2019.08.22
オープンイノベーションによる企業間連携 -Possi誕生ストーリーー

#07 ソニーミュージックとPossiが協業!?

Sony Startup Acceleration Program(以下SSAP)では、これまで培ってきた経験やノウハウを、スタートアップの事業化支援サービスとして社外にも提供中です。2018年10月からは京セラ株式会社(以下”京セラ”)にサービス提供を開始し、京セラのメンバーがソニー本社内の専用スペース「Incubation Booth」に入居しています。そんな取り組みから生まれたPossi。どのような経緯でSSAPが京セラへサービス提供をするに至ったか、またどんなドラマがあったのか等、本プロジェクトを、連載にてご紹介してまいります。

今回は、Possiの特徴である“エンタテインメント性”について、Possiのうた「ポッシといーあー」を作った背景や狙いを、SSAPプロデューサーの宮崎雅とクリエイティブセンターの城ヶ野修啓にインタビューしました。また、「DJみそしるとMCごはん」の楽曲制作・ミュージックビデオ制作を行ったキューンミュージックのクボタマサヒコ、ソニー・ミュージック・アーティスツの道下善之、小野莉果にもコメントを頂きました。

仕上げ磨きを楽しくする仕掛け、“音楽”へのチャレンジ。

――今回Possiに“エンタテインメント性”として、“音楽”という要素を加えることになったきっかけは?

城ヶ野 修啓 ソニー株式会社 クリエイティブセンター コミュニケーションデザイン担当
城ヶ野 修啓 ソニー株式会社 クリエイティブセンター コミュニケーションデザイン担当

城ヶ野:京セラ株式会社(以下京セラ)のリーダー稲垣さんが考えていた、“仕上げ磨きを楽しくするために音楽を使うとよいのでは?”という発想が原点です。
もともと私もPossi全体のコミュニケーションデザインを構想したときから、何かしらの“楽曲”を、“ハブラシ”と一緒に作っていきたい、という想いがありました。Possiのコンセプトである「親子のハミガキを楽しくしてくれるお友だち」というメッセージ共感してもらうためには、オリジナルソングのようなエンタメ要素が必要だという話になりました。

宮崎:音楽を使った商品の開発ということで、まずはソニーミュージックとの協業を考えました。2018年12月、まだプロジェクトが始まったばかりの頃に、知り合いづてにソニーミュージックの方にコンタクト。新規案件を担当している方を紹介してもらい、Possiの概要の説明と、ソニーミュージックとPossiがコラボレーションするなら何が出来そうか、ということを相談しました。SSAPから生まれたIoTブロック「MESH™」が、ソニーミュージックが運営する「KIDSTONE(※1)」と協業した実績もあったため、当初はそういった路線での協業も考えていました。

※1 KIDSTONEは、ソニーミュージック初のキッズ専門ブランド。「KIDS」「MUSIC」「EDUCATION」「ENTERTAINMENT」をキーワードに新しい商品・サービス・イベント等の企画開発からプロデュース、制作までを行う。

宮崎 雅 ソニー株式会社 Startup Acceleration部 Ideation Service Team 統括課長兼プロデューサー
宮崎 雅 ソニー株式会社 Startup Acceleration部 Ideation Service Team 統括課長兼プロデューサー

――そうだったのですね。結果的に「DJみそしるとMCごはん」さんが楽曲制作・ミュージックビデオ出演を行っていますが、そのきっかけは?

