面白いな、と思ったのです。

伊藤:そのような自分には無い視点からの発想をしてくれる点も、とても助かりました。

クラウドファンディング目標額を、わずか6日間で達成。成功のための戦略と準備。

――2019年7月末にクラウドファンディングを開始しましたが、具体的にはどのような準備をしていましたか?

伊藤陽一 ソニー株式会社 Startup Acceleration部 「REON POCKET」プロジェクトリーダー

伊藤:2019年1月のオーディションを通過してからは、浅野さんと一緒にコミュニケーションプランを書いていきました。クラウドファンディングを行ったFirst FlightのWebページは、公開前にターゲットとするビジネスパーソンの方々を中心に見てもらい、ご意見を頂きながらブラッシュアップしてきました。

浅野:「REON POCKET」は、類似した商品がこれまでに無いので、コミュニケーションプランを考えることにはかなり苦労しました。
また、クラウドファンディング特有の「Web上だけで商品を理解してもらい、最後にはお金を払って支援してもらう」という部分も難易度が高かったです。商品特性と商品が持つ価値を理解してもらうことと、同時に面白そうとか、ワクワクする、といったポジティブな感情も持ってもらえるようなサイトコンテンツになっていないとダメなんですよね。サイトコンテンツについては、言葉やビジュアルイメージを何パターンか自作で作成し、ターゲットとする人たちに見てもらいながら、ブラッシュアップして、本番用コンテンツの制作に取りかかれるようにしました。

予想を上回るペースをみせた「REON POCKET」。次のステップに向けて。

伊藤陽一 ソニー株式会社 Startup Acceleration部 「REON POCKET」プロジェクトリーダー 浅野哲志さん 「REON POCKET」プロジェクトメンバー ファッション専業広告会社勤務

――クラウドファンディング成功の一番の要因は何だと思いますか?

浅野: 2つあります。1つ目はPRによる狙い通りの情報発信ができたこと。情報発信の流れの作り方も理想的でした。当然、認知ゼロからの挑戦なので、どういう順番でどのようなメディアに出て行くのか、は重要でした。(参考記事:フジテレビ・TBSテレビ・日本テレビ・テレビ朝日・テレビ東京ほか多数メディアで、「REON POCKET」が紹介されました!)
2つ目は、先ほどの話の通りですが、理解されるサイトコンテンツ作りが実現できたことですね。

――クラウドファンディングを経て、新たな気づきはありましたか?

伊藤:支援してくださった層が想定より幅広かったのは、今回クラウドファンディングを行ったからこそ気付けた点です。もともとは、「ビジネスシーンでの使用」をメインで考えていましたが、実際に支援してくださった方々からは、ビジネスに限らず普段の生活やレジャーシーンにも使いたいとの声をいただきました。

――次のステップへの意気込みをお聞かせください。

伊藤陽一 ソニー株式会社 Startup Acceleration部 「REON POCKET」プロジェクトリーダー 浅野哲志さん 「REON POCKET」プロジェクトメンバー ファッション専業広告会社勤務

伊藤:今は「クラウドファンディングを支援してくださった方々に良い製品を届けたい」、そこに尽きます!

Sony Acceleration Platformは、新たな価値を創造し豊かで持続可能な社会を創出することを目的に2014年にソニー社内の新規事業促進プログラムとしてスタートし、2018年10月からは社外にもサービス提供を開始。ソニーが培ってきた事業開発のノウハウや経験豊富なアクセラレーターによる伴走支援により、760件以上の支援を25業種の企業へ提供。
新規事業支援だけでなく、経営改善、事業開発、組織開発、人材開発、結合促進まで幅広い事業開発における課題解決を行ううえで、ソニーとともに課題解決に挑む「ソリューションパートナー企業」のネットワーク拡充と、それによる提供ソリューションの拡充を目指します。(※ 2024年10月末時点)

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