城ヶ野:以前、別の仕事で「DJみそしるとMCごはん」さん(以下、おみそはん)にご協力いただいたことがあり、その時から気になっていたのですよね。
私は銀座ソニービルのリニューアルプロジェクト(※2)に関わっていて、リニューアルオープンした「Ginza Sony Park」で定期的に行われる「Park Live」に、ゲストとして彼女に来てもらったことがあるのです。おみそはんがゲストの回には、会場に家族連れが多く集まりました。銀座という立地もあり、普段は家族連れが少ないからこそ、私の中では強烈な印象として残っていました。

彼女が作り出す世界観は柔らかくて、まるで“生きるゆるキャラ”。当時構想していたPossiの世界観とも合致しました。そこでPossiと彼女のコラボレーションを思い付き、京セラのPossiプロジェクトメンバーに提案。リーダー稲垣さんも、もともとPossiと音楽を融合させたいと考えていたこともあり、「是非チャレンジしましょう!」ということになりました。

Possiの世界観を描いた絵本

宮崎:城ヶ野さんが持っていたアイデアをもとに2019年3月頃、「DJみそしるとMCごはん」さんとのコラボレーション案をソニーミュージックに持ちかけましたね。

※2 銀座ソニービルは2018年8月9日に、変わり続ける公園「Ginza Sony Park」としてリニューアルオープンした。「Park Live」は毎回、アーティストをゲストとして迎え、音楽との偶発的な出会いを楽しむ場。

ダメもとでのアプローチ開始。「DJみそしるとMCごはん」も共感した、”難しいことを面白くする”こと。

――楽曲制作とミュージックビデオ制作までのフローは?

城ヶ野:2019年4月上旬、宮崎さん経由で繋がったおみそはんのマネージャーさんに、仕上げ磨きの課題・Possiの商品性・ターゲットのプレゼンテーションと共に、楽曲制作とミュージックビデオ出演のお願いに行きました。
楽曲制作とミュージックビデオの両方をお願いできるかどうかは、本当に未知数。ダメもとのチャレンジでした。稲垣さんにはPossiのプロトタイプも持ってきていただき、実際に体験してもらいました。

――最初のソニーミュージックへのプレゼンからは、どのように話が進んでいったのですか?

城ヶ野 修啓 ソニー株式会社 クリエイティブセンター コミュニケーションデザイン担当

城ヶ野:プレゼンからちょうど2週間後、マネージャーさんから連絡があり「楽曲制作、是非やりましょう!」という話に。4月末には、おみそはん本人に直接プレゼンを行い、結果的にミュージックビデオへの出演OKも頂きました。「“難しいことを面白くする”という点に共感しました」と彼女が言ってくれたのが嬉しかったです。子どもにとって、少しハードルが高くて簡単ではない“歯磨き”という行為を、楽しく面白く変えられたら、という部分で共感してもらえたのです。

約1か月後にはミュージックビデオの撮影。スケジュールや予算はギリギリで、振り付けや子役の手配など急ピッチで段取りを進めました。

ミュージックビデオ撮影の様子
ミュージックビデオ撮影の様子
ミュージックビデオ撮影の様子
ミュージックビデオ撮影の様子

――7月3日にはクラウドファンディングを開始しているので、本当にギリギリだったのでは?

宮崎:6月中旬に撮影を終え、そこからクラウドファンディング開始までのスケジュールは非常にタイトでした。京セラ・ソニーのチームメンバーは全員、楽曲制作は初めての挑戦だったため、その点でも想定外のことが多く起こりましたね。

城ヶ野:そうでしたね。ただ、これまでの他のクラウドファンディング案件の準備を担当したこともあったので、進め方やスケジュールは関係各所と予め握っておき、無事、7月3日に予定通りローンチすることができました。

関係者の“大胆な決断”が加速した、Possiの“エンタテインメント性”。

――ソニー・京セラ・ソニーミュージックの協業をしてみて、どうでしたか?

宮崎:今回は京セラ・ソニーミュージック等、関係者が商品、世界観に共感してくれたことが本当に大きかったです。京セラは当初から、ソニーに事業化支援の一部として“エンタテインメント性”を期待していました。普通だと子どもに嫌がられてしまう“歯磨き”の時間を楽しい時間にするために、エンタテインメント性は必須だ、と。今回その部分を実現できて、本当に良かったと思います。

城ヶ野:今回、Possiの“エンタテインメント”という側面が実現したのは、「関係者から許容してもらえたから」という点が大きいと思っています。京セラさん側からも、ソニーミュージック側からも、大胆な決断をしていただけたな、と思っています。様々なデザインを担う私たちからすると、提案しても実現しないことが少なくありませんので。しかし今回は、京セラの稲垣さんを始め、プロジェクトメンバーの目指す世界観が合致し、色々なことがタイミングよく、テンポよく進んでいきましたね。

――クラウドファンディングにかける想いをお聞かせください。

城ヶ野:今回の「DJみそしるとMCごはん」さんとのコラボレーションは、私が最初に描いたPossiの「絵本」のストーリーから生まれました。子どもにとってはあまり良いイメージの無い“歯磨き”という行為を、Possiのうた「ポッシといーあー」の世界観が、楽しく変換してくれる。より多くの子どもたちが、この歌を聞いて楽しんでくれるといいなと思います。

宮崎:今回のプロジェクトを通じて、子どもの歯磨きで大変な思いをしている親がいることをリアリティ持って知ることができました。実際にそのような悩みを抱える人たちにPossiを使ってもらったら、驚くほど楽しい時間に変わったという声を数多く頂いています。Possiはそういった悩みを解決する商品です。より多くの方々に商品を知ってもらいご支援いただければ、そう思います!

ソニーミュージックからのコメント

・楽曲制作ディレクター クボタマサヒコ(キューンミュージック)

今回のお話を頂き、まず何よりプロジェクトチームの皆さんの熱い想いに感銘を受けました。その熱量と斬新な技術アイデアを元に、DJみそしるとMCごはんとテーマソングの制作を進めていきました。日本中のお子さん達が、毎日音楽を聴きながら楽しく歯磨きをしてくれる事を願っております!

・アーティストマネジメント 道下善之(ソニー・ミュージックアーティスツ)

制作チームのみなさんと打ち合わせをした際に、まさにPossiを使う年齢のお子さんのもつお父さんが多いことがわかりまして、実体験のエピソードやPossiに対する熱い思いをたくさん聞くことができました。そのみなさんの思いがあふれて楽曲へのリクエストがあれもこれも状態で大変でしたが(苦笑)、お子さんにもお父さんにも愛される楽曲に仕上がったのではないかと思います。

・アーティストマネジメント 小野莉果(ソニー・ミュージックアーティスツ)

今回のお話で一番印象的だったのは、プロジェクトチームにいらっしゃる“お父さん”がたの仕上げ磨きにかける熱い思いです。親と子ども、どちらにとっても仕上げ磨きの時間が楽しくなるよう想いを込められて開発されたPossiに、DJみそしるとMCごはんの音楽でさらに彩りを加えることが出来ていたら幸いです。

「DJみそしるとMCごはん」メッセージ

DJみそしるとMCごはん
DJみそしるとMCごはん

「仕上げ磨きをしようとすると、子どもに逃げられてしまうんですよね…」
切ない表情でそう話すのは、悩めるお父さんたちでした。
そんなお父さんたちがマジになると、会社の垣根まで超えてしまうんですね!驚きました。
遊び心と愛情がたっぷり詰まったPossiは、これからたくさんの親子のもとで可愛がられていくと思います。
好きな音楽が流せますが、3回に1回くらい「ポッシといーあー」を聴いてもらえたら嬉しいです。

 

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Sony Startup Acceleration Program(SSAP)は、「あらゆる人に起業の機会を。」をコンセプトに、2014年に発足したスタートアップの創出と事業運営を支援するソニーのプログラム。ソニー社内で新規事業プログラムを立ち上げ、ゼロから新規事業を創出した経験とノウハウを活かし、2018年から社外にもサービス提供を開始。経験豊富で幅広いスキルとノウハウをもったアクセラレーターの伴走により660件以上の支援を24業種の企業へ提供。大企業ならではの事情に精通。(※ 2024年3月末時点)

